作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希はウェイトレス』2
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-03-24 (土) 02:34:02

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

少しドタバタしたものの、長門に案内され昨日と同じテーブルに落ち着いた。
ちなみに俺の前にはハルヒが居て、その隣は朝比奈さん。
当然俺の横は古泉だ、どうでもいいが。
口髭店長のウインクを受けながら、
慌ただしくフロアを行き来する奥様と長門を眺める。
「…親子みたいだな」
「本当ですね。実に微笑ましい光景です」
独り言のつもりだったんだがな。

 

ハルヒはしばらく朝比奈さんとメニューを見ながら騒いでいたが、
「有希ー!!そこでコップをひっくり返しなさい!」
とか言いながら写真を撮りまくっていた。
よし、パソコンへ取り込むのは俺に任せとけ。

 

20分後、ハルヒの前にはカルボナーラとオムライス、食い過ぎだ。
朝比奈さんは可愛らしい特製ドリア。古泉は蟹ピラフ。
そして俺が何故ここに来てまでカレーを食ってるかというと
「この店のカレーは至高の味。あなたも食べるべき」
雄山先生も真っ青な迫力だったんだ。仕方ないだろ。

 

「フンモッフ!」
「おい平気か古泉。急いで食い過ぎだ」
「ゲホ!すいません…あまりに美味しいので」
こいつがこんな食い方をするとはな。だが気持ちはわかるぞ。
このカレーも確かに至高の名に相応しい。女子部員も同意見みたいだな。
朝比奈さんは目を丸くしてるし、ハルヒは既に食い終わってる。

 

「店長さん!とっても美味しかったわ!明日も来るから!」
「おっ!うれしいねぇ!有希ちゃんのお友達も可愛…ふお!」
「ありがとうね。有希ちゃんは責任を持って預かるわ」
口髭店長は学習できないのだろうか。
「お願いね!有希はうちの大事な団員なんだからっ!」
年上には敬語を使うもんだぞ。…まぁいいか。
長門がハルヒにとって大きな存在だと分かっただけで今日は満足さ。

 

外にはお腹を空かせて順番を待つ人達がまだいるだろう。
俺達は早めに切り上げる事にした。会計を済ませ、扉を出る時

 

「……有難うございました。またお越しください」
完璧なフランス人形は、両手そろえてペコリと御辞儀した。

 

店を出た後の俺たちの行動といえば、実に単純なものだったな。
「今日は解散しましょ。てゆーか有希のバイトが終わるまで探索は中止よ!
有希だけ仲間外れなんて許さないわっ!」
なんとまぁ…朝ここに来た時は無断で始めた事を非難してたくせに。
「そんなのもう昔の話よ。それに見た?
今日の有希は生き生きしてたわ。とってもいい事よ!」
果汁120%の笑顔でそう告げたあと、意気揚揚と帰っていった。
「私も帰りますね。今日はとっても楽しかったです。」
こちらも何の邪気も無い笑顔と供に去ってしまわれた。
俺が可憐なお姿の余韻を味わっていると、
「おそらく、この様子なら閉鎖空間の心配はいりませんね。
長門さんのおかげです。今回の事は涼宮さんの退屈を解消する為ではないでしょうか?」
俺は違うと思うがな。
お前の意見はどうでもいい。

 

無事に我が家へ帰ってきた俺は、シャミセンの鼻息を聞きながら昼寝を堪能した。
たまにはいいだろ?文句は言わせないさ。
完全に眠っちまう前に、あの姿が頭に浮かんだ。
慣れない仕事を懸命にこなすあいつ。

 

がんばれよ…長門。

 

明けて日曜日、俺は携帯のメモリから珍しく奴の番号を探していた。
朝一で掛かってきたハルヒからの電話は
「男子は自宅待機よ!古泉くんにも伝えといて!」
つまりハルヒと朝比奈さんは今日もあの店に行くのだが、
今日も大勢で押し掛けては迷惑になる。
と言う事らしいな。ハルヒにしては気が利いてるじゃないか。
しかし昨日早く寝てしまった俺は二度寝をする気力も無く暇を持て余していた。
谷口や国木田は俺がSOS団に入った時から休日に会ってないしな。
今日も予定があるだろう。やれやれ。結局あいつか。
ピラフなら奢ってやらん事もないぞ。

 

その後は特に特筆する事は無いな。日曜日は古泉とブラブラしただけだし、
昼に行ったファミレスのピラフじゃ古泉はむせなかった。
月曜日からはいつもと同じ退屈な日々。
ただ、あれは水曜日だったか?俺は一人あの店まで夜道を走ったんだ。
他意は無いさ。強いて言えば親心だな。
「あらっ。いらっしゃい!有希ちゃーん。彼が来たわよ」
まるで娘の成長を喜ぶ母親の眼差しで長門の方を見た。
その視線の先には、客が帰った後のテーブルを手際良く片付ける小柄なウェイトレス。
こちらに気付いて片手を上げてヒラヒラと振った。
しかし、その皿は片手で持てる量じゃないだろ。常識的に。
「ふふっ。そんなに彼女が心配?」
そうだった。面接の時、口髭店長の勘違いを正す間も無く
奥様が登場したんだったな。
今さら否定するのもどうかと思う。このままでいいか。
「大丈夫よ。見ての通り大人気なのっ」

 

「有希ちゃ〜ん!こっち向いてぇー」
「キャー!かわい〜!」
たぶん近くの会社のOLさん達だろう。長門が振り返る度に手を振っている。
あちらは仲の良さそうな老夫婦か。良くわからんが長門に手を合わせて拝んでなさる。
「有希ちゃんはうちの看板娘さ!」
親指を突き立てウインクをしながら口髭店長。

 

ハルヒの言った通り、長門は生き生きしてるな。こんなにうれしい事はない。
「ここのハヤシライスは究極の味。信じて」
長門。某長寿料理マンガを読んでるだろ。正直に言いなさい。
究極のハヤシライスを食いつつ分かった事は
長門はバイトが終わった後三人でご飯を食べ、奥様と風呂に入ったあと
口髭氏に車で送ってもらってるのだとか。
「有希ちゃんは遠慮したんだけどね、私が無理矢理お願いしたの」
なら問題無いでしょう。もう本物の親子にしか見えないし、
どう見たって長門が嫌がってる様には見えませんよ。
良かったな長門。こんなに優しい人と入る風呂はさぞかし温かいだろう。

 

俺の目をまっすぐ見つめた後、ハッキリと長門は頷いた。

 

10周年記念イベント最終日。当然俺たちはあの店に襲撃した。
特に変わった事は無い。
ハルヒは自分の分をサッサと平らげ、長門の衣裳を譲ってほしいと奥様に交渉中。
「どうしたらこんな味が出せるんだろぅ。不思議ですー」
朝比奈さんはこんな感じだ。
古泉はピラフじゃなかったな。もうどうでもいい。
長門はテキパキと仕事をこなしてる。
慣れたもんだな。今日で見納めだと思うと淋しく感じるな。当然だ。

 

「いらっしゃい。来ると思ってたわ。すぐ終わるから待っててね」
つまり迎えに来た訳だ。
頼まれた訳じゃないが、感想も聞いてみたいしな。

 

5分もたたない内に片付けは終わり
いつもの窓際のテーブル、長門は俺の隣に座った。
「はい!お疲れさま。有希ちゃんのおかげで儲かっちゃったよ!
少ないけどオマケしといたから!」
爽やかな口髭店長から笑顔と共に差し出された真っ白な封筒。
長門はペコリとお辞儀してから両手で受け取った。
こら!まだ中は見ちゃいけません!
「有希ちゃん。短い間だったけど、本当にありがとう。」
奥様の目には涙が浮かぶ、「…私たちは子供に恵まれなかったの。体質らしいわ。
産んでれば有希ちゃんくらいの子供がいてもおかしくないの。
段々自分の娘みたいな気がしちゃって…」
口髭店長は奥様の肩を抱いた。奥様はしばらく泣き続ける。
そんな二人を長門はジッと見つめていた。
「ごめんなさい。有希ちゃんが困るのは分かってた、だから言わないつもりだったの。
でも、あなたと過ごした一週間は私には大きすぎたみたい。手放したくないの。…ワガママよね。」
「有希ちゃんの気が向いた時でいいの。また遊びに来て。
でも無理はしないで。あなたが苦しむのは耐えられないの」
奥様の悲痛な願いが長門に伝わったからか、
それとも本心なのか

 

「…うれしい。必ず来る。待ってて、
お父さん。お母さん」

 
 

目標達成だな。長門。
その顔は、人間じゃなきゃできないさ。

 
 

END

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:24 (3093d)