作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希はウェイトレス』1
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-03-24 (土) 02:24:04

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 
 

「どーしてあんたはそんな大事な事を早く言わないのよ!」
どーしてだろうな。
「有希も有希だわ!団長に黙ってバイト始めるなんて!」

 

説明が必要だろう。いつもの北口駅前で
機関車の汽笛のような声で不満を爆発中なのが、我らが団長涼宮ハルヒだ。
いや、俺が説明すべきなのは長門がバイトをしている…という部分だな。
できるだけ手短に説明させてもらおう。
古泉が無駄なフォローに奮戦した挙げ句、朝比奈さんまでもがハルヒの餌食になる前にな。

 

事の発端は2日前。
今日も何も無い平凡な木曜日。ハルヒは不思議メールどころか
迷惑メールの送り間違えさえ来ないSOS団HPのカウンターを回しているし、
朝比奈さんは給仕に忙しく、大きく開いた胸元のボタンに気付いていらっしゃらない。
星型のホクロが眩しいね。
「………」
窓際の宇宙人と目が合う。お星さまに夢中になってたせいだろうか。
長門の瞳が迫り来る隕石に見えるのは。
この際ハッキリさせておきたいのだが、こいつは人の心が読めるのか?
長門。聞こえてるなら目の前のどうでもいいニヤケ面を
閉鎖空間まで案内してやってくれないか?俺はそう願いながら駒を進める。
「おや。そう来ますか。参りましたね」
…どうやら宇宙人にも人の心は読めないらしいな。

 

つまりいつもどおりの放課後な訳だが
「…これ」
いつになったら退屈な高校生に戻れるのかね。必ずしも本音じゃないが。
部活終了後、ハルヒの視線を避けながら長門が差し出した栞には
『話がある。私の家へ』

 
 

「……アルバイトを経験したい」
ズズズ。長門のお茶も捨てたもんじゃないな。
「私は人間ではない。でも、円滑に観察を続けるためには
より人間に近づく必要がある」
しかしテレビぐらいは置いた方がいいな。たまにはバラエティでも観て笑っ
「聞いて」
そんな顔するなよ。ハルヒみたいな怒りんぼは一人で十分だ。
「すまん。だが何でそんな事俺に相談するんだ?」
「…アルバイトを始める前には通常『面接』と呼ばれる試験をクリアしなくてはならない」
悪い事をして叱られた子供のように目を伏せ、
「………一緒に来て」
いつかの長門を思い出すな。カードも作れずにオロオロしていた文芸部員。
もしかして自信が無いのか?意外な弱点だな。弱気な長門も悪くはないが。
「……………」
「わかったよ。明日学校が終わったらいっしょに行くか」
捨て猫みたいな長門の顔は正直…堪りません。

 

翌日、部活を終えた俺たちは一度別れてから北口駅前に集合した。
もちろん、他のメンバーに気付かれない為だ。
ハルヒが着いてきておとなしくしてる訳が無いし、古泉はどうでもいい。
朝比奈さんに黙ってるのは忍びないが、まぁ明日にはわかる事だ。
別にいいだろ。

 

「……こっち」
昨日の長門の話では、
「長期間行う必要は無い。今回はあくまで練習」
らしい。そんな時、本を買いに駅前に来ていた長門がたまたま見たのが
『10周年記念イベントの為アルバイト急募!!
時間・平日18時〜20時 土日・12時〜20時
期間・一週間 時給1050円』
アルバイト募集のチラシだったと。なかなか好条件じゃないか?経験が無いのでわからんが。
それにしても昨日から長門はやたら緊張してるな。
いつもは1ミリの誤差も無い歩幅が少し不安定だ。そんなにビビる事無いだろ?
お前ならどんな一流企業だって一発さ。
「長門有希さんか…うん!明日から頼むよ!」
ほらみろ。言った通りだ。

 

昨日俺が書き直しを命じた履歴書を、かたく握り締めた長門が立ち止まったのは、
小ぢんまりとした個人営業の洋食屋の前だった。

 

これを見てくれ。こいつをどう思う?
すごく…不自然です。
「…長門。この資格は何だ?」
「……2級試験は合格した。うそじゃない」
あからさまにムスッとした長門の履歴書には
『情報結合解除取り扱い2級』

 

そんなやり取りのあった履歴書を2秒程見て、
長門を30秒見つめてから合格を言い渡したのはもちろんここの店長だ。
書き直さなくて良かったかもな。

 

「ところでそちらさんは?」
ちょうど準備中で人のいない店内は、4人掛けのテーブルが4組。
カウンター席も入れて25人分ってとこか。
その内の窓際のテーブル席に長門と並んで腰掛けた。
「ただの付き添いです。出た方がいいですか?」
「いやいや!かまわんよ。面接は不安だろうからね。もう終わったようなもんだが」
そう言って豪快に笑う愉快な店長。40半ばくらいだろうか?
口髭がよく似合ってる。悪い人じゃなさそうだ。
「君は彼氏だろ?いやー羨ましいなぁ!私もこんな可愛い子…」
ガチャッ!
「聞こえてるわよ」
40は行ってないだろう。黒髪をアップで束ねた美人が口髭店長を睨み付ける。
なるほど、厨房の奥の扉から先は住まいになってるのか。

 

「おぉっ…いや、なんだ、その…」
「あらっ!あなたが長門さん?本当に可愛いわね。宜しくね、有希ちゃん!」
口髭店長の言い訳は聞こえないらしく、長門に微笑みながら言葉を掛けた。
ふむ、何の心配もいらんだろ。
このお二人に任せとけば立派なウェイトレスにしてくれるさ。
その後簡単な説明を受けたあと、我が家へ向かって歩きながら
「良かったな。二人とも優しそうじゃないか」
「………」コクリ
ホッとしたのか、すっかりいつもの無表情に戻った長門の横顔を見ていた。

 

こうやって少しずつ成長していくのかね。微笑ましい限りだ。

 
 

「みくるちゃん!デジカメは持ってるわよねっ?
今度からビデオカメラも持ち歩くべきだわ!」
「ウェイトレスさんですかぁ。ふふっ、楽しみです」
間に合ったようだな。朝比奈さんは無事だ。
「何とかなりましたね。しかし今度からは前もって伝えておいてください」
マジックポイントを使い果たした古泉のニヤケ面は、さすがに疲れ切っている。
いい気味だ。まぁ今回は礼を言っておくか。
集合時間は10時、今は11時を回ったところだ。
つまりこいつは一時間の間頭をフル回転してた訳だな。
「さぁキョン!案内しなさい!」
昨日の洋食屋までは徒歩十五分くらいか。
今から行けば30分以上は外で待つ事になるな。確か開店は12時ちょうどだ。
「いいのよ!30分なんかすぐだわっ!」
餌を目の前にしたチーター相手に意見するのは自殺行為だな。
案内しようじゃないか。

 

案外ハルヒに従ったのは正解だったかもな。
小さい店ではあるが人気があるらしく、昼時にはそこそこの行列ができる程らしい。
その店が10周年を記念して全品3割引だからな。
俺たちの後ろに行列ができるのも当然か。

 

12時、
「……いらっしゃいませ。何名様でしょ…」
言うより早くハルヒが飛び付いた。
「!!!めっちゃくちゃカワイイわ!う〜んかんぺきっ!」
「本当にかわいいですぅ。いいなぁいいなぁー」
いつかのルソー氏を見るように瞳を輝かせている。
朝比奈さん、長門は犬じゃありませんよ。人間でもないですが。
しかし、だ。
やたらとフリフリふわふわ装飾された膝丈のワンピース。
頭にはワンピースと同じ赤いチェック模様のカチューシャ。
完璧なフランス人形がそこに居た。
「うちには制服が無いからあの後急いで買いに行ったの。
でも少し張り切りすぎちゃったかしら」
黒髪美人の奥様の趣味だったか。今すぐアパレル関係に転職すべきです。
「おい、もういいだろ。これ以上はいろんな営業妨害に引っ掛かる」
煙が出るほど長門に頬摺りしてる女を引き離す。
「わかったわよ。あれ?有希、胸のボタン外れてるわよ」
長門はチラチラと俺を見る。

 

何なんだろうね、まったく。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:24 (2714d)