作品

概要

作者ばんぺい
作品名キョンと声変わり
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-03-04 (日) 04:26:18

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 コンコン。
 俺はいつものように部室の扉をノックする。ここで帰ってくる反応は大きくわけて二つだ。
 一、朝比奈さんのスゥィートボイス。二、長門の沈黙。
 例外としてハルヒの事もあるが、今日は返事がない。 ということは長門だな。

 

「うぃーっす」

 

 ……予想に反して部室には誰も居なかった。
 鍵は開いていたので、誰か居たが席を外したのだろう。仕方が無いので俺はパソコンの前に
座り、ネットサーフィンをするでもなくデスクトップを眺める。
 久しぶりにマインスイーパーでもするか。俺は別にゲーム好きというわけではないが、古泉
に抜かれたままでは少々シャクだ。

 

 と、俺の目に見慣れないファイルが写った。無題のmp3ファイルだ。
 画像ファイルだったら一体何なのかとドキドキするものなのだが、MP3なら十中八九音楽
だろう。朝比奈さんの麗しいボイス集がこんな所に置いてある道理も無い。
 ヘッドホンを装着して再生してみると、案の定だ。しかしそれはひじょーに聞き覚えのある
曲だった。
 レコーディングの時はえらい目に遭ったからな。しばらくは忘れようにも忘れられん。
 ま、おかげで俺達の演奏にしては結構まともな曲になったじゃないか? 長門の手により、
この曲の悪しき性質も浄化された事だしな。
 何時の間にやら俺はヘッドホンを付けたまま、目を閉じてその歌を口ずさんでいた。

 

 ……しばらくすると、俺の声にハルヒの歌声が重なってきた。ヘッドホンからではなく生声
だ。気付かないうちに部室に来ていたのか?
 目を開けて部室を見回しても誰もいない。はて、空耳か。
 首を傾げつつも再びヘッドホンを付け、歌を口ずさむ。今度ははっきりと聞こえる。

 

「ハルヒ?」

 

 名前を呼んで、ようやく俺は声の出所に気付いた。
 なんてこった。この曲の非常識ウイルスは全て長門が片付けてくれたと思っていたのだが。

 

「なんで俺の声がまたハルヒになってんだよ……」

 

 俺の声はあの妙な空間で五線譜お化けと戦った時の様にハルヒ声になっていた。
 全く、勘弁してくれ。あの件はとうに終わったと思っていたのに。
 今度はどうすりゃいい?

 

 一番確実な方法は、長門に相談することだろうか。
 長門だけに負担をかけるような事はしたくないと常々思って居るのだが、今回の件は五線譜
お化けの続きらしい。長門に相談するしか無いだろう。
 一番マズイ事はこの状況をハルヒに見つかる事だな。しかし幸いハルヒは生徒会長室に呼び
出されている。どんな争いが繰り広げられているか知らんが、しばらく戻って来ないだろう。
 ……まさか、喜緑さんが手を回してくれたのか?
 ならこの件は長門にも伝わっているだろう。やはり部室で長門を待つのが良さそうだ。

 

 -・-- ・・- -・- ・・ ・・・・ ・- -・- -・-- --- -・ -・ -・ --- -・-- --- -- ・

 

 ……遅い。いくらなんでも遅すぎる。
 長門はともかく、朝比奈さんや古泉まで来ないというのはどういうことだ?
 今日は活動休止日か何かだったか?

 

「ふぅ……長門おそいな……」

 

 独り言を発してみるが、やはり自分の声がハルヒというのは中々気持ち悪いものだ。
 ハルヒの声で「長門」なんて言うとかなり違和感がある。
 ハルヒは普段長門の事をなんて呼んでいた? たしか――

 

「有希ー」

 

 おお、中々ハマってるじゃないか。じゃあ次は

 

「キョンー」

 

 なんか気持ち悪いぞ。
 折角だから、普段喋らないような事でも喋らせてみるか。

 

「情報なんたらによって作られたヒューマノイドインターフェース。それがあたし」

 

 ……いきなりこんな事を言い出しても違和感無いかもしれん。というか、普段言わない台詞
のベクトルが間違ってる気がする。だったらこうだ。

 

「あたし……有希の事、ずっと前から……」

 

 いかんいかん。これはこれでベクトルが違う。
 しかしハルヒの声で百合色な台詞が出てくるとなかなかそそる物があるな。性格が悪くても
声に罪は無い。もっと桃色な台詞だったらどうなる?

 

「おねがい……きて」

 

 悩ましげな抑揚で発せられたその声は、少なからず俺の小脳を刺激した。
 自分の発した声で変な気分になるなどまるで変態だが、なに、これは俺の声じゃない。
 調子に乗った俺は更なる挑戦を試みる事にした。
 ……あえぎ声、とか……。
 いかんいかん、そこまで行くと本格的に変態だ。
 しかし、この声が戻ったらそんなものを聞く機会など一生訪れないだろう。もちろん本人の
ソレを聞くなんて金魚が空を飛ぶくらいありえない。
 二度と無いかもしれないという思いは、えてして人を突き動かす。
 俺の欲望はもう止められなかった。
 同じ立場ならきっと誰しも同じ事をするさ! だからそこ、変態とか言うな!
 では、いざ……

 

「あはぁん…………ってあれ!?」

 

 俺の口から漏れたのは、至極聞きなれた男の声だった。
 ……自分で発したとはいえ、自分の声であんな言葉を聞かされるとは。
 なぜ突然治ったんだ? しかし、誰にも見られてなくてよかっ

 

「……へんたい」

 

 半開きの扉の向こうで、零下273.15℃の瞳が俺を見つめていた。
 ながっ、長門いいいつからそこにっ!

 

「な」

 

 バタン!

 

 がとこれは違うんだ、という台詞は最後まで言わせてもらえなかった。

 

 -・-- ・・- -・- ・・ ・・・・ ・- -・- -・-- --- -・ -・ -・ --- -・-- --- -- ・

 

 後日、一応長門に説明を聞く事が出来た。
 例の声はやはりあの曲が原因で、どうやらあの時長門が処理しきれなかった部分を始末する
ためにMP3を置いておいたらしい。
 部室の周囲を特殊な空間にしてる間に(だから誰も来なかったんだな)俺が入ってしまい、
まぁ、後は知っての通りだ。

 

「あなたの嗜好は理解した。わたしは別に気にしない」
「いや、だからアレは違うんだって!」
「気にしないが、しばらく話し掛けないでほしい」
「長門ぉ……」
「……」

 

 長門に人間の出来心ってやつを理解してもらうまで、長門に口も聞いてもらえなかったのは
また後日の話だ……。 やれやれ。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:16 (2711d)