作品

概要

作者ばんぺい
作品名長門さんと愛
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-03-03 (土) 13:33:41

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「……あなたはわたしを愛していると言った。でもわたしには有機生命体の愛の概念がよく解
 らない」
「そっか……いや、いいんだ」

 

 俺が長門に愛を告白を決意したのは、出会ってからだいぶ経っての事だった。
 しかしそれでも、少し早すぎたらしい。勇気を振り絞った俺としては、肩透かしをくらった
気分だが……仕方ないか、きっといつか解ってくれるさ。

 

「変な事言って悪かったな。いつか俺の気持ちが解る日が来るまで忘れてくれ」
「忘れる事は出来ない」
「どうしてだ?」
「わたしは愛というものに相当する状態を持つ事は無い。しかし愛という言葉の意味は理解し
 ている」

 

 半分諦めかけた俺に、期待を持たせる言葉を投げかける長門。俺の心臓は再びフル稼働し始
めた。
 長門は1ミリほど困惑した瞳で言葉を続ける。

 

「愛は言語じゃない。言語による説明、理解では齟齬が発生する。その齟齬によってわたしの
 一部機能に障害が生じている」

 

 それはきっと、長門がバグと呼ぶ、感情によるものだと俺は思っている。

 

「そうじゃない。この障害は単純に一つの矛盾によって生じている」
「矛盾?」
「そう」
「ちょっとまってくれ。 そもそもお前が理解してる愛ってのはどういう物だ?」

 

 愛という言葉の意味なんて、簡単に解るようなもんじゃない。
 言葉で説明しようとしたら、それこそそういう感情を持っていなけりゃできないと思う。
 相手を思いやること? 慈しむこと? 大事にすること?
 どれも、説明になっていない。長門の言う通り、言語じゃ説明できないんじゃないか?

 

「愛とは、対象となる存在の満足および安全が、自分のそれと等しい価値を持つこと」

 

 ぐうの音も出ない。さすが長門というか、完璧な説明だ。
 しかし当の長門は、瞳に浮かべた困惑を2ミリほどに深めていた。

 

「……この定義が正しいと判断することはできない」
「そうなのか? 俺は納得しちまったのに」
「わたしには愛に相当する状態はない。しかしこの定義では、わたしはあなたを愛している事
 になってしまう。つまり、この定義かわたしの行動原理のどちらかが間違っている」

 

 ……それってつまり……。
 長門の困惑はますます深まっていく。

 

「しかし、わたしの行動は自律的。わたしの行動原理をわたしが誤認識する事は無い。従って
 この定義には決定的な誤りがあると思われる。でもわたしが調べた限り、この定義は大きく
 間違ってはいない。もしかしたらわたしの行動原理自体をわたしが誤認識しているのかもし
 れない。この矛盾がわたしの一部機能を……」

 

 気付いた時には、俺は長門を抱きすくめていた。
 よくわかった。こいつは愛を持てないんじゃない。気付いてないだけなんだ。
 自分が俺を愛してるって気付かずに、そんなはずないって意地を張ってるだけなんだ。

 

「どうしたの」
「長門」
「なに」
「俺が教えてやるから」

 

 どれくらいかかるのか解らない。もしかしたら俺が生きてるうちには気付かないのかもしれ
ない。数百年の夏休みをすごしても気付かなかったんだからな。
 でも、もう決めた。

 

「俺がお前に、教えてやる」
「……そう」

 

 今はまだ、俺の腕の中で全く無反応な長門よ。早く自分を表に出せるようになってくれ。
 いつかきっと、あの世界の長門の様に。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:15 (3090d)