作品

概要

作者ばんぺい
作品名長門さんと添い寝
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-03-03 (土) 00:54:37

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「そうか、じゃあ俺はソファーで寝るよ」

 

 果たしてどういう経緯だっただろうか。俺と長門は何故か一つ屋根の下……どころではない、
同じ部屋で一晩を共に過ごす事態になっていた。
 しかもベッドは一つ。布団は一応毛布が余分にあるものの、基本的に一式だけだ。
 加えて今夜は冷える。さて、俺はこの状況を如何にして乗り切るべきだろうか?

 

 ……なんてな。答えははじめから決まっている。ベッドが一つしか無いとはいえ、同じ布団
で寝るわけにはいかないだろうさ。
 俺はソファーに横になった。
 長門はといえばベッドに横になり、何か訴える瞳でじっとこちらを見ている。
 そんなに見られたら気になるじゃないか。
 見られるのが嫌というわけでは無いが、どうにも落ち着かないので俺は目を閉じて長門に背
を向け、ソファーの背もたれ側を向いた。
 ……ん? このソファーこんなに狭かったか? しかも背もたれがやたら立体的で柔らか

 

「あなたはソファーで寝てはいけない」

 

 いきなり耳元で声が聞こえた。お前たった今までベッドの上に居なかったか? いつの間に
こんな目の前っていうか密着状態に。

 

「あなたの肉体的疲労は無自覚のうちに相当量溜まっている。あなたはベッドで寝るべき」
「い、いや。そうだとしてもお前をソファーで寝かせるわけにはいかないだろう」
「平気」
「……」

 

 かなり悩む。男として、長門をこのままソファーで寝かせるというのは選び難い選択だ。
 しかし長門も、絶対譲らないという瞳で俺を見つめている。同じ布団で寝るわけにいかない
事くらい長門もわかっているだろう。
 そうすると俺が布団に移るしか無いのか。

 

「しょうがない、解ったよ。でも寝心地悪い様だったら言えよ? すぐ代わるからな」

 

 そう言って俺は二人の体温で温まった毛布から抜け出し、布団へ向かった。正直、ちょっと
名残惜しかった。あ、いやほら今日は寒いからな? それだけだ。
 そしてさっきまで長門が入っていた布団に潜り込む。あ、かすかに石鹸の残り香が……。
……と思ったら、また目の前に本人が居る。念のためソファーを確認するも、もぬけの殻だ。

 

「ソファーで平気だったんじゃなかったのか?」
「情報の伝達に齟齬が発生した。あなたの横に入るから平気という意味」

 

 眩暈がした。

 

「現在の室温は5度をわずかに下回っている。二人で入る事が寝床の保温に役立ち、あなたの
 健康管理上望ましいと判断した。 ……わたしも環境に対する情報操作を行わなければ少し
 寒い」

 

 ……要するに長門は、同じ布団がマズいという事を理解してない様だ。ここは俺がしっかり
教えて置くべき所だろう。

 

「あのなぁ長門。未婚の若い男女が同じ布団で寝るのは一般的によくない事とされてるんだが
 知ってるか?」
「知っている、しかし問題は無い。寝るだけ」
「いや、お前はわかってない。お前が寝るだけのつもりでも、一緒に寝る相手が無理やり襲い
 かかってくる事だってあるんだぞ?」
「問題無い。わたしにそんな事が出来るのは、同じ統合思念体端末くらい。そもそもあなたが
 そのような事をするとは思えない」
「まだわかってないな。男はこういう状況なら、普段は想像できないような行動をする物だ」
「平気。あなたに関してはそのような問題は発生しない。問題が発生しないのに、二人共寒い
 思いをして就寝するのは非合理的と判断する」

 

 信じてくれるのは嬉しいが、俺にはあまり自信が無いかもしれない。何か雰囲気的に、何を
しても許してくれそうな感じがして余計にな。

 

「まぁ、ソファーよりベッドの方が暖かいだろう。俺は平気だからソファーへ……」

 

 行こうとしてベッドから降りようとすると、目の前に見えない壁のような物があって先へ進
めない。 まるでハルヒと閉じ込められた閉鎖空間の壁のような……。

 

「もう深夜の1時を過ぎている。言い争っているより、あなたもわたしも就寝するべき」

 

 どうやら長門は本気らしい。仕方がない、観念するか……

 
 

 -・-- ・・- -・- ・・ ・・・・ ・- -・- -・-- --- -・ -・ -・ --- -・-- --- -- ・

 
 

 ……布団に入って20分。案の定というか、俺は眠れずにいた。せめてもの抵抗として背中
合わせで布団に入ってるんだが、長門のぬくもりが如実に伝わってきて、もう何か振り返って
抱きしめたいという欲求がさっきから限界寸前になっている。
 こいつはもうとっくに寝てるんだろうな。規則正しく呼吸する長門の体が、寝息に合わせて
上下に動いている。
 ……しばらくすると大きな動きを感じた。こちらを向いたらしい?
 宇宙人でも寝返り打つんだな。

 

  ツン

 

 ……? 今なんかパジャマが突っ張った?

 

  ツンツン

 

 何だ? 長門が寝ぼけてるのか?

 

  グイッ!!

 

 無視していると、突然誰かが俺の肩を掴んで(もちろん長門しか居ないが)、強制的に長門
の方を向かされた。漆黒の大きな瞳が、1マイクロメートルほど不機嫌な色をたたえて俺を見
つめている。ほんの20cmほどの目の前で。

 

「距離が遠い。これでは保温効果が十分とはいえない」
「おま、寝てたんじゃないのか?」
「あなたの交感神経が活性状態のまま。このままではあなたは十分に休息できないと判断」

 

 誰のせいだよ。

 

「今、緊張する状況ではないはず。何も心配する事はない。わたしも何も心配していない」

 

 俺がなんで緊張してるか知らない長門はそんな事を言う。でもなんでだろうな。さっきまで
の情動が引いていくのがわかる。
 長門が俺を心配してくれたから? 信用してくれたから?
 なぜかはわからないが、抱きしめたいとかじゃなく、愛しくて幸せって感じになっちまった。

 

「副交感神経の活性を確認。……わたしも休眠モードに入る」
「ありがとな、長門。でもこういう時言うのはそういう言葉じゃないだろ?」
「……おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

 
 

 -・-- ・・- -・- ・・ ・・・・ ・- -・- -・-- --- -・ -・ -・ --- -・-- --- -- ・

 
 

 その後の話を、少しだけ語ろう。
 翌朝の俺と長門の会話である。

 

「しかし長門が、俺を完全に信用してくれたのは少し嬉しかったよ。」
「……また情報の伝達に齟齬が発生した。あなたとなら無理やりという問題は発生しないとい
う意味」

 

 その言葉の意味を理解するまで5秒はかかった。
 俺はそこからさらに、プラス10秒くらいはフリーズしていた思う。

 

「今夜は昨夜よりも更に気温が下がる。だから、今夜も」

 

 俺の復旧は、更に先延ばしとなった。

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:14 (3093d)