作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんの親子丼
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-28 (水) 22:03:16

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

※猟奇ヤンデレ注意

 
 
 
 
 
 
 
 

「……」

 

何度目かも分からないため息を吐きながら
まだ肌寒さを感じる夜道を、俺は自分への嫌悪感と罪悪感一杯で自転車を漕いでいた。
何で夜遅くにアンニュイな気分になっているかというと、
さきほど俺がしでかしちまった大変なことが原因だ……

 
 
 
 

今日はは珍しく、団室にはハルヒしかいなかった。
とはいえ古泉が『バイト』で不在になるのはよくあることだし、
あのエスパー戦隊のレッドがいなくても俺に支障はない。
むしろ勝ちの見えてる出来レースのようなボードゲームをしなくてすむのだから、
喜ぶべきだろう。

 

しかし、麗しのメイド長たる朝比奈さんと、
我らが万能選手である長門がいないのは、
たまたま間違って配達された年賀状で、
ふるさと小包が当たるより珍しい。

 

まぁあの未来からやってきたちょっぴりドジなメイドさんが、
何らかの用事……おそらく鶴屋さんがらみの……でいなくても、
不自然とは言えない。

 

だが、趣味特技資格欄全てに『読書』と書きそうな無口宇宙人が
ここにいないとはどういうことだ。
一応ハルヒの観測が任務らしいから、
この場にいるのが当然だと思うのだが……

 

「ねぇ、キョン……」

 

「ん?なんだ?」

 

俺の思考を遮るようにハルヒが声を掛けてきた。
そういえば、こいつは今まで誰もいない部屋にいたわけか。
その割には随分大人しいな。むしろ静かすぎて不気味だ。
何か企んでるんじゃないだろうな。

 

「何だか喉が渇かない?」

 

「はぁ?」

 

いきなり何を言い出すかと思えば……
飲み物ならそこにある急須と湯呑みを駆使すれば、
いくらでも飲めるだろ。

 

「あんたも喉渇いてるんでしょ?
いいわ、あたしが入れたげる」

 

そう言っていきなり立ち上がり、
湯呑みを用意するハルヒ。

 

「いや、別に」

 

「あたしが入れたげるって言ってるんだから遠慮しないの。
いいから、あんたは座ってなさい」

 

何なんだいきなり……
相変わらず行動言動挙動その他諸々が読めん奴だ。

 

とはいえ、せっかくの申し出を断る気はない。
珍しくこの我が侭団長様が俺のために用意してくれるようだしな。
そう思って俺はお言葉に甘えて席に座って待った。

 
 
 
 

「はい、おまたせ」

 

「あぁ、サンキュ……って何だこれ。
白湯じゃねぇか」

 

「仕方ないでしょ。お茶ッ葉が無かったのよ」

 

茶葉が?
そんなこと朝比奈さんは一言も言ってなかったが……
いや、もしかしたら迷惑かけまいと黙ってたのかもな。
それに今日この場にいないのも、
買出しに行っているからかも知れないし……
いつも献身的な人だからな。

 

「ほら、さっさと飲みなさいよ」

 

無茶を言うな。
入れたてあっつあつの湯なんて飲んだら、
口の中を火傷するじゃねぇか。

 

「うっさいわね、いいから飲みなさいよ!」

 

「わかったわかった……飲めばいいんだろ」

 

「そうそう」

 

「ったく……いただきます」

 

そう言って俺は熱いのを我慢して、
一気に飲むことにした。

 

「……ん?そんなに熱くないな」

 

むしろぬるいくらいだ。
まるで前もって用意されてたような……

 

「あ、あらそう?」

 

「あぁ……まぁ、とにかくごちそうさま」

 

そう言って俺はハルヒに湯呑みを返した。
朝比奈さんのお茶に比べれば果汁100%ジュースと、
湖に果汁を1滴垂らしたもの位の差があるとはいえ、
ここは素直に感謝すべきだろう。

 

何だか嬉しそうなハルヒの姿を見て、
俺は心の中でそっとそう思っていた……

 
 
 
 

さて……そろそろ15分くらい経ったし、
薬も効いてきたかしら。
ホントはこんなもの使わなくても、
キョンが誘ってくれればいいんだけど、
あぁ見えてストイックだから……

 

だけど子供は多いほうがいいでしょ?
それなら早いうちに産まないと……
そのためにもそれなりの『行為』をしなきゃ。

 

でもこれを使えば『その気』になるって言ってたけど……
いつになったらなるのかしら?
早くして欲しいわ。

 
 

……あら?何だかキョンがそわそわしてる。

 
 

ふふ……効いてきたみたいね?

 
 
 
 

あれからしばらくハルヒはまったくの無言で、
俺は俺で一人オセロをやっていた。
これだけなら何の変哲もない……

 
 

……のだが、なにやら様子がおかしい。
体が熱いというかうずうずすると言うか、
とにかく何だかマズイ……

 
 

「あら〜?キョン?どうかしたのぉ?」

 
 

ハルヒが話しかけてくるが、
今はむしろ放っておいてくれ。
いろいろ抑えるので一杯なんだ。

 

「いや……なんでも……ない……」

 

「ふーん、そう……」

 

何だその笑みは。
また何か企んでるんだろうが、
今はそれどころじゃない……

 

「そういえば、何だか暑いわね〜」

 

「は?そうでもな……っておい!?」

 

俺は目の前の光景に一瞬理性を失いかけた。
なんとご存知傍若無人団長は、
あろうことか上着を脱いでいた。

 

「なに、キョン?あたしの裸が見たいわけ?」

 

「ば、馬鹿を言うな」

 

やばい。
とにかくヤバイ。
何だか知らんがヤバイ。

 

今はまだ何とかなっているが、
このままでは俺の理性がいつ崩壊してもおかしくない。
そしてこの部屋には俺とハルヒしかいないわけで、
片方が加害者になればもう片方が自動的に被害者になっちまう。

 

……いつもと違い、間違いなく俺が加害者だ。

 

「って、おい!お前何やって……」

 

「あぁ、暑いから脱いでんのよ。悪い?」

 

こんな時に何を馬鹿なこと……

 

とりあえずこれ以上俺の108式まである煩悩が開放される前に、
この場を去らねば……

 

そう思った俺は急いでカバンを手に取り、
ドアに向って……

 
 

 カチャ……

 
 

不意に手首に金属の音が鳴る。

 

何だこれ……あぁ、ドラマでよく見る奴だ。
刑事役が持ってる……

 

一体何……

 
 

「……愛してる」

 
 

その鎖の先には、
一糸纏わぬ少女の姿があって……

 
 

俺は何も考えられなくなった。

 
 
 
 

家に帰ってから俺は激しい後悔に見舞われた。
なんたってあんな勢いに任せて……
最悪だ、俺。

 

もしかしたら一糸纏わぬってのも、
俺の幻覚だったのかもしれない。
それくらい俺はおかしくなっていた。

 

それでも俺がやったことは許されることではないだろう。
あのあといくらハルヒに連絡をとってもつながらなかったが、
きっとショックで泣いてるのかもしれない。

 

……やっぱり今すぐ謝りに行こう。

 

そう思った俺は着の身着のまま、
夜の闇の中自転車を飛ばすことにした……

 
 
 
 

キョンたら……
ちょっと出しすぎよ。
でも、これならあと10ヶ月と10日後には、
絶対にあたし達の子供が産まれるわね。

 

男の子かな?それとも女の子?
名前はあたしが決めようかしら?
でもキョンだって決めたいだろうし……

 

とにかく帰りにマタニティーの服買って帰らないと。
あと他の人にも懐妊の挨拶しなきゃね。
特にキョンに群がるメスネコたちに……
キョンの前で盛られちゃ迷惑だわ。

 

そうと決まれば、
さっそく伝えてあげないとね。

 

ちょっと下腹部が痛むけど、いいわ。
あのメスネコの小屋はどこだったかしら?

 

そうやって考えていると、
目の前に一人のメスが現れた。

 
 

「……」

 
 

「あら、丁度会いに行こうと思ってたの」

 
 

あたしの言葉を聞く気もない様子で、
睨みつけてくるメスネコ。
普段は文字通り猫被ってるのかしら。

 

「よくも彼を……」

 

「なに?もしかして見てたの?
猫のくせに出歯亀?」

 

「許さない……」

 

「許さない?何それ。
あんた何様のつもりなの?」

 

もしかして自分がキョンの恋人だとでも思ってるのかしら?
妄想もそこまで行くと病院送りよ?
精神病院で働く獣医さんなんているのかしらね?

 

「あぁ、そうそう。
見てたんなら分かるでしょうけど、
あと220日位したらあたしとキョンの可愛い子供が産まれるから」

 

「!?」

 

そんな悔しそうな顔して……
初めからあなたはキョンの眼中には無いのよ?
悔しいと思うこと自体が厚かましいわ。

 
 

「だから、もうキョンの前でサカらないでね♪」

 
 

そう警告してあたしはその場を去った。
こんな薄汚い野良ネコの相手をしてる場合じゃない。
あと220日しかないのだから、
はやく用意とか準備をしなければ……

 

もしかしたら早産になって明日にでも産まれるかも。
あぁ、でもそれだと困るから、
やっぱりじっくり育って……でも早くみたい……

 

とにかくはy……

 
 
 

 ゴッ……

 
 
 
 
 

「出汁をとる……」

 

少女はコンロの火をつけ、
水を張った鍋をのせる。

 

「材料を切る……」

 
 

ダンッ!ダンッ!ダンッ!……

 
 

包丁を高く振り上げ、
少女は『それ』を肉片へと変えていく。

 
 

「切る、細切れに、切る、もっと、切る、もっと、もっと……」

 
 

そうだ……
不意に少女は気付いた。

 

「卵……」

 

親子丼の『親子』が成立するように、
卵を入れなければ……

 

そう思った少女は卵を取り出す。

 

『それ』の中から。

 
 

ブチブチブチッ……

 
 

並の人間には見えない摘出されたばかりの卵は、
彼女の掌の上で赤と白のコントラストの中にあった。
その光景を目の当たりにした彼女は思わず下唇を噛む。

 
 

……汚された……私の大切なものが……このメス豚に……

 
 

……許さない……許さない……もっと……もっと……モット……

 
 

感情のままに彼女は『それ』に刃を叩きつける。
野菜や肉を切るために作られたハズの包丁の刃先が、
骨さえ切断する彼女の『調理』によってボロボロになっていた。

 

しかし、それでも彼女は手を止めることはない。
かつて美しい直線を描いた刃先が、リアス式海岸のようになっても、
彼女は叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、
叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、
叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、
叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、
叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け、叩き付け……

 
 

「あとは鍋で煮込むだけ」

 

さぁ、これで『料理』の下準備は出来た。
あとは、それを食べる人間だけ。

 

「彼を迎えに行かないと……」

 

彼にはこの料理を食べて精をつけてもらいたい。
私の子供を元気に育てるためにも……

 

下等なメス豚の肉だけど、
彼と私の明るい未来のためにも、
味の悪さは許してもらおう。

 

でも元々は自分自身のものを食べれば、
彼だって元気になるだろう。

 

そしていずれ私と……

 

そうして少女は逸る気持ちを抑えて、
静かに夜の闇に繰り出した。

 
 
 
 

ハルヒの家に向う途中、
電柱の下で見覚えのある少女を見かけた。

 

「こんな時間に……何やってんだ?」

 

「あなたを迎えに来た」

 

「は?」

 

一体何を言い出すんだ。
というか俺は今急いでるんだが……

 

「あなたに大切な用がある」

 

「悪いが、俺も……」

 

「いいから……来て」

 

そんな目で見られると……
って、何だか血なまぐさいぞ。
もしかしてやばいことでもあったのか?
こいつなら俺が何をして何をしようかってのは分かってるだろうし、
その上で無理やり遮るほどのことなんだから、
よほどのことなんだろう。

 

「……すぐ終わるか?」

 

「……」

 

コクリと頷く長門。
仕方ない。
とっとと終わらせて、
ハルヒに謝罪しに行くか。

 

「わかった。どこにいけばいい?」

 

「私の部屋」

 

駅前のマンションか……
そんなに時間はかからないだろう。

 

よし、とりあえずちゃっちゃと終わらせるぞ。

 

そう思った俺は長門を荷台に乗せ、
自転車を飛ばすことにした……

 

その風切音に紛れて、
かすかに長門の声が聞こえてきた……ような気がした。

 
 
 
 

「……愛してる」

 
 
 
 

SS集/749『長門さんの晩餐』に続く

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:13 (3090d)