作品

概要

作者G.F
作品名キョンと一樹が「父親」になる日 後編
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-25 (日) 10:19:40

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

設定参照
SS集/427 SS集/428 SS集/430 SS集/439 SS集/445 SS集/447 SS集/449
SS集/450 SS集/451 SS集/455 SS集/468 SS集/479 SS集/485 SS集/487
SS集/492 SS集/499 SS集/502 SS集/507 SS集/510 SS集/512 SS集/517
SS集/521 SS集/532 SS集/534 SS集/535 SS集/539 SS集/543 SS集/547

 

SS集/547 の続きです。

 
 

私の妊娠がわかってから…ハルヒは私のために献身的に尽くしてくれた。
「…ハルヒ」
「いいの、有希…それもこれも高校時代の償いだからね」
ハルヒの目から涙が流れ始める。
「あの日、決めたのよ…あたし…二人の守護天使(ガーディアン)になろう…って」
私はそんなハルヒに申し訳ない気分だった。
いよいよ私と涼子は臨月を迎えることとなった。
私と涼子のお腹はすっかり大きくなっていた。
再び入院。
産休期間は半年。その間、保健室と涼子の代わりの数学の先生は別の先生が赴任してくることになった。
夫との楽しみだった「保健室でのコーヒータイム」ともしばしのお別れになる。
私物の「エスプレッソセット」は夫が運び出してくれたようだ。
私と涼子、二人とも身体の調子は「良好」とのことで、自然分娩で生むことになった。
医師が無理だと判断したらその時は帝王切開に切り替える、との条件付だった。

 
 

そして迎えた出産の日…私と夫の愛の結晶がこの世に姿を現す日。
…誕生日と容姿こそ違うものの「双子」のような存在である私と涼子は出産予定日まで同じ日だった。
「有希、涼子…頑張ってね」
ハルヒが応援してくれている。
夫と江美里さん、それからみくるさんも病院に駆けつけてくれた。
それからもちろん古泉君も…義妹も義父母も…それから古泉君の父母も。
「古泉…まさか俺たちが同じ日に…父親になるとはな」
「ええ…僕も思ってはみませんでしたよ」
そう…妊娠した日も同じなら出産の日も同じ。
生まれてくる新しい命の性別まで…同じ「女の子」だという。
私と夫、涼子と古泉君はもちろんそのことを知ってはいるけど…ハルヒたちには内緒。
ハルヒが知ると回りにぺらぺら喋ってしまいかねないから…というのもあるが…。
夫は父母には「あえて子供の性別は知らせないでいたほうがいい」と言ったし、古泉君も同じ考えらしい。

 
 

夫と古泉君はそれぞれの分娩室で出産に立ち会うつもりらしく、手術用の衛生衣を借りて着込み、マスクをした。
夫はともかく眼光が鋭い古泉君はまるで本物の外科医のようだ。
私と夫、涼子と古泉君はそれぞれ分娩室に向かう。
分娩室は…一人サイズのお風呂のような部屋だった。
私は服を脱ぎ、浴槽につかる。
医師曰く「もともと人間は水の中から生まれてきたものだから、水中出産が一番身体に負担がかからない」とのことで、この病院では「自然分娩」は「水中出産」となるとのことだった。

 
 

あたしと喜緑さん、みくるちゃん、それからキョンのお父さんとお母さん、妹ちゃん、古泉君のお父さんとお母さんは…分娩室の外でその時を今か今かと待ち続けていた。
キョンの妹ちゃんは一昨年の後期の生徒会の経験が物をいって推薦入学で合格したため、一足先に受験勉強から離れることが出来た模様。
そう…本当なら今は…大学の入試ラッシュのはず。
「有希…涼子…」
あたしは二人のために神様に祈りをささげる。
運命の歯車がもし狂っていたら…この二人のどちらかの子供をあたしが生むことになったかも知れない。
「そう…他人の子供であって…自分の子供みたいなものですね」
みくるちゃんも同じ思いだったようだ。
みくるちゃんも…もし運命の歯車が狂っていたらどちらかの子供を生むことになったかも知れないのだから。
「…やっほー、めがっさ遅くなっちゃったにょろ〜」
鶴屋さんが遅ればせながら駆けつけてきた。
「あ…もう生まれちゃった?」
生まれたらここにいるわけがないからわかりそうなものだけど…。
「まだ…みたいですよ」
みくるちゃんが分娩室の方を見て言った。
「涼子はまだいいけど…有希は身体が小さいだけに…相当、難産になるかもね」
喜緑さんが言った。
ふとあたしは…この日を待つことなく天寿を全うした一つの命のことに思いを馳せていた。
そう…あの「朝比奈ミクルの大冒険」を製作したときに巡り合い、その後はキョンの家の飼い猫として暮らしていた雄の三毛猫・シャミセン、通称シャミ。
猫としては「長生き」の部類に入るのだろうか。
特に有希はキョンの家に来る前からずっとシャミのことを可愛がっていただけに…死んだときはこらえ切れずに泣いていたっけ。
「シャミ…お願い…有希と涼子の力になってあげて」
回りから死ぬまで可愛がってもらって…シャミも本望だったと思う。
だからこそ…あたしはシャミに…シャミの魂に…心の中で声をかけた。
「…ああ…いいとも。俺の力でよかったら…貸してやる」
ふと…あたしの耳にシャミの声が聞こえた。
そして…そのすぐ後の事だった。
…第一分娩室、つまり有希のいる分娩室から…産声が聞こえた。
程なくして第二分娩室、つまり涼子のいる分娩室からも…。
「やった!」
手と手を取り合って喜び合う二つの家族。そしてあたしたち。
看護婦さんが出てきてみんなに報告した。
「おめでとうございます。元気な娘さんですよ」
あたしはシャミの魂に…再び…心の中で声を掛けた。
「ありがとうシャミ…力を…貸してくれたんだよね…二人に」
「うん…これで…俺も心置きなくあの世に行けるよ」
シャミの声が聞こえた。
シャミは…どうやら有希の赤ちゃんを見れなかったのが残念で仕方なかったみたい。
「シャミ…今度こそ…永遠にさようなら」
あたしは心の中で…シャミにお別れを言った。

 
 

出産から一ヶ月後…。
私と夫と涼子はベビーカーにそれぞれの娘を乗せて…大学進学のために新天地に旅立つ義妹を見送るべく駅に行った。
「一人暮らしは寂しいだろうけど…お前がそれを選んだんだからな」
「いつでも…電話を入れてね。中途半端ではあったけれど…あなたの高校生活最後の担任だった先生として…出来る限りのアドバイスはするつもりだから」
「…頑張って」
「うん…キョン君、有希お義姉ちゃん…古泉先生…私、頑張るからね」
義妹は…荷物を抱えて電車に乗った。
電車が走り出す。
私はたまらずに義妹の乗った電車を追っていく。
だが…さすがの私でも…電車の加速力には勝てなかった。
諦めて…舌を出してホームの端から夫と涼子のいる場所へと戻ってきた。

 
 

この駅の近くに公園があり、その近くにあるのが…そう…私と涼子が住んでいたあのマンション。
江美里さんは…今でもこのマンションに住んでいる。
「待ってましたよ」
古泉君が公園のベンチで待っていた。

 

ふと…急に空が暗くなったかと思うと…気が付くと回りからは私と夫、涼子と古泉君以外の人物が、それから遊具までもが消えていた。
「ここはどうやら…情報統合思念体が作り出した閉鎖空間のようですね」
古泉君の言葉に私と夫、涼子は頷く。
そう…今日は孫の顔を見せる約束をしていたのだから…。
「お父さん…これが私とキョン君の娘…名前は『遥』です」
私はベビーカーにいる娘を紹介した。
そう…私たちの娘の名前はハルヒが自分の名前から最初の2字を取って「ハルカ」と命名、夫がそれに「遥」と漢字を当てた。
「そして…これが私と一樹さんの娘…名前は『紫苑』です」
涼子もベビーカーにいる娘を紹介する。
古泉君は「シオン」という響きが好きで、それに漢字を当てはめた…とのこと。
「ありがとう…これからも頑張れよ、有希、涼子…それからキョン君、一樹君」
思念体の声が聞こえたかと思うと、空は元通りに戻っていった。
そして…回りの人たちもいつしか元に戻っていた。
どうやら…閉鎖空間は解除されたようだ。
私と夫と遥、涼子と古泉君と紫苑ちゃんはそれぞれの自宅に向かって帰途に着いた。

 

「お帰り、キョン、有希、それから遥ちゃん」
我が家では…ハルヒが夕食の支度をして待っていた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:12 (2625d)