作品

概要

作者七原
作品名closed sanctuary 第九話
カテゴリーその他
保管日2007-02-16 (金) 03:06:43

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 そんな風にごちゃごちゃと色々有った日は金曜日で、次の日は休日だったため、俺は一人街へと繰り出そうとし……、出がけに一階の所で朝倉に掴まった。買い物帰りなのか、朝倉はスーパーのレジ袋を持っていた。朝も早いうちからご苦労なことだ。何時も世話になっている俺が言うことじゃないかも知れないが。
「よう、朝倉」
「おはようキョンくん、どこに行くの? 図書館?」
 そういや図書館ももう随分行って無い気がするな。いや、今はそんなことは関係ないんだが。
「いや、電気街だ」
「電気街? 何しに?」
「パソコンを買いにだよ」
 文芸部室にはお隣のコンピ研から貰ったパソコンが有るが、デスクトップじゃ動かせないし、旧式だからデータのやり取りをするのにも手間がかかる。だから俺は、こうして小型のノートパソコンを買い求めるべく、電気街に向かおうとしていというわけだ。
「何のために?」
「文章を書くためだよ。……部活動の一環だな」
 思い立ったら何とやら、というやつだろうか。
「文芸部の? ……ああ、機関誌作りだっけ」
「そう」
「でも、旧式のパソコンを譲ってもらったんじゃなかったっけ?」
「家にも欲しくなったんだよ」
「そっか」
「んじゃ、俺は行くぞ」
「あ、待ってよ。あたしも行くわ」
 これ以上話すこともないだろうと思って脇をすり抜けようとしたら、朝倉はさっと道を塞いだ。
「は? 何でお前がついて来るんだよ」
「良いじゃない、どうせ一人なんでしょ? あたしもこれから暇だし、別に構わないでしょ? ……それにキョンくんって一人で買い物させると、ほいほい高いの買っちゃいそうじゃない」
「……」
 余計なお世話だと言いたいところだが、その通りなので反論できない。
 経済的には多少余裕が有る方だからなのか、俺は基本的に金銭的なことにはかなり無頓着だ。と言ってもブランド物に浪費するとかではなく、千円のシャツしか着ないくせに高い本を平気で買う、とかいった話なんだが。
「じゃ、準備して来るから少し待っていてね」
 朝倉は陽気な声でそう言うと、ちょうど一階に止まっていたままだったエレベーターに乗り込んだ。
 それから、待つこと約5分。
「じゃあ、一緒に行きましょ!」
 朝倉は元気な声で宣言すると、俺の手を取って歩き始めた。
 全く、どっちに主導権が有るか分かったものじゃないという感じの状態だな。
 まあ、されるがまま状態の俺も俺だけどさ。

 
 

 電車を乗り継いで電気街の辺りまで辿りついた俺達は、適当なノートパソコンを探すべく店を巡り始めた。俺も朝倉も大したパソコンの知識など無いし、下調べもろくにしていないという買い物をするには穴だらけも同然の状態だったが、朝倉は俺と違って初心者なりに必要なことをちゃんと喋ったり訊いたりすることが出来るスキルの持ち主であったため、主に店員との会話は朝倉に任せられることになった。
 俺はと言えば、たまに朝倉からされた質問に答える程度だ。
 欲しい機能とか、予算とか……、そうして彼方此方の店を巡り二時間ほど経った辺りで、俺は漸くパソコンの購入に漕ぎ着けた。持ち運びを考慮した軽めの、それでいてそこそこの機能が揃っているという、まあ、お値段的にもそれなりのものだった。
 ちなみに、電気街で彼方此方回ったくせに結局パソコンを買ったのはその電気街でも結構でかい店を出している大手量販店のチェーン店だった。
「そうだ、朝倉、何か欲しいもの有るか?」
「欲しいもの?」
「ああ、結構ポイントが有るんだ」
 パソコンなんて高いものを買った割りに、高い周辺機器のようなものを特に買おうとも思わなかったから、パソコンを買ったポイントのうちかなりのポイントがそのまま作ったばかりのポイントカードの中に入っている。
「んー、良いわよ、別に」
「遠慮するなって」
「遠慮とかそういう問題じゃないと思うんだけど?」
「……そうか?」
「そうよ。……というか、本当にいいの?」
「ああ、俺は全然構わないぞ。どうせ俺が持っていてもポイントのことなんて忘れそうだからな」
「……それもそうね」
 お前はそこで頷くのかよ。いや、言ったのは俺だけどさ。
「で、どうするんだ?」
「じゃあ、一つだけ買ってもらうことにするわ」
 朝倉はそう言って、本日一番、という感じの笑顔を見せた。
 良く笑うこの幼馴染は、笑顔のバリエーションも豊富な方なのだ。

 
 

「これこれ、こういうのが欲しかったのよね」
 朝倉に腕を引っ張られ連れてこられたのは、携帯式のMDプレイヤーが並ぶ一角だった。
 いや、これはMDプレイヤーじゃないな。デジタルオーディオプレイヤーっていうのか? とにかく、そういう代物だ。
「ん? これって、MDプレイヤーじゃないよな?」
「そうよ、パソコンを使って音楽を取り込むプレイヤーよ」
「お前パソコン持って無いじゃないか」
「あら、キョンくんのパソコンが有るじゃない」
「お前なあ……」
 ちゃっかりしている女で有る。
「駄目?」
「……良いよ。そのくらい。何時も世話になっているしな」
「ありがと、キョンくん」
 朝倉は本日何度目かなるか分からない笑顔を浮かべると、近くにいた店員を捕まえ、どれを買うかということを相談し始めた。
 ……待たせるのは悪いと思っていたのか、それとも予算の問題が有ったからだろうか、朝倉のプレイヤー選びは割りとあっさりと終わった。俺のパソコンで、などと言っていたが、結局朝倉が選んだのは、CDラジカセなどから直接音楽データを取り込めるものだった。

 
 

「お腹空いちゃったねえ、どこかでご飯食べる?」
 当たり前のことだが、俺達は買い物で結構な時間を潰している。腹が空くのも当然だろう、時刻も既に1時を回っているしな。
「ああ、そうだな」
「お代、よろしくね」
「分かってるって」
 普段食事を作ってもらっている手前、こうして外出するときは俺の奢りということに何時の間にかなっていた。もっとも、そんなに二人で出かけるわけでもないんだが。
 結構忙しい朝倉が、たまに出不精な俺を誘って外に出るって程度だ。月に一度有るか無いかって話だな。
 二人で適当なファーストフード店に入ったところで、朝倉がふと視線を一点で止めた。
 朝倉につられるようにして、俺もその視線の先を追う。
「あら、長門さん」
「……」
 長門有希が、順番待ちのところに立っていた。
 ……どういう偶然だよ。
「あれー、有希ちゃんのお友達ぃ」
 どうやら、長門は同伴者つきらしい。声からして、この間電話に出てきた長門の妹だろう。
「こんにちは、あたし達は長門さんの、ううん、有希ちゃんと同じ学校の生徒なの」
「そうなんだあ」
 長門の妹さんらしきその女の子は、長門とは随分対照的な、ぱっと見の印象からして話し好きそうな、割合人懐っこそうな女の子だった。
 それから朝倉と長門の妹の話が始まるのかと思ったが、ちょうど前の客がメニューを受け取ったところだったので、会話は中断され、俺達はそれぞれ二組に分かれてメニューを注文した。
 そして、何故か当たり前のように四人で席を囲んでいた。
 俺の隣に朝倉、向かい側に長門と妹って位置だ。
「有希ちゃんはどうして電気街に? あ、あたし達はキョンくんのノートパソコンを買いに来たの」
「……携帯電話の契約のため」
 長門は食べかけのハンバーガーを飲み込んでから、簡潔に答えた。
 どうやら、親に携帯の契約を頼むという件は上手く行ったらしい。それにしても……、何故こいつは、既に三つ目のハンバーガーを食べ始めているんだろうか。俺は二つ、朝倉は一つ、妹さんも一つ……、体格から考えれば俺を含めた他三人はいたって普通、ハンバーガーを六つも並べている長門一人が異常だ。
「へえ、携帯作ったんだ。後で番号教えてね」
「……了解した」
 あ、答える前に三つ目のハンバーガーを食べ終えている。細い癖してハイペースな食いっぷりだな。ひょっとして、痩せの大食いって奴か?
「そういや、親は一緒じゃないのか?」
 そうそう、普通に考えたら、未成年者の携帯の契約には親の許可が必要なはずだ。
 同伴じゃなく書類だけでも良かったのかもしれないが、俺にはそのあたりのことは良く分からない。
「母親と一緒に来た。でも、母には他の電化製品を見る予定が有ったので契約が終わった後で分かれた。わたしは妹と一緒にご飯を食べてから帰る予定」
 なるほど、今の長門は子守中ってわけか。
 電化製品云々ってのも、引越し直後ってことを考えたら別に何ら不思議じゃないよな。
「有希ちゃんねー、食べたらすぐ帰るって言うんだよー。つまんないよねぇ」
「……」
 妹さんが長門の服の袖を引っ張るが、長門は完全に無反応だ。って、答えずにハンバーガー食い続けるなよ……、あ、四つ目が終わった。
 しかし、なんだな……、子供の扱い方が全く分かってないって感じだな。
 いや、俺だってそんなものは良く分からないわけだが、長門の場合それ以前って感じだ。多分こいつは、自分に妹が居るっていう状況自体をきちんと自分のものとして捉えてないんだ。……不憫な話だよな。
「ねえ、だったらこれからあたしの家に来ない?」
 助け舟のつもりなんだろうか、朝倉がいきなりそんなことを言い出した。
「……あなたの家?」
「そ、あたしの家、マンションだけどね。遊ぶものも色々有るし、外よりは安全だと思うけど……、どうかしら?」
「……」
 長門は少し迷った末、妹さんの方を見た。どうやら、回答は妹に委ねることにしたらしい。
「あたしはそれでも良いよー。このお姉ちゃんやお兄ちゃんと一緒に遊べるんでしょう?」
 おいおい、何時の間にやら俺も人数に加えられているぞ。
 いやまあ、この状況下で逃げるのもちょっとどうかとは思うが……。
「じゃあ、決まりね」
 長門は何も言わなかったが、朝倉のその一言で、長門姉妹及び俺達の午後の予定は決定された。

 
 

 closed sanctuary 第十話に続く

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:09 (2713d)