作品

概要

作者七原
作品名closed sanctuary 第七話
カテゴリーその他
保管日2007-02-12 (月) 00:38:16

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 学食で飯を食い終わり午後の授業も終わり、何時ものように職員室で鍵を受け取り文芸部室に向かったら、

 

「……」

 

 部室の扉の前に、長門有希が居た。
「とりあえず入れよ。これからどうするかの話をするんだろう?」
 どうして俺が先を促してやらなきゃならない? という気もしないわけじゃないが、こいつを放っておくと一体どんな手段に出るか分かったものじゃないということを知ってしまった以上、こいつを放置しておくわけにもいかない。
 既に俺や森先輩といった被害者は出ているわけだが、こいつに被害を受ける人間は少ない方が良い。
「そう」
 俺に続いて長門が部室に入り、俺達は机をはさんで向かい合う形でパイプ椅子に腰を下ろした。
「……とりあえず、ああいう強引な方法はやめとけ」
「強引? ……一時限目の後の休み時間のこと?」
「そうだ。ああいうときはとりあえずクラスメイトと話をして、それから、次の休み時間にでも会いに行くもんだ。あと人に質問をするときは、ちゃんと相手に分かるように説明する努力をしろ」
「……」
「……あと、一つ確かめたいんだが、お前は俺に話したような世界がどうのとかなんて話を他の連中にする気は無いんだよな?」
「無い。……ただし、探している六人は別」
「朝倉には話さないのか?」
「彼女には、話さない方が良いような気がする。……彼女のためにも」
 長門はほんの少し考えてから、最後に付け加える形で答えてくれた。
 朝倉のためにも、ね。まあ、その意見には同感だ。
 しかしそれを言ったら探している残りの連中が俺と同じように普通の人間だったらどうするんだ? という気もするんだが。
「そっか……。いや、それならいいんだ。……だったら、そうだな。探している六人は、全員昔の友人か知人ってことにしておけ、事情があってバラバラになってそれっきりになってから探しているって言えば、きっと協力してくれる人も出てくるさ。……森先輩みたいにな」
「……分かった」
「けどお前、これ以上どうやって探すつもりなんだ?」
 人探し、何て言ってもなあ。
 興信所とか探偵なんてのは、高校生が頼めるようなもんじゃないだろうし……。
「手段は考えてある」
 俺の心配を他所に長門はあっさりと答えると、持っていたスポーツバッグからでかい冊子を取り出した。転校初日だから何か教科書やノート以外の荷物が入っていたのかと思っていたんだが、どうやらそういうわけじゃなかったらしい。いや、そういうものに加えてこれが入っていたってことか。
「電話帳か」
「そう」
「虱潰しに同じ苗字のところへ只管電話ってことか?」
「そう」
「……」
「……駄目?」
「いや、駄目ってわけじゃないが……」
 名前が分かっている人物を探すって意味でなら、確かにこれ以上有効な方法は無いだろう。
 けど、こんなもので手当たりしだいってのもな……。
「ん、そういやお前、この手段をまだ試してないんだよな?」
「そう」
「何でだ?」
 俺から見た長門有希の印象は、思い立ったら即実行って感じだ。……出会ってまだ丸一日経過したかどうかという辺りでは有るが。
「わたしは携帯を持っていない。自宅の電話では家族に怪しまれるし、そもそも昨日と一昨日の二日間は、引越しで忙しくて電話どころではなかった」
 なるほど、そういうことか。
 転校前日と転校初日の学校での行動は無茶苦茶なのに、こいつも家では意外と普通というか、そんなにおかしなことはしてないんだな。
 こいつなりの気遣いってことか? いや……、単に、どういう風に振舞ったら良いか分かってないからか?
「だからわたしはあなたの携帯を貸して欲しいと思っている。けれど、出来るなら二人がかりでやった方が早いかもしれないと考えてもいる」
 わがままだな、おい。
 というか俺が協力すること前提かよ……、まあ、良いけどさ。
「……お前が親に携帯を持たせて貰うように頼むってのは駄目なのか?」
「どういう風に頼めば良いか分からない」
「どういうって……」
 ああ、そうか、こいつの記憶の中では、こいつは宇宙人ってことになっているんだよな。そりゃあ、携帯を持たせてもらう理由をどうやって用意すればいいかなんてことが分からなくても、別におかしくないか。
「そうだな……、新しい学校で出来た友人に携帯番号を聞かれたからとか、みんなが持っているからとかで良いんじゃないか?」
 とはいえ、俺自身親に携帯が欲しいとねだった経験なんて無いわけなので、あんまりはっきりしたことが言えるわけでもないんだが。俺はどっちかっていうと、持たされたって感じだったしな。
「……」
「まあ、言ってみろよ。駄目だったらそのときは俺が何とかしてやるさ」
「分かった」
「じゃあ、やってみろ」
「分かった……。でも、その前に、今日から始めたい」
「……分かったよ。貸してやるよ」
 どうせ俺の携帯は殆ど持っているだけみたいな状態だし、俺以外の人間が請求書の詳細を見るわけでもないし、携帯の料金の使いすぎで文句を言ってくるような相手が居るわけでもないので、別に長門に貸したところで何の問題も無い。

 

 ……と思って貸したのが間違いだったのだろうか、そこからは結構すったもんだという感じだった。虱潰しに手がかりとなる苗字に電話をかけるのは良いのだが、長門はそのための作法というか、調べ方というものを全然分かってなかったのである。
 何だかんだと言い合いになった末、結局俺が「森さんのお宅ですか? 園生さんはいらっしゃいますか?」というテンプレを不自然無く長門が言えるよう教え込まなきゃならなかった。ちなみになぜ森さんが例えに上がっているかというと、かける相手が殆ど森という苗字の家だからである。
 長門が持ってきた市内の電話帳から気がかりな四つの苗字をピックアップしていったところ、涼宮、多丸は見事にどちらもゼロ、古泉が二件、朝比奈が両手に足りないくらい……、まあ、この辺りの苗字はそれなりにレアだから当然だろう。第一、朝比奈はともかく前三つは知っている本の作家や創作上の人物を含めてみても殆ど心当たりが無いわけだしな。
 しかし、森さんは……、まあ、森先輩のエピソードでお分かりかと思うが、他の四つに比べると極めて普遍的な苗字だ。市内の電話帳をざっと見ただけでも、数百件有ったからな……。長門が電話をかけている間に一応協力するつもりでお隣のコンピ研にお邪魔なんぞしているわけだが(只管電話をかけ続ける長門の傍に居辛かった、という理由も有るが)、苗字関係のサイトを調べたところ、電話帳で見当たらなかった二つの苗字は該当数不明レベルのレア苗字で、古泉は三千人弱、朝比奈が一万弱くらい、それに対して森という苗字は四十万以上……。この全てが電話帳に登録しているわけではないだろうし全ての人が一人暮らしというわけでもないだろうが、単純計算でこの一割だとしても、合計四万件以上に電話をかけるということになる……、マジかよ。
 いや、もちろんかけ終わる前に該当人物が見つかる可能性もあるわけだが……、それにしたって、気の遠くなるような話だよなあ。
「ん、待てよ……」
 俺はパソコンの画面に映る大手検索サイトの文字入力画面に、件の苗字や名前をそのまま入れてみることにした。長門が探している連中が一体どんな風に暮らして居るか知らないが(少なくとも誰一人としてうちの学校関係者で無いことは確かみたいだが)、場合によっては、ネット上に本名を公開しているって可能性も有る。まあ、誰かがネット上で使っている匿名が引っかかる可能性も有るわけだが。
 タブブラウザに画面を幾つか開き、まとめて入力して、適当に漁っていく。
「何だよこれ……」
 苗字であっさり引っかかるとは思わなかったが、涼宮で出てくるのはどっかのゲームの紹介ページ、長門は、えーっと、戦艦長門か。そういやそんなものも有ったんだったな。長門との初対面(と、俺が思っているとき)には咄嗟に思い出せなかったが。朝比奈とか多丸とかは地名とか歴史上の人物とか。古泉も前二人と似たり寄ったりだが何故か温泉地が出てきた。そういう名前の旅館か何かが有るらしい。ちなみに森については説明するだけ面倒なので省かせてもらう。
「……ちょっとまて」
 フルネームで、と思って検索している途中で、俺の手は一瞬固まった。
「まさか、な」
 そのページをそのままにしたまま、他のページを調べ始める。……他は、該当者無し、か。
「本当に居るのかよ……。いや、まあ、同姓同名の別人って可能性も有るけどさ」
 コンピ研の連中に気づかれないよう、俺は小声で呟いた。俺の前では、ブラウザが検索結果の画面を表示している。

 

『古泉一樹 の検索結果 約 4 件中 1 - 2 件目 (0.10 秒)』

 

 マジかよ。
 こんなにあっさり見つかっていいのか? いや、というかこいつは本当に長門の探している古泉一樹か? 同姓同名の別人って可能性だって有るし……、いやいや、考えるのは後だ後。まずは表示された文章と、ページを見ないとな。
 何々、ピアノ……、コンクールの結果か何かか、これは?
 古泉一樹は、ピアノを弾く人物なのか?
 いや、それは、画面を開かないとな……。俺は意を決し、マウスを動かしてリンク先をクリックした。

 

 not found

 

 何度か見たことが有る、ネット上からそのページが削除されたことを告げる無情な文字が、俺の目に飛び込んできた。
 何だよそれ……、こっちは結構緊張したんだぞ。
 おいおい……、いや、けど、こういうのって、消えた後も探す方法が有るんじゃなかったか? 第一ここはコンピ研だ、詳しい人間なら幾らでも、
「あら、何をしているんですか?」
 と、そんな風に思って俺が立ち上がりかけた瞬間、俺は突然振って沸いたように現れた声を耳にして、思わずその場で固まってしまった。
 俺の視線の先には、何度か話したことの有る、生徒会役員でありコンピ研部長氏の恋人でもある二年生が立っていた。
 喜緑江美里さんである。

 
 

 closed sanctuary 第八話に続く

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:07 (2711d)