作品

概要

作者G.F
作品名有希、回想、保健室にて…
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-11 (日) 19:21:02

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

設定参照
SS集/427 SS集/428 SS集/430 SS集/439 SS集/445 SS集/447 SS集/449 
SS集/450 SS集/451 SS集/455 SS集/468 SS集/479 SS集/485 SS集/487
SS集/492 SS集/499 SS集/502 SS集/507 SS集/510 SS集/512

 

※SS集/455を視点などを変えて書き直してみました。

 
 

学校内でほんのひと時とはいえ夫と「二人きり」になれる場所。
それが保健室。
夫はいわゆる「閻魔帳」を置いて、夫専用のコーヒーカップで私の入れたエスプレッソを美味しそうに飲んでいる。
私はそんな夫を眺めながら市立図書館で借りてきた本を読んでいる。

 

「なあ、有希…」
夫が私に声を掛けた。
「…何?」
「俺が…お前を初めて『有希』と呼んだあの日から、もうそろそろ1年と6ヶ月が過ぎるんだよな…」
「…そう」
私は、あの日のことを昨日のように今も鮮明に覚えている。
…というか、その日の私の異時間同位体からダウンロードすればいいので忘れるはずはないが…。

 
 

夫はあの日…去年の私の誕生日…私の誕生石であるガーネットの指輪を私にプレゼントしてくれた。
その指輪はそのまま「婚約指輪」となった。
そう、私が今、左手の薬指につけているガーネットの指輪。
そして夫の私に対するプロポーズの言葉はこうだった。
「長門、お前の身が機械であることは俺はよく知っている。だが俺はそれでも構わない。俺は…今現在俺の目の前にいる長門有希という1人の女が好きなんだ!」
そう…情報統合思念体によって「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」として生み出された私…。
そのため、人間でいう「脳髄」に該当する器官を除く全身の99パーセントが「機械」(別に某厚生労働大臣の「例え話」ではありません)であることが私のコンプレックスだった。
だから「一人の人間の女として見てくれている」夫の優しさに私は思わず泣き出したんだっけ。
そうしたら思念体、つまり私のお父さんが…。
「人間・有希として生きろ。そのためにはもうあの機能は必要ないはずだ」
そしてお父さんによって私の「閉鎖空間発生機能」は外され、使えなくなってしまっている。
私がこの機能のせいで暴走し、夫に迷惑を掛けてしまったことから…お父さんもずっと、引け目に思っていたに違いない。
まあ、考えてみれば「普通の人間」として生きるのなら必要ない機能だといえるんだよね、あの機能は。
でも…お父さん、あれは恥かしかったわよ。
私の衣服と毛髪と皮膚の構成を一時的に解除して、身体から「閉鎖空間発生機能」のプログラムが入ったチップを外して分解してくれたのはいいけれど…そのあと、夫の目の前で全裸の娘をさらして…つまり毛髪と皮膚のみ再構成して衣服を再構成せずに立ち去っちゃったんだから…もう…。
でも夫ったら…全裸の私を目の前にして理性を失わなかったばかりか、言うことが振るってるの。
「人間はみな裸で生まれてくるものだからな…だから有希、今日はお前の第二の誕生日でもある、ってわけだ」
そう…この言葉が…夫が初めて私を「有希」と呼んでくれた、その言葉だった…。
…夫と…ハルヒに無理矢理引っ張ってこられた文芸部室での「初めての出会い」から7年間…いや、みくるさんと一緒に途方にくれて尋ねてきたあのマンションのあの部屋での「初めての出会いから」10年間と言うべきか…私があの日が来るのをどれほど待ち望んでいたことか。
だから…素直に…一筋の涙とともにこの言葉が出た。
「私…ずっと…ずっと待ってた…あなたが私のことを『有希』と呼んでくれるこの日が来るのを…」
すると夫もこう答えてくれた。
「ああ…約束するよ…俺、もうお前のこと、二度と『長門』とは呼ばない。『有希』と呼ぶから…」

 

そして…夫はその日以来、ずっと…私のことを「有希」と呼んでいる。

 
 

「何だ、有希…お前、泣いてるのか」
いつの間にか私の目からは涙が出ていたらしい。
私はハンカチを出して目をぬぐう。
「俺も…実は古泉みたいな『割と普通のプロポーズの言葉』を…と考えてはいたんだよ」
そういえば…と、私は今年のお正月のことをその時の異時間同位体からダウンロードしてみる。
古泉君の涼子に対するプロポーズの言葉はこう。
「朝倉さん。いや、涼子さんと呼ばせていただきます。涼子さん、僕のこのポルシェの右側に乗る人になってください」
確かに古泉君のポルシェは運転席が左側にあるから「右側」といえば助手席に他ならない。
「でも…俺はあの当時、大型自動二輪免許そのものは持っていたけど…乗っていたのはホンダの250ccオフロード…ご存知のとおり、今、ハルヒのセカンドマシンになってるあれ…だった。だからまさか『バイクの後ろに乗る人になってくれ』とは言えないしな」
そういえば…夫が今のサイドカーを買ったのは大学を卒業してからだった。
理由は「これならお前と二人で乗れるから」だという。
でも一応、あのオフロードバイクも二人乗り(タンデム)できるはずだが…優しい夫はどうも私を危険にさらしたくなかったらしい。
そして…その日からオフロードバイクはメインマシンの座を追われることとなってしまった。
だが…夫は、「自分だけの要件があるとき」など、時々思い出したかのようにこのオフロードバイクにも乗っていた。
そのために丹念に手入れしてあったのが幸いして、私が夫の家に嫁ぐのとほぼ同時にハルヒも住み込み家政婦…メイド…として夫の家に来てからはハルヒに気に入られてしまい、半分譲渡するような形でハルヒのセカンドマシンともなってしまった。
「だから結局…お前を落とすのに一番適当だ…と思ったのがあの言葉だったんだ」
「…そう。確かに…あなたはその言葉と、もう一つの言葉で…私を見事なまでに落としてくれた」
「もう一つ…って?」
「…あの日交わした約束の言葉」
そう。「もう二度と『長門』とは呼ばない。『有希』と呼ぶから…」というあれ。
私は…夫のこの言葉で完全に落ちた。
何といっても…そのことによってようやく念願だった「二人だけの世界」を構築することが出来たのだから…。
ハルヒのことは早々から「ハルヒ」と呼んでいたのに…私は何故「有希」じゃなくて「長門」なの?…という思いがずっとあったから…。
あの時は…本当に嬉しかったな。
「じゃ…俺、そろそろ行くぞ、次の時間は授業だから」
そういわれて夫のチョーク入れに張ってあるものと同じ時間割票を確認してみる。
次の時間は…夫の思い出のあの教室。
そう…夫の担任クラスでもある1年5組での「現代国語」の授業。
「…頑張って」
そう言うと、私は「夫にだけわかる微笑み」を浮かべ、夫を送り出した。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:06 (2624d)