作品

概要

作者書き込めない人
作品名改変
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-11 (日) 10:46:13

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

SS集/508の続きです

 
 
 
 
 

いつものように拘束時間いっぱいまで、
授業を受けた私は、一人で本を読んでいた。
……いや、眺めていた。

 

文字は目に入るのに頭の中は彼の事で一杯。
早く顔が見たい……話がしたい……
彼としたい事は山ほどある。

 
 

でも遅いなぁ……
昨日二人でおでんを食べた後に、
『明日も来る』って言ってたのに……
もう放課後になって私がこの部屋に来てから3分25秒も経ってる。
……もしかしてペストやエボラ出血熱にかかって……
だ、だめ!
そんなことになったら私はどうすれば……

 

あ、でもそれなら私が女医として治療すればいいじゃない。
そうすれば彼の体を触りたい放題……

 
 

いけない、鼻血……

 
 
 

でも遅いなぁ……
昨日『明日も会いに行く』って言ってたのに……
もう放課後になって私がこの部屋に来てから3分42秒も経ってる。

 

もしかして私以外の女に会ってるんじゃ……
それも私より胸の大きな女と。

 

……ううん、そんなはずないわ。
彼が胸の大きさ如何で人を見るなんて……
そう、胸なんて飾り。彼にはそれがわかってるはず。

 

だから私はじっと待ってればいいの。
ほら、待つ女、って感じじゃない?
そうそう、きっと彼のことだから遅れたことを詫びて、
そのお詫びにキスのひとつも……

 
 

いけない、ティッシュもう1枚鼻に詰めなきゃ……

 
 
 

でも遅いなぁ……『明日も抱きしめに行く』って言ってたのに……
もう放課後になって私がこの部屋に来てから3分57秒も経ってる。

 

待つ女にも限度って物が……
いいえ、ここは我慢。
きっと彼はこの時間をロスタイムに回して、
私と夜遅くまで一緒に過ごそうって考えなのよ!
きっとそうよ!!
そして夜の闇に私と彼は……

 
 

いけない、ティッシュが真っ赤になってる。
新しいのに変えないと……

 
 
 

でも遅いなぁ……

 
 
 

遅いなぁ……

 
 
 

遅い……

 
 
 

……

 
 
 

遅い

 

遅い遅い遅い

 
 
 

遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い

 
 
 
 
 

遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い
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遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い

 
 
 

遅すぎる。
いっそ私が迎えに……
だめ、それじゃあすれ違うかも。
愛し合う二人がすれ違うなんてありえないけど。
でも……

 

思考の板ばさみに悩まされていた私の耳に、
待望の音が聞こえてきた。

 
 
 

こんこん

 
 
 

!彼だ!

 
 

「どうぞ」

 
 

いつもより大きな声で返事をする。
もう、こんなに待たせるなんて……
今日はその分ずっと一緒……

 
 

「こんにちは長門さん」

 
 

「朝倉、さん?」

 
 

なんで朝倉さんがここに?
彼は?彼はどこにいるの?

 

「あら、私だったら不満なのかしら?」

 

「そう、じゃないけど……」

 

「もしかして誰か待ってるのかしら……
そんなわけないか。彼は早退しちゃったしね」

 

「!?」

 

早退?
何で?どうして?
彼が健康を害した?
昨日はあんなに元気だったのに?

 

「ふふふ、心配しなくても病気じゃなくて、
単なるサボりよ」

 

「サボり?」

 

今日ここに来るというのに?
家に帰ってしまったらいちいちあの坂を登らなければならなくなるのに?

 

困惑する私に朝倉さんがにこやかに話を続ける。

 

「そういえばぁ〜彼、誰かに会いに行く、って言ってたわね」

 

「……誰に?」

 

「名前?名前はねぇ……」

 

焦らすように言う朝倉さん。
いいから早く言ってほしい。

 
 
 

「 涼 宮 ハ ル ヒ 」

 
 
 

「涼宮……ハルヒ?」

 

「そう」

 

『彼はもうすぐ鍵にたどり着く』

 

声が二重に聞こえる。
朝倉さんの声と……こっちも朝倉さんの声?

 

『彼がここに鍵を持って来ればこの世界は終わり』

 

「かぎ?」

 

『そう、彼に必要なあなたではない鍵……』

 

「わたし、じゃない……」

 

幻聴が現実か分からない言葉に、
意識が朦朧としてくる。

 

『もし彼が最重要な鍵……あちらの世界を選んだら、
あなたの彼は消えてしまう』

 

「消え……そんなのイヤ!」

 

「そうよね、消されるのはイヤよね?」

 

優しい顔で朝倉さんが私に歩み寄る。

 

「だから消される前に消しましょ」

 

「け……す?」

 

「うん、あなたならきっとできるわ」

 

どうやって?

 

「これを貸したげる」

 

その言葉と共に手に冷たい重みがのしかかる。
これを使うの?

 

「そうよ。それで彼の存在を脅かす邪魔者を排除すればいいの。
それだけであなたと彼はいつまでも一緒……簡単でしょ?」

 

「わかった……」

 

無意識のうちに私は返事をしていた。
そうだ、簡単なんだ。
そんな簡単なことで彼と一緒にいれるんだ。
うん、やろう。今すぐやろう。

 

「そうそう、その調子」

 

でも、どこにいけばいいの?

 

「坂のふもとに学校があるでしょ?」

 

うん、あるね。
私立の共学校。

 

「そこで待ってれば分かるわ。
あなたなら必ず」

 

知ってる人?

 

「ううん、あなたは知らない人。
でも『あなた』が忘れることが出来ない人」

 

なんだかよく分からないけど、
まぁ、いいか……

 

じゃあ、行ってくるね。

 

「いってらっしゃい」

 

笑顔で手を振る朝倉さんに手を振り、
布で来るんだそれを持った私は、
静かに彼が来るであろう部屋から出て行った……

 
 
 

「さて、どうなるかしら……楽しみだわ」

 
 
 
 

日がわずかに翳り、
寒空のもと、山から吹いてくる風を身に浴びながら、
私は歩いていった。

 

途中で何人かの学生の視線を感じた。
そういえば、カバンを置いてきたままだ。
まぁいい……彼と一緒に取りに行けばいい。

 

別に彼以外の視線なんて気にもならない。
すれ違う老婆、自転車、学生、配達のバイク、客を乗せたタクシー……
そんなものに気をつけている場合ではない。
早く彼と私の邪魔をする障害を取り除いて……

 
 
 

ようやく、ふもとの学校についた私は、
さっそく目的の人物を探し始めた……

 

ちがう、あれもちがう。
これでもない……どこ……どこにいる……
どこに……痛っ……
イライラして朝倉さんがくれたこれで指切っちゃった……

 

でも、どこに……

 
 
 

〜♪〜〜♪

 
 

突然携帯電話が鳴る。
誰、こんな時に。
見たこともない番号。
誰。

 

「もしもし」

 

校門を凝視し、ぶっきらぼうに答えた私の耳に、
ずっと待っていた声が聞こえてきた。

 
 

『長門か?』

 
 

彼の声……
どうして、私の電話番号を……
いや、それより今どこに?

 

『今、どこにいるんだ?』

 

「え?」

 

『いや、カバン置きっぱなしだからな……
まぁ、何でもいい。すまんが今すぐ部室に来てくれないか?』

 

部室?今すぐ?
それよりいつ入れ違ったの?
気にはなるけどもちろん断る気など全くない。

 
 

「行く……待ってて」

 
 

『あぁ、ありがとな……』

 
 

その言葉を聞いただけで、
私は嬉しくなった。
私は彼に必要とされている。
彼は私を必要としている。
それならば、私が取るべき道は一つ。
ただ、彼と共にいてあげればいい。
彼は私だけを必要としているんだ。
そうだ、それなら私と彼だけの世界を創ればいい。

 
 

邪魔者だけじゃない……

 
 

他の全てを消して……

 
 
 
 
 

一度下りた坂を急いで登った私は、
そのままの勢いで学校を目指した。

 
 

「あら、長門さん……早かったわね」

 
 

校門のところで、朝倉さんが待ち構えるように立っていた。
悪いけど、今はあなたなんかに構ってる場合じゃないの。

 

「部室に行くのね……」

 

「そう」

 

「じゃ、それは?」

 

「返す。ありがとう……」

 

「ふーん」

 

結局使わなかったそれを、
私は朝倉さんに放り投げた。

 

今は彼女を相手にしてる場合じゃない。
早く……速く……はやく……

 
 
 

「間に合わなかったのかぁ……
まぁ、こっちの方が面白いわね。
長門さん、部屋に行ったらどんな顔するんだろ……」

 
 
 

私はそのままの勢いで、
部室まで全力で走った。

 

いつもなら絶対に出来ない真似だけど、
今は息切れ一つしていない。

 

もう部室のドアは目の前……

 
 
 

ガチャ

 
 
 
 

「!長門!!」

 

あぁ、彼が私の顔を見てる……
大丈夫、私はここにいる……
あなたといつまでも一緒……
そう、いつまd……

 
 
 

「あなたが長門さん?」

 
 
 

彼と出会った幸せに感銘を受ける私に横槍が入った。
誰?そんな無粋な真似をするのは……

 
 

「ねぇ、これであんたの言う『SOS団』は揃ったの?」

 
 

何であなたが彼と話してるの?
誰に了解を得ているの?
何様のつもり?
ねぇ?

 
 

「あぁ……っと、いきなりで悪かったな長門。
今から事情を……」

 
 

 ピポ……

 
 

彼の私への言葉をパソコンまでもが遮る。
何だというの……
どうして邪魔ばかり……

 

あなたもそんな画面なんて……

 
 

……何これ?

 
 

世界の改変?

 

彼がキーを押せば?

 

この世界が消える?

 

彼と私だけの世界が?

 
 

……そんなのNOに決まっている。
彼だってそう思ってる。
彼の元の世界?
それがどうしたの?
彼と私の新世界には不要……

 
 

「ちょっと、あんた何やってんのよ?」

 
 

それはこっちのセリフ。
その薄汚い手を離して。

 

「長門?」

 

「あなたが押す必要はない。私が押す」

 

どのキーでもいいのだから、
私が押してあげる。

 

「いや、これは俺が押さなきゃいけないんだ。
それに、何を押すかも決まってる」

 

何を押すつもり?
長門のN?有希のY?

 

そう思う私に、
彼は最も聞きたくないワードを告げた。

 
 
 

「すまない。だからこれも返すよ……」

 
 
 

白紙のままの拒否の証と共に……

 
 
 

「そう」

 

自分でも驚くほど冷淡な声が出る。
でも、心の中はそうではない。
頭の中を疑問詞が巡る。

 

なぜ……どうして……

 

いや、別に私が悩む必要はない。
そうだ、彼が取るべき手段は一つのはずだ。
きっと彼は混乱してるのだろう。
愛しい私が部室にいなかったのがショックだったに違いない。

 

悪いことをした。
お詫びに……彼の代わりに実行してあげよう。

 
 
 

そう思った私は、キーボードに手を伸ばした。

 
 
 

私の行動の意図をつかんだ誰かが、
私の体を引っ張る。

 

でも……もう遅い……

 
 

後ろに引っ張られながら、
それでも私は出来る限り腕を、手を、指を伸ばした。
骨が外れたって千切れたっていい。
届いて……お願い……

 
 
 

 カチャ……

 
 
 

その願いが通じたのか、
私はキーボードの隅にあるキーを押した。
傷つき痛む指先にかすかな感触が残る。

 
 

よかった……これで彼とずっと一緒……

 
 

後ろに倒れて後頭部をしたたか打ったが、
そんなことを気にしてる場合ではない。

 

はやく彼と二人がこれで永遠に一緒になれる喜びを分かち合わないと。

 

痛む後頭部や、背中を放置して、
私は急いで起き上がった。

 

満面の笑みで。

 

今までの人生で一番の嬉しさを感じながら。

 

満面の笑みを浮かべているだろう彼の方に。

 

そしてそこには……

 
 
 
 

ただ空間があるだけだった。

 
 
 
 

「え……」

 

思わず言葉を失う。
彼は?彼はどこ?

 

私の問にパソコンから『答え』が返ってくる。

 
 

『彼は元の世界に戻った』

 
 

元の世界?
何を言ってるの?
ちゃんと私は押したわよ?

 
 

『あなたが押したのはキーボードの右下に配置されているキー……つまり』

 
 

誰かの『声』が映し出されているパソコンのキーボード。
その一番右端に残る私の血の指紋……
そこには……ナンバーキーの右下には……

 
 

一番避けたかったキーの名前があった……

 
 

『彼はこの世界の住人ではない』

 
 

どうしたんだろうこのパソコン。
壊れちゃったのかな?
それより私の彼はどこ?

 
 

『彼は「あなたの彼」ではない』

 
 

何言ってるの。
早く返してよ。

 
 

『彼はこちらの世界の住人』

 
 

こちらの世界?
何?あなたが盗ったの?
なら、早く返してよ。
この世でたった一人の大切な……

 
 

『あなたの世界は改変された』

 
 

「ふざけないで!」

 
 

『ふざけてなどいない』

 
 

「いいから、返して!私の彼を返して!」

 
 

『あなたのものではない』

 
 

「返して!返してよ!」

 
 

『……』

 
 

「返して……大事な人なの……お願い……」

 
 

私は『声』を出す無機物に向って叫び続けた。
願い続けた。声が枯れても視界が滲んでも言い続けた。
いくら言っても何も返ってこないと分かりながらも、
それでも私はやめなかった。

 
 
 

「返して……」

 
 
 

やがて
雪を形作れるほどの涙も出なくなり、
雪の降る音ほども声が出なくなり、
雪よりも儚く短かった恋と夢の消失に打ちひしがれていた私の耳に……

 
 
 

声が届いた……

 
 
 
 
 
 
 

「部長、ここって文芸部室ですよね」

 

「そう……だった気がするが」

 

「でも、さっきから女の子の怒号しか聞こえませんよ?」

 

「ううむ……よし、誰か中に入って……」

 

「イヤですよ」

 

「左に同じ」

 

「同じく」

 

「同左」

 

「部長が行ってくださいよ」

 

「む、無茶を言うな!!」

 

あれ?あれって……コンピ研の連中だよな?
何でウチの部室の前にたむろってんだ?
俺が休んでた間に入部したとか……ないな。
疑問に思った俺は、割と面識がない事もない部長氏に話を聞いた。

 

「どうかしましたか?」

 

「ん?あぁ、君か……いや、実はな」

 

そういうと何故か改まって部長氏は話を切り出した。

 

「おたくの部長さんが何やらその……ヒステリーを起こしてるみたいなんだ」

 

ヒステリー?
あいつが?
そういうのから一番縁遠いと思うが……

 

「でも、現にさっきから叫び声が聞こえるんだよ。
『返せ〜返せ〜』って恨めしそうに」

 

「お化けみたいに言わないで下さい」

 

「だが、本当に……」

 

「わかった。わかりました。
じゃあ、ちょっと中で聞いてきますんで、
皆さんは自分のお部屋にお戻りください」

 

そういって無理やり追い返す。
まぁ、連中の言うことは信じちゃいないが、
うちの『部長さん』の様子も気になる。

 
 

案外俺がいなくて寂しかった……とか?

 
 

うん、甘い期待は捨てよう。
とりあえず久しぶりに入る部室だし、
風邪をこじらせて3日間入院してたことも説明する必要があるし、
言いたいことも山ほどあるが、
とりあえずはこう言って入るべきだろうな……

 
 
 

「よぉ、長門……」

 
 
 
 
 
 

P.S.

 
 
 

泣きじゃくる少女に抱きつかれ、
慌てふためく少年の姿を映しながら、
少女とは同じようで違う無機物のようなものが、
こう言った。

 
 
 

『「あなたの彼」とお幸せに』

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:06 (1746d)