作品

概要

作者せだえんらc
作品名永久への鍵 第01話
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-10 (土) 14:00:52

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

OK、OK、おちつけ俺、冷静になるんだ俺、しっかりしろ俺

 

ピンチの時はまず落ち着いてよく考えて行動する、とか言うんだったよな?どこかで聞いたような言葉だな?まぁいいか

 

どのくらいの時間、俺の頭の中がどこぞのOSのようにブルースクリーン化していたのかはわからないが
ようやく再起動して気がつくとそのガキ・・・いや、お子様は俺から離れてまた長門にくっついていた

 

長門は自分のおへそくらいの背しかないその子を抱きしめて頭を撫でている

 

ううむ・・・よし、まずは状況を確認しよう

 

身に覚えは・・・・・・・・・ある、ありすぎる、ありすぎてごめんなさい

 

何かこれ以上の回想は年齢制限的に色々とやばい気がするのでやめておこう、その方が身の為だ

 

俺は長門に抱きついている子供に改めて注意深く目を向けた

 

確かによく似ている

 

髪の毛は俺の色に、顔や姿は長門に似ている

 

やはり男の子は母親に似るのだろうか?

 

ここまで似ていては親子と勘違いされても致し方あるまい

 

俺達に似ていないのは表情が豊かでよく笑う所くらいかな?

 

見た目は小学1年?少なくとも幼稚園の年長くらいだろう

 

しかし、と俺は再び自分に前置きする

 

俺達は子供が出来てもおかしくない関係ではあるが、結果が出るまでには到っていない

 

俺が初めて長門に会った七夕の夜に子供が出来ていたならぎりぎり可能かもしれないが

 

よもや俺と朝比奈さんが時間凍結されていた待機期間の間に俺の子供を産んで、いままで隠して育てていたわけでもないだろう

 

さまざまな疑念が頭の中を駆け巡る

 

どうやら俺の役立たずな灰色の頭脳を役立てねばならん時が来たようだよ、ワトソン君

 

さあ、考えろ俺、この人生のピンチを解き明かすのだ

 

パニックの残滓を微妙に思考のどこかに残したまま俺は黙考した

 

まず真っ先に思いついたのが喜緑さんの仕業である

 

また(強調)どっきりでも企んでいるのか?

 

よその家の留守を預かって、その家の子供をつれて長門の部屋に先回りしてネタ仕込み・・・?

 

近所付き合いも良く、マンション内の奥様方からも信頼厚く、よく自分から子守を「狩って出ている」そうだ

 

しかも鶴屋さんの極秘情報によるといくらかショタの疑惑があるそうだからありえんことじゃない

 

喜緑さんならやりかねんなぁ・・・いままでも俺達を散々振り回してくれたもんな

 

しかし、いくら喜緑さんでもここまでよく似た子供を見つけられるだろうか?

 

この子はあまりにも似すぎている、喜緑さんは悪戯好きだが、悪趣味なことはしない、もっとエレガントな悪巧みをするだろう

 

次に考えたのは長門が情報構成で創りだしたことだ

 

俺の遺伝子情報と長門の構成情報を掛け合わせれば、情報的な「受精」が行われ紛れもなく俺達の子供といえるだろう

 

不満そうな素振りは見せていなかったがまたエラーが蓄積してしまっていたのだろうか?

 

あのハルヒとの修羅場や、その後の情報統合思念体との話しのもつれは嫌ではないが滅茶苦茶なものだった

 

しかしそれを加味しても長門がそんなことをするとは考えがたい

 

長門はあの冬の改変の時も自分を自分の望む形に改変しても、俺のことは一切手を加えなかった

 

やろうと思えばいくらでも出来たはずだ、それでも長門はそれだけはしなかった

 

長門は俺の心に土足で踏み込むような真似は絶対にしない、それはハルヒも同様だ

 

それならなぜ・・・という思考を俺は唐突に断ち切った

 

長門は確かに言ったのだ、俺達の子供だと

 
 
 
 

長門は俺に嘘は吐かない、そして俺も長門を信じる

 
 
 
 

長門がその子を俺達の子供だと言うのなら間違いあるまい

 

ただでさえ俺の周りはありえないことが当たり前のようにありえた時期があったのだ

 

いまさらなにを驚けと言うんだ

 

その確信は子供の頭を慈しむように撫でている長門の瞳を見てさらにゆるぎないものになった

 

間違いない、今の長門の瞳は母親の瞳だ、だから間違いない

 

これで確認すべき点はこの子が俺達の子か?ではなく、いつの未来から来たか?にシフトした

 

長門は嘘を吐いていない、しかし目の前の現実が時間的に矛盾していることもまた事実である

 

だがその時間的矛盾も現代の科学の常識に未来の科学の常識を上書きすれば矛盾ではなくなる

 

なにしろ愛くるしくおっちょこちょいで胸が特盛りなスィートエンジェルには心当たりがいる

 

その証拠に玄関に長門以外の女物の靴があるぞ、やっぱりそうか、またなのか?

 

朝比奈さん?今度はなにをやらかしたんですか?怒らないから出ておいで?ん?

 

そう思いながら朝比奈さんを探して部屋の奥を覗き込むと、長門の背中越しに人影が現われた

 

ほら見ろ、予想通りだ

 

だが俺の耳に響いた声は俺の考えをあっさりと打ち砕いた

 

「お久しぶりね有希ちゃん、キョン君と仲良くやってる?」

 

その声は朝倉涼子だった・・・

 

「なぜおまえがここに居る?」

 

俺はほとんど無意識のうちに長門と子供を引き寄せてかばい、朝倉との間に立った

 

よく考えてみれば「この朝倉」が「あの時の朝倉」ならかえって長門に心配をかける自殺行為なのだが身体のほうは勝手に動いていた

 

「せっかく再会できたのにそんなに警戒しないで欲しいなぁ、今の急進派はあなたたちの味方よ?」

 

朝倉はさも心外そうに眉を顰めた

 

「なら用はないよな」

 

我ながら取り付く島の無い即答だと思ったが、2度殺されかけた不信感はたやすくはぬぐえない

 

「そうでもないの、むしろあなた達にとって用があることになるから」

 

そういって朝倉はにっこりと微笑んだ

 

 

その後やってきた喜緑さんに説得されてようやく俺は朝倉への警戒心を解いた

 

喜緑さんは安全を確認した上で、俺が慌てふためくのを見てからここに来たらしい、まったくこの人は・・・

 

朝倉が懐かしそうに長門と並んでキッチンに立っている

 

「ここのキッチンに立つのは久しぶりね、やっと帰ってこれた気がするわ」

 

なんとなく耳に痛い、あれが朝倉の独断専行による自業自得だったとはいえ少し気まずい気分だ

 

そんな俺の気持をどこ吹く風に朝倉は慣れた手つきでコーヒーを淹れている

 

芳しいコーヒーの香りが部屋中に充満した頃、リビングのコタツに一同が腰を落ち着けて話が始まった

 

長門はホットミルクのカップを両手に抱えた子供を膝の上に座らせ、俺達3人はめいめいコーヒーを手に向かい合った

 

俺は開口一番に朝倉に問いただした

 

「朝倉、その、なんだ・・・いつ生き返っ・・・いや、復活したんだ?」

 

「生き返るなんてゾンビみたいに言わないでよ、その子が未来で生まれてから少しして再構成されたの、今では急進派はその子を全面的に支持してるのよ」

 

朝倉が角砂糖を5つ落とし込みながら反論する、急進派は今度は全面支持か、変われば変わるもんだ・・・それからそんなに砂糖を入れると太るぞ?

 

余計な一言で朝倉にちょっと怖い目つきで睨まれながら、もう一つ確認しておきたいことを聞いた

 

「本当に朝比奈さんが連れて来たんじゃないんだな?」

 

どうにも腑に落ちないことがこれだ、どうやってこっちの時間にやってきたんだろう

 

「そうよ、あたしが連れてきたの」

 

朝倉の回答に今度は長門の方に向き直って聞いた

 

「時間移動は出来ないはずじゃなかったのか?」

 

「”私には出来ない”とは言った、しかしインターフェイス全てが同じ機能で設定されているわけではない、現在の朝倉涼子にはその能力が付加されている」

 

「キョンさんは朝比奈さん達に出来て情報統合思念体にできないことってどれくらいあるとお思いですか?」

 

喜緑さんがにこやかに微笑んで付け加えてくれた

 

確かにそうだな、人類に出来ることなら宇宙開闢以来の情報統合思念体にとって造作も無いことだろう
そういえばあの時の長門も自分には出来ないが難しくないといっていたしな、なるほど、確かに頷ける

 

「さてなにがどうなっているのか詳しく俺達に説明してもらいたいもんだな」

 

俺はコタツに座りなおすと本格的に話を聞くことにした

 

「私が持っている情報はもう有希ちゃんに伝えてあるわ」

 

朝倉がしれっとしたおすまし顔で言う

 

「いつどうやって?」

 

そんな時間も会話も無かったように思うのだが?

 

「ドアのノブに書き込んでおいたの」

 

前に長門が栞を指でなぞって情報を読み込んでいたようなものか、便利だなぁ

 

「わたくしもおおよそのことは自分の異時間同位体と同期して承知しています」

 

こっちも便利だな、しかしその便利さを俺を翻弄するのに使わないでくれないか

 

「なんだ、それじゃ俺だけ除け者かよ?」

 

「私の異時間同位体も事前に同期してきた、しかし私が同期できた情報は極めて限定された1部のみ」

 

「長門が長門に隠し事か?意味がわからんな?」

 

「私も不可解に思う、未来の私が提供してくれた情報は今日この時間平面にこの子が来ることだけ、他のことは先ほど知った」

 

「そういう訳でみんなでキョン君に事情を説明するわね」

 

朝倉は俺達の会話に強引に割り込むと仕切り始めた、やっぱりまだ委員長属性は抜けていないらしい

 

「まずこの子は正真正銘あなた達の子供よ、ただし未来の時間のだけどね、それで名前は・・・」

 

それを言われて俺はようやく未だに名前すら聞いていないことに気がついた

 

「おまえ名前は?」

 

話の腰を折られてぷくっと膨れる朝倉を尻目に俺は子供に尋ねた

 

「大和タケル」

 

長門の淹れたホットミルクをこくこくと飲みながら短く答える、どうやらミルクに夢中で俺の質問が邪魔だったらしいな、こいつ

 

「見え透いた偽名を親に言うな、親子なのに姓が違うわけ無いだろ」

 

少し声が怖くなる、子供が親に本名を隠してどうするつもりなんだこいつは

 

「あのね、言いにくいんだけどそれがその子の現在の本名なの」

 

困ったような表情で朝倉がカバーに回る、本当にこんな名前なのか?何か事情でもあるのだろうか

 

「その子は未来の穏健派に養子に出されてますの、大和姓はそのために創られた架空の姓ですわ」

 

喜緑さんの発言に俺は首を傾げた、なんだってまたそんなことを?

 

「全ては涼宮ハルヒの目を誤魔化すため」

 

隣に座った長門が短く答える、その声が冷たい

 

「涼宮ハルヒの能力はまだ消えていない、そしてあなたに対する未練も同じ、彼女はまだ諦めてはいない、それは現在も未来も同じ
あなたと私の間に子供が居ることが発覚すればどのような情報爆発を起こすか予測できない、最悪はこの子が消される可能性もある」

 

「現実にはそれと反対の方向に世界改変を起こしたの」

 

「反対の方向?」

 

「つまり”いる子供を消す”のではなく”いない子供を創る”ってことですわ」

 

よく聞くととんでもない恐ろしいことを喜緑さんが軽く説明する

 

「涼宮さんだって女性だから子供を消すなんてこと絶対にしないわ、でも無自覚に創られるのも困るのよね」

 

朝倉は呆れたように溜息をついて相槌を打った

 

ハルヒの行動に呆れるのは当たり前だ、いちいち溜息なんか吐いてるようじゃハルヒ対策要員としてまだまだ初心といわざる得んな
俺は溜息なんか吐かないぜ?年季が違うからな、年季が、本音を言うと溜息なんてもう残っちゃいないからだけどな・・・

 

「それで私がタケル君をこの時間平面に連れてきたの」

 

何の為に・・・と俺が問いかける前に朝倉は言の葉を紡いだ

 

「時間移動の途中でタケル君が行方不明になったときはびっくりしたけどね」

 

朝倉が危なっかしいことを楽しげに言う

 

おまえ迷子になってたのか?あんまり心配かけるんじゃないぞ

 

俺も溜息をついた、やれやれ・・・せっかく穏やかになったと思ったのに昔のペースに引き戻されちまうな

 

「それでもこんな安直な名前、とてもじゃないが命名する勇気がでないぞ?」

 

「そりゃそうよ、でも姓は主流派の叔父様が、名は穏健派の叔父様がつけることになったの、わかる?」

 

朝倉の説明に納得する、なるほどそれが原因か・・・しかし親を無視して命名権争いとはな、呆れたもんだ

 

「その上、叔父様達のネーミングセンスってアレだもんね」

 

朝倉がおもしろそうに苦笑する、なんとなく連中が相談してる様子が想像つくな、想像つくのもなんだが

 

でもな朝倉?長門と喜緑さんが睨んでるのに気がついてるか?また消されるかもしれんぞ、おまえ?

 

「最初はもっと酷かったんだよ」

 

ミルクを飲み終わったヤツがうんざりしたように一言漏らし、しかめっ面をした

 

「有希ちゃんの姓が長門だから姉妹艦の”陸奥”がいいだろうって」

 

喜緑さんも口元を押さえて上品に哂う、「笑う」じゃなくて「哂う」ってとこがミソな?わかるだろこのニュアンス?

 

「それでよりにもよって下の名前が”ごろu「わかりました」・・・・・・・・・・・・・・・」

 

それ以上言わせてはいけない、世界の抑止力が俺を突き動かし、俺は喜緑さんの言葉を遮った

 

「さすがにその名前は可哀想なので、私がこの手で穏健派をお仕置きして止めさせましたわ」

 

よく止めてくれました喜緑さん、感謝します、俺もあなたには絶対に逆らっちゃいけないと改めて肝に銘じましたよ

 

「それでも懲りずに戦艦つながりで”大和”って・・・単純ですわね、お父様達ったら、うふふ」

 

喜緑さんの今度の笑いは完全にキリングラフだ、穏健派よ安らかに眠れ、冥福だけは祈ってやるぞ、祈るのはタダだからな

 

しかしその直後に朝倉が矛先をこっちを向けてくるとは誰が想像出来ようか、いや出来ない

 

「でも最終的にタケルっていう名前はキョン君が付けたのよ?」

 

マジか未来の俺?なんてセンスしてんだ未来の俺?嘆かわしいぞ未来の俺?

 

「最初は穏健派の叔父様が名前を考えたのよ、でもその組み合わせのセンスがさいあk・・・」

 

そこまで言って朝倉は隣からの殺気にびくりと身体を震わせて笑顔のまま黙った、いや凍った

 

そこでとめるなよ先が気になるだろ?それと喜緑さんその殺気勘弁してください、マジ怖いです・・・

 

「それでキョンさんが慌ててさえぎってタケル君って名付けたのですよ」

 

喜緑さんが微笑みながら引き継ぐ、しかし目が笑ってない、怖えぇ

 

「な、なんて名付けられそうになったんだ?」

 

俺は蒼ざめて回答できなくなった朝倉からヤツに話を振って誤魔化した

 

朝倉は恐怖で凍結している、ありゃしばらく回答も解凍も出来ねえな・・・ん?洒落じゃねえぞ?

 

しかしヤツは空気を読まずしれっとした顔で本当に洒落にならない核爆弾を放った

 
 
 
 

「ファミリーネームが”ヤマト”だから、ファーストネームは”キr「それ以上言うな!」・・・」

 
 
 
 

俺はとっさにヤツの口を押さえて発言を強制終了させた

 

非難の目で見上げながらもごもごいっているが無視だ、無視、ホントにやりたい放題だなこいつは

 

最後の一文字を明瞭に発音させてたらとんでもないことになってたぞ、具体的には「ラ」だ

 

「とりあえず黒歴史の命名を回避するために、日本神話の伝統的な名前とか何とか言って誤魔化して、
その場の思いつきで名付けたみたいですわね、キョンさんとか、キョンさんとか、キョンさんとかが」

 

喜緑さんがにっこり笑顔で「その場の思いつき」に異様に強くアクセントをかけてトドメを刺してくれた

 

しかも最後に俺の名前を3回反復させるという駄目押し付とは念入りなことだ

 

嗚呼・・・隣に座っている長門の射るような顰蹙の視線が痛いよ・・・助けてストライクでフリーダムなガンダ(禁則事項)

 

 

「おまえはどうするんだ?」

 

話が一段落して俺はヤツ・・・タケルに当座のことを尋ねた

 

朝倉は再び長門と並んで台所に立っている、今日はカレーか、それともおでんか?カレー味のおでんは勘弁だぞ?

 

「光陽園学院の付属幼稚園に転園したことにするよ」

 

「おまえマジで幼稚園児だったのか?!」

 

我が子ながらよくもませた小憎たらしい子供に育ったもんだ、となかば感心なかば呆れていると喜緑さんが緑茶を出してくれた

 

「私も涼子ちゃんも光陽園学院の付属短大に入学したことになってますから面倒を見るのに好都合ですわ」

 

面倒を見る、ね・・・貰ったお茶を一口すすりながら思う、どちらかというと監視というイメージが湧くのはなぜだろう?と思った

 

「”あいつ”も同じ幼稚園だから好都合さ」

 

そこで俺は初めて「あいつ」という言葉を耳にしたんだ

 

これから始まる悲しみの半身とは知らぬまま・・・

 
 
 
 
 

その時、その一言に込められた哀しい響きに気がついたのは長門だけだったんだ

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:05 (2650d)