作品

概要

作者七原
作品名closed santcuary 第六話
カテゴリーその他
保管日2007-02-09 (金) 12:48:08

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 その夜俺は布団に入りつつ何時ものように本に手を伸ばしたが、ちっとも読み進めることが出来なかった。長門と、長門の話が気になるからだろうか。
 俺が長門や、長門と似たり寄ったりのおかしな設定持ちの変人達と、毎日を騒がしく過ごしていたかって話だったな。
 変な話だ。
 今の俺には一緒に騒ぐような友人なんて全然居ないし、毎日毎日本を読んでいるばかりだって言うのにさ。そういや、長門の知る俺はここに居る俺と同じ読書好き少年だったんだろうか?
 どうなんだろうな、長門はそういうことには触れてくれなかったが。
 ……まあ、機会があったら聞いてみることにするか。
 今の自分を否定されているって言うのは変な感じだが、長門有希が語る世界に、全く興味が無いわけでもないんだ。……信じているわけじゃあ無いけどさ。

 
 

 翌日俺は、来客を告げるチャイムで目を覚ますことになった。
 普段だったら目覚ましで起きるところなんだが、目覚ましをかけ忘れてしまったらしい。
「キョンくんって結構うっかりものよね」
「悪い」
 エレベーターの中で、俺は朝倉に頭を下げた。
 意外とずぼらな俺がこうして遅刻もせずに毎日登校できているのは、朝倉のおかげかもしれないな。
 そうそう、朝倉とは大抵毎日一緒に登校している。
 最初のころはクラスメイトに誤解されていたりもしたが、俺達が同じマンションに住んでいて、俺が割りと時間にルーズで、朝倉が割と誰に対しても世話焼きで、加えて俺達二人の間にカップルのような雰囲気が全く無いということがクラスメイトの連中に伝わるのに大して時間はかからなかった。
 今はもうきょうだいみたいな関係何じゃないだろうかって周りからは思われているみたいだ。ちなみに朝倉の方が姉で俺が弟という見方が大半なわけだが、俺もそれについては否定しないことにしている。
「……」
 俺と朝倉がマンションの玄関口を出たところで、長門有希が立っていた。
「あらおはよう、長門さん」
「おはよう」
「……おはよう、長門」
 朝倉は全然気にしてないみたいだが、さすがに俺にはびっくりだ。
 転校してきた以上学校で会うだろうとは思っていたが、まさか家の前で待っているとは思わなかったぞ。……というか思わないだろ普通。
 まあ、ここで会った以上、一緒に登校することになるんだろうが。
 ……そんなわけで俺達は三人で登校することになった。
 と言っても朝倉が長門に延々と語りかけるのを俺がただ聞いているって感じだな。
 ちなみに長門の方から話題らしい話題が持ち出されることは無く、時折朝倉の言葉に頷いたり首を振ったり、短い答えを返したりって程度だった。
 こんな奴に只管話しかける朝倉も朝倉だなって気もするが、朝倉はまあ、誰に対してもこんな感じだからな。今だって、俺に対するときと大差ないと言えば大差ないんだ。長門にとってはともかく朝倉にとっての長門は友人という位置づけになっているんだろうが、この二人に友情らしきものが一応成立しているようなのも、多分、朝倉の性格のおかげなんだろう。
「そういえば長門さんは何組なの?」
「6組」
「何だ、あたし達と一緒じゃないのね」
 俺達は5組だからな。
「……そう」
「何だかちょっと残念だわ。まあ、体育とかの合同授業は一緒だし、隣のクラスだから、何か困ったことがあったら遠慮なくあたしに言ってね」
「……」
 朝倉が片目を軽く瞑り、長門がぎこちなく首を動かした。
 朝倉の性格はよく知っているし、昨日の会話から長門の性格も少しくらいは分かっているつもりなんだが、何だか変な光景だよな。
 まあ、俺と朝倉の関係だって、周りから見たら少し変わっているってことになるのかも知れないわけだが。

 
 

 そんなわけで長門有希が俺の通う学校に転校してきたわけだが、長門はその一見大人しめの外見に反して、初日からアクティブだった。
 一時限目が終わった後の休み時間、転校生を囲むようにしてやってきたクラスメイト達に、長門はこう言ったのだそうだ。

 

「涼宮ハルヒ、古泉一樹、朝比奈みくる、森園生、多丸敬一、多丸裕という名前の人物を知っている? 親戚が居る可能性を考慮して、同じ苗字の別の人物でも良い。また、涼宮は涼しい宮、古泉は一般的な小さい泉ではなく古い泉、多丸も田んぼの多に丸ではなく多いに丸と書く」

 

 周りに質問攻めにされる前にまず転校生の側から質問、それも周囲が呆気にとられているのに同じ質問を繰り返すなんていう無茶苦茶な状況。
 長門が人探しに前向きらしいと言うのは知っていたつもりだが、ちょっと焦りすぎというか、無謀すぎだろう。
 でもってそんな状況の中、比較的冷静を保っていたクラスメイトの一人が、森という苗字の男子生徒が三年二組に居ると言った途端、長門は三年二組に突撃していった。
 ……ということを、俺と朝倉は長門のクラスメイトから聞かされたところだった。
 校内だし人が居る時間だし上級生の教室のある場所に向かうわけでもあるのだが、俺はそんなことを気にかける余裕もなく、全速力で三年二組に向かっていた。6組の中に俺達三人が朝方一緒に登校してきたのを見ていた奴がいたのが不幸中の幸いなんだろうか。
「ちょっと待ってよ、キョンくん」
 追いかけてくる朝倉も、俺に追いつこうとしているからか、かなり早足だ。
「待ってってば」
 悪い、朝倉。
 今の俺にはお前を気にするような余裕は無いんだ。

 
 

「親戚に園生という名前の人物は居る?」
「え、あ、」
「あなたの親戚、森という苗字の持ち主で、園生という名前の人物」
「いや、そんなひとは……」
「出来る範囲の親戚をたどって、同じ苗字であればそれでいい」
「いや、だから、そもそも、君は、」
「わたしは長門有希、森園生はわたしが探す人物の一人」
「……落ち着け長門」
 案の上強引な長門とそれに困惑する上級生という図式になっていたところに滑り込んだ俺は、長門を止めるべくその細い肩を掴んだ。
「すみません、先輩。……この子、今日転校してきたんですけど、ちょっとわけあって人探しをしているんです。それで、クラスメイトに、探している人と同じ苗字の人が校内に居るって聞いて、もしかしたら、って思って先輩のところまで来ちゃったんですよ。……すみません、こいつに悪気は無いんです」
 俺は事情を説明しつつ、長門の頭をぐっと押した。長門は状況をいまいち理解してないような様子だったが、俺の動作に逆らうことは無かった。
「あ、ああ……。そう、か、そういうことだったのか」
 その先輩こと森という苗字を持つらしい三年生はまだちょっと困惑気味にも見えたが、一応長門側の事情とやらを分かってくれているようだった。良かった、いい人で。
「ほら、長門、お前も謝れ。ごめんなさいって言うんだ」
「……ごめんなさい」
「すみません、先輩。いきなり押しかけることになっちゃって」
「あ、いや……、こっちこそ力になれなくてすまないね、残念ながら僕の親戚に園生なんて名前の人はいないよ。……そうだな、一応、調べておいてあげるよ」
 どうやら、この先輩は本当に良い人らしかった。
 こんなに無茶な押しかけ方をしたのに協力してくれるなんて、本当に良い人だ。
「え、良いんですか?」
「ああ、人探しなんだろう? 少し遠くの親戚の名前を調べるくらいならそんなに手間じゃないからね。じゃあ、君達の連絡先を教えてくれるかい……、あれ、もう予鈴か」
「うわ、もうこんな時間かよ……。すみません先輩、次の休み時間にまた来ます。ほら長門、帰るぞ」
「……」
 俺は長門の腕を引っつかみ、一年の教室へと退散した。
 三年二組の教室の入り口で俺と長門を見ていた朝倉も、時間が無いからかそのときは何も訊ねてこなかった。
 まあ、こんなところで時間を使って教師に怒られるのも嫌だからだろうな。

 
 

 二時限目の終わりの休み時間、俺と長門はもう一度三年二組の教室に向かい、森先輩と連絡先を交換し合った。後、どうやら先輩に話を聞いたところ、この学校には自分と同じ苗字の人は居ない、とのことだった。
 そうそう、その休み時間、三年の教室から一年の教室がある方へ帰るとき
「なあ、長門、お前さ、昨日言っていた六人以外に心当たりは無いのか?」
 と、訊ねてみたんだが、
「無い。フルネームで思い出せるのはその六名とあなたと朝倉涼子を含めた八名だけ。他の人物の名前や外見の記憶は曖昧になっている」
 長門の答えはそんな感じだった。
 でもって他の四つの比較的レアな苗字については、とりあえず俺にも長門のクラスの連中にもさっぱり心当たりは無いわけだったが、三時限目が終わった後に長門と共に職員室に向かい、森先輩に言ったのと同じような説明を(俺が)して在校生及び過去数年分の名簿を確認させてもらったりしてみたんだが、そんな苗字の持ち主は当然のように誰一人として居なかった。
 さて、それから四時限目も終わり、やっと昼休み、漸く落ち着けるかと思って学食に向かおうとしていたら、
「ねえキョンくん、長門さんと一体何をしているの?」
 朝倉に呼び止められた。
 朝倉だけじゃない、その後ろにはクラスメイトが何人か居る。
 そういやあ、アクティブなのは長門本人だが、俺はと言えば、そのアクティブさが裏目に出ないよう長門に付き合っていたんだったな。
 そりゃあ朝倉じゃなくても疑問に思うだろう。
「人探し」
「人探し?」
「そう。……涼宮ハルヒと、古泉一樹、朝比奈みくる、森園生、多丸敬一、多丸裕。この六人を探しているんだそうだ」
「ふうん……」
「一時間目の後は6組の奴に聞いたとおり。2時限目の後は森先輩と連絡先の交換、3時限目の後は職員室に行って在校生及び過去数年分の卒業生の名簿を見せてもらった。……そんな感じだよ」
「何だか大分お疲れみたいね」
「ああ」
「けど、長門さん、なんでそんなことをしているの?」
「色々と事情があるらしい。……出来れば本人には訊かないでやってくれ」
 長門が俺以外の奴に俺にしたのと同じ話をするとは思えないが、だからと言って安心できるというものじゃない。何を言い出すか分からないっていう心配が有るからな。
「……まあ、良いわ。ちょっと気になるけど、今は訊かないでおいてあげる」
 朝倉は疑問符を消しきれない感じでは有ったが、俺を解放してくれた。
 朝倉にこういう風に説明しておけば、少なくとも五組のクラスメイトからの防波堤くらいにはなってくれるだろう。悪いな朝倉……、けど、こんな話、人に出来る話じゃないからさ。

 
 

 closed sanctuary 第七話へ続く

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:05 (2735d)