作品

概要

作者書き込めない人
作品名訪問者
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-07 (水) 20:24:27

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

SS集/488の続きです

 
 
 
 

※前回までのあらすじ

 
 

とりあえず前略

 

いろいろあったけど、
私長門有希は彼を家に招待することに成功しました。

 

そして攻略……じゃない後略

 
 
 
 

私の部屋に住みたいと願う彼のために、
迷うことなく部屋まで案内してあげた。

 

駅前の分譲マンションの708号室。
この二人の愛の園(予定地)に彼を連れ込むことが出来るなんて……
きっと毎日藁で作った人形にお祈りしていたおかげ。
誰に通じたのかは分からないけど、
とにかくありがとうございます。

 
 

……って、そんなこと考えてる場合じゃない。
ちゃんとお持て成ししないと。
いつもよりちょっといいお茶を煎れて……

 
 

「この部屋、見せてもらっていいか?」

 
 

いつか来るであろうこの日のために買っておいた、
いつもとは違う茶葉を入れた急須を持って台所から出てきた私に、
彼が突然聞いてきた。

 

『この部屋』って……客間のこと?
何でそんな所が見たいのだろう。

 

でも動機が不明瞭とはいえ、彼の頼みだ。
断ることなど考えるまでもない。

 

「どうぞ」

 

「ちょっと失礼する……」

 

そう言って客間の襖を開け閉めする彼。
どうしたのだろう……そこには畳しかないのに……
その事実を確認して少し落胆する彼。
一体何を期待し……

 
 

……はっ!?
もしかして、客間に布団があると思ってたのかも……

 

そう……きっとそう。
せっかく二人だけの失楽園(予定地)に来たのに、
肝心の『準備』がなされていないなんて……
うかつ。

 

でも、『そういう行為』を行うにはまだ時間が早い。
それに心の準備とか用意とかできていないし……

 

うん、後でいろいろ買ってこよう。
彼と一緒に行くのもいいし、
とにかくまだ夜まで時間はある。
それまではゆっくり言葉を交わして二人の愛を深めるべき。
その後はゆ〜っくり体を交わし(省略されました。)

 
 

……でも、話って言っても、
男の子と話したことなんて無いから、
何を話題にすれば……

 

そうだ、二人の初めての出会いの思い出。
あの図書館での突然の出会い……
彼は覚えてないみたいだからもう一度1から説明してあげよう。

 
 

とにかく、あの時のことを彼と語り合いたい……

 
 

そう思った私は、
彼の向かいに座って、話を切り出した……

 
 

「わたしはあなたに会ったことがある」

 
 

彼が驚いた表情で私の顔を見る。
少し照れるけど、頑張って話を続ける。

 

「学校外で」

 

「どこだ」

 

真剣な面持ちで尋ねてくる彼。

 

「覚えてる?」

 

私の問いに聞き返す彼。

 

「何を」

 
 

……一番大切な『私』の思い出……

 
 

……「図書館のこと」……

 
 

……「今年の五月」……

 
 

……「あなたがカードを作ってくれた」……

 
 
 

彼の顔に喜色が浮かぶ。
どうやら思い出してくれたようだ。
嬉しくなった私はなおも話を続ける。

 

よかった……
学校からずっと何を話せばいいのか迷っていたけど、
これでようやく普通におしゃべりが出来る。

 

そう思った私は、どんどん話し続けた。
彼がもっと喜んでくれると思って……

 
 

……でも、それは儚い幻想だった……

 
 

私の話に次第に表情が曇る彼。
どうしたんだろう……
何か気に触ることでも言った?

 
 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 
 

二人の沈黙が場を支配する。
本当に彼はあの時のことを忘れてしまったのだろうか。
それとも今目の前にいる人は彼とは別人?
……ううん、それはない。
私が彼を見間違えるはずがない。
でもどうし……

 
 

 ぴん ぽーん

 
 

考え込んでいた私の耳に、
インターフォンのベルが鳴り響く。
思わずビクッとしながらも、
こんな時間に誰だろう、空気を読めと思い玄関を凝視する。

 

 ぴん ぽーん

 

またもやベルが鳴り響いた。
仕方がないのでパネルを操作して応答する。

 

「どちらさm……」

 
 

『長門さん、開けてくれない?』

 
 

朝倉さん?
一体どうして……

 

『長門さん?聞いてる?開けて』

 

「え、でも今は……」

 

『どうしたの?開けられない理由でもあるの?』

 

何かおかしい。
いつもの朝倉さんなら、
何かを感じ取って遠慮するはずなのに……

 

「人が、来てる、から……」

 

『人?それで?いいから開けてくれない?』

 

「いや、だからっ……そもそも朝倉さんは何の用で……」

 

『何の用……えーと、そう、おでん。おでんを作ってきたのよ。
作りすぎちゃったからお裾分け』

 

おでん?
確か朝倉さんは一昨日まで学校を休むほどの風邪を引いていたはずなのに……
病み上がりにそんな重たい物を作るなんて考えにくい。

 

「おでん、って……朝倉さんまだ病み上がりだったよね?」

 

『病み上がり?あっ、そういうことになってたわね。
でもそれがどうしたの?』

 

……『そういうこと』?
自分の体のことなのに?

 

『いいから、早くドアを開けて欲しいな。
重たいお鍋両手で持ってるから疲れちゃって……』

 

両手で?
じゃあ、ここまでどうやって来たの?
手を使うたびにわざわざ置いたり持ち上げたりしたの?

 

『長門さんが開けてくれないから、
また風邪引いちゃうかも……コホッコホッ……』

 

「わ、わかった!今開けるから」

 

せっかくの厚意を無碍にする訳には行かないし、
私のせいで風邪をこじらせるわけにも行かない。
そう思った私は疑問を振り払い、
玄関に向った。

 

鍵を開けてチェーンを……

 
 

 ガチャッ……

 
 

「こんばんは、長門さん……」

 

「こんばんは……」

 

ドアを開けた途端いい匂いがする。
やはりこの寒い時期にはおでんが似合う。

 

「ふふ、一杯作りすぎちゃって……」

 

嬉しそうに笑う朝倉さん。
でもその顔が一瞬で凍る。

 
 

「ところで……この靴は誰のものかしら?」

 
 
 

「!?あ、朝倉!?」

 

「あら、どうしてあなたがここにいるの?」

 

朝倉さんが彼に尋ねる。
彼がここにいることがおかしいのかな?

 

「長門さんも……朝の話を聞いてなかったのかしら?
この人、私のことを殺人鬼呼ばわりしたのよ?」

 

「それは……きっと混乱してただけ」

 

「混乱?どうして?」

 

「そ、それは……」

 

朝倉さんの刺すような視線が痛い。
そういえば、彼に人殺し扱いされて怒ってたっけ……
どうしたら、うまく収められるかな……

 

そうやって悩んでいると、背後から声がした。

 
 

「すまん、朝倉。どうやらあの時俺は寝ぼけてたようなんだ。
不快な気分にさせて悪かったな」

 
 

「ふーん、そう……」

 

すまなさそうに言う彼に対し、
朝倉さんはまだ何か言いたそうだったけど、
諦めたようにこう言った。

 
 

「わかったわ……許してあげる。
それよりあなたも食べない?」

 
 
 

この提案に彼は渋々といった感じで応じていたけど、
結局その日は3人で食卓を囲むこととなった。

 

真ん中におでんの煮えたぎった鍋。
その横にキャベツの千切りサラダ。
別にテレビで言ってたキャベツの催眠効果を利用して、
眠った彼にいろいろしようなどとは思ってもいない。
思ってない思ってないやりたい思ってない……

 

食事中も朝倉さんは彼に何故ここにいるのか尋問していたが、
彼がここにいるのは自然の摂理であり宇宙の真理であり、
何の問題もないというのは明白なので問題ないと思う。

 
 

でも、こうやって彼と食べるご飯はおいしいなぁ……

 

ホントに幸せだなぁ……

 

ずっと続けばいいのになぁ……

 

これからもこんな風に一緒にいたいなぁ……

 
 
 

『明日で終わりよ?』

 
 
 

「え?」

 

「?どうかした、長門さん?」

 

「今なんて……」

 

怪訝な顔で私を見る二人。
今、確かに声が……

 

「別に何も言ってないけど……」

 

「俺も何も……」

 

「そう?じゃ、私の空耳かな……」

 

うん、きっとそうだ。
それにこんな風景はこれからもずっと見れるんだ。
明日で終わりだなんて……
世界が改変しない限りありえない。

 
 

この世界は何を犠牲にしてでも守らないと……

 
 

目の前でさっきより軟らかくなった彼の表情を見て、
私はそう心に誓った……

 

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:05 (2625d)