作品

概要

作者せだえんらc
作品名ユキ、目覚まし、京都にて
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-04 (日) 14:00:39

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 

「遅い!罰金!」

 

今週もまた駅前にハルヒの怒号が響き渡たり、俺の財布が軽くなる事が決定した

 

「やれやれ・・・」

 

俺は盛大な溜息を吐いた

 

 

「長門、なにかいい方法は無いか?」

 

俺はその日の団活の帰りに隣を歩く長門に相談を持ちかけた

 

今週で3週連続遅刻罰金である

 

このままでは俺は自己破産を宣言し、禁治産者へと転落しなければならないであろう・・・って、こりゃ大袈裟な表現だなw
しかし俺の財布が妹の財布よりも軽くなりかねないくらいピンチなのは事実なのである
そうなってしまっては妹にお菓子のひとつも奢ってやれなくなる
それだけは回避しなければならん!兄として!

 

「目覚まし時計の購入を推奨する」

 

長門が水晶の様に透き通った視線を揺るがすことなく即答する

 

「いや、既にそれは使用しているのだが・・・」

 

それくらいでどうにかなるのなら今までもなんとかなっている

 

「家族に起床を頼む」

 

次なる長門の代案に俺は免除を求めた

 

「妹の目覚ましフライングボディプレスは勘弁してくれ・・・今はいいがあいつが大きくなったらそのうち内臓が破裂するかもしれん」

 

なら、と一言前置きして長門は俺に向き直り宣言した

 

「私があなたを起こしに行く」

 

その時の長門の目はおもしろい獲物を見つけた牝ライオン(涼宮ハルヒ)以上に輝いていた

 

 

そして翌週、土曜日の朝

 

胸が重い

 

妹の襲撃だろうか?それにしてはいつもの「キョン君起きて!」の大声が聞こえないのはおかしいな?

 

そう思いうっすらと目を開けて見ると俺に跨りマウントポジションを取っている長門が居た

 

まず脳を覚醒させて自分に状況を把握させなければなるまいな

 

Q1:ここはどこだ?

 

A1:見慣れた天井を見れば一目で判る、紛れも無く俺の部屋だ、よし無問題

 

Q2:今は何時だ?

 

A2:愛用の目覚まし時計は7時を指している、起床にはちょうどいい時間だ、これも無問題

 

Q3:俺の上に乗っかっているのは誰だ?

 

A3:俺の最愛の恋人、長門有希だ、何があっても長門だけは見間違えることはない、無問題

 

よしここまでは完璧に無問題だ、全問正解だ、センター入試もなんのそのだ、ちなみに長門が俺に跨っているのはよくあることなのでスルーする、ただしいつもは長門の部屋のベッドの上でだが

 

さて、ここから先が本題なのである

 

FQ:その長門が構えているごついものは何だ?

 

どう見ても華奢なスタイルの長門には似つかわしくない白い筒状の物、どこか見たことがあるような気がするんだが思い出せない

 

FA:・・・・・・・・・バズーカ砲?

 

「正解」

 

長門が俺の呟きに解答を回答してくれた、ついでに一言コメントも付け加えてくれたぞ

 

「早朝バズーカ」

 

ああ、そういうことかですか長門さん、朝から過激な目覚ましをありがとうございます、でも一つ気になることがあるんで聞いてもよろしいでしょうか?

 

「何?」

 

長門が不機嫌そうに聞き返す、俺が目覚める前に撃ち損ねたのが不満らしいが、これだけは確認しておきたいのだ

 

「どんな決めセリフを言うつもりだったんだ?」

 

長門はこくりとうなずくと、再びその凶悪な兵器を俺に向けて構え、引き金に指を掛けた

 

「ソr「ソロモンよ、私は帰って来た!なんてベタネタは無しだぞ?」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

速攻でネタを阻止された長門が俺をじっと睨み沈黙する、すまん長門、しかし早朝バズーカに核を使うな、永久に目が覚めなくなる

 

長門はバズーカを床に放り出すと、俺を押さえつけて頭突きをかまし、そして俺の耳元でどこかで聞いたようなセリフを棒読みした

 

「確かキョンとかいった?二度と忘れない」

 

もしかして「ナ・ガトー・ユキ少佐」ということでありますか?

 

 

どこかの世界のアトミックなバズーカをスカートの4次元っぽいポケットにしまうと長門は俺と一緒に一階に降りた

 

あまりにも当たり前に、妹が「お義姉ちゃん、おはよう!」と長門に挨拶し、

 

あまりにも当たり前に、おふくろに向かって「おはようございます、お義母様」と長門が挨拶し、

 

あまりにも当たり前に、親父が家族全部から無視された

 

その後、長門が作った味噌汁の味がおふくろの味噌汁と寸分たがわぬ味なのに気がついたところで、
やっと俺は外堀と内堀が完全に埋め立てられているどころか城そのものが陥落していることを悟った

 
 
 

まぁいいか

 
 
 

朝食後、おふくろが結婚式場のパンフレットの束を持ってくるのを尻目に俺は長門の手を引いて家を飛び出した

 

「長門、もうひとつ確認しておきたいことがある、今日のおふくろと妹の対応はおまえの情報操作か?」

 

「あなたとあなたの家族には絶対にそんな操作はしない・・・ただし(ボソボソッ」

 

そうだな、考えるまでも無かったな、長門が俺や家族の心に土足で踏み込むはずは無い

 

ただし、の後で「私の排卵日はいつもあなたとする日に合わせてある」とかOFFの声で聞こえたような気がするのは気のせいだ、うん、きっとそうだ

 

俺は心の中で自分の青春をどこの墓場に埋葬しようかと考えながら自転車二人乗りで駅前に向かった

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・合格」

 

ハルヒが長い沈黙と共に不機嫌そうにいう

 

俺が遅刻してこなかったのがそんなに気に入らないらしい、おまえは俺がどうすれば満足なんだ、んん?

 

とりあえず今日の奢りは古泉と決まったのでよしとしよう

 

久しぶりに驕り地獄から開放されたぜ、いつものお返しでたっぷり注文してやるか

 

しかし別世界の俺(イニシャル:Y.A)はこれ以上の奢り地獄を毎日味わって耐えているのか?

 

さすがは奇跡を起こす男だぜ・・・

 

俺が意味不明に「異作品同声優」の俺と同期していると本日の犠牲者である古泉の声が聞こえた

 

「おやおや、おてわやらかにお願いしますよ?」

 

古泉が少しも困ったような顔をせずに困ったような声を出す

 

どうせ機関の経費で落ちるんだろ?けちけちすんな、それと顔が近いぞ、息を吹きかけるな!

 

「やれやれ・・・」

 

図星を突かれたらしく古泉は諸手を挙げて降参した、あと俺のセリフを取るな!

 

「ほら!早く引きなさいよ!」

 

俺が何を注文しようと迷っていると鼻先に爪楊枝が突きつけられた

 

ちょっと待てハルヒ、まだ誰も注文して無いぞ?まさかお冷だけ飲んで店を出る気か?

 

「今日は時間が大切なの!すぐに電車で出かけるからね!」

 

どうやらハルヒは本当にお冷だけ飲んで出発するつもりらしい、常識って言葉知ってるかお前?

 

「行き先は?」

 

全く動じずに長門がハルヒに聞く、クールすぎるぜ長門・・・

 

「京都の宇治市よ!」

 

ハルヒが胸を張って言う

 

俺は心中穏やかではなかった、ハルヒよ、まさかおまえ・・・

 

「最近ね、すごくいいアニメを見たの、ええと・・・”神音”とかいうアニメ!だからそのスタジオに突撃するわ!」

 

嗚呼・・・・・・・・・神をも恐れぬとはまさにこのことだな、いや古泉に言わせるとハルヒは神みたいなもんか・・・

 

だが今回ばかりは無茶が過ぎるだろう、いくら神でも創造主に突撃をかけるとは

 

古泉も朝比奈さんも真っ青になって凍結している、あの長門が畏怖で震えているとは・・・今度こそ世界は終わったかも知れんな・・・

 

 

その後、どのように移動したかは省こう

 

とにかく俺達SOS団は何か自分達の生まれ故郷のように感じる京都府宇治市のどこかにやってきた、もうちょっと細かく言うと木幡だ、それ以上は聞くな、聞くなったら聞くな!

 

グループ分けはハルヒ、古泉、朝比奈さんの3人組と、俺と長門の2人カップルになった

 

しかしまさかこんな珍しいものを見られるとはなぁ・・・
あのハルヒが恐れたり緊張したりする所なんて想像できるか?俺にはとても出来ないぜ
今まさにその驚天動地の事態が目の前で起こってるんだ
・・・あのハルヒの脚が震えているなんて

 

「う、うるさいわね馬鹿キョン!こ、これは武者震いよ!」

 

そういってハルヒは必死に携帯で救助をコールする古泉と、左耳に手を当ててどこかの時間に助けを求める朝比奈さんを両手で引き摺って目の前のビルにずんずんと突撃していった

 

誰か助けてくれ!俺の魂も悲鳴を挙げていた

 

いまにもそのビルの玄関を蹴破らんばかりに「頼もう!」と絶叫しかけた時、ハルヒの動きが凍った

 

「あらあら、どちら様かしら」

 

女神としか例えようが無いほど綺麗なお姉さんが玄関先に現われた

 

艶のある美しい紫色の長い髪を三編みにして右肩から胸元に垂らしている

 

ぎこちなくハルヒが見学を申し込むとお姉さんはちょっと困ったように左手を頬にあてて小首を傾げて微笑んだ

 

「ごめんなさいね、今はシナリオがクライマックスに差し掛かっていてお客様はお断りしているのよ」

 

「ソコをナんとかシテよ!」

 

気丈にもハルヒは声を張り上げるがその声は引き攣っている、ハルヒ無茶スんナ、ヲい

 

以外にもお姉さんはハルヒの無理難題を、了承、と一秒で快諾してくれるとハルヒ達をビルに招きいれた

 

しかしその背後の壁でめっちゃ空間が歪んでいるのは何故だろうナ?さっきまで時計が無かったような気もするナ?

 

「せっかくいらしたんだからおもてなししなくちゃね!とっておきのジャm」

 

その後、ハルヒ達がどうなったかは俺は知らん、俺はその瞬間にフリーズしたままの長門をお姫様だっこして全力疾走で逃走したからな

 

最後に聞こえたのはハルヒ達の悲鳴だ、いや断末魔の絶叫だってあれよりマシだろう

 

ハルヒよ、見捨てたことを悪く思うな自業自得だ
朝比奈さん、ごめんなさい俺も命が惜しいのです
古泉、おまえはどうでもいい

 

 

どこをどう走ったのか判らないが、どこかの商店街について俺は抱き上げていた長門を下ろした

 

「情報統合思念体は可及的速やかにこの場から撤退することを推奨している」

 

長門がまだ震える声で言う

 

そうだろうな、おまえの親玉でも手も足も出ないだろうしなぁ・・・

 

しかし長門よ、おまえは一つ見落としをしているぞ?あのアークデーモンから逃げ切れるとでも思っているのか?

 

俺がそう異論を挟むと長門はガクガクブルブルと震えだした

 

多分、長門が誕生以来はじめて味わう絶対的な絶望と恐怖の感情だろうな、トラウマにならなきゃいいんだが・・・

 

震える長門を見て俺は何とかしなければと思った

 

こういうときは甘い物を食べるといいのだ

 

人間が甘いものを食べると安心感を感じるのは母親の胎内で育まれて居た時の羊水の甘さが原風景に残っているからだそうだ

 

所詮は一時の現実逃避に過ぎないが、しかし一時の効果はある

 

ちょうど都合よくタイヤキの屋台が出ていたので俺は長門の手を引いてそこに向かった

 

その時、ふいに耳元でマラカスの音がしたような気がして俺は咄嗟に飛びのいた

 

「・・・どうしたの?」

 

長門が不思議そうに首を傾げ、周りを見渡す

 

「い、いや・・・なんか体当たりを喰らいそうな気がしてな」

 

自分の不可解な行動に疑問を感じながら俺はタイヤキ屋の前に立った

 

しかしさっきの俺の反射神経はすごかったな、長門すらついて来れなかったとは、まるでどこかのニュータイプみたいな反応だったぞ

 

苦笑しつつ、こしあんとつぶあんと、どちらを注文しようかと迷っていると一枚の張り紙が目に付いた

 

【食い逃げ追跡中、しばらくお待ちください】

 

どうりで店主が居ないはずだ

 

仕方なく商店街に戻りなにか他に美味そうなものが無いかと歩き回った

 

アイスにするか?それともイチゴサンデーにするか?いっそのこと腹に溜まるように肉まんか牛丼でも喰おうか?と迷っていると突然声を掛けられた

 
 
 

「こんなところにいたのね、探したわ」

 
 
 

みんなは絶対的な死を覚悟したことがあるだろうか?俺はある、いまがまさにその時だ、朝倉のナイフですら目じゃないくらいだぜ!

 

「あらあら?そんなに怖がらないで、プレゼントを持ってきただけなのよ」

 

ギギギ・・・と錆び付いた擬音をさせながら俺と長門は振り返った

 

背後にはいつの間にかあのお姉さんが・・・

 

「うふふ、あなたたちは本当にお似合いの可愛らしいカップルね」

 

がちがちに固まっている俺達のことをそのお姉さんはそんな風に表現した

 

そのおかげだろうか?すこし緊張がほぐれたような気がする

 

「わ、私どもにどのようなご用件でございましょうか?」

 

話す言葉が知らず知らずに敬語になっていた、その俺の隣で長門が壊れたブリキの人形のように首をカクカクと縦に振る

 

「祐一さ・・・いえ、”あなた”は朝起きられなくて困っていたわよね?」

 

確かにその話はしていた、しかしそのことは長門にしか相談していないのだが、なぜこのお姉さんが知っているのだろう?

 

「企業秘密です」

 

可愛らしくお姉さんが笑う、嗚呼、かわいいなぁ、とても高校生の娘をもった一児の母とは思えん、しかし普通に俺の頭の中を読まれているのは何故だろう?

 

「ありがとう、お世辞でも嬉しいわ」

 

いえ、お世辞なんかじゃありません、マジ本気でそう思ってます!と言いかけて俺は尻に激痛を感じて飛び上がりそうになった

 

視線を横に向けると長門が俺を睨んでいる、その手が俺の尻をぎりぎりと抓り上げていた、長門の瞳が暗黒面に堕ちている気がするのは錯覚ではあるまい

 

どうしようかと逡巡していると、そのお姉さんが手に持った何か白い物を長門に差し出した

 

「よかったらこの目覚まし時計を受け取ってくれないかしら?娘の物だったんだけど、もういらなくなってしまったの」

 

長門はキョトンとした表情でそれを受け取りお姉さんの顔を見上げた

 

その長門の頭をお姉さんは愛しげに撫でた

 

「あの子もがんばったんだけどね、やっぱりだめだったの・・・でも同じ”ユキ”の字のつく名前でもあなたは必ず結ばれるわ、だからあの子の分までがんばってね」

 

長門はしばらく呆然とした表情を浮かべた後、突如何かに気づくとはっきりと判るほど大きくうなずいた

 

「その目覚ましは録音可能になってるわ、あなたの声で起こしてあげて、そして今度はあなたが・・・・・・それじゃ【またね!】」

 

そしてお姉さんは夕日に溶け込むように商店街の彼方に消えていった、俺達はただその背中を見送るだけだった・・・

 

 

帰りの駅に向かいながら俺は長門に尋ねた

 

「なぁ、長門、あのお姉さんが最後に小さな声で言っていたのはなんの事だったんだ?」

 

長門はほんの一瞬、呆れるような視線をした後、ただ一言呟いた

 

「秘密」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

帰りの電車の中でハルヒと朝比奈さんと古泉が「オレンジ、オレンジが来るぅ・・・」とか「ふぇ〜甘いほうがいいですぅ」とか「謎は嫌だぁ・・・」とかうなされていたが、
俺も長門もそれを記憶から意識的に抹消した・・・

 

 

後日談:キョンの場合

 

「朝、朝、朝食を摂り登校せよ、さもなくばジャm(ガチン!☆)

 

長門の声を流す白い目覚ましを俺は光の速さの拳で停止させた

 

あの最後の”禁じられたワード”を朝から聞くのだけは勘弁だ

 

長門も長門だ、トラウマを起こしながらあんな単語を録音することはあるまいに!

 

 

後日談:長門有希の場合

 

今日も彼は設定時刻どおりに起床した

 

やはりあの目覚ましの効果は凄い

 

いや凄いのはあの”禁じられたワード”のもたらす恐怖感だろう

 

だかそれゆえに彼は私が納めた声を最後まで聞いてくれない

 

過去の録音再生は必ず”禁じられたワード”の手前か途中で止められてしまっている

 

私の最も伝えたい本心を録音の最後に記録したのは失敗だった、うかつ・・・

 

 

情報統合思念体主流派の長門有希観察記録より抜粋

 

長門有希があの異世界ジンから受け取った装置に納めた録音、それは最後まで再生されればこう聞こえたはずである

 

「・・・ムを強制摂食させにあの女性が来ることになる、

 

 それが嫌ならば私と図書館よりも結婚式場へ」

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:02 (2732d)