作品

概要

作者せだえんらc
作品名永久への鍵 第00話
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-03 (土) 19:49:15

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

とててててて・・・

 

いつもの図書館から駅前に向かっていたとき、俺達の目の前を二人の子供が駆け抜けていった

 

図書館の帰りだろうか?それとも塾帰りか?いや今時の子供ならこれから塾通いか?ごくろうなこった

 

ふと視線を隣に向けると長門も言い争いながら走っていく子供達の後姿を見つめていた

 

駅前に着くと、さっきと同じくらいの子供達が数人連れ添って駅の中に消えていった

 

ああ、そういえば大手の進学塾がこの沿線にあったよな、きっとそこにいくんだろう

 

よく見ればまだ小学校の低学年くらいじゃないか?うちの妹よりもさらに幼く見える

 

あんな小さなころから詰め込み学習とはね、ゆとり教育とどっちがましかわからんが

 

俺は複雑な気持で子供達の背中を見送った、俺と長門は並んでそれを静かに見ていた

 

途中いつものスーパーに立ち寄り、なぜかいつもより少し多めに食材を買って春の夕日を浴びながら帰路についた

 

長門のマンションの前について、そこでやっと気がついた

 

マンションの入り口ですれ違った子供を長門が振り返って見ている

 

そうだ、今日は長門の視線がいつも小さな子供の姿を追いかけている

 

しかもみんな幼稚園か小学低学年くらいの子供ばかりだ

 

俺は微笑ましい気持になってつい何の気なしに長門に声をかけた

 

「長門、おまえも母性本能を感じるようになったのか?」

 

言ってから自分の言葉の愚かさに気がつき後悔した

 

これじゃ長門をインターフェース扱いにしたままじゃないか

 
 

 
 

あれこれ騒がしかったあの頃から時がたち今は初春、もうすぐ桜の花が咲き始めるだろう

 

そして来月から俺たちの大学生活が始まる

 

紆余曲折の果てに俺たちは結ばれた、その途中でどんな修羅場があったのかは思い出したくないから、
そこは脳内補完でもしてくれ、要はハルヒとか、ハルヒとか、ハルヒとか・・・まあ、ご想像の通りだ

 

修羅場が障害よりも後押しになったらしく、最後は全く予想外に婚約にまで行き着いた

 

ハルヒにとって自分が起こしたあの修羅場はまさに自爆行為だった、因果応報とはまさにこのことである

 

長門の父親的存在である情報統合思念体主流派からは、入籍するなら長門姓に婿入りしろ!と要求された

 

宇宙的な存在の割には、長門のことになると妙に人間臭い生々しさを発揮するのが実に不思議だ

 

どうも向うは無理難題を押し付けて長門の嫁入りを遅らせるつもりだったようだが、俺はそれを逆手にとって快諾した

 

迷うことなど何も無い、長門の方が大切だ

 

ただ長門は俺の姓になれなかったのがかなり不満だったようで、その後に主流派の身に宇宙的な惨劇が起こったらしい

 

喜緑さんは実に面白そうにその惨劇を話したがっていたのだが、俺は聞かないほうが身の為の気がしたから断った

 

我ながら賢明な判断だったと思う、偉いぞ俺

 

話を戻そう

 

俺たちは同じ大学の同じ学部を進路に選び、高校卒業と同時に長門の部屋で同棲を始めていた

 

本当は俺の家に長門を迎え入れたかったのだが、お袋と妹の生温い視線に耐え切る自信が俺には無い

 

ついでに言うと長門を妻として養う甲斐性はまだ俺には無い

 

親父にこれをいうと心底見下げ果てた視線で見られたが今はやむ得まい

 

そんな訳で今だけは長門の部屋で同棲している、ヒモみたいで不本意だが仕方が無い

 

長門と俺は地元に残ることになった

 

図書館の司書になりたいと言う長門の希望を叶えるのに都合よく、近場に司書講座のある文系大学があったのだ

 

俺の頭にはかなり難しいランクの大学だったが、長門のマンツーマンコーチを受けて無事に合格することが出来た

 

長門の頭なら超一流の研究機関でも楽勝だろうが、長門は本が好きなことと、俺と常に一緒にいられることを選んだようだ

 

幸いに大学は「婚約済み」と「双方の親が承認」という説得力により秘密厳守と自己責任を条件に黙認してくれることになった

 

親族の承認を受けているなら不道徳な関係ではないし、他の学生達に波風を立てないのなら止める理由はないということらしい

 

その裏では鶴屋さん方面からの働きかけもあったらしいのだが、鶴屋さんは何も言わずいつもの笑顔のままだ

 

長門は、学内では守秘の必要があるから婚約指輪はいらない、とまで言ったが男としてそんな訳にはいかない

 

俺のバイト代3ヶ月分という随分安めの婚約指輪になってしまったのだが、長門は喜んでくれた

 

そんな理由で残念なことに普段の長門は婚約指輪を嵌めていない

 

長門が婚約指輪をつけられるのは今日の様に二人きりの時だけだ

 

卒業したら必ず給料3か月分の結婚指輪を送ってやるからそれまで待っていてくれよ、長門

 
 

 
 

俺たちを取り囲む環境は大きく変化していた

 

ハルヒの力は事実上失われたに等しいと考えていいほどの休眠状態になった

 

この休眠状態というのが古泉に言わせると厄介らしい、曰く「いつ復活するか判らない」とのこと

 

周りの思惑などどこ吹く風にハルヒは都会の超一流大学に進学を決め、一足早くこの街から去った

 

SOS団は自然解散され、朝比奈さんは未来へと戻った、時折不定期に朝比奈さん(大)が来ているらしいが

 

他のメンバーでは機関のハルヒ警護継続の方針に従う古泉だけがハルヒの周りに残った

 

情報統合思念体は俺と長門が結ばれたことで自分達に自律進化の道が開けると確信したらしく
喜緑さん以外のインターフェースを自分の手元に呼び戻したそうだ

 

そして俺の内面も変わっていた

 

俺の中で長門はもう情報なんたらのつくったインターフェースなんかじゃなくなっていた

 

長門は長門だ

 

俺が一緒に生きて、一緒に歩き、最後の永久の眠りまで一緒にいる、そう決めた唯一人だ

 

それなのになんて馬鹿なことを聞いちまったんだろう

 

後悔して目を伏せた俺に長門が視線を合わせてきた

 

黒曜石のように艶やかに光る瞳に俺の姿が映る、まるで俺がその深遠に吸い込まれていくようだ

 

「わたしの身体は人間の女性と同一に構成されている、肉体から本能が生じることも同じ」

 

長門が淡々と言う

 

俺はさっきの自分を自分の手で殴り倒したい気分だった

 

むしろ長門が俺の言葉に怒ってくれたら方がどれだけよかっただろう

 

「すまん長門、そんなつもりじゃなかったんだ・・・子供が欲しくなったかと聞きたかったんだ」

 

自分の言い訳がましい言葉に自己嫌悪の無限ループに嵌まり込みそうだ、自分が情けない

 

長門は俺の言葉がまるで聞こえないかのようにエレベーターに乗り込んでいった

 

俺は買い物袋を両手にぶら下げたまま気まずい気持でその後を追った

 

エレベーターの中でも何も言わずに立ち尽くした

 

沈黙が重い

 

いつもの長門の無口とは違う

 

俺の心は沈黙以上に重くなった

 

その重さは長門が部屋のドアを開ける瞬間まで続いた

 

ドアのノブに手をかけたまま長門は突然口を開いた

 

「さっきのこと気にしないで」

 

やっぱり気にしてたんだな長門、すまん俺が必ず責任を取る

 

「大丈夫、もう責任は取ってもらった」

 

それはこれからだよ、そう思いながら長門の華奢な背中を見つめた

 
 
 
 

そして扉が開いた

 
 
 
 

「ママーーーー!」

 

ドアが開くと同時に部屋から飛び出した子供が長門に抱きついた

 

なんだこの子供は?ママって誰のことだ?一体誰の子だ?

 

目を丸くする俺の耳に長門の柔らかい声が響いた

 

「この子はわたしの子」

 

そんな馬鹿な・・・それはまだまだ先のはずだぞ?

 

しかし俺の受けたその衝撃は直後のそれ以上の衝撃発言で消し飛んだ

 

「パパ!」

 

長門の腰にしがみついていた子供は確かにそう言った

 

そう言いながら満面の笑みで俺にも抱きついてきた

 

満杯のスーパーの袋を両手に下げたまま彫像の様に凝固する俺に長門が告げた

 

「そしてあなたの子」

 

その瞬間、俺の頭の中は真っ白になった

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:02 (2732d)