作品

概要

作者書き込めない人
作品名招待
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-02-01 (木) 20:28:57

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

SS集/470の続きです

 
 
 
 

放課後。

 

今までの私にとってそれはあってもなくても、
どちらでもいい時間。

 

別に旧館のこの部屋でも、
駅前のマンションでも同じ……

 

ただ、一人でいるには広すぎる部屋で、
それでも一人で本を読むだけ……

 

でも……今日は違う……
違う……今日からは違う……

 
 
 

コンコン

 

これまでこの扉に対し、誰もしなかったノックの音が響く。

 

「はい」

 

緊張の余り声が出ない。
ちゃんと相手に届いたのだろうか?

 

「また来てよかったか」

 

そう言って彼は静かに入ってくる。
私は頷いて『もちろん』と言おうとして……

 

彼の顔を直視できずに下を向いた。

 

何を恥ずかしがってるの……
顔を上げなさい、私。
ほら、首を曲げて……
曲がれ私の首。まーがーれ。
……首を彼のほうに向ける呪文ないかな……マッガーレとか?

 

そうこうしている内に、
彼はカバンを立てかけ本棚を眺めだした。
彼も本が好きなのだろうか?
市立図書館にいたくらいだから好きなのかも。
もしそうなら少しだけ嬉しい。

 
 

「全部、お前の本か?」

 
 

突然彼が話しかけてきた。
えと、とにかく早く答えないと……

 

「前から置いてあったのもある」

 

もっとマシな回答はないの、私……
って、そうだ。
今持ってる本……

 
 

「これは借りたもの。市立図書館から」

 
 

さりげなく『市立図書館』を少し強調。
あなたと出会った時に借りた本なんだけど……

 

……彼からは何の反応も得られない。
彼にとってはあの時のことなどどうでも良かったのだろうか。

 

居た堪れなくなった私は再び視線を下に落とした。
どうしよう…どうしたら彼は私のことを見て……

 
 

「小説、自分で書いたりしないのか」

 
 

彼からの突然の質問。
小説?書く?あぁ、それなら嗜む程度に……

 

って、ちょっと待つのよ、私。

 

彼に『小説書く』と答える→彼は『じゃあ、見せて』と答える
→今あるのはパソコンの中のキョン君のような主人公の恋愛小説
→キョン君見る→キョン君引く→キョン君二度と来ない→私がっかり

 
 

「読むだけ」

 
 

神様ごめんなさい。
私長門有希は彼に嘘をついてしまいました。
でも、もし来るときがくれば見せてあげたいと思います。
だから許してください、ごめんなさい。

 
 
 

そのうち、本棚を眺めていた彼はそこから1冊の本を取り出した。
あれは……確か昨日部費で買ってきたSF小説。
彼もSFに興味があるのだろうか。
それなら嬉しい。

 

厚めのハードカバーを手に取った彼は、
ページをぱらぱらとめくる。
……やっぱり興味ないのかな?
いや、きっと速読出来る人なのよ。
きっとそう。

 

……って、あれ?
今何か落ちて……

 
 

『それ』をゆっくり拾い上げた彼は、
その裏面を見て、驚愕と歓喜と興奮が入り混じったような顔をした。

 
 

「これを書いたのはお前か?」

 

突然私のほうへ歩み寄ってきた彼が、
拾い上げた『それ』を私に突きつけて言った。

 

私が書いた?何を?『これ』?
何の変哲もない本屋の栞……

 
 

……ナニ、コレ?

 
 

そこには意味不明な文字列が私の筆跡で刻まれていた……

 
 

「……そうか。そうだろうな……」

 
 

私の言葉を聞いた彼はぶつぶつと独り言を言い始めた。
私のことなど見えてないようにまるで上の空。
聞こえてもないし感じてもいない……

 
 

……寂しい……

 
 
 
 

しばらく本をあちこち見ていた彼は、
なにやら諦めたような顔をして、
今度はご飯が食べたいと言い出した。

 

もちろん私が彼の願いを断る理由など、
宇宙創成以来存在し得ないので快諾した。
それぐらい気にもならないって……

 
 

……だめだ。

 
 

彼のお弁当を見ていたらお腹が……

 
 

あぁ、おいしそうな卵焼き……

 

おいしそうな唐揚げ……

 

おいしそうな白米……

 
 

結局彼が食べ終わるまで私は1ページも読むことが出来なかった……

 
 
 
 

お弁当を食べ終えた彼は、
なにやら再び考え事をし始めた。
私は彼の邪魔にならないようにまた本に目を……

 

……だめだ。
彼が気になって集中できない。
何をやっているの、私。
彼の顔を横目で見たいなんて思ってないで読書に集中しなさい。
字じゃなくて彼の顔を凝視したいとか思ってる場合じゃないでしょ。
早く文字を……

 
 
 

ふと気付くとなにやら視線を感じる。

 

視線は室内から感じるわけで、
室内には私と彼しかいないわけで、
そうなれば誰が誰を見ているのか考えるまでもなく、
主語=彼、目的語=私、述語=見ている、となるわけで……

 
 
 

 み ら れ て る ! ?

 
 
 

ど、どうしよう……
何で私の顔を見てるんだろ……
もももしかして寝癖でも立ってるのかな?
きょ、今日は身だしなみに気を使ったんだけど……
それともゴミでもついてるのかな?
それは恥ずかしい……
って、えぇっ!まだ見てる……
そんなに見られると照れるというか、
見ないでというか、むしろもっと私を見て欲しいような、
何かおかしいとこがないか心配なような……

 
 

結局、私は緊張と照れのおかげで1文字も読むことができなかった……

 
 
 
 

「今日はもう帰るよ」

 
 

太陽の位置も低くなり、
部屋が赤く染まってきた頃、
彼は突然こう言い出した。

 

彼が帰るのなら私がここにいる理由もない。
私も帰ることにする。
一緒に帰ることになりそうなのは偶然。
決してこの状況を狙って今まで本の表面を眺めていたわけではない。

 

「なあ、長門」

 

彼が話しかけてきた。
こんなに彼に話しかけられるのは初めてだけど、
どうしたのかな?

 
 

「お前、一人暮らしだったっけ」

 
 

……そう、だけど……
どうして知ってるのだろう?
まさかコレが噂の以心伝心……
いや、むしろ愛のなせる技と言ったほうが正しいかも。

 

私が一人暮らしだということを確認した彼は、
猫を飼うよう勧めてきた。
彼の言うことだし、喋る猫なら飼ってみたいけど……

 

「ペット禁止」

 

残念だけど、そういう決まり。
動物は私のマンションに入ることはできないの……

 

私の答えに少しだけ寂しそうな表情をする彼。
そんなに残念なことだったのだろうか。
私の家で猫が飼えない事で彼に何か不都合が……?

 
 

……そうか。
彼は私の部屋に住みたいんだ。
だから自分のペットが私の部屋で飼えるかどうかを聞いてきたんだ。
そうに違いない。
それなのに私ったらひどいことを……

 

そう思った私は彼にこう聞いてみた。

 
 

「……来る?」

 

「どこに?」

 

とぼけた表情で聞き返す彼。
ほんとは分かってるくせに……

 

「私の家」

 

「いいのか?」

 

……答えなんてひとつに決まってる。

 
 
 

「いい……」

 
 
 

そうして私と彼は、
二人の愛の巣予定地であるマンションに向った。

 
 

何が起こるか考えもせずに……

 

 
 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:01 (2625d)