作品

概要

作者七原
作品名リスタート・マイ・フレンド
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-26 (金) 00:51:26

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 後悔なんてしたくない。
 それはあたしが何時も思っていたことであって、今でも思っていること。
 だからあたしは出来るだけ後悔しないようにやりたいことをやりたいようにやって来たし、今もそれを貫き続けている。
 だから、大きく悔いを感じたような事は殆ど無いの。
 でも、
 たった一つだけ、今でも後悔しているかも知れないことがある。
 それは、今となってはもう随分と昔のことのような気がする、懐かしい高校時代のこと。

 
 

 ……みくるちゃんが高校を卒業して、あたし達4人が最上級生になって、それから、暫く経ってからのこと。
 みくるちゃんが居なくてもSOS団の活動は続けていたし、高校卒業後のことはともかくとしては、在学中は何かが大きく変わることなんて無いと思っていた。
 そう、あの時まではね。
 ……あれが何時のことだったのか、あたしは正確には覚えていない。
 記憶力には自信があったんだけど、きっとよほど衝撃的過ぎて忘れちゃったのね……、今の自分なら、それが認められる。
 当時は、そんな風に思いつくことすら認めたくなかったんだけど。
 あの時……、あの時、あたしは何時ものように部室に向かった。放課後のお約束、少なくとも有希だけは自分より先に来ているはず。
 何時もだったら思いっきりドアを開けるのに、あたしはあの時何故か手を止めてしまった。
 ほんの少しだけ開かれたドアの隙間、その向こうに見える光景。
 あたしは、それを見て固まった。
 音は聞こえなかったし、どんな経緯があったかも知らない。

 

 ただ、キョンが有希にキスをしていた。

 

 その光景だけが、今でもあたしの頭の中に一枚の絵のように残ってる。
 二人の表情は良く分からなかったけれど、合意の上で有ることだけは感じ取れた。
 キョンは馬鹿だけど嫌がる女の子にキスを強要するような奴じゃないし、有希は有希で、ほんの少し、ほんの少しだけだけど、何だか嬉しそうに見えた。
 あたしは……、あたしの呪縛が解けたのは、二人が少し恥ずかしそうな様子で離れてから、さらにもう少し経ってから。
「どうしたんですか?」
 声を耳にして振り返ると、古泉くんがその場に立っていた。
 あたしより少し後に来たらしい彼は、部室の中の状況を知らないようだった。
「何でもないわ。さっ、今日もミーティングよっ!」
 あたしは古泉くんにそう答えると、さも今来たような振りをして、勢いよく部室の扉を開けた。

 
 

 あの時の二人は何も言わなかったし、あたしが見ていたことにも気付いていないようだった。
 でも、それから少しずつ、二人の関係は変わっていった。多分、それはあたしだけじゃなく、二人を知っている皆が感じたことだと思う。
 殆ど表情を動かさない有希が、キョンの前ではほんの少しだけ嬉しそうな表情を見せたり、楽しそうになったり……、悔しいけど、そういうときの有希は本当に可愛かった。
 そう言えば、この悔しいって気持ちを素直に認められるようになったのも最近だわ。
 あの頃はただもやもやした感情があるなってくらいにしか思っていなかったのよね。嫉妬なんてみっともないし、馬鹿馬鹿しいし……、でも、何年も経って改めて振り返ってみると、当時の自分を否定する方がよっぽど馬鹿馬鹿しいことだって思う。
 あたしが高校卒業と同時にSOS団を綺麗さっぱり解散しちゃったのも、多分、それが理由なんだろうな。きっと、二人を見るのが辛かったのよね……、卒業して3年後くらいに同窓会を一度したっきり、キョンとも有希とも会っていないし。
 結婚しますって葉書が届いたのは、ついこの間。
 色々思うことは有ったけど、あたしは出席に丸をつけた。
 キョンのことを好きだったのは高校時代のあたしであって、今のあたしじゃない。
 それに、有希のウェディングドレスを見てみたいしね。

 
 

「……遅いわね、罰金物よ」
 待ち合わせ場所の駅前広場で一人佇みながら、あたしは時計を見る。
 実験の関係で多少遅れるかも知れないとは聞いていたけど、さすがに一時間ってのは遅れすぎじゃないかしら。
 あたしは今、待ち合わせ場所で現在の彼氏を待っている。
 告白されて、付き合い始めて……そろそろ一年。長く持っている方だと思うわ。
 あたしの友人知人として長年付き合ってきた上で告白してきたっていう勇気を、褒めてあげても良いかもしれないわね。まあ、そもそも一番仲の良い男友達では有ったわけだけれど。
「どうやって埋め合わせをしてもらおうかしら……」
 独り言を呟きながら視線を上げたあたしは、駅の改札から待ち人が来たのを見て、大きく手を振った。

 
 

 まあ、そんなわけで現在のあたしはそれなりに楽しくやっている。
 過去のことを全部振り切ったわけじゃないけど、それすら分かった上で告白してきた誰かさんはそれでも良いと言ってくれるわけだし……、甘えるつもりは無いんだけど、彼がそれで良いなら、もう暫くはこのままで居るつもり。
 何時か、何時か自然と、過去は過去として、想い出として笑い会える日が来ると思う。
 そうしたら、あたしは心からキョンと有希を祝福できるし、堂々と彼氏の腕を引っ張って二人の前に現れることが出来る。
 出来るなら、二人の結婚式より前に吹っ切れると良いんだけど……、まあ、そこは成り行きに任せるしかないわね。
 そうして四人で、ううん、みくるちゃんも交えて五人で昔話をしているうちに、意外と何とかなるかもしれないもの。

 
 

 え、あたしが後悔していることは何かって?
 それはね……、あたしが、高校時代に、有希とちゃんと話を出来なかったこと。
 からかうことも割って入ることも出来ずに、ただもやもやした気持ちを抱えたまま時間が流れていくのを見ていることしか出来なかった、あの頃のあたし。
 問題は結果じゃないの。
 多分、あたしがどう振舞っていても、キョンと有希の仲は変わらなかったと思うから……、でも、そういうことじゃないの。
 あたしは、もっと有希と向き合うべきだった。
 もっと、有希の言葉を引き出してあげるべきだった。
 もっと、有希の良い友人で居るべきだった。
 だってそうでしょ? あの頃の有希から見て女友達って言えそうな立場に居そうなのって、あたしだけだったんだもの。
 それは、あたしの驕りじゃないと思う。みくるちゃんは、一年先に高校を卒業しちゃっていたしね。
 あたしは、今の有希がどうしているか知らない。
 もちろん幸せに過ごしているとは思うし、だからこそ結婚するんだろうと思っている。
 あ、でももしキョンが有希を泣かせるようなことが有ったら、そのときは殴り込みに行くわよ!

 

 ねえ有希、新しい友達って出来た?
 ねえ有希、少しは普通にお喋り出来るようになった?
 ねえ有希、あたしのこと、今でも友達だって思ってくれている?

 

 ねえ……、あたし達、もう一度、友達として付き合っていけるよね?

 

 ねえ有希、あたしはね。
 何時だって、あなたの幸せを祈っているわよ。
 あなたの、友人として。

 
 

 終わり

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:58 (3090d)