作品

概要

作者書き込めない人
作品名虚構と幻聴
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-24 (水) 23:53:24

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

SS集/452の続きです

 
 
 
 
 
 

『ほら、さっさといくわよ!』

 

『わかったから服を引っ張るんじゃない』

 

どうして……

 

『あっちは大丈夫かしら?』

 

『3人いるから何かしら見つけてくるんじゃないか?』

 

どうして……

 

『それもそうね。じゃあ、あたし達も負けてられないわよ!』

 

『やれやれ……別に勝ち負けじゃないだろ?』

 

どうして……

 

『つべこべ言わないの!あんたはあたしの言うこと聞いてなさい』

 

『はいはい。わかったからさっさと行くぞ……っておい!
何を腕組んでやがる』

 

『こっちの方が迷子にならなくていいでしょ。文句ある?』

 

『ったく……』

 
 
 

……どうして私がそこにいないの……

 
 
 
 

「……」

 

まだ外が薄暗い時間。
自分でもいつも早起きな方だとは思うが、
ここまで早い時間に起きることは珍しい。

 

「……変な夢見たからかな」

 

つい、小さくこぼす。
聞いてくれる人も応えてくれる人もいないけれど。

 

それにしても……本当に変な夢だ。
真っ暗な中で聞こえる楽しげに話す男女の声。
でも、その明るい雰囲気にはまったく一致しないテロップ……
そして出来の悪い映画を見せ付けられたような不快感と……寂寥感。

 

「……」

 

ふと時計を見ると、
もうすぐ朝のニュース番組が始まる時間だった。
…今から寝たら遅刻するかも。
仕方ない。
本を読んでおくことにしよう。

 
 
 

 ぴん ぽーん

 

朝食を摂り、学校に行く準備をし、
再び読書をしていた私の耳にインターフォンの音が届いた。

 

「はい」

 

『あ、長門さん?一緒に学校行かない?』

 

朝倉さんだ。
一昨日まで風邪で寝込んでいたせいか、
まだ声が少し枯れている。
やはり昨日はもう1日休んだ方がよかったのかもしれない。
責任感の強い委員長タイプな彼女には無理かもしれないが……

 

「行く」

 

仕度は既に終わっているので、
火元の確認と戸締りを行って部屋を出る。

 

「おはよ」

 

「おはよう」

 

挨拶をした私たちは早速学校に向う。
朝倉さんはまだ少し気だるそう。声も低い。
ちょっと心配。

 
 
 

「そういえば昨日わたしの前の席の男の子がね……」

 

もうすぐ長い上り坂という所で、
朝倉さんが思い出したように話し出した。
彼女の前の席の男の子……彼のことを。

 

そういえば、昨日渡した入部届はまだ白紙のままだろうか。
それとも……
期待と不安で昨日はあまり眠れなかった。
変な夢を見たのもきっとそのせいだ。

 

そんなことを考えていた私の耳に、
朝倉さんの信じられないような話が入ってきた。

 

「……なんて言うのよ。ひどいと思わない?」

 

「……」

 

あまりのことに言葉が出ない。
朝倉さんがいない?
彼は何を言ってるんだろう?
そういえば昨日部室でも変なことを言っていたが……
彼の中では朝倉さんがいない方が普通なのだろうか?

 

朝倉さんがいない世界……

 

朝倉さんが消えた世界……

 

朝倉さんが消えてしまった世界……

 

朝倉さんが消された世界……

 
 

どうして?だれに?いつ?どうやって?

 
 

  笑顔で粒子となって

 
 

「ッ……」

 

「?どうしたの長門さん?」

 

「……ちょっと目眩がしただけ……大丈夫」

 

「ほんとに?」

 

心配そうに私の顔を覗き込む朝倉さん。
そうだ。彼女は今ここにいるではないか。
彼はきっと他の誰かと間違えているだけ……

 

「そう?ならいいけど……」

 

「心配ない」

 

「でも……」

 

彼女を心配させてはいけない。
それに別に体調がおかしいわけではない。
そう応えようと顔を上げた私の目の前には、
いつもと少し違う顔をした朝倉さんがいた。

 

……笑顔ではない笑顔……

 
 
 

「いつまでこんなこと続けるつもり?」

 
 
 

「あ、さくら……さん?」

 

「?なに?」

 

「今なんて……」

 

「??別に何も言ってないわよ」

 

確かにいつもの朝倉さんの声だったと思うけど……
いつもの声?病み上がりで声が枯れてたはず。
それに『こんなこと』ってなに?
……気味が悪い。
きっと気のせいだろうけど……

 

「ごめん、なんでもない」

 

「そう?変な長門さん」

 

そう言ってにこりと笑いながら、
また取り留めのない話を続ける朝倉さん。
彼女のこの明るさがうらやましい……

 

そう思いながら私は彼女と坂を登ることにした……

 
 
 
 

昼休み。
お昼ご飯を食べた私は、
いつものように部室で本を読んでいた。

 

今日も彼が来るのだろうか……

 

楽しみだけど少し怖い……

 

今日はずっとこんな調子だ。
皆と話していても上の空だし……
挙句の果てには数学の授業時間前に体操服に着替えようとしたし。
正直、穴があったら入りたい。

 

本当に彼のことで頭が一杯だ。
おそらく今日の授業内容は耳の中に入ってすらいないだろう。
先生方に申し訳ない。
でも彼のために犠牲となって……

 

って、そうだ。
『彼』で思い出したけど、
彼がおそらく渡してくれるであろう入部届は、
一体どこに出したらいいのだろう。

 

顧問の先生……は今日はいないし、
担任に渡すのも……
とりあえず生徒会くらいに部員増加を伝えればいいと思うけど……

 

どうせ、生徒会室はすぐそこだから聞いてみようかな。
あの生徒会長さんが怖いから乗り気ではないけど……
でも彼と私のハッピースクールデイズのためなら……

 

そう思った私は、
早速部室に鍵をかけて生徒会室に向った。

 
 
 

生徒会室の何やら少しだけ質のいいドアをノックし、
私はノブを回した。

 

「失礼します……」

 

「あら、何か御用ですか?」

 

私の声に、中にいた軽くウェーブのかかった髪の上級生がこたえた。
どうやら他に人はいないみたい。

 

「お尋ねしたいことがあるんですけど……」

 

「なにかしら?」

 

この人には少し見覚えがある。
確か書記の…喜緑さん、だったと思う。

 

「入部届について教えてもらいたいんです」

 

「えぇと、あなたは確か文芸部の部長さんよね?」

 

どうやら相手も私のことを知っているようだ。
まぁ1年生の部長なんて私ぐらいだろうし、
何より文芸部には今まで私以外の部員はいなかったから…
でもそれも今日まで。

 

「入部届……ってことは部員が増える当てがあるのかしら?」

 

「あ、はい……」

 

「もしかして彼氏?」

 

「は……ふぇっ!?」

 

突然の言葉に私は思わず奇声を上げてしまった。
でも彼氏?誰が?彼が?誰の?私の?
彼が私の彼氏!?いつの間にそんな……

 

「ふふふ、ごめんなさい」

 

あ、なんだ。
冗談か……そうよね。
まだそこまでは……

 

「え、えと……」

 

内心物凄く凹んでいたが、
気を取り直して私は本題を切り出した。

 

「入部届は……その、どこに出せばいいでしょう?」

 

「そうね……」

 

喜緑さんは相変わらず柔和な顔で、
私の問いに答えた。

 

「本来は顧問の先生ね……でも、不在の時は生徒会の方でお預かりします」

 

「あ、そうですか」

 

どうやらここに持って来ればいいらしい。
彼と私の以下略のためならお安い御用だ。
聞きたい事が聞けた私は礼を述べて教室に戻ることにした。

 

「ありがとうございました」

 

深々と礼を下げる私に、
優しい先輩は穏やかな顔で答えた。

 

「いえいえ、どういたしまして……あ、そうだ」

 

?なんだろう。
まだ言い忘れたことがあったのかな……?
そう思い顔を上げた私の目の前には喜緑さんの笑顔があった。

 
 

……人間のものとは思えない雰囲気と共に……

 
 
 

「あなたは何をやっているの?」

 
 
 

「!?」

 

「?どうしました?」

 

ふと気付くと先ほどの咎めるような視線は無くなり、
穏やかな上級生が私の顔を覗き込んでいた。

 

「い、いえ……なんでも、ない、です。」

 

「でも、顔が真っ青よ?保健室に……」

 

「ほんとに大丈夫です。失礼します」

 

そう言って私はその場から逃げ出すように立ち去った。

 
 
 
 

教室に戻っても私の気分はよくならなかった。
朝倉さんといい、喜緑さんといい、
さっきから一体何なのだろう。
幻聴?幻視?ただの目眩?
気持ちが悪い……
私が何をしたというの?

 

早く放課後になって欲しい。
そうすれば彼に会える。
彼に会えば嫌な気分は晴れる。
そう、私は彼に会うためにここにいるのだ。

 

私の存在理由は彼といること……

 

彼と『私』の未来のために、
私はいるのだから……

 

 
 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:57 (2625d)