作品

概要

作者七原
作品名未分化少女二人
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-24 (水) 23:33:34

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 とある土曜日。
 わたし達SOS団は、涼宮ハルヒの言うところの不思議探索に繰り出すことになった。
「さあ、籤引きよ」
 涼宮ハルヒが、組み合わせを決めるために爪楊枝を差し出す。
 慣例、何時ものこと。
 以前わたしは彼に依頼されこの籤に操作をしたことが有るが、それ以外の理由で籤を操作したことはない。
 涼宮ハルヒが求める、偶然という事象。
 同期などにより未来を知ることが出来た以前のわたしからすれば不可解であったその事象に自分の行動を委ねてみるというのも悪くないと、今は思う。
「あら、有希はみくるちゃんと一緒ね」
 朝比奈みくるが印つき、そして、次に引いたわたしも印つき。
 印つきは二つしかないはずなので、これで組み合わせは決定となる。
 涼宮ハルヒは眉を僅かに動かした後、残りの籤をしまった。

 

「んじゃ、あたし達は向こうへ行っているから、有希達はこの辺りの探索をお願いね!」
 涼宮ハルヒはそう言って、二人の少年の手を引いて消えていった。
 少年二人分の体重の合計は涼宮ハルヒ一人分の体重の約2.5倍だというのに、二人の少年を引きずるようにして走っていく涼宮ハルヒの姿からは、何の無理も疲れも感じられない。 本人が意識しない、周囲に影響しないレベルの、力学的・物理的な何かをほんの少しだけ歪めている涼宮ハルヒの周囲から発せられる微弱な情報を解析し続けていたわたしは、彼女が視界から消え、解析の届かない範囲になってから、午前中の同行者の方に向き直った。
「あの……」
「……どこへ行きたい?」
 思索すること、数秒。
 朝比奈みくるに関する自身の記憶と意思を照合し、わたしは彼女に向かって言うべき言葉を決めた。
「え、あ……」
「わたしはあなたの行きたい場所に興味が有る。あなたの行きたい場所を言って」
 わたしは、わたし。
 誰にもなれず、また、誰もわたしになれない。
 けれどわたしが『朝比奈みくる』の姿に対して有る一定の感情を持っていることもまた、確かなこと。
 だからわたしは、それを念頭に置いた上で、彼女に求めた。
 あなたの行きたい場所を知りたい、と。
「あ、あたしの……、ですか?」
「そう」
「で、でも、長門さんは、図書館とか本屋とか、」
「それはわたしの行きたい場所」
「じゃ、じゃあ」
「今のわたしは、あなたの行きたい場所に行きたい」
「……」
「あなたに行きたい場所が有るのなら、わたしがそこへ行きたいと望む以上、二人でそこへ向かうのが適切と考えられる。……ただしこれは、あくまでわたしの提案。あなたがわたしの質問に答えたくない、要求に応えられないと言うのなら、わたしはあなたに何一つ強制することは出来ない」
「……」
「……」
 沈黙が行きかう間、朝比奈みくるが目を何度か瞬きさせている。
 やがてその視線がゆっくりと動いて、わたしの全身を上から下へと捉えていく。
 奇妙な感覚。けれど、不快ではない。
「……分かりました」
 朝比奈みくるの回答と、小さな溜息。
 どうやら、わたしの要求は叶えられることとなったらしい。
「そう」
 それは多分、喜ぶべきこと。
 けれど朝比奈みくるという少女に対して一定の感情を持つわたしは、それを喜びという単純な感情で捉えられず、また、その感情を表に出す方法も知らなかった。
 少し、もどかしい。
「こっちです、来てください」
 朝比奈みくるはやや緊張した面持ちでそう口にすると、デパートと呼ばれる大型販売店舗の中に入っていった。

 

 朝比奈みくるが向かったのは、デパートの中でも、服飾に関する店舗が並んでいる辺りだった。
「一度、この辺りのお店にちゃんと入ってみたかったんです」
 その台詞から察するに、ここは朝比奈みくるが普段利用している店舗というわけではなさそうだった。実際、並んでいる服の種類と、朝比奈みくるが普段着ている服では、その形状、系統などが異なることは、服飾に関する知識をあまり持たないわたしにも有る程度理解出来る。
「……どうして?」
「あたし……、長門さんに、服を選んであげたかったんです」
「……」
 余りにも意外な回答に、わたしは思わず返す言葉を失ってしまった。
 朝比奈みくるが、わたしに……、何故?
 理由が分からない。推測不能。原因不明。
「あの、ええっと、変な意味じゃなくって……、あの、お洋服って、見るのは好きな系統でも、自分ではサイズ的に着れなかったりとか、似合わなさそうだったりとか、他の子の方が似合うなあって思ったりするのが有るから……、そういうのを、長門さんに着て欲しかったんです」
「……そう」
 たどたどしい朝比奈みくるの主張を、整理してみる。
 つまり彼女は、自分では着れないような服をわたしに着てもらいたいということなのだ。
 実際のところ、わたしと彼女の身長はほぼ変わらないが、体つき、顔立ちの系統などはかなり異なっている。そういう事情を踏まえれば、彼女の主張も理解出来ないものではない。
「あの……、駄目、ですか?」
「良い」
「え?」
「わたしは、かまわない」
 朝比奈みくるの主張はなんら害意の無いものだから、受け入れることに問題は無い。
 それに、彼女がわたしに合わせて選んでくれる服というものにも興味が有る。
「本当ですか!? 良かったあ……」
 朝比奈みくるは顔だけでなく全身で喜びを表現するような動作をすると、わたしの手を引いて、一軒の服飾店の中へと入っていった。
 彼女は本当に、楽しそう。
 そんな彼女の姿が、少し羨ましい。
 けれどそれと同時に、わたしも確かに、嬉しさを感じていた。
 その嬉しさを上手く表す方法は、分からなかったけれども。

 
 

 終わり

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:57 (3090d)