作品

概要

作者G.F
作品名バー「クレイン」にて…
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-24 (水) 21:24:05

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

設定参照
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「じゃ…バー『クレイン』にて、午後5時集合」

 

今日はSOS団の同窓会。
ハルヒ、古泉君、みくるさん、夫、私に新たに古泉君の奥さんになった涼子を加え、6人での初集結。
バー「クレイン」は鶴屋さんのお店。
「鶴」は英語で「クレイン」だから、ってわけなの。
鶴屋さんはこの店の「マスター兼バーテンダー」。
鶴屋さんの他に店員がいないその上、カウンター席しかない狭いお店。
だから予約なしだとお店に入れない。でも商売は繁盛しているらしい。
鶴屋さんは今日もまた、カウンターの中で元気にカクテルのシェーカーを振っていることだろうな。

 

「よっ、いらっしゃい。めがっさ待ってたにょろ」
カウンター内から鶴屋さんの元気な声が響く。
「キョンやみくるちゃんに聞いてたけど…カウンター席しかないわりには結構、素敵なお店ね」
ハルヒが回りを見回している。
そう。私とハルヒと涼子は初来店。
夫と古泉君、みくるさんと江美里さんはこのお店に結構行っているらしい。
実は去年、鶴屋さん、みくるさん、江美里さんの三人で「キョン君はハルヒ・有希・涼子の誰を娶るか」という「賭け」をやってたのもこの店でのことらしい。
席は一番奥からハルヒ、夫、私、みくるさん、古泉君、涼子が腰掛けた。
「はい、メニュー。ただし注文は1人づつねっ」
鶴屋さんがメニューを渡してくれた。
「この店の店員は私一人だけだから」
…って鶴屋さん…いったい誰の台詞をパクってるわけ?
「鶴屋さんの作ってくれるモスコミュール、結構おいしいんですよ」
みくるさんがメニューを見ながら言った。
「みくるさん、モスコミュール…って?」
…って涼子、あんた、もしかしてカクテルを飲んだこと、ないの?
「モスコミュールはウォッカとジンジャーエールの組み合わせ。意味合いは『モスクワのラバ』」
みくるさんが答える前に私が答えてしまった。
「そうそう、有希ちゃん、めがっさ詳しいねっ!」
褒められてしまった。悪い気はしない。
「じゃ…あたし、スクリュードライバーお願い」
一番奥からの順番ってことでハルヒが注文する。
「了解!」
鶴屋さんはウォッカとオレンジジュースをグラスに入れ、マドラーでステアし始めた。
「あれって…シェイカーで振って作るんじゃないわけ?」
ボケをかましたのはもちろん涼子。
どうやらカクテルは何でもかんでもシェーキングするものだと思ってるようね。
「ちょっと涼子…スクリュードライバーってどんな意味だと思ってるわけ?」
ハルヒが突っ込む。
「え?螺旋回し…でしょ?」
「そう。螺旋回しでステアしていたからこの名がついたの。だからスクリュードライバーはステアが正しい作り方なの」
ハルヒも実はカクテル通なのだ。
「はい、一丁あがり!」
鶴屋さんの威勢のいい声が響く。
グラスを滑らせるとぴったりハルヒの前で止まった。
こういうバーじゃなくて寿司屋のほうが似合いそうなくらい本当に威勢がいい。
「じゃ俺、ソルティドッグ」
夫はどうも甘味系のカクテルやチューハイが苦手なようだ。
だからカクテルを注文するときは必ずウォッカ系のソルティドッグかモスコミュール、もしくはビール系のシャンディガフといった「辛口風味」しか頼まない。
まあ確かにハルヒがスクリュードライバーを頼んだ後だもん。
ソルティドッグかモスコミュールなら同じウォッカ系だからボトルを仕舞わずにすむ分だけ出来るのが早いからね。
じゃ、私も同じウォッカ系のブラッディ・メアリーにしようかな。
ウォッカにトマトジュースという一見したところ「?」という組み合わせなんだけどね。
みくるさんはクールバナナ、古泉君はカンパリソーダ、涼子はカンパリオレンジを頼んだ。
「ハルヒ、古泉と場所、交替したらどうだ?」
夫がハルヒに声をかけた。
「どうして?」
「あいつと久しぶりにそこにあるチェスで対戦したいし…それに涼子さんが1人だけ浮いているというのも可哀想だからな」
「わかった」
夫の涼子に対する気遣いがわかったのか、ハルヒは素直にスクリュードライバーの入ったグラスを持って古泉君の席へ行った。
よく考えてみたらこの中でSOS団の団員じゃなかったのって涼子だけなんだっけ。
それにしても以前のハルヒだったら…怒っていたかもしれない。
昔よく行っていた喫茶店でも…夫の隣に座りたいばかりだったからだ。
「いやぁ、キョンさん、隣に呼んでもらえて光栄です」
何が光栄よ!私は古泉君をそう睨み付けてやったが、古泉君には「蛙の面に水」という感じ。
まあ涼子と違って古泉君は超能力者とはいえ一応人間である以上「情報連結解除」は効かないから…ね。
それでも一応…何と言っても夫は私が守らないと…というわけで、私は女性陣で話をしながらその一方で男性陣(といっても二人だけだけど)の会話を盗み聞きすることにした。
まるで「聖徳太子並の能力」だけど…この身体を作ってくれたお父さん、感謝します。
「それにしても涼宮さんも変わりましたよね」
「確かに変わったよな、あいつ…」
「以前の涼宮さんと同一人物とは思えないほど優しくなった…とあなたの奥さんが申しておりましたが」
うん、うん…確かにハルヒはあれ以来それまでとは打って変わって優しくなった。
時々あのときのテンションに戻るときはあるけど…それでも以前と思うとそんなに激しくなくなった。
「そのことだがな…古泉」
「ん?何でしょうか」
「昨日、谷口から電話がかかってきたんでついでにと思ってそれとなく聞いてみたんだがな…谷口は小学生時代のハルヒまでは知らないらしい」
そういえば…谷口君はハルヒと同じ中学校の出身だったって言ってたような気が…。
「それで憶測しかなかったんだが、まあ間違いないと思う。俺は心理学には興味があったし、一般教養の心理学や教育心理学の授業はちゃんと出てたから…聞いて驚け。ハルヒは実はもともと優しい子だったんじゃないか?って思ったんだよ」
もともとは優しい子だった?あの涼宮ハルヒが…?…って高校時代のハルヒしか見てないから信じられないんだけど。
…って私も過去の私の異時間同位体からダウンロードすることで辿れるのは11年前まででそれ以前のことは無理。
当たり前といえば当たり前だけど。何しろその頃私は生まれてなかったから。
「それがハルヒが言ってた『野球場事件』のショックであんな変な性格になってしまったんじゃないかなぁ…それが俺と有希が結婚したショックでねじれが元に戻った…ってところだと思う」
「どういうことでしょうか」
「ハルヒみたいなタイプは『どんなに努力しても手に入れられないもの』が一つでもあるとなると、途端にがたがたと崩れるものらしいからな」
「なるほど」
「ところでハルヒが『どんなに努力しても手に入れられなかったもの』があるんだが…それは何だと思う?」
「それは…いったい何だったんでしょうか?涼宮さんが『どんなに努力しても手に入れられなかったもの』とは…」
「その答えは…俺の隣にいる旧姓名を『長門有希』という女に聞いてみてくれ。大概間違いないと思うから…」
はい、私がその旧姓名を「長門有希」という女でございますが…何か用事でしょうか、旦那様。
「いや…その返事でなんとなくわかりましたよ。うん…なるほど」
ハルヒが「どんなに努力しても手に入れられなかったもの」とは…。
…はい、私は知ってます。それは「キョン様の妻の座」ですね。
ハルヒは確かに夫を狙ってたから。
今から思うと…私もそうなんだけど、ハルヒも実は「思いっきり甘えられる優しい人」が欲しかったのかも知れない。
その「思いっきり甘えられる優しい人」というのが…私にとっても夫だったし、ハルヒにとっても夫だった。
夫に「カツ上げ」としか言いようがない方法で喫茶店代を払わせていたのも…実は夫の優しさに甘えていたかったからだったと告白していたから…。
夫の心がライバルと目した私に傾いているのを知って、それ以来、私に執拗なまでの嫌がらせをしたのもそのためだった。
私はハルヒの度重なる嫌がらせに耐えに耐え抜いた。
耐え抜けばきっと勝利の女神様は微笑んでくれる。そう信じてたから…。
私には涼子及び江美里さんという心強い味方がいたし、夫もまた私の味方だったから…だから私はハルヒの前では平静を装っていたが、この三人の前では泣いたこともある。
でも…ハルヒは涼子と江美里さんだけならともかく夫までもが私の味方という状況が面白くなかったらしく、夫が私を庇うという状況が火に油を注ぐような状況になってしまったことは確かだった。
それでも耐えに耐え抜いた私。
そして…愛の力が物をいったのか、大学は同じ大学を受けて二人とも合格。
夫と私は学部こそ違えど、同じキャンバスだったその上、ハルヒが別の大学へ行ったのをいいことに思いっきり接近した。
…そして…去年の1月のあの日、「長門有希の勝利」及び「涼宮ハルヒの敗北」はついに決定した。
そう…夫が「もうお前のこと、二度と『長門』とは呼ばない。『有希』と呼ぶから…」と約束してくれた、私の誕生日でもあるあの日。
夫があの日以来、私の名前の呼び方を苗字から名前に変えてくれたのは、夫にとっていったい何を意味するか…それは私には痛いほど解っていた。
そう…「もうお前しか眼中にない」っていう意味なのだから…。
一度、暴走したことで諦めかけてはいたけれど…やっとキョン君と一緒に「二人っきりの世界」を築くことが出来たのだから…。
「有希みたいなタイプを怒らせると後から怖いということに気がついてなかったハルヒもハルヒだけどな」
「後から怖いといいますと?」
「ハルヒはその場で発散する…というタイプだけど、有希はしまいこんで一気に爆発させる…というタイプだから…さ。その場で発散するという奴はある程度行動パターンが読めるけど、しまいこんで一気に爆発させるという奴は何をしてくるかわからないからな」
確かにそうかも。
私は有頂天になりすぎて、つい「長門有希の第二の暴走」ともいうべき余計な事を…そう、「涼宮ハルヒに対する復讐計画」を練ってしまったのだ。
あの「執拗なまでの嫌がらせ」の割には案外呆気なかったよね、ハルヒ…。
さすがに私でも想像できなかったわよ。あなたが素直に敗北を認めたその上、泣いて許しを請うなんて…。
あの「キョンも私を捨てて有希を選ぶとはいい度胸してるわね」があなたの「最後の強がり」だった…そう気づいた私は披露宴の途中で席を抜け出してハルヒに謝りに行ったんだった。
あれは本当に今でもまずかったと思っている。こっちこそごめんね、ハルヒ…。
「だから俺、家でも学校でも有希を怒らせないように気をつけてるんだ」
愛する旦那様、そんなに気を使っていただかなくても…私はあなたに対して怒ったことはプロポーズのとき以来一回もないですから。
「大変ですね。僕も涼子さんを怒らせないようにしないと…」
そうそう。涼子の方が私より数倍ほど怖いんだからね。
涼子を「女子刑務所送り」にしないためにも…気をつけてね、古泉君。
「ほら、チェックメイト」
「おや…何時の間に…」
…結局、「古泉君の勝負弱さ」は7年経っても変わってない…ということが確認できた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:57 (2708d)