作品

概要

作者七原
作品名小さな確信
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-19 (金) 15:22:57

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 俺は特に何かを気にかけた風でもなくただ何時ものような様子で長門が消えていった方向を見つめながら、ぼんやりとここ最近のことを思い出していた。
 最近と言っても、最近長門がらみで有ったことと言えば、一週間ほど前の世界改変のことと、ついさっきまでの告白騒動のことくらいなんだが。、
 俺は前者で人工生命体である長門も苦労をため込んでいたことを知り、後者でまた新しい長門の側面を少し知った気がした。
 この二つの出来事には直接の関連性は無いが、世界の改変のことがなければ、俺は今回こんな風に奔走したかどうか分からない。別に長門のためというわけではなかったんだが、長門も間違いなく当事者だったわけだからな。
 そして、少なくとも、あの出来事を乗り越えた後でなければ、さっきの質問は出てこなかっただろう。
 あんな質問……、そうだな、俺はあんな質問をしたくせに、その質問の本質をちゃんと分かっては居ないのだろう。
 俺は誰かに告白されたこともないし、したこともない。
 だから愛の告白が勘違いだったら、なんて想定自体が俺にとっては意味を成さない。……いや、違うな、ちゃんとした形で想像できてないだけだ。或いは、想像したくないってことになるのか?
 よく分からないな。
 どっちにしろ、俺には長門の気持ちは分からない。
 分からないからと言って理解を放棄する気はさらさら無いが、分かろうとしても届かないものは有る。
 だけどもし、もしも俺が……同じ立場に置かれたら、どうする?
 自分に向けてくれる感情を愛情だと思っていたら、それが勘違いだったとか、裏の有るものだったとか……、そういう風に考えると、少し、怖い。
 そして俺のこの想像は、想像だけに留まってくれるという保証が全く無い。
 現在の俺を取り巻く世界は、色々な思惑が集まる連中の、その中心辺りと来ている。
 俺は長門のことも、古泉のことも、朝比奈さんのことも、そしてハルヒのこともそれなりに信頼している……、もちろん、それ以外の周囲の連中も含めてだ。
 だが、古泉は、この学校には色んな勢力の連中が居ると言っていた。
 だが、長門は、自分みたいな連中は割と居るということを認めていた。
 それが何を意味するかなんてことを、深く考える必要は無いだろう。
 そうだな、俺は怖いのかもしれないな。
 どこかで何かがひっくり返されるのを、恐れているのかもしれないな。
 ひっくり返されても、また、ひっくり返してやるくらいの気持ちで居るつもりなんだが、
「……」
 ふと、気配のようなものを感じて視線を持ち上げたら、そこに、帰っていったはずの長門が立っていた。
「長門……」
「……帰らないの?」
「あ、いや……」
「今日は冷える。寒い場所に長居するのは有機生命体の健康に害をなす恐れが有る」
「……そうだな」
「……」
 答えてそれでもその場に留まっている俺をどう思ったのか、ガラス細工のような瞳が、俺をただ見上げている。
 見慣れているはずなのに、少しずつ変化して来ていることが良く分かるようになった、長門の、長門らしい眼差し。
 こいつは一度、エラーを起こした。
 それは、降り積もった感情って奴が引き起こしたものなんだろう。
 感情、か。
 そういう意味でなら、長門の気持ちってのは、俺にとって信頼たるものになるってことなんだろう。
 世界の改変何ていう痛みを伴う大事を経た後にそんな確信を得るなんていうのも、何となく、皮肉な気もするけどさ。
「なあ、長門」
「何?」
「お前の家に行って良いか?」
 別に、何かしたいことが有るわけじゃない、何か話したいことが有るわけじゃない。
 ただ俺は、そうしたら安心できるかもしれない、何て風に思ったわけだ。
「……」
 長門は相変わらずの無表情だったが、俺の意図を掴みかねているようにも見えた。
 別に困らせるつもりは無かったんだが……、そういや、こんな風に特に何の意図も無く、こんなことを言ったのは、これが初めてだったか?
「なあ、」
「良い。……わたしは、構わない」
 長門は少しだけ考える素振りを見せてからそう言うと、さっと踵を返して歩き始めた。
 相変わらず素っ気無い感じだが、その背中に僅かばかりとはいえ温かみを感じるのは、きっと、俺の気のせいじゃないんだろう。
「そっか、ありがとな」
 俺は長門にそう言ってから、ゆっくりと歩を進めていくその小柄な背中の後を追った。
 長門が、俺に何らかの感情を向けてくれている。 
 それだけはきっと、確かなことなんだろう。

 終わり

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:54 (3087d)