作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんの不思議探索
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-10 (水) 19:27:39

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

※ヤンデレ?注意

 
 
 

休日の貴重な二度寝の時間を、
前日のアホみたいな電話で解約されてしまった俺は、
いつもの場所にやってきた。
もちろんいつものように玄関で妹にじゃれ付かれ、
そいつをいつものようにシャミを使って引き剥がし、
それでもいつものように……

 
 

「遅い!罰金!」

 
 

理不尽な徴収を受けるわけだ。
これは租庸調で言えば、何に当たるんだろうな?

 

「それは税金!あんたが払うのは罰金!!」

 

厳密に言えば租庸調は『金』ではないぞ?
特産品や労働が……
まぁ、その辺の説明はニヤケ面のエスパーがやってくれるだろう。
昼行灯の俺には向いていない。

 

「租庸調という制度は元々、中国の律令制下での制度なんですよ。
それを日本風にアレンジして……」

 

顔が近いぞ古泉。
お前の雑学王っぷりが無意味にすごいことは認めてやるから、
その口をチャックして閉じてろ。

 

「租は中国では……」

 

「長門もわざわざ説明してくれなくていいぞ。
ついでに、そういうのはテスト前にしてくれると助かる」

 

「そう……」

 

せっかくの長門の好意を無碍にするわけではないが、
今長々と説明されても覚えきる自信がないからな。
できれば、テスト1週間前に個人的に授業をしてくれたほうが……

 

「ほら!何やってのよ、このバカキョン!!
さっさと店に入るわよ!!」

 

……やれやれ。
俺には妄想する時間も与えられないのか……

 

我が身の不自由さを嘆きながら、
俺は財布の中の夏目漱石たちとの別れが待つであろう、
いつもの喫茶店へと向かうことにした……

 
 
 
 

やっぱり、店で彼氏に奢ってもらうって言うのが、
デートの基本中の基本よね。
しかもキョンたら毎週欠かさずあたしに奢ってくれるんだから、
ほんとに一途……

 

でも、SOS団の皆と一緒じゃないとデートに行ってくれないってのが難点だわ。
キョンって案外恥ずかしがり屋さんなのかしら?
それともストイック?まさか焦らしプレイ?

 

「おい、ハルヒ。
お前は何にするんだ?」

 

「そうね〜やっぱり焦r……」

 

「『じ』?……ジンジャーエールか?」

 

「えっ!?あ、そ、そうそう……ジンジャーエールね」

 

もう、キョンてば……
飲み物の話なら、最初からそう言ってくれないと。
勘違いして恥をかく所だったわ。

 

……あ、もしかして『まだその話をするには時間が早い』ってことかしら?
そうね、そうよね。お楽しみは夜にとっておかないと……

 
 
 
 

「お待たせいたしました。
ご注文された品は以上でお揃いでしょうか?」

 

「えぇ、どうも」

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

丁寧に礼をして去っていくウェイトレスさん。
その姿を横目で見ながら、
俺は目の前の皿の数にため息をつきたくなっていた。

 

「それじゃ、いただきまーす!」

 

満面の笑顔で食い始めるハルヒ。
それにしてもジンジャーエールにケーキセットにホットケーキに
チョコレートパフェに……
今日中に糖尿になっても知らんぞ?

 

「あ、あのぅ、本当にいいんですか、キョン君……」

 

いいんですよ、朝比奈さん。
あなたの為ならこの身を腸詰めにすることだってお安い御用ですよ。
その豊潤なバストの一部になれるのなら本望です。

 

「それではあなたのお言葉に甘えて……」

 

「お前は自腹を切れ。
『バイト』とやらで稼いでるんだろ」

 

俺の貴重な軍資金が、
お前のニヤケ面の一部を構成すると思うと、
俺は悔しさのあまり眠れぬ夜をすごす羽目になるからな。
とはいえ、結果的にはお前にも奢ってるわけだが。
いや、ここはあえてこいつの分はどぶに捨てたものとして……

 

「……食べていい?」

 

「ん?あぁ、いいぞ。
残さずにたんと食べなさい」

 

というかそんな俺に分かる程度に物欲しそうな顔で言われると、
断れるわけがないだろう。
ちなみにこの無口少女の目の前には、パスタや、トーストや、
レモンティーや、アイスクリームや……

 

人の金だからって食いすぎだと思わないのか?
遠慮というか、配慮というか深慮というか……
こいつらの胃袋に言っても無駄か。

 
 
 
 

キョンの口車に引っかかりそうになって、
つい頼んじゃったジンジャーエールだけど、
案外イケるわね……

 

きっと、キョンはあたしのお気に召すように、
昨日の夜から寝ないで今日の飲み物を選んでたんだわ。
もしかしたら一昨日から寝てなかったのかも。
昨日の授業中も眠そうだったし。

 

ただ、あたしのためにそこまでしてくれるのは嬉しいんだけど、
やっぱり健康管理には気を使って欲しいわね……
寝不足や徹夜なんて体に毒よ?
もうあんた一人の身体じゃないんだから。

 

あぁ、でもキョンの顔をこうして見られるだけで、
幸せ……
しかも、キョンがあたしのために用意してくれたドリンク付き。
もうこれ以上は……

 

「あ、あのぅ、本当にいいんですか、キョン君……」

 

……みくるちゃん。
もうちょっと空気を読んでくれないかしら?
今、あたしとキョンが二人で仲良く朝のティータイムしてるのよ?
それともあたしたちの邪魔する気?
そういえば、いつも視界の隅をうろちょろしてるわね……

 

「それではあなたのお言葉に甘えて……」

 

古泉君……キョンに甘えていいのはあたしだけよ。
もちろん、キョンが甘えていいのもあたしだけ。
ほら、無粋な横槍入れるような副団長には、
あたしのキョンが怒ってるじゃない……

 

まぁ、いいわ。
いつもみくるちゃんはメイドとして働いてくれてるし、
古泉君もイベントを設定してくれるし、
今回も特別に奢ってあげる。
それにあたしとキョンの二人だけで幸せを独占するのもよくないしね。
あなたたちにもおすそ分けしたげるわ。

 

ただ……

 
 

「……食べていい?」

 
 

何でこのメス猫がここにいるのかしら?
ここは人間がケーキを食べたり、お茶を飲んだり、
楽しくおしゃべりするところよ?
家畜お断りって書いてるでしょ?
書いてなくても店に迷惑でしょ?
そもそもあたし達に迷惑でしょ?
あなたの存在自体が迷惑でしょ?
薄汚い盛りのついた野良猫が、
こんな所にいたら邪魔なの。
わかる?邪魔なの。邪魔。とっとと消えなさい。
消えろ。消え失せろ。なくなれ。消えろ消えろ消えろ消えろキえろキエろ……

 
 

……ねぇ。
なんでキョンもそんなのに餌をやるの?
その餌代をもっと有効に使おうと思わないの?
例えば、あたしにプレゼントを買ってくるとか……
ほら、今日は1週間ぶりのデートなのよ?
いつも奢ってくれるのは嬉しいけど、
そろそろもう少し先に進んで……

 
 

そっか……
キョンはあたしに猫料理を作ってくれるんだ。
そうだわ。だからこうやって餌付けしてるのよ。
そうよね、豚は太らせてから食べるもんね。
もう、キョンたら……
それにしても、猫料理なんて……ううん、キョンの手料理なんだから、
きっと宮廷料理をはるか凌駕するようなものに決まってるわ。
ありがとう、キョン…あ…たしのためにそこまで考えてくれて……
わかったわ。
料理はあんたに任せたげる……

 
 

……でも、屠殺はあたしにやらせてね。

 
 
 
 

すっかりきれいになった皿とカップを見て、
作った人は本望だろうな、などと思いつつも、
レシートを見て素直に喜べない俺は、
いつものようにさっさと店を出たハルヒに任された、
理不尽な精算すべく席を立とうとした。

 
 

「待って……」

 
 

「ん?どうしたんだ、長門?」

 
 

お前も他の3人みたいに店外に出ないのか?
あと頼むからベルトではなく袖を引っ張ってくれ。
そっちの方が感じが出るから。
もちろん指でつまむ程度に……

 

などと、馬鹿なことを考えていた俺に、
目の前の万能文学少女は驚くべきことを言い出した。

 
 

「私の分は自分で払う……」

 
 

「へ?」

 

聞きなれない申し出に、
俺は一瞬反応できなかった。

 

「私の分は……」

 

「いや、それは分かるんだが……
どうしてまた?」

 

「それが当然……」

 

そりゃ、そうだけどな……
だが、いつもならそんなことも気にしない素振りだったが、
今日は一体どういった風の吹き回しだ?

 

「いや?」

 

「いやじゃないぞ。
負担が減る分には嬉しい」

 

「そう」

 

長門は短くそう答えると、
財布から金を出し、俺に渡してきた。
おそらくこいつのことだから1円単位でピッタリな料金だろう。

 

それにしても、一体何があったのか……
小柄な読書好き宇宙人一人分を引いてもまだ多い勘定を払いながら、
俺は頭の上ではてなマークを踊らせていた……

 
 
 
 

店の外でいつものくじ引きをしたところ、
俺と長門の二人ペアと、
ハルヒ、朝比奈さん、古泉の三人ペアとなった。
とりあえず、迷惑団長様と同伴は避けられたようだ。
にしても、こいつはさっきから何をワクワクしてるんだ?
俺を笑顔で睨んでも期待するようなもんは出ないぞ。

 

何となく気味の悪いハルヒを二人に任せ、
俺と長門は不思議探しという暇つぶしをするために、
歩くことにした……

 
 
 

さて、こうして美少女と二人でのんびり歩くなどという、
世の男性の99%は羨ましがるであろう状況ではあるのだが、
俺は素直に楽しむ気分にはなれなかった。

 

なぜなら、先ほどの長門の行動が気になったからだ。

 

もちろん自分で払う行為の正当性は揺るがない。
有難いし、まず当然といえば当然な気もする。
ただ、ハルヒやニヤケエスパーならともかく、
もの静かな宇宙人や愛らしい未来人に対して奢ることには、
俺は別段抵抗を感じていない。
むしろ、長門には世話になりっぱなしだから、
こいつの分の料金はいつも感謝しながら払ってるくらいだ。

 

だからこそ、こいつが自分で払うと申し出た時に、
微妙な気分になったのかもしれない……

 

もしや、こいつなりに俺のことを気遣ってくれたのか?
……だとしたら、情けないな俺。
いつも気遣ってもらってばかりじゃねーか。

 

そうだな……たまには感謝の意をこめて……

 
 
 
 

毎週のように彼はあの雌犬によって、
自身の資産を減らされている。

 

何故あんな浅ましいメスの言うことなど聞くのだろう?
やはり、彼は何に対しても優しすぎるのではないか?
その優しさを私一人に向けるべきなのに……

 

いや、それが彼の長所なのだから文句は言うまい。
悪いのは毎週彼にたかる寄生虫のようなあの女。
害虫は駆除しなければ。徹底的に根絶やしに。
生きていた痕跡すら残さず、二度と沸いてこないように。
間違いなく駆逐する。駆逐しつくす。跡形も駆逐する。
細胞の一片すら残してはいけない。

 

私はあの虫とは違う。
だから彼の負担にならぬよう、
自分の分の支払いをした。

 

それに、あのようにすれば、
優しい彼はきっとこう言ってくれるはず。

 
 

「なぁ、長門……何処か行きたい所はないか?」

 
 

やはり、彼は優しい。
私のささやかな行為に返礼をしてくれるなんて……
気にしないでいいのに……
あなたのためならこの惑星だって捧げるつもりだ。

 
 

でも、私の答えは決まっている。

 
 

彼と二人きりで行きたい場所……

 
 

私の部屋や彼の家、二人きりならどこでもいいけど…

 
 

やっぱり、思い出の場所がいい……

 
 

そうして私はいつものようにこう答えた……

 
 
 
 

「……図書館」

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:53 (2729d)