作品

概要

作者
作品名とある〜主流派 旅立ち前夜
カテゴリー思念体SS
保管日2007-01-06 (土) 01:20:07

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

書斎の扉が二回ほどノックされると、娘のちいさな声が聞こえてくる。
「…おとうさん。 よろしいですか。」
「あぁ、 どうぞ。」
私は応えながら煙草の火を消すと、部屋の窓をすこし開ける。
冬の冷たい風が私の手を撫でるようにして入り込んでくる。
 
「……おとうさん 」
娘は扉を閉めると部屋の中ほどに立ち止まり、私をじっと見つめている。
私は読んでいた本を仕舞うと娘に向き直る。
「どうした?」
「とうとう… 明日です。」
「そうだな。 明日だな。」
私の言葉を聞いた娘は少しうつむいて話し始める。
「わたし… がんばります。おとうさんの期待に …応えてみせます。
 主流派の娘として… 恥ずかしくない働きをします… だから… だから…」
 
言葉に詰まる娘の前に立つと、その華奢な両肩に手を添える。
娘の気負いと緊張が、その手に伝わってくる。
「 有希… 」
娘が顔をあげるのを待ってから、言葉を続ける。
「そんなに気負うことはない。肩の力を抜いて、普段通りやればいい。大丈夫
 おまえの事は私が一番良くわかっている。心配などしていないよ 」
娘は決意に満ちた瞳を私へ向けたまま、私へ約束してくれる。
「きちんと務めを果たして… 還ってきます。」
「あぁ。 待っているよ」 
私はそう言って娘の頭を優しく撫でると、有希はくすぐったそうに目を閉じる。
時計が目に入った私は思った以上に時間が経っている事に気付く。
「有希、遅くなったが夕食にしよう。用意をするから部屋に戻ってなさい」
私の言葉に娘は首を横に小さく振って
「 今日は、わたしが作ります」 と言ってくれた。
 
キッチンで気ぜわしく動いている娘を見て、私は思い出してしまう。
「なぁ、有希も大きくなっただろう。まるで、昔のおまえを見ているようだよ。
 いい子に育っているよ。私には勿体ない位だ。」
私は暖炉の上にある写真に話し掛けていた。娘は皿を運ぶ手を止めると私を見て
「おかあさんの分も作りました… 今日は… 三人で 」
 
私はその時どんな顔をしていたのだろう。良くは憶えていないが、有希がひと言だけ
「泣かないで… 」
そう言った事は、今でも憶えている。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:53 (3092d)