作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと百人一首
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-02 (火) 15:48:28

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

鶴屋家所有の超豪華別荘地で新年を迎えるという、
よくよく考えてみれば人生をもう2〜3回繰り返しても、
とうてい出来そうにない体験をした我らがSOS団の面々は、
初日の出まで時間を持て余していた。

 

とはいえ、俺としては謎の敵による洋館軟禁や、
謎の機関による推理ゲームの疲れもあり、
正直に言えば『子供は寝る時間』の一言にぶーぶー言いながらも、
朝比奈さんに添い寝してもらうというこの世で最も有難いサービスをしてもらい、
今頃夢の世界で楽しく遊んでいるであろう妹のように、
心の底から爆睡したいのであって……

 
 

「まだ、日の出まで時間あるわね……
そうだ!」

 
 

このように年中ハッピーニューイヤー女の提案など聞きたくないわけであって。

 
 

「まだ時間もあるし、今から皆で……」

 
 

正直、この場から逃げ出したい一心であって……
あれ?部屋のドアに森さんが立ってるから出られないぞ。
ちょっとどいて欲しいんですが……
とりあえず『ここは我慢してくださいね』って目で言うのは止めてくれませんか。
早くしないと大変なことに……

 
 

「SOS団 大百人一首大会を始めます!!」

 
 

……なりました。
やれやれ……結局俺は巻き込まれないといけないのか……

 
 
 

さてさて、いつものようにどこからか取り出した、
百人一首を一式取り出し、
ハルヒの命令により、俺が文字札を並べ、
ハルヒの命令により、俺が読み札を混ぜ、
ハルヒの命令により、俺が……

 

「……おい、何で俺だけなんだ?」

 

「あんたが雑用に決まってるからじゃない」

 

はいはい、そうですか。
せっかくメイドに執事もいるんだから、
そっちにやってもらえ。
お前の言うことならほいほい聞いてくれるぞ。

 

心の中で愚痴りながら、
俺はひたすら作業を進めることにした……

 
 
 

さて、準備が出来たわけだが、
ここで少し問題がある。

 

「あのー、朝比奈さん。
一つお尋ねしたいのですが……」

 

俺はその問題のひとつである、
麗しの未来人に声を掛けた。

 

「はい、何でしょう?あ、妹ちゃんならぐっすりですよ〜」

 

あぁ、そうですか。
それはありがとうございます。
あとで布団に潜り込んで貴方の温もりを……じゃない。

 

「え〜と、未来にも百人一首ってあるんですか?」

 

「えぇ、この国の伝統芸能の一種ですよね?」

 

少し違うような気もするが、
まぁ、この人ならルールを知っていても、知ってなくても
札を取れる気がまったくしないから、大丈夫だろう。
むしろ、問題なのは……

 

「……長門も知っているのか?」

 

「……」

 

わずかに頷く長門。
やはり、この万能宇宙人に分からないことはないらしい。
とにかく、二人ともこの伝統的なカルタ取りのルールを知っているようなので、
やる分には問題はないだろう。

 

「ちょっと、キョン!いつまで喋ってんのよ!!
さっさと始めるわよ!!!」

 

「わかったから騒ぐな。
別室で初夢を見ている妹が起きるだろ」

 

「あら、それならもう一度寝れば2回も初夢が見れるわよ。
それに初夢は元日から2日にかけて見るもんよ」

 

そんなことはどうでもいいから、
もうちょっとボリュームを落としてくれ。
近所迷惑だろ……といっても近所なんていないわけだが。

 
 

結局、ハルヒの勢いに勝てる要素を見出せない俺は、
正月恒例の遊戯に参加することになった……

 
 
 
 

「それでは不肖ながら、私、新川が読み手を務めさせていただきます」

 

いつもすいませんね。
無理やりつき合わせちゃって……

 

「負けた人には罰ゲームが待ってるからね!
そうね……体中墨を塗って人拓をとるってのはどうかしら?」

 

「新年早々セクハラは止めろ。
そもそも墨を塗るのは羽子板だろ」

 

「どっちでもいいじゃない。
とりあえず負けたら罰ゲームは規定事項だからね!」

 

元日くらいはのんびり遊べばいいものを……
そう思いながら俺は100枚の札と対峙した……

 
 
 

さて、百人一首……というかカルタ全般に言えることだが、
こういうのは取り札がどこにあるかを把握しておく必要がある。
しかも百人一首は読み札に決まり字というものがあるため、
読み札に書かれた歌も覚えていなければならない。

 

もちろん俺が100種類の5・7・5・7・7を覚えているはずもなく、
さらに100枚のカルタの位置を覚えることも出来るわけがない。
仕方ないので俺は自分の知っている範囲の取り札だけを覚えることにした。
うん、とりあえず『神のまにまに』と『秋の田の』の下の句くらいは、
覚えておこう。
あと、手元付近の札も一応キープだ。

 

こういうところで無駄に発揮される努力を、
こそこそとおこなっていると、新川さんの第一声と共に、
SOS団のカルタ大会は幕を開けた……

 
 
 
 

「きみがt……」

 

「はいっ!」

 

おぉ、さすがハルヒ。
まだ3文字しか言ってないのに、
手を出すとは……
でも『きみがため』で始まる歌は2つあったはずだぞ?

 

「お見事でございます」

 

あ、正解なんだ。

 

「やっぱりね!
こっちのような気がしたのよ」

 

勘でやるんじゃない。
反則だぞ。お手つきだったらどうする。

 

「あたしが選んだんだからビンゴに決まってるわ!」

 

そーかい。
あんまりそういうことをしないで、
俺たちにも選択の時間が欲しいんだがな。

 

「では、次の歌に参ります。せ」

 

「はい」

 

ちょっ、長門さん!?
速すぎませんか?
確かに『せ』で始まるのはひとつだけですが……

 

「お見事でございます。では、次の歌……」

 
 

その後、半分が終わったところで、
長門とハルヒが24枚ずつ、俺が2枚という、
もはやコールドゲームでいいんじゃないかという展開になっていた……
ちなみに2枚のうち片方は『神のまにまに』だ。
ありがとう菅原道真。

 
 
 
 

「……もう、大分少なくなってきたわね」

 

ハルヒの言うとおり、
1時間弱の激戦の末、もはや場には10数枚の取り札が並んでいるだけであった。
ちなみに現在トップはハルヒ。
1枚差で2位が長門。3位は俺の4枚。
4位は朝比奈さんの1枚。最下位はもちろん古泉だ。
ちなみに朝比奈さんの1枚は、たまたま正座した足が痺れて手をついたときに、
取り札が当たったものだ。

 

完全にハルヒと長門の熾烈なデッドヒートとなっているが、
俺としてはもう1枚くらいは欲しい。
とりあえず、場に残っている決まり字が1文字のものを狙うか……
そうだな、『さ』から始まる上の句が残ってるはずだ。
『さ』から始まる歌は一つしかない。
というか残っている札で覚えている歌がコレしかない。

 

そう思って待っていると、
勝利の女神……厳密に言えばもう勝てないが……が俺に微笑んだのか、
それともほくそ笑んだのか、新川さんの言葉に期待していたものが現れた。

 
 

「では次の歌を……s」

 
 

「はい!」

 

迷わず俺は狙っていた札に手をやる。
おそらくサ行から始まる歌はもう他にはない。
半分賭けだが、間違っては……

 
 
 

パバシィッ!

 
 
 

突然、手の甲に痛みが走る。
何だ?何でこんなに痛いんだ?

 

「ってぇっ!?」

 

俺は痛む右手を引き戻して、
思わずさすった。
何だってんだ一体……

 
 
 

そうして顔を見上げた俺は、
痛みの原因に気付いた……

 
 
 

「あっ、えと……」

 
 

「……」

 
 
 

そこには、俺が手をついた札の上で、
手を重ねたまま慌てるハルヒと長門の顔があった……

 
 
 

「お前ら……」

 

「だ、だってしょうがないじゃない!
『これだ!』って思ったら手が動いちゃって……」

 

それはそうだが、お前は『ゴメン』の一言も言えんのか。

 

「……ごめんなさい」

 

そんな申し訳なさそうな顔しないでくれ。
別にお前やハルヒを責める気はない。

 

「だ、大丈夫ですか〜?」

 

あぁ、大丈夫ですよ朝比奈さん。
スーパーガール二人分の平手打ちは利きましたけど。
正直、整骨院を探したいです。
いや、だからそんな顔をするな長門。
ハルヒも微妙に気にするんじゃない。大丈夫だ。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「あぁ、大丈夫ですよ新川さん。
それより続けてください」

 

「左様でございますか。
それでは今の取り札はキョン様の物という事でよろしいでしょうか?」

 

「問題ない……」

 

「まぁ、キョンの手が一番下にあったんだしね……」

 

それなら明らかに俺の札だろ。
というか新川さんまで俺のことを『キョン』とお呼びになるのですか……
機関の連中にとって俺って一体何なんだ?

 

愚痴りたい気持ちを、手をさする事で紛らわせながら、
俺は二人の少女の、女流名人も裸足でアラスカまで逃げ出すほどの、
真剣勝負を観戦していた……

 
 
 
 

結局、1枚差でハルヒが逃げ切り、
『SOS団 大百人一首大会』は団長優勝で幕を閉じた。
ちなみに最下位は古泉だ。
もう一度言う。古泉だ。

 

「惜しかったな、長門……」

 

「……」

 

俺に分かる程度にちょっとだけ悔しそうな長門の横顔を見て、
あることに気付いた。

 

「なぁ、長門……」

 

「なに?」

 

「お前、最後の方……」

 

大自然の下から見上げる美しい夜空のような瞳が、
俺の姿を映し出していた。
その瞳の中の俺が、長門への疑問を口にした……

 
 

「少し……手加減しなかったか?」

 
 

俺の質問に、少しだけ困った顔を見せた長門は、
少しだけ覚悟を決めた様子でこう答えた。

 
 

「……した」

 
 

「どうしてだ?」

 

負けていたのに、手加減するほどお前は勝負嫌いではないはずだ。
何らかの事情があったとしか……

 

「もし、あのまま戦っていたら……」

 

長門は俺に対して、いつもの静かな声で言った。

 
 
 

「また、あなたを傷つけると思ったから……」

 
 
 

「また?」

 

まさか、俺の手を叩いちまったことか?

 

「そう」

 

「なんだ……気にしてくれなくてもよかったのに。
でもまぁ、気を遣ってくれたんだな」

 

「……私が悪い。
ごめんなさい……」

 

あくまで、すまなさそうに謝る長門。
そんな姿を見た俺は、痛む手を長門の頭にのせて言ってやった。

 
 
 

「ありがとな……」

 
 
 

「……ん」

 

しばらく、長門はきょとんとした顔をしていたが、
やがてほっとしたような様子で小さく頷いた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:52 (3084d)