作品

概要

作者せだえんらc
作品名キョン・ハンター・長門
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-01-02 (火) 07:24:11

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

部室のドアを蹴破らんばかりの勢いで突入してきたハルヒが開口一番に絶叫した

 

「みんな、今日の団活は”キョン狩り”をするわよ!」

 

俺は自分の意識が理不尽過ぎる現実を拒否して深い暗闇に堕ちて行くのを必死に食い止めていた

 

 

時間はその日の昼休み後に遡る

 

長門との穏やかな昼食の一時を過ごした俺は午睡を楽しむために教室に戻ってきた

 

薄々判ってるとは思うが「午睡」ってのは「午後の授業」のことさ、誰だって身に覚えがあるだろ?

 

今日の飯も実に美味かった

 

かなり前から俺の弁当は1.5人前くらいに増量されていた

 

おふくろは俺が長門の部屋に休日ごとに入り浸っていることをとっくの昔にお見通しだったらしく

 

お弁当のおすそ分けを利用して密かに長門に自分の料理の味を受け継がせようとしていたらしい

 

俺は長門とおかずの取替えっこをしていて、長門の弁当の味がおふくろの味にどんどん似てきたことを不思議に思っていたのだが、
長門の推理で指摘されるまで全く真相に気がつかなかった

 

母親の勘ってのは本当に恐ろしいもんだ、ついでにおふくろの策略にすかさず合わせていた長門もいい意味で恐ろしい

 

まぁそこのところはどうでもいい

 

当面の問題の原因はその美味い昼飯を堪能した後に起こった

 

教室に戻ってみるとハルヒが不機嫌そうに窓の外を眺めていた

 

聞けば朝倉から女の子としての身だしなみのことで説教を受けていて食堂に行くのが遅れ飯を食い損ねたらしい、自業自得だ

 

しかしそこで自分の非を自分に向けないのがこの涼宮ハルヒという存在である

 

ついでにそのご機嫌斜めの生贄になるのが俺という存在であるらしい、全く迷惑なことである

 

俺はついつい調子に乗って口を滑らし、いらんことを言ってしまった

 

「本当はダイエットの口実に都合良かったんじゃないのか、最近ふくよかな感じだぞ?」

 

今になって思う、なんて俺は馬鹿だったんだろう?よりによって逆鱗のど真ん中をスパイク付きの土足で踏んじまうなんて

 

ハルヒは本当にダイエット中だったんだ・・・

 

 

そして現在に至る

 

まったくの偶然とはいえ真実をもろに言い当ててしまった俺に対するハルヒの怒りは凄まじかった

 

何しろ授業が終わるまで全く何もしてこなかったくらいだからな

 

普通は穏便にすんでよかったと考えるべきだがこいつの場合は違う

 

何もしてこないというのはむしろ最悪かもしれない

 

いわば嵐の前の静けさ、噴火の前の静寂、破滅の前の平穏だ

 

その平穏はハルヒ大魔神が俺に対する死刑執行の策略を練っている静寂だったのだ

 

「おまえ昨今のいじめ問題の報道みたことあんのか?」

 

俺は精一杯のツッコミをいれた、あんまり頭がくらくらしてそれくらいしか思いつかない

 

「かといってお腹がすいてて走り回るのも嫌だからアレでキョンを狩りましょう!」

 

無視された、あまりにも綺麗に華麗に無視されたよ

 

空腹によって暴虐度が当社比1.5倍になったハルヒの指差す先には団長用デスクトップPCと団員用ノートPCがあった

 

コンピ研から略奪してきたあれである

 

「コンピ研にサジタリウスの新製品を作らせておいたのよ、先週から徹夜で!」

 

かわいそうな奴隷階級達だ、今度リポDでも差し入れてやるか、もしも金があったらな

 

「今度のは凄いのよ、バトルロワイヤルでの艦隊戦が出来るの!もちろんキョンだけ敵ね!」

 

どう考えてもいじめです、本当に(以下略

 

「でも弱小なキョン艦隊を数に任せて一瞬で捻り潰しては狩りの楽しみが半減してしまうわ
だからキョンは1万5千隻、あたしたちの連合は各5千隻ってことに手加減してあげるわね」

 

それでもそっちの総数は俺の艦隊より多いんですが、それのどこが手加減なんでしょうか涼宮閣下?

 

「強者こそが絶対正義、それがこの世の真理よ!よってキョン旗艦を仕留め生き残った者は今日一日キョンを植民地にできるの、なんでもやりたい放題よ!」

 

やはりそうきたか、ハルヒが直接的な暴力に訴えてこない時は、それ以上の人権無視が目論まれている証拠である、思ったとおりだ

 

「それは魅力的ですね」

 

古泉、おまえが言うとマジで鳥肌が立つ、やめれ

 

「え〜〜〜いいんですかぁ?キョンさん」

 

え〜〜〜いいんですともぉ朝比奈さん!あなたの愛の奴隷になら喜んでなりましょう!っていうかむしろならせて!

 

「戦時捕虜の虐待及び占領地での蛮行は条約で禁じられている」

 

長門、冷静な意見をありがとう、しかし終戦後の俺に対する暴虐を阻止するよりもハルヒの俺に対する侵略決議の発動を阻止して欲しかったな

 

ってゆーか俺の敗戦は既定事項かよ?そうだよな、ハルヒだもんな・・・

 

「当たり前でしょ!今日の活動は”キョン狩り”なんだから!」

 

だめだ、今のこいつは旧ソ連や中共、北鮮を上回るほどの悪の枢軸と化している、国連決議如き念仏では止められん

 

「いい!キョンを狩って最後に生き残っていたのが勝者だからね、お互い恨みっこ無しよ!」

 

そういうわけでハルヒの勝手な開戦通告で俺に対する狩りが始まってしまった

 

物理的に狩られるんじゃないことだけが救いだが、負ければ結果は似たようなものになりそうである

 

俺はちらと周囲を見回した

 

戦いに勝つには敵を知り己を知ることが第一歩、これは今昔不変の鉄則である

 

まず朝比奈さん、彼女にだけは負けてもいいのだが、いかんせん弱すぎて負けようとしても勝ってしまうだろう

 

次に古泉、こいつにだけは絶対に負けてはいけない、貞操の危機を感じる、しかしこいつはゲーム全般について基本的に雑魚なので大したことはあるまい

 

そしてハルヒ、「元気、狩る気、殺る気」のオーラを全身から迸らせているが実はこいつも雑魚だ、なにしろ突撃前進馬鹿だからな

 

しかし最後のお一人が問題である

 

誰あろう我らが長門有希嬢である

 
 
 
 
 
 

ぜんぜん勝てる気がしねえ!(悲鳴

 
 
 
 
 
 

まるでLv01の勇者が棍棒だけでアークデーモンに立ち向かうような気分だぜ

 

長門が相手では俺1万5千隻vs長門3千隻でも勝ち目はあるまい、長門が1千隻でやっと引き分けくらいかもしれない?

 

つまりこの戦いは俺対長門の一気討ちとなる、しかも3倍の戦力の俺に勝ち目が無いのがわかっているという一騎打ちだ

 

普段は役立たずなくせにこういう自己保身の時だけは諸葛孔明の如き切れ味を見せる俺の灰色の頭脳が結論を弾き出した

 

本当の戦いは俺と長門の間の終戦交渉となる

 

長門はハルヒのような理不尽は言わない、その点は信頼しているのだが引き換えに俺が腎虚になる可能性が極めて高いのだ

 

俺が既に負ける覚悟をしているうちにゲームルールが勝手に決まった

 

・索敵モードは全員ON、相手を解除するのは自由
・俺艦隊1万5千隻vsハルヒ連合4艦隊総数2万隻
・俺を潰して最後に生き残った奴が植民地権を獲得

 

「じゃあ行くわよ!」

 

いじめ開始である・・・

 

 

「有希、分艦隊で索敵お願いね」

 

「了解」

 

やはりそうきたか

 

あの戦術は長門以外実行不可能だ、これで事実上ハルヒ連合の索敵モードはOFFになったも同然だ

 

まさしく狩りである

 

しかもそれで長門の戦力を分散消耗させて俺を仕留めた後は長門を始末しようと考えているのだろう、この悪女め

 

とにかく分艦隊を1つだけつくり索敵艇を発進させた

 

誰に勝つか?ではなく、誰に負けるか?が重要なのだ

 

何があってもハルヒと古泉に負ける事だけは回避しなければならない

 

逆に長門と朝比奈さんになら負けてもいいや

 

朝比奈さんに負けたら新しい世界を見れるかもしれない?

 

いやいや、決してあーんなことやこーんなこと♪だなんて言ってないぜ(笑

 

しかし朝比奈さんにわざと負けても、その後朝比奈さんが瞬殺されるのは目に見えている

 

それに朝比奈さんとしてあーんなことやこーんなこと♪な新しい世界に行ったら、その後俺があの世に逝くのは既定事項になってしまうだろう

 

誰の手でとはあえて言わないが・・・

 

つまり選択肢は長門しかない

 

情報は命だ、そのためには多少の犠牲はやむを得ない、俺は非情な決意を固めた

 

分艦隊の索敵艇で探索範囲を広げながら本隊を後退させる、つまり分艦隊を生贄にするのだ

 

少しでも時間を稼いでおきたい

 

しかしその願いも空しくあっさりと発見された

 

「目標を発見、砲撃開始」

 

長門のクールな声にハルヒが歓声を挙げる、しかしそれは一瞬で悲鳴に変わった

 

「でかしたわ有希!・・・ってああ、何やってんのよ!なんであたしが被弾するのよ!?」

 

ハルヒの艦隊がボコられているらしい、どういうことだ?

 

「あなたの艦隊が目標との射線上に『たまたま偶然』いただけ」

 

「奇遇ですね、僕の射線上にも『たまたま偶然』に涼宮さんの艦隊がいますよ」

 

二人とも『たまたま偶然』を強調して言う、わかりやすいなおまえら(笑)

 

「ちょっとやめなさ・・・ああーーーー!」

 

あぼーん

 

ハルヒ旗艦轟沈、ざまーみれ

 

その間に俺の本隊は距離を稼ぎ、さらにもう一つ囮の分艦隊を切り離した

 

「目標発見、砲撃開始」

 

「おやおや次は僕が巻き添えですか?」

 

古泉は自分の運命がわかっていたのかのように笑う、そのとおりだ、あきらめろ

 

アボーン

 

古泉旗艦轟沈、これで俺の貞操の危機は回避された、ありがとう長門!

 

その後、描写する暇すらなく朝比奈さんが瞬殺されて予想通り俺と長門の一騎打ちになった

 

 

さてどうするか?

 

俺は2個分艦隊を犠牲にして生き残った、残存戦力は1万4千隻である

 

俺の放った分艦隊の尊い犠牲は無駄ではなかった

 

撃沈される寸前に長門の本隊を発見することに成功していたのだ

 

長門本隊はやはり500隻だった

 

長門の腕前からして総数は5千隻のまま無傷であろう

 

しかも本隊が500隻しかいないということは全て分艦隊化されているのはほぼ確実だ

 

つまり長門艦隊の状況は500隻×10個艦隊である

 

この戦況をどう考えるか?

 

1万4千隻vs5千隻と考えるか、それとも1万4千隻vs500隻と考えるか

 

俺は即断した、天は我に味方した、突撃あるのみ!

 

長門の命が情報なら、俺の命はスピードだ!

 

時間を与えれば確実に包囲され俺に勝ち目はなくなる、腎虚はまずい!

 

今、持ちうる戦力の全てを長門の本隊一点にだけつぎ込んで戦えば勝てる、繰り返すが腎虚はまずい!

 

もしも他の分艦隊に進撃を阻止されても500隻単位であれば突破可能だ、しつこいようだが腎虚はまずい!

 

今しか勝機は無い!とにかく腎虚はまずいのだ!

 

 

しかし結果論的にいうと正気が無いのは俺のほうだった

 

俺が自分の考えが浅はか過ぎたことを知ったのは、いきなり索敵モードが解除されてからだった

 

どうやら長門はほとんどは戦闘に参加せず、俺の索敵範囲外から包囲を進めていたらしい

 

恐ろしいことにハルヒ達の艦隊をしとめたのは長門本隊だけだったのだ

 

正確無比な射撃で連中の旗艦だけをドット単位で狙撃するとは・・・ゴルゴも真っ青だぜ

 

俺がハルヒと古泉と朝比奈さんが撃沈されるを見てほくそえんでいた間、ずっと密かに包囲されていたのである、なんというマヌケな話であろうか、いやない

 

反語まで使って嘆いている俺に長門は索敵モードのOFFという大サービスで力量の差を教えてくれた

 

よほど自信があったのだろう

 

俺の艦隊を中心に綺麗に真円を描いた包囲陣が形成されていた

 

戦力の差を戦術でひっくり返せることを思い知らされた瞬間だった

 

そして虐殺が始まった

 

全方位からの射線が俺の艦隊上でクロスする

 

終わった、そう思ったね

 

しかし俺が見たのは自分の轟沈ではなく信じられない現実だった

 

長門の艦隊が一斉に消え、俺の画面に「YOU WIN!」の文字が躍っている、なにが起こったんだ?

 

意味不明な展開に目を丸くする俺の耳に長門の声が響いた

 

「・・・うかつ」

 

長門の布陣は完璧だった、それなのになぜ?

 

その完璧さこそが長門の自滅を招いたのだった

 

完全な対称形に配置された艦隊からの砲撃は俺の艦隊を虐殺しながら貫通し、反対側のお互いの艦隊を全滅させていた

 
 
 
 
 
 

奇跡が起こった

 

 

「あ〜あ、信じらんないなぁ、有希がキョン如きに負けるなんて」

 

ハルヒがぼやく、悪かったなキョン如きで

 

「まあまあ涼宮さん、彼が勝ったというよりも長門さんが自滅したのですから」

 

にやけ仮面がハルヒのご機嫌をとる

 

ああ、そうだよ、その通りだよ、俺が勝ったんじゃないさ、それが真実さ

 

「ふぇ〜あたしなんだったんでしょう?」

 

俺にもわかりませんよ朝比奈さん

 

「自滅でも負けは負け」

 

クール過ぎる長門、しかしオーラが黒い

 

「とにかくキョン!有希をあんたの言いなりになんかさせないんだからね、このケダモノ!」

 

いきなりケダモノ呼ばわりですか?おまえが俺をどう思っているのかよくわかってるぜ

 

「キョンが勝った以上このルールは無効よ、無効!」

 

ええ、そうでしょうねぇ、ご心配なくもう慣れっこですから

 

「やれやれ」

 

俺の溜息を合図に本日の活動は解散となった

 

 

そして今、俺は長門のマンションの前にいる

 

俺はあの後長門から携帯で呼び出しを受けた

 

理由はなんとなくわかるなぁ・・・

 

長門的にあの自滅はよほど自分に腹が立ったらしい、無理も無い

 

しかし正直怖い

 

別れ際に長門が醸し出していたオーラはハルヒすらびびらせるものだった

 

朝比奈さんは失神寸前となり、ハルヒと古泉に助けられて帰って行った

 

その長門からの呼び出しなのである

 

何が起こるかわからない、確かなのは長門が怒っていることだ

 

まさかと思うがドアを開けたら朝倉モードの長門がナイフ片手に待っているかもしれない

 

もしもそうなら「マジでくたばる5ミリ秒前」である

 

覚悟を決めて長門の部屋をコールする

 

「・・・・・・・・・入って」

 

長門のクールな声がいつも以上にクールに聞こえる、俺は確信した、終わりだ・・・

 

13階段を登るような気分でエレベーターに乗り込み、長門の部屋の前に立った

 

ノックもしていないのにドアが開いた、どうやらお待ちかねだったらしい

 

「・・・」

 

無言の3点リーダーで長門が入室を促す、その手には銀色に光る細長い物が・・・

 

さよなら母さん、そして妹よ、兄はもうお別れです

 

「馬鹿なこと言ってないで早く入る」

 

死刑執行人の絶対零度の声が俺を処刑室へと追い立てる

 

部屋の中に通されるとコタツの上に一枚の紙が用意されていた

 

「負けは負け、私は事実から逃げたりしない」

 

長門の冷徹な声が俺の背中に浴びせかけられた

 

「私はすでにあなたへの降伏文書に調印した、だからあなたもサインして」

 

その紙にはこう書かれていた

 

『私はあなたのものになります』

 

そして長門は銀色に光るペンを俺に握らせた

 

次の瞬間、俺は光速でサインをすると長門にルパンダイブした

 

ああ、そうさ、俺はケダモノさ、夜の狩りの始まりだ!

 

 

翌朝

 

腎虚の危機は回避したが太陽が黄色く見えることに変わりはなかった

 

夜の戦争でも俺が勝利した、もっともこっちはいつも俺の勝ちなのだが

 

俺の腕枕で寝ていた長門が目を覚ますと居間に行く

 

長門、いくら未来の夫婦とはいえせめて下着はつけようぜ、脱がした俺がいうのもなんだけどな

 

長門は昨夜の降伏文書を片手に戻ってきた、なんのつもりだろう?

 

疑問をよそに長門は微妙にずれて重なり合った2枚の紙の上側をめくりあげた

 

「負けは負け、あなたもは事実から逃げたりしないで」

 

俺の脳裏にある言葉がフラッシュバックした

 

『負けて勝つ』

 

長門がめくりあげた降伏文書の下には二人のサイン済みの婚姻届が隠されていた

 

やっぱり狩られたのは俺の方でした

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:52 (2624d)