作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと大掃除
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-12-28 (木) 21:01:45

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

今年も『師も走る』と言われるほど忙しい月の中でも、
多忙の極みに至る年末がやってきた。

 

赤点という対戦車地雷をかろうじて飛び越えたテストや、
鶴屋さんのみに受けたクリパのネタなど、数多の苦難を乗り越え、
心身ともに疲れきった俺は、来る鶴屋さんの別荘年越しイベントを前に、
しばし休息の時間を……

 
 

「キョンく〜ん、つぎはこっちのまど〜」

 
 

「はいはい……」

 

妹の指示に従って自分の持ち場を離れる俺。
やれやれ……どうやら俺に安息の時はないらしい。

 

「したのほうはふいたよ〜」

 

「そうか、えらいな」

 

確かに窓の下部、妹がギリギリ届く範囲だけ、
ちゃんとピカピカになっている。
窓拭き用洗剤のCMに出てきそうな見事なコントラストだ。

 
 
 

……さて、ここまでくればもう分かると思うが、
俺は今、おそらくこの国のほとんどの家庭で行われている、
年末のイベントをこなしている。

 
 

つまり、絶賛大掃除中だ。

 
 

昨日の晩飯時に、
妹とシャミセンを連れて鶴屋さんの別荘に、
年越しで宿泊することを告げると、
母親が『なら、掃除してから行け』と言い出した。
当然のごとく反対意見を言おうとした俺の口を、
『そういえば、テストどうだったの?』の一言で黙らした母親は、
只今フローリングと格闘している。

 

そういうわけで、仕方なく俺は年中無休フル稼働の妹とともに、
家中の窓拭きの任に当たっていた。

 

とはいえ、母親が小まめに掃除をしているし、
俺自身もどちらかと言えば、部屋は片付ける方なので、
そんなに苦労することは……

 
 

「ほらみて、きょんく〜ん。てがたくっきり〜」

 
 

あぁ、そうだな……
拭きたてだもんな。
そりゃ手形もくっきり残るな……

 

思わぬ邪魔っ娘の活躍を目にした俺は、我が妹を断腸の思いで、
『シャミセンが暴れないよう監視する係』に左遷し、
昼過ぎまで一人黙々と作業を続けることにした……

 
 
 

ようやく、ほとんど作業も終了させた俺は、
ついで、ということで鶴屋家別荘地合宿の用意もすることにした。
とりあえず替えの衣類や、往復の交通費、シャミは……まだいいか。
スキー用具……も現地でレンタルできるだろ。
あと他に……

 

……だめだ。
他に何を持っていけばいいのか浮かばない。
そもそも、ハルヒ主催という時点で、
遭難や津波、隕石落下などに備えなければならない気がする。
まぁ、何かあったら我らが万能文学少女の長門が……

 

……って、そうだ。長門に聞いてみよう。
あいつなら、ありとあらゆる可能性を判断して、
的確な助言をくれるだろう。

 

そう思った俺は、
早速長門に電話をかける事にした。
え〜と、長門の番号は……これだな。

 

『なに?』

 

コール音無しで出るとは……
さすが宇宙人製インターフェイスだな。
ただ、なるべく『もしもし』と言っていただきたい。

 

『もしもし……』

 

いや、最初に言ってもらいたいんだが……
俺からの電話ってことは分かってるんだろうけどな。

 

『そう……』

 

「まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。
ちょっと聞きたいことがあってな……」

 

『なに?』

 

「今度の合宿に持って行った方がいいものなんだけどな……」

 

そうして俺は、
自分が用意したものを順に報告していった……

 
 
 
 

「……と、まぁこんなもんなんだが、
他になんか足りないものとかあるか?」

 

『……おそらく、それで問題ない』

 

「そうか?」

 

『心配?』

 

あの超高気圧ハレハレ娘がいる時点で、
心配や不安がダース単位で付きまとうんだが……

 

だが、そんな俺の暗雲立ち込める心に、
長門の言葉によって光が差し込んだ……

 
 
 

『大丈夫……私がいる』

 
 
 

……そうだな。
長門なら何が起きても何とかしてくれるだろう。
それに長門だけでなく、
俺や役に立つかどうか分からないが朝比奈さんや、
古泉もいるわけだしな……

 
 

「何とかなるか」

 
 

『なる』

 
 

そう返事をした長門の声が、
少しだけ自信ありげに聞こえたのは、
俺の気のせいではないだろうな……

 
 
 
 

「アドバイスありがとな。
おかげで気が晴れたよ」

 

高校生の言うセリフではない気もするが、
それはきっと気のせいだ。

 

『いい……当然のことをしたまで』

 

お前はどこの正義の味方だ。
いや、助けてくれたのは感謝してるぞ?

 

「何か礼でも……」

 

『いい』

 

「いや、いつも助けられてばかりだし……」

 

『気にしていない。当然のこと』

 

そうは言っても……
って、そうだ!

 

「なぁ、長門」

 

『なに?』

 

「お前……大掃除もうやったか?」

 

『おおそうじ?』

 

「え〜と、年末の恒例行事みたいなもんだ。
大体大晦日までには終わらせないといけないんだが……」

 

どうやらすごい知識を持つ情報何とか体は『大掃除』を知らないらしい。
それとも連中(?)には不要な概念なのか……

 

『やっていない』

 

知らないならやってるわけがないか。
まぁ、知っててもやってない家庭もあるだろうが……

 

「そうか……なら、礼代わりと言っては何だが、
お前の家の大掃除を手伝わせてくれないか?」

 

『いい……あなたに迷惑がかかる』

 

謙虚なことはいいことだが……
……あれ?俺もしかして嫌われてるのか?
それとも単に気を使ってくれてるのか……

 

「気にするな。
俺が『やりたい』って言ってるんだし、
こういう時は『お言葉に甘えて』って答えるもんだぜ」

 

『……』

 

さすがの長門表情リーディングA級の俺でも、
電話越しに表情を判断するのは無理だ。
というか、本当に嫌われてるんじゃないかと心配になってきたぞ。

 

やがて、数日のような長さの数秒が経ち、
冬真っ盛りなのに汗をかく俺の耳に、
長門の静かな声が聞こえた。

 
 

『わかった……あなたに甘える……』

 
 

……若干セリフがおかしい気がするんだが……
いや、深くは考えまい。考えるんじゃないぞ俺!

 

「あ、あぁ……
じゃあ、今から行くことにするよ……」

 

『待ってる……』

 

その言葉だけでやる気が沸いてくる……
そう思った俺は、早速長門の家に向う事にした……

 
 
 
 

部屋で読書をしていると彼から電話が掛かってきた。
もちろん瞬時に応答する。

 

どうやら彼は合宿に関して不安があるらしい。
ここは頼りになる女……エラー……仲間として、
彼の不安を取り除くことにする。

 

私の助言が有効であったのか、
彼はしきりに礼を述べてきた。
嬉しい。やはり彼は優しい。
しかし、礼など受け取るとがめついと思われてしまうかもしれない。

 

そう思い遠慮していると、
彼が不意に『おおそうじ』という言葉を使った。
何のことかは分からないが、
どうやら私の家で何かしてくれるらしい。

 

垂涎ものの……エラー……ありがたい申し出だが、
断ることにする。
しかし、彼は『気にするな』と言ってくれた。

 

……ちょっとくらい甘えてもいいだろう……

 
 

しかし、今私の部屋は読み終わった本が積んであり、
見栄えがよくない……

 

そうだ……彼が来る前に……

 
 
 
 

いつもの半分くらいの時間で長門のマンションについた俺は、
早速長門にエントランスホールのドアを開けてもらい、
何度かお世話になった708号室に向った。
この呼び鈴も何回押したのやら……

 

『……』

 

「俺だ」

 

『入って……』

 

史上コレほど淡白な挨拶もないだろうと思いつつ、
とにかく今日は日頃の感謝もこめて気合入れて掃除してみるかと決心しつつ、
でも、長門の部屋は割ときれいにしてあるもんな〜などと考えつつ……
とにかく俺は様々な思いを胸に長門の部屋のドアをあけた。

 
 

「……」

 
 

これは俺の3点リーダだ。

 

「ようこそ……」

 

お出迎えありがとな長門。
ただ、ちょっと聞きたいんだが……

 

「なに?」

 

「コレは一体……?」

 

「……変?」

 

いや、変じゃないぞ。
まったく変じゃないぞ。

 

「先ほどあなたが私の部屋に来ると連絡をした」

 

あぁ、したな。
現に今、俺がここにいるもんな。

 
 

「だから……」

 
 

そう言うと長門は、
自分の部屋を指してこう続けた。

 
 
 

「部屋を掃除してあなたを待っていた……」

 
 
 

そこには、いつも以上にピカピカになった長門の部屋があった……

 
 
 
 

彼の話によると、
『おおそうじ』という物は、
掃除のことらしい。
それを知らずに一人で張り切って掃除をしてしまった。
……迂闊。

 
 

でも、そのあと二人きりで話が出来たから……
『おおそうじ』には感謝すべきだと思う。

 
 
 

教えてくれなかった思念体は後で……

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:51 (2713d)