作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと嘘発見器
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-12-19 (火) 23:43:27

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

せっかく金を払い、時間を割いてまでやって来て、
結局何一つ頭に残らないであろう授業を受けきった俺は、
もはや朝起きて顔を洗うような自然さでSOS団の根城へとやってきた。
そして、いつものようにドアをノックし、
中におわす天使の承諾を得てから、俺はゆっくりとドアを開き、
麗しのメイドと寡黙な読書少女、ついでにニヤケ面に挨拶をし、
朝比奈さんから霊験あらたかなお茶を貰い、
長門が昨日と違う本を読んでることを確認し、
古泉が用意したボードゲームの前に座った。

 

おそらくここまでの一連の動作なら、
もはや目をつぶったままでも行える自信がある。
いや、授業中は常に目を閉じてる気もするが……

 

そんな風にぼんやりと考えていると、
目の前のエスパーが駒を並べながら話しかけてきた。

 

「今日は涼宮さんはまだですか?」

 

相変わらずセッティングだけは上手いな……
やり込んでいる様子が見受けられるが、
残念ながら勝利の女神はお前には近寄りたくもない様だぞ。

 

「あいつなら、もう少しで来るだろ。
心配しなくても奴ならノロウイルスに感染したって、
平気な顔でぴんぴんし……」

 
 

「やっほー!!みんないるー!?」

 
 

……ほらな。
こいつが学校を休むのは日祝日くらいなもんだ。
わざわざ律儀に毎日来やがって……
俺も人のこと言えないけどな。

 

「見りゃ分かるだろ。今日も欠員無しだ。
それよりいい加減ドアをぶち開けるのはやめろ。
壊れたらどうすんだ」

 

「あら、そんなの設備投資しないこの学校に問題があるわ。
か弱い女の子が開けただけで壊れるドアなんて不良品よ」

 

この室内で『か弱い』のは朝比奈さんだけだろう。
イメージで言うと長門もそうなるかもしれないが、
少なくともお前は、『か弱い』という言葉から、
宇宙の端から端よりもはるかにかけ離れている。

 

「そんなことより、今日はいい物持ってきたのよ」

 

そういってハルヒはカバンからガサゴソ何かを探し出した。
とりあえず、谷口のアホにアホ毛が生えた程度の俺の頭脳でも、
ハルヒの言う『いい物』が決して良い結果をもたらすことなど、
宝くじ3年連続1等前後賞を頂くよりありえないと分かっているわけで……

 

「わぁ〜、なんですか〜?」

 

あぁ……この純真無垢な先輩は、
それでもハルヒの『いい物』に期待してらっしゃる。
というかあなたが被害に会う確率が最も高い気がするのに、
この人には人懐っこい犬ほどの警戒心もないのだろうか。

 

「ふっふ〜ん。何だと思う〜?」

 

無意味に焦らすな。
お前はどこの実は複数人いると疑われている司会者だ。
だが、このせっかち娘が答えを出すまで
CMを2回挟むほど焦らす事などできるわけもなく、
また、天然メイデンまっしぐらの未来人が答えを出せるわけでもないので、
ハルヒはあっさりとその『いい物』とやらをとりだした。

 
 

「じゃーん!!」

 
 

今時そんな効果音がどれだけ使われているのか知らないが、
そんなことよりもさらに突っ込むべき事があった。

 

「……何だ、それ」

 

ごく真っ当な俺の疑問に、
目の前の万年夏真っ盛りなパラダイス娘は、
元気一杯に答えた。

 
 
 

「もちろん、嘘発見器に決まってるじゃない!!」

 
 
 

……おい、これは『機関』とやらの仕込みか?

 

……いいえ、今回僕達は何もしていません。

 

……なら、朝比奈さn……だめだ。興味津々で眺めてらっしゃる。

 

……長門さんも興味があるようですよ。

 

……ほんとだ。珍しく本から目をはなしてやがる。

 
 

ハルヒの宣言からおよそ3秒の間に、
横にいたエスパーとわずかな視線で会話を成立させた俺は、
いまだ自信満々な表情をしている団長様に尋ねてみた。

 

「そんな物、一体どこで手に入れたんだ?」

 

「近所のおもちゃ屋よ。
年末セールで300円位だったわ」

 

値段を聞くと余計に胡散臭くなるな。
いや、もう見た目でどこぞの地獄に落とす占い師や、
スピリチュアル何とか並に胡散臭いが。

 

「で、その嘘発見器とやらで何をしようってんだ?」

 

「それは今から考えるの。
とりあえずキョン!」

 

「なんだ?これを着けろってんなら断r……」

 

「着けなさい」

 

こぉとわるっ!
お前が買ってきたんだからお前がつけろ。
それか他の連中に……

 

その時、俺は始めてハルヒ以外の視線を感じ取った。
……何やら3人とも困った顔をしている。
長門でさえ俺に分かるように困った顔をしてるんだから、
よほどやばいことなのか……

 

あぁ、そうか。
こいつらみんなハルヒに隠し事してるもんな。
こんなショボイ機械とはいえ、ばれたらマズイもんな。
わかってますよ朝比奈さん、大丈夫だ長門。
古泉はどうでもいい。

 

「わかったわかった。
着ければいいんだろ?」

 

「あら?やけに素直ね」

 

何だそりゃ。
もっと派手に抵抗して欲しいのか?

 

そう文句を言いたい気持ちを抑えて、
俺は大人しく怪しげな機械を指につけることにした。

 
 
 

ハルヒが買ってきたこの嘘発見器とやらは、
指に端子をつけて、相手がする質問に全て『いいえ』で答える事で、
汗だのなんだのを感知して……まぁ、とにかくよくあるおもちゃみたいなもんだった。

 

「それじゃ、まず質問その1」

 

……『その1』って、ことは何問あるんだ?
とにかくこいつが考えたというだけで、
嫌な予感がするんだが……

 

不安な俺を尻目に、
ハルヒは何やら紙束を見ながら、
質問という名の尋問を開始した。

 
 

 Q.1 ベッドの下に何かおいてある

 
 

「……『何か』って何だ、『何か』って」

 

「うるさいわね。とっとと答えなさい」

 

ったく、いきなりなんて質問しやがる。
だが、残念ながら俺の部屋のベッドの下はただの空間だ。

 

「いいえ」

 

「…………」

 

この3点リーダは長門のものではなくて機械のものだぞ。
どうやら、誤作動は起こしてないみたいだ。

 

「おかしいわね〜壊れてんのかしら?」

 

どういうことだ、それは。
お前の中では俺の部屋のベッドの下には、
パラダイスが広がってることになっているのか?

 

「う〜ん、『ベッドの下』じゃないのかしら?
本棚の辞書ケースの中とかかしr……」

 

「もっとマシな質問はないのか?」

 

あまり探られるといろいろ困る。
その辺は『諸事情』って奴だ。

 

「うるさいわね〜、分かったわよ。
じゃあ……」

 

そういうとハルヒは紙束をペラペラめくりだした。
何やら小さい字でいろいろ書いてあるんだが……

 

「ん〜、これなんか良いかしら?」

 
 

 Q.749 ポニーテールが好きだ

 
 

「おい、ちょっと待て。
『749』ってなんだ、『749』って」

 

「質問番号に決まってるじゃない」

 

一体何問あるんだよ……
まさかそれ全部俺への質問か?

 

「違うわよ。これはほんの一部。
まだあたしのカバンに3束くらいあるから」

 

その情熱をもっと他の事に向けてくれ。
お前なら多大な功績を残せるだろうよ。
もしかしたらイグノーベル賞くらいならもらえるかもしれないぜ?
いや、むしろハルヒ賞を創設できるくらい偉大な発明を残せるかもな。

 

「そんなことはどうでもいいから、
早く答えなさい」

 

「……いいえ」

 

「……ピッ」

 

おぉ、ちゃんと鳴るんだな。
意外と優秀なのかもしれないな。

 

「ふーん、やっぱりね……」

 

何が『やっぱり』だ。
その事実はお前の夢の中で仕舞っててくれれば良いものを……

 

「じゃあ、次は……」

 
 
 

結局、俺がこの機械と取調べから解放されたのは、
それから1時間半後のことだった……

 
 
 
 

「う〜ん、もうちょっと聞きたいこともあったんだけど、
これくらいにしとくわ」

 

3桁も質問しといて言うセリフじゃないな。
おかげで俺のプライベートが丸裸だぞ。
いくら朝比奈さんや長門のためとは言え……
このツケは賭け将棋で古泉からたっぷりせしめてやろう。

 

とにかく俺の尊い犠牲により何とか事なきを得て、
今日も無事家に帰れる……
そう思った俺達に、ハルヒがとんでもないことを言い出した。

 
 

「まだ時間あるし……もう一人くらいやってみない?」

 
 

途端に凍りつく室内。
朝比奈さんなんかこれ見よがしに焦っている。
長門も微妙に落ち着かない様子だ。

 

「でも、もう時間がありませんよ」

 

さすがに普段はハルヒ専属イエスマンのエスパーも、
今回は賛成できそうにないらしい。
だが、この暴虐娘が空気を読むことなどできるわけはなく、
嬉しそうに薄い紙束を取り出した。

 

「大丈夫。
みんなへの質問は少しだけだから」

 

なんだ、その待遇の差は。
俺だけは完全に聴聞会並の量だったぞ?

 

「で、でも〜」

 

ほら、朝比奈さんもこう言ってるんだから、
今日はお開きにしても……

 

「だーいじょーうぶ。
すぐ終わるわよ。じゃあ、一体誰に……」

 

そういうと、ハルヒは獲物を狙うマンティコアのように、
他の3人を見比べていた。
ハルヒ自身がつければいい、という提案は当然却下されるだろう。
かくなる上は、朝比奈さん以外なら何とか……

 

「みくるちゃん……」

 

「ふにゅっ!?」

 

やめてくれ!!
絶対喋っちゃまずいこと喋るから。
ほら、横のニヤケ面が変な汗かいてるし、
読書娘が俺に分かる程度にハラハラしてるじゃねーか。

 

「……は、こんなもの使わなくても何となくわかる気がするわ。
やっぱりいつも何考えてるか分かりづらい方が良いわよね……」

 

とりあえず、地球に太陽衝突並の危機は避けられたが、
ハルヒは楽しそうに、木星衝突並の事を言い出した。

 
 
 

「決めた!有希にやってもらうわ!!」

 
 
 

「…………そう」

 

長門はいつものような声で答えた。
とはいえ、俺には分かる。
今、この無表情娘は相当焦っている。
もしかしたら本を逆さまに読んでるんじゃないかって言うくらい、
ベタな感じで焦っている。

 

「それなら、僕が……」

 

「いいのよ、有希にやってもらったほうが面白そうじゃない」

 

「バカを言うな。
長門にもプライバシーってもんがあるだろ」

 

「なによぅ」

 

アヒル口してもダメなもんはダメだ。
せっかく古泉が申し出てくれたんだからこいつに…

 
 

「いい……やる……」

 
 

……長門?
いつの間にか端子を指につけていた長門は、
今にも俺の首に直接掴みかかろうとしたハルヒを制して言った。

 

「しかし……」

 

「あらそう?
じゃ、さっそく有希の分の質問取ってくるわね」

 

そう言って嬉々として自分のカバンに向かうハルヒ。
だが、本当にいいのか?

 

お前が嘘をつけるとは思えないが……

 
 

「大丈夫……情報操作は得意」

 
 

……それ、本当に大丈夫なのか?
一抹どころじゃない不安を感じながらも俺は長門を信じることにした。

 
 
 
 

「じゃ、時間もないしちゃっちゃと始めるわよ」

 

そうだな、さっさとやってさっさと終わらせてくれ。
一応古泉が『何かあったときのために』とか抜かして、
いろいろ準備しにいったようだが、早く終わらせてしまえば、
何も起こらないだろう。
それに長引けばその分だけ俺達の胃に悪影響がありそうだからな。

 

「それじゃあ……まずはこれかな?」

 
 

 Q.1 読書が好きだ

 
 

「いいえ」

 

「ピー!!」

 

やっぱり本は好きなんだな。
というかこの機械がものすごく反応してるのは気のせいか?

 

「そりゃ、本が嫌いなら文芸部に入らないもんね。
じゃ、次はこれね」

 
 

 Q.2 SOS団が好きだ

 
 

「いいえ」

 

「ピー!!!!!!!!!」

 

先程より大きく反応してる気がする。
まぁ、これでもし長門がSOS団を嫌っていたら、
果てしなく空気が冷えるわけで……
って、もっとマシな質問はないのか?

 

「うんうん、それでこそSOS団員よ!
じゃ、次これね〜」

 

随分嬉しそうだなお前……
まぁ、俺も長門がSOS団を好きでいてくれてるのは嬉しいが……
などと、余韻に浸る時間もなく、次の質問が出された。

 
 

 Q.3 たまに視界に入ってくる巨乳が目障りだ

 
 

「は……いいえ」

 

「……ピ?」

 

今、『はい』って言おうとした気がするが……
機械も判定に困ってるじゃないか。
あと、朝比奈さんおびえすぎです。

 
 

「なるほどね〜じゃ、次は『ホルスタインみたいなメイドが邪m……』」

 

「もっと他の質問はないのか?
時間もないんだしとっとと終わらせてくれ」

 

「うるさいわね〜分かったわよ。
え〜と……やっぱりこれね」

 
 

 Q.4 キョンと何かあった

 
 

ちょっ、なんて質問しやがる!
さっきから『何か』ってなんだ『何か』って。
いらん誤解を受けるじゃn……

 
 

「……いいえ」

 

「ピピピピピピピピピピ……」

 

えーと、コレ電源はどうやって切ればいいのかな?
誰か俺に教えてくれ。それか代わりにOFFにしてくれ。
いや、もういっそハンマーで殴ってもいいぞ。
とにかくこいつを止めてくれ。

 

「あら、キョン……金づちが欲しそうな顔してるわねぇ〜
んふふ……あとでたっぷりあげるから待ってなさい」

 

あ〜ハルヒ?
なんと言うか、笑顔が怖いぞ?
ほら、もっと朗らかに朗らかに……

 

「待っててね……コレが最後の質問だから」

 

とにかく部屋から出ようとする俺の首根っこを握り締めたまま、
ハルヒは最後の質問とやらを口にした。

 
 
 

 Q.5 好きな男性がいる

 
 

「ブッ!!?」

 

こいつ、何と言うことを……
もしお茶を飲んでる最中なら、
まず間違いなく朝比奈さんの顔面にスプレーしてたところだぞ。

 

……いやまぁ、興味が無いといえばウソになるけどな。

 

だが、長門の答えに俺はさらに驚くことになった。

 
 
 

「……はい」

 
 
 
 

「え!?」

 

「は!?」

 

「え〜!?」

 
 

三者三様に驚いたわけだが、誰が誰か分かるかな?
……って、そんな場合じゃない。

 

「も、もう、有希ったら……ちゃんと『いいえ』って答えないとダメじゃない」

 

「そ、そうだぞ。ここは『いいえ』と答えて反応をだな……」

 

自分で言っててなんだが、
『はい』と答えても機械が反応しなければ、
ウソじゃないってことだよな……

 

俄かに焦りだした室内と対照的に、
長門はいつものように淡々と続けた。

 
 

「『いいえ』と答えた場合、機械が反応しても、
『いないわけではない』という風に、曖昧に伝わる可能性がある」

 
 

その辺の微妙なニュアンスの違いはどっちでもいいと思うぜ。
別にこの部屋には細かいことを気にするような人間がいるわけでもないしな。
そんな俺に対し、長門ははっきりとこう答えた。

 
 
 

「本人の目の前で曖昧な事を言うわけにはいかない……」

 
 
 

え〜と、『本人』って一体?
この部屋で質問の答えになる可能性といえば、
約1名しかいないような気がするんだが……
というかなんでそんなに俺を見つめてるんですか?
長門さんのぱっちりな瞳が良く見え……

 
 

「ふ〜ん……や〜っぱり、そうなんだ……」

 
 

あれ?ハルヒさん?
なんだか笑顔が怖いですよ?
って、そんな握り締めたら機械が壊れ……

 
 

「キョン〜もう少しお話しましょうか?
コレ抜きで……」

 
 

そう言ってハルヒは壊れた嘘発見器を握り締めながら、
にこやかに歩み寄ってきた……

 
 
 
 

結局、俺が我が家に帰れるようになったのは、
それから4時間後のことだった……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:49 (2704d)