作品

概要

作者おぐちゃん
作品名ちびなが 12話
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-07-29 (土) 01:24:30

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 翌日のJR駅ホーム。SOS団員と俺の妹は、故郷に帰るちび長門を見送りに来ていた。
 カナダから帰国していた朝倉が、かつてのご近所さんのよしみで、ちび長門を親元に送ることになった……というのが、表向きの説明である。
 二人は既に特急列車に乗っている。朝倉の膝の上で、ちび長門は土産物でぱんぱんにふくれたボストンバッグを抱えていた。
 別れ際、妹は自分の宝物である絵本とぬいぐるみをちび長門に渡していた。ちび長門に手を振りながら、妹はぼろぼろと涙をこぼしている。
 やがて、列車が走り出した。
 ちび長門がいつもの表情のまま、ちょこちょこと小さく手を振る。列車が見えなくなるまで、長門はずっとそうしていた。

 

 すっかり元気をなくした妹を家に送り届けた後、俺は長門のマンションを訪れた。
 長門は、ちゃぶ台の前に腰掛けて本を読んでいた。そこにいるのは俺のよく知る長門有希だ。よかった、ちゃんと元に戻れたんだな。
 ところで、朝倉はどうした? 途中まで一緒だったんだろう。
「回収された」
 それは宇宙に帰ったって事か。で、喜緑さんは?
「元に戻った」
 じゃ、サバゲーマニアは。
「ひきこもった」
 つまり、何もかも元通りか。世はすべて事も無し。
 だけど、一つだけ違っていることがある。
 長門が読んでいるのは、いつもの辞典みたいに分厚いSFではない。
 妹が手渡した、『おしいれのぼうけん』という古い絵本。
 縁がぼろぼろにほころび、あちこちにクレヨンの落書きがある絵本のページを、長門は慈しむようにゆっくりとめくっている。
 ……長門にとって、この三日間が楽しかったかどうかなんて、聞くだけ野暮というものだ。
 そして、統合情報思念体がなぜあんな事をしたのかも、今ならわかる気がする。
 童心を知らない長門への、父親からのプレゼント。短くても充実した子供時代。
 だから長門。今度里帰りしたときは、パパにありがとうを言うのを忘れちゃいけないぜ?

 

 ……さて、読書を邪魔しちゃ悪いな。俺はもう帰ろう。その前に一言だけ。
「長門よ。妹がずいぶん淋しがってるんだ。
 また今度、あの格好で妹に会ってやってくれ」
 俺の言葉に、長門は本から目を上げてこっちを見た。
 もちろんこれは本音ではない。長門には、もっといろんなものを子供の目で見せてあげたかった。
 それに我が家なら、優しくしてくれるお姉さんがいるぞ。わがままを言いたりゃ言え。お兄さんがきっちり叱ってやるから。
 そんな俺の思いを読んだかのように、長門は少しだけ顔をほころばせて言った。
「……きっと。約束」

 

                             ちびなが  完

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:48 (3093d)