作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと腕章
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-12-11 (月) 22:45:18

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

将来必要になると言われても、
いつどこでどのように活躍するのか分からない平安時代の物語の話や、
10の23乗やアボガドがどうとかいう化学式や、グラフがどうのというお絵かきや、
天皇が京都にいた時代の話などを朝から6時間の拘束時間中に聞き流した俺は、
いつものごとく元文芸部室でニヤケ面とボードゲームに興じていた。

 

「はい、どうぞ」

 

あぁ、ありがとうございます朝比奈さん。
あなたの手ずからお茶をいただけるというだけで、
この部屋に毎日足しげく通うことに希望がわきますよ。

 

「あなたの番ですよ」

 

古泉うるさい。
俺は目の前の天使の麗しいお姿を網膜を通して、
脳内メモリーに焼き付ける作業で忙しいんだ。
ちなみにこの能力は勉学で発揮されることはない。
断じてない。はっきり言って皆無だ。ないないづくしだ。

 

「ほらよ」

 

とりあえず保存を一時中断して、
盤上のルーレットを回す。
……8か。ほい、株で大儲けで20万ドルの利益だ。
現実でもこう上手くいけばいいんだがな。

 

「さすがですね……僕は何故か手形だけが増えて困ってるんですよ」

 

なんて経営能力のなさだ。
将来ギャンブルにのめり込むんじゃないのか?
弱いくせに勝負を吹っかけてくるところを見ると、
あながち否定できないところだが。

 

「というか、お前とじゃまったく勝負にならんのだがな」

 

「それはあなたが強すぎるんですよ」

 

いや、お前が弱すぎるだけだ。
運も作戦も何もないとしか思えないぞ?

 

「もうちょっと鍛えてから来い。それか、誰か別の奴と……」

 

「そう言われましてもこの部屋で暇そうな人間といえば、
僕かあなたしかいないわけですが……」

 

確かに朝比奈さんはメイドとしてパタパタ忙しそうだし、
長門は無口読書娘としてペラペラ忙しそうだし……
ハルヒ?あいつは黙ってじっとしていてくれればいい。
今だっていつものようにマウスを持って、
じーっと長門のほうを見……あれ?

 

「うーん……」

 

いつの間にか我らが団長様は視線を人間製の情報端末から、
宇宙人製の情報端末に目線を向けていた。
しかも人差し指を唇の下につけて何やら思案中のご様子……
いくら俺の脳みそが赤点スレスレの成績を見て一念発起するも、
次の日からは変わらず元の生活を続けるほど学習能力がなくても、
この状況が何をもたらすかは想像がつく。
とりあえず余計な事を言わないように刺激を避け……

 

「?涼宮さん、長門さんがどうかしたんですか〜?」

 

……朝比奈さん……あなたには危機管理能力がないんですか?
ハルヒの考えていることをわざわざ尋ねるなんて、
剥き出しの地雷原に助走をつけてルパンダイブしてるようなものですよ。

 

「……」

 

先ほどまで黙々と読書に興じていた長門は、
朝比奈さんの言葉でようやく顔を上げた。
こいつはハルヒの突き刺すような刺線……視線が気にならないのか?

 

「うん、ちょっとね〜」

 

言いながらハルヒは、ああでもないこうでもないと、
またぶつぶつと考え始めた。

 

「……なに?」

 

さすがに気味が悪くなったのか、
それとも単に読書を再開したいのか、
今度は長門がハルヒに尋ねた。

 

「う〜ん……あたし思ったんだけどさ〜」

 

長門の質問に対し、ハルヒはまたもどうでもいい事を言い出した。

 
 
 

「有希にも何か役職が必要じゃない?」

 
 
 

役職?何だ??
長門に団長職を譲り、
この部屋を文芸部室に返すつもりか?
それなら生徒会の連中が喜ぶぞ。表面上は。

 

「団長はあたし!それにこの部屋はもうSOS団の所有なの!!」

 

こういうの何て言うんだったか……押しかけ強盗?
とにかく、この頭の中が常に夏真っ盛りな女は、
ここを立ち退く気はないらしい。

 

「ただ、SOS団の中で有希だけが何の役職にも就いてないのは不公平だと思うの。
だから何がいいかと思って……」

 

既に長門は読書マスコットとして君臨しているような気がするが……
それよりいつの間にか俺にも役職が与えられたらしい。
まったくの初耳なんだが一体どんな役なんだろうな?

 

「……彼は?」

 

そう言って長門が俺のほうを指差した。
どうやら俺の疑問を代わりに口に出してくれたらしい。
俺としてはあまり聞きたくはないのだが……
あと人を指差すのは止めなさい。

 

「キョン?あぁ、キョンは『SOS団専属雑用その他諸々一手に引き受けます役』よ!」

 

何だそれは。
お前は俺をただの雑用ではなく、
もはや便利な奴隷としか思ってないのか。

 

「あと、古泉君が『副団長』で、みくるちゃんが『メイド長』……
あと鶴屋さんが『名誉顧問』だからね!」

 

そういえばそんな役職が……
いや、メイドさんは一人しかいないのに『メイド長』はおかしくないか?
一人なんだからトップには違いないが。

 

「……」

 

自分で聞いておきながら、
特に何の反応も示さない長門をよそに、
ハルヒはどんどん続ける。

 

「だから、有希にも何か『役職』をつけたいのよ」

 

結局お前がしたいだけか。
まぁ、なんでもいいから変なのはやめろよ?
あと『雑用』も取り消していただきたい。

 

「……別にいい」

 

「だーめ!やるって言ったらやるの!!」

 

「急にそんな無茶を言うな。
長門も困ってるだろ」

 

と言っても、長門表情鑑定士特級の俺の脳内メモリーに、
この長門の困った表情はあまり保存されていない。
『あの』長門ならともかく……

 

「大丈夫……困ってはいない」

 

そこはフォローする必要ないぞ。
そんなことを言うからハルヒが元気を取り戻しちまったじゃないか。
今度から人心掌握術とか話術も学んだ方がいいと思うぜ。

 

「ほら、有希だってこう言ってるじゃない」

 

「だからってお前の思いつきで……」

 

「ねぇ、有希はどんな役職がいい?」

 

人の話は最後まで聞け。
小学校の通信簿にそんなこと書かれなかったか?

 

「う〜ん有希といえば読書だから『SOS団専属司書』?
それとも、ルソーを治してくれたから『SOS団顧問ドクター』かしら?」

 

長門ならドクターよりナースの方が似合うぞ。
Dr.ナガトーかナース長門か……
などとバカなことを考えてる俺の側で、
我関せずを貫いていたかのように見えた長門が、
突然俺の方を指差しこう言った。

 
 
 

「……彼と同じがいい」

 
 
 

えーと、俺と同じって……

 

「キョンと同じって……『雑用』がいいの?」

 

やっぱり俺は『雑用』か。
いや、今はそんなことを言ってる場合じゃない。

 

「彼と同じ……」

 

「で、でも有希に雑用をやらせるわけにはいかないわ」

 

俺ならいいのか、というつっ込みは止めておく。
どうせ言っても聞かんだろうけど。

 

「私は彼と同じ役職がいい……」

 

「だから、有希に雑用は……」

 

「別に『雑用』がしたいわけではない」

 

「?」

 

おそらく今の状況を視覚的に表すなら、
俺達の頭上には無数のクエスチョンマークが悠々と浮かんでいることだろう。
この無表情宇宙人とニヤケ面エスパーの言葉は難解なことが多いが、
今回も何が言いたいのかよくわからない……

 
 

だが、長門が続けた次の一言により、
頭上のはてなマークたちは一気に姿勢が良くなった。

 
 
 

「私は『彼と同じ』なのがいい……」

 
 
 

……えーと長門さん?
それは一体どういう……

 
 

「……『雑用』がいいのね?」

 
 

さすがハルヒ、頭の切り替えが早い。
ただ、何でそんな顔をしてるんだ?
せっかくの美人が台無しだぜHAHAHA……

 
 

「私は『彼と同じ』がいい」

 
 

今『彼』にアクセントがあった気がするぞ?
というかハルヒと長門以外の視線が痛い。
朝比奈さん怯えすぎですよ。
古泉……これ見よがしにケータイを取り出すな。
ケータイもこんな時に鳴るな。

 
 

「だから、キョンと同じ『雑用』でいいのね?」

 
 

「……『彼と同じ』雑用係がいい」

 
 

「『雑用』がいいのよね?」

 
 

……なんだか火花が見えるのは気のせいだろうか?
朝比奈さん震えすぎですよ。
古泉……いってらっしゃい。

 
 

しかし永遠に続くかと思われた睨みあい(と言っても睨んでるのはハルヒだけだが)は、
長門のダイレクトな一言で突然終焉を迎えた。

 
 
 
 

「私は『彼』がいい」

 
 
 
 

そう言うことは二人きりの時に言って欲しかったぜ……
ハルヒの右ストレートを喰らいながら、俺は密かにそう思った……

 
 
 
 

結局、二人とも折れたので、
長門の役職は俺が決めることになった。
痛む左頬をさすりながら、俺は平等に3人から案を聞くことにした。
ちなみに古泉は『バイト中』だ。

 

「え〜と、朝比奈さんは何がいいと思います?」

 

「え、あ、わたしはその〜」

 

そんなおっかなびっくりで見なくても大丈夫ですよ。
取って食われるわけじゃないんですから。

 

「えっと……じゃあ、やっぱり長門さんは頼りになるので……
『用心棒』さんはどうで……ひぃっ!?」

 

頼りになるのが用心棒って……いつの時代の人ですか?
あと、長門も気持ちは分かるが威嚇するんじゃない。
心底おびえてるじゃないか。

 

「じゃ、ハルヒはどうだ?」

 

「あたしはさっき言ったじゃない。
『司書』か『ナース』」

 

ふむ……『SOS団専属』やら何やらは取ったのか。
あと、『ドクター』じゃなかったのか?
まぁナース姿の長門は是非見たいが。

 

「それじゃあ、長門はどうだ?」

 

俺は最後に当の本人に聞いてみた。
なによりこの文学少女のことなんだから、
こいつの意見を最も重視すべきだろう。
誰だってそう思うだろう?
それが道理ってもんだ。

 

そう思って俺は聞くことにした。

 

今思えば、もうちょっと長門が言いそうなことに注意すればよかったかもな。
でも、まさかこんなこと言うとは思わないだろ?
そう……長門は俺の方を漆黒の瞳で見て、こう宣言した。

 
 
 
 

「……『キョンと一緒』」

 
 
 
 

だからそういうことは二人きりでやってほしいぞ……
ハルヒのかかと落としを喰らいながら俺はそう思った……

 
 

翌日、長門の腕にはハルヒの机から失敬した腕章がついていた。
そこに何が書いてあったのかは……言わなくても分かr……

 

「こらー!有希!それはあたしのものよ!!返しなさい!!!」

 

「断る。これは私のもの……」

 

だから、それは俺のいないところで……
ちょ、ハルヒ!それはヤバイってやめt……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:48 (2625d)