作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと森林探検
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-12-05 (火) 23:27:53

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

SS集/405『長門さんと洋館と朝倉さん』の続きです。

 
 
 

ハルヒの突拍子もない発言から山奥の洋館までやってきた俺達は、
何故か都合よく吊り橋が落ちてしまったので、
しばらく滞在することになった。
ちなみに『俺達』の内訳はご存知SOS団の面子に加えて、
おなじみの機関の連中とお久しぶりの朝倉だ。
正直に言って腹黒そうな怪しい奴しかいない。
信じられるのは長門と朝比奈さんくらいだ。

 

さて、そんな迷惑な連中の中で、
まさにキングオブ迷惑の名にふさわしい我らが団長様がこんな事を言い出した。

 
 

「どっかに怪しいところがないかしら……」

 
 

頼むからそういうことは思っても口に出さないでくれ。
機関の連中が焦ってるじゃねーか。
第一怪しいところと言うならこの館自体が怪しいだろ。

 

「怪しいって言うなら、こんな山奥に洋館があること自体怪しいんじゃないかしら?」

 

朝倉よ……俺の気持ちを代弁してくれるのは嬉しいが、
一応お前の親戚の別荘ってことになってるんだろ?
あまりそういう事を言うもんじゃないぞ。

 

「あたしもそう思って昨日全部の部屋をくまなく探したんだけどね〜」

 

文字通り全ての部屋をチェックしたらしく、
同行させられた二人のメイドのうち、
SOS団専属メイドの方はいまだに疲労がぬけない様子だ。
まぁ、窓やタンスはおろか、壁や天井、
果ては地下室に屋根裏まで調べたらしいから疲れるのも仕方ない。
何故か俺の割り当てられた部屋が特に荒らされていた気がするが。

 

「探し方が悪かったのかしら?」

 

頼むから金属探知機が欲しいとか言わないでくれよ?
機関の連中なら本当に何でも用意しそうだからな。
そんな風に俺がハルヒという太陽からの飛び火に懸念していると、
その太陽に石炭どころかプルトニウムを湯水のごとく注ぐ奴が現れた。

 
 

「それなら……外も探してみたらどうかしら?」

 
 

それを聞いてハルヒの耳がピクリと動く。
もちろんそれを見て俺は退室を試みる。
だが首根っこをハルヒと朝倉に掴まれる。
二人引っ張る。俺苦しい。
この間、実に2秒。

 

「そうよ!中がダメなら外があるじゃない!!」

 

さも大発見をしたかのように叫ぶんじゃない。
というか叫ぶのはいいから離してくれ。
新鮮な空気が不当な検閲を受けて通れないからな。

 

「外って……庭でもあるのか?」

 

久しぶりに肺一杯に空気を吸い込んだ俺は、
そばでニコニコしてる元委員長に聞いてみた。

 

「さぁ……でも森なら何かあるんじゃないかしら?」

 

ひょっとしてそれはギャクで言っているのか!?
このどこまでも広がる森を探索なんてすれば、
絶対迷子が出るぞ?
普通に考えて無謀だろう。

 

「それもそうね。今日は森を探検しましょ」

 

そして、ここに普通を超越した無謀な奴がいる。
さらに、こいつが次に言う言葉も分かる。

 

「じゃあ、みんな早速行くわよ!!」

 

ほらな。
一応聞くが、その『みんな』ってのに俺は含まれないんだよな?

 

「何言ってんのよ!あんたが来なくちゃ誰が雑用をやるって言うのよ」

 

「そうよ。キョン君も来ないと面白くないでしょ?」

 

「断る。そもそもどんだけ広いと思ってんだ。
しかもなんで俺が雑用なんぞを……」

 

そう文句を連ねる俺の肩を、
朝倉が優しく叩き、
いろいろ思い出させるような笑顔でこう言った。

 
 

「人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔する方がいい』って言うよね。
これ、どう思う?」

 
 

……はい、わかりました。
やらせていただきます……

 
 
 
 

久しぶりに死の宣告の序章を聞いた俺は、
それ以上先の言葉を聞くはめにならないように、
とっとと支度することにした。
もし朝倉が日本経済のような話をしだしたら、
もう一度長門に大丈夫かどうか聞く必要があるかもしれない。

 

「まだ大丈夫」

 

そうか……ありがとな長門。
ただ心の声を読むのはもう少し控えてくれ。
あと『まだ』ってなんだ、『まだ』って。

 

「ところで、ハルヒよ……」

 

気を取り直して、
一人準備万端やる気満タンの女丈夫に声を掛けた。

 

「なによ?」

 

「『怪しいもの』って簡単に言ってくれるけど、
何を探せばいいんだ?」

 

「あたしが『怪しい』って思ったものよ」

 

だったら鏡を見ればいい。
怪しいことを企む女が常に現れてくれるぜ。

 

「具体的にはどんなのだ?」

 

「そうねぇ……絵を描くつちのことか?」

 

つちのこというだけでも珍しいというのに、
絵を描くとな……どこの見世物小屋に売る気だ?

 

「売ったりしないわよ!でもそうね……
似顔絵でも描いてもらおうかしら?」

 

このままだと本当に見つかるまで探しかねないな……
見つからないものを探すことほど嫌なことはないぞ。
特に俺は見に沁みてわかってるしな。
だがつちのこか……本当にいるのかね?
今度こっそり長門に聞いてみよう。
『いない』と言われたら探す気力が沸かないので今は聞かないことにする。

 
 
 

仕度を整えたSOS団のみんなと、
急遽参加となった朝倉を加えた6人は、
今回の探索地である洋館の側にある森へとやってきた。

 

「じゃあ、二手に分かれるからくじ引きするわよ!」

 

相変わらずどこからそれを……
しかもちゃんと人数分用意してやがる。

 

「くじ引き?」

 

そうか……朝倉はやったことないんだな。
まぁ適当に1本引いてくれればいい。

 

「そう?じゃあ私からね」

 

そう言って恒例のグループ分類が始まった。
何もこんな所に来てまでやらなくてもいい気もするんだが……

 
 
 

くじ引きの結果、
俺、長門、朝倉のキョンチームと、
ハルヒ、朝比奈さん、古泉のハルヒチームとなった。
何故、俺の名前がチーム名にあるかというと……

 

「何も見つけられなかったらリーダーには罰ゲームだからね!」

 

とのことだからだ。
俺としてはそんなことはゴメンこうむりたいわけだが、
長門にそんな役目をやってもらいたくはない。

 

「あら、私ならいいのかしら?」

 

「誰もそんなことは言ってない」

 

ただ、お前がやってくれると非常にありがたい。
それともこの状況を上手いこと切り抜ける術があるなら、
文句なしに俺が班長をやってやるが……

 

「うーん、私にはないわねぇ……」

 

だろ?だからお前がリーダーになってくれれば……

 
 

「じゃあさあ、たとえ話なんだけど、現状を維持するままではジリ貧になることは
解ってるんだけど、どうすれば良い方向に向かうことができるのか解らないとき。
あなたならどうする?」

 
 

わかりました。
俺がやります。やらせてもらいます。
だからその笑顔をやめてもらいたい。

 
 
 
 

「じゃあ、制限時間は2時間ね!」

 

2時間と言うと丁度昼飯時か……
食前のいい運動になりそうだ。
そんなことを考える俺に、ハルヒが睨みながら警告した。

 

「キョン!誰も見てなくても二人に襲い掛かったりしちゃダメよ!?」

 

……逆だ。
むしろ俺は襲われない様にする事で頭が一杯だぜ?
そう言いたい気をぐっと抑え、
俺は黙って森の中に入っていった。

 
 
 
 

「明るい……」

 

長門がポツリとつぶやく。
確かに森の中はまばらに木漏れ日が射して、
想像していたような暗い雰囲気はなかった。
それにしても……

 

「木漏れ日の中の長門さんって絵になるわね」

 

お前もそう思うか元高性能バックアップ。
切り株の上で木漏れ日を浴びながらたたずむ長門の姿は、
それだけで立派な風景画になりそうなほどの神々しさだった。
ちなみに先ほど朝倉が木の後ろからこちらを笑顔で覗き込んでいた姿は、
見る者を呪殺しそうなほどの禍々しさだった。

 

「何か言った?」

 

だから笑顔が黒い。
何も言ってないから探し物を続けてくれ。

 

「探し物、ねぇ。情報爆発とか?」

 

それは勘弁していただきたい。
そこらへんに転がってる変なものでいいぞ?
頼むから自分で作り出そうとしないでくれ。

 

「……」

 

「?どうした長門。
何か見つけたのか?」

 

俺の問いかけにコクリと頷く長門。
そしてゆっくりと何かを指差し……

 

「……あれ」

 

あれ?どれのことだ?
長門が指差す方を必死に眺める俺。
そんな俺に朝倉が答える。

 

「ほら、あそこよ」

 

そんな抽象的に言われても、
指先と視線だけで場所を特定するような能力は持ってない。
もうちょっと具体的に言ってくれないか?

 

「東経百三じゅ……」

 

それは具体的過ぎるぞ長門。
そんな人間が勝手に引いた線など俺には見えない。

 

「じゃあ、キョン君の右前方約32度、15mほどの所にある木の、
地表から2m位の所……で、どう?」

 

まだ少し具体的過ぎるが……
そう思いながら探していると、
急に無口な方の宇宙人が俺の頭を両手で挟み込んだ。

 

「な、長門!?」

 

「まっすぐ前を見て……」

 

いや、引き寄せられたおかげで目の前にお前の顔があるから、
目を逸らすことが出来ないんだが。
というかこんな近くにお前の顔があると……

 
 

ぐいっ

 
 

「!?」

 

いきなり視界が揺れる。
まさかこのまま首が360度1回転!?

 

「……前を見てる?」

 

何とか俺の首に負担がかからない範囲で止めてくれた長門。
もうちょっとで走馬灯が見えるところだったぞ。

 

「あぁ……」

 

「その視線の先にある……」

 

言われるままにまっすぐ前を見る。
するとまさに真正面の木に何か見えてきた。

 

「あれか……」

 

「そう」

 

なるほど、確かに木箱のようなものが見える。
形といい大きさといいアレは完全に人工物だな。

 

「やっと見えたかしら?」

 

「あぁ、あの木箱みたいなやつか」

 

「そうそう」

 

そういうと朝倉は何やらくすくすと笑い出した。
何だ?俺何か変なこと言ったか?
それとも別のものだったか?

 

「いえ、別に……ただ……」

 

なおも嬉しそうな朝倉。
『ただ』なんだ?気になるだろ。
そう言うと、感情豊かな宇宙人は愉快そうにこう言った。

 
 

「長門さんも大胆になったわね、って思って」

 
 

大胆?
俺の側にはいつもと変わらぬ清楚な無口娘しかいないぜ?
しかし朝倉の言葉を受けた長門は、少しだけ恥ずかしそうに顔を伏せていた……

 
 
 

「あれは……巣箱みたいだな」

 

「巣箱?」

 

「?」

 

何だ……情報統合思念体とやらはそんなことも教えてくれなかったのか?
まぁ、生まれてから3年しか経ってないんなら知らなくても不思議はないか。

 

「簡単に言うと……鳥や小動物のために人間が作った家、みたいなもんだ」

 

「ふ〜ん、そうなんだ」

 

「……」

 

巣箱が俺でも楽々届く高さに設置してあるのは、
鳥ではなく小動物向けに作ったのか、
ただ単に作った人間の背丈の問題か……
つくりの大雑把な感じから見て、どうやら後者のようだ。
随分前に設置されたらしく、少々くすんでいる。

 

「中には何かいるのかな?」

 

朝倉よ、何だその目は……
知りたければ取ってみればいいじゃないか。

 

「だって私達じゃ……」

 

「届かない……」

 

長門もそんな目で見るな。
というか上目遣いなんて反則だぞ……
結局二人の美少女の視線に負けた俺は、
その巣箱を取ってみる事にした。

 
 

「よっ、と……中に何かいr……」

 
 

 ちょろん

 
 

何かが手の上に乗った感触に驚いた俺は、
思わず手を払ってしまった。

 
 

「しまった!」

 
 

何が出てきたのか分からないが、
このままでは『それ』が地面に激突……

 
 

しなかった。

 
 

ぽすっ

 
 

音のした方を見ると長門が両手の上に『それ』を乗せていた。
どうやら上手い具合に飛んでいったらしい。
無事でよかった……

 

「あら、かわいいわね」

 

朝倉の言葉に、
俺は改めて『それ』を見る。

 
 

「……リスか」

 
 

「……」

 
 

無言で頷く長門。
その表情が何やら和んで見えるのは気のせいではあるまい。
絵的にも可愛いリスと可愛い女の子だ。
文句なしで和む光景だろう。

 

「この子……長門さんに懐いてるみたい」

 

確かに野生動物とは思えないほど大人しくしている。
長門が手のひらに乗せて指で頭を撫でても逃げようとしない。

 

「多分あの巣箱を作ったのが長門みたいな子だったんだろ。
それで匂いを覚えてたんじゃないか?」

 

そんなことがあり得るかどうかは知らないが、
難しい説明は副団長のエスパー野郎に任せればいい。
今はこの幸せな光景を見てればいいさ……

 

しばし幸せな時間が流れた後、
朝倉が急にこんなことを言い出した。

 

「その子……飼えばいいんじゃない?」

 

しかし、リスを愛でていた無口少女は、
少しさびしげにこう答えた。

 

「それは……できない」

 

「あら、どうして?」

 

「この国では野生のリスを飼う事は禁じられている。
私の住むマンションもペット厳禁」

 

それくらい得意の情報操作で何とかなりそうだが……
朝倉も同じことを思ったらしく、
怪訝な顔をしていた。
だが、次の長門の言葉で俺は全て納得した。

 
 

「それに……この子の家はもうある……」

 
 

そう言って長門は、ずっと昔に誰かが作ったであろう巣箱に目をやった……

 
 
 

朝倉はまだ怪訝な顔をしていたが、
俺には巣箱を作った子の事を想う長門の気持ちがよく分かる。
このリスにしてみても、その方がいいだろう。

 

ちょっとさびしい気もするけどな……

 

「長門さんがそう言うならいいけど……」

 

朝倉もさびしい気がするのか、
少し渋っている。
俺もそんな気がしないわけでもないので、
一つ提案することにした。

 

「なぁ、長門」

 

「なに?」

 

俺の声に振り向く長門。
その手には名残惜しそうにリスを乗せている。
その長門の姿を見て俺は思ったことを正直に言った

 
 

「飼えないにしても……せめてここにいる間くらいは一緒にいてもいいんじゃないか?」

 
 

俺の提案に真っ先に反応したのは朝倉だった。

 

「それ、いいと思うな♪どう長門さん?」

 

長門もリスの顔を見つめながら考えていたようだが、
やがて嬉しそうにこう答えた。

 
 

「……そうする」

 
 

結局2時間という制限時間の中で、
俺達は特に何も発見することが出来なかった。
何故か朝倉が『さっきそこに落ちてたの』と言って、
サバイバルナイフを数本持ってきたときは走馬灯が見えたが……

 

ちなみにハルヒチームも同じように大したものは見つけられなかったようだ。

 

「ねぇ、このロープ何かしらねぇ?」

 

そんな先に輪っかの着いたロープの使い道か……
あまりいい物が浮かばない。

 

「この布なんでしょう……」

 

朝比奈さん……迷彩布なんてどこのレンジャーから……
いえ、あなたは無事ならそれでいいです。
古泉?誰それ?

 
 

まぁ何も発見できずとも、
嬉しそうな長門の顔が見れたんだ……
これ以上のことはないだろ?

 

珍しく本以外のものに興味を持った、
この無口な女の子を見て俺はそう思った……

 
 
 

P.S.

 

なぁ長門。
そのリス名前あるのか?

 

「……りす」

 

……え?

 

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:47 (3088d)