作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんの謀略
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-11-07 (火) 20:31:23

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

※ヤンデレ注意

 
 
 
 

成長期真っ盛りの男子高校生にとって、
昼休み時のささやかな弁当タイムというのは、
何にも増して貴重なものである。

 

授業中は夢の世界に旅立っている俺も、
空腹という強敵に抵抗する気は起こらず、
今日も谷口と国木田と弁当を広げていた。

 

谷口の反面教師なナンパ話をBGMに、
母親の出汁巻き卵に舌鼓を打っていると、
国木田がいきなり話しかけてきた。

 

「ねぇキョン」

 

「何だ国木田?」

 

物食ってる時は喋っちゃいけないって教わらなかったのか?
そんな俺の心の声を無視して国木田は続ける。

 

「キョンはどんな娘がタイプなんだい?」

 

何だいきなり。

 

「そりゃお前こいつは……」

 

「谷口は黙ってていいよ」

 

空気読まないオブザイヤーの谷口を封殺し、
国木田はこちらに向き直った。

 

「そういうお前はどうなんだ」

 

「そりゃお前こいつは……」

 

「谷口は黙ってていいぞ」

 

なにやら悲壮な顔をする谷口を尻目に、
国木田は続けた。

 

「僕の好みは中学からの付き合いだし分かってるだろ?」

 

なら、俺もそういうことに……
だめだ。また『変な女が好き』というレッテルが貼られそうだ。
とりあえず適当にごまかさないと。

 

「まぁ、俺は……」

 

「俺は?」

 

いざとなったら浮かばんな。
とりあえずSOS団の面子に被らないような無難なことを言う方がいいか。

 

「そうだな……物腰が穏やかな方がいいな」

 

「朝比奈さんみたいな?」

 

「いや、そういう弱気な感じじゃなくて……
相手を思いやるような感じの人がいい」

 

「ふーん……」

 

何だそのどうでもいいといった顔は。
話を振ったら最後まで聞けよ。
そう思いながら、復活した谷口の話を聞くのもめんどくさい俺は、
再び昼飯をとることにした……

 
 
 
 

昼休みに彼の声を盗聴……拝聴するのは心地よい。
ヒューマノイドインターフェイスというこの身体に感謝する、
数少ない機会だ。

 
 

……?
彼の知人が話しかけているようだ。
中学からの親友だからという理由で、
毎日彼と同じ席で弁当を食べているという彼は、
いずれホンジュラスにでも……

 
 

『キョンはどんな娘がタイプなんだい?』

 
 

!?
コレは……彼の嗜好についての質問?
それなら聞き逃すわけにはいかない。
周囲の雑音をリジェクト、彼の声に集中して……

 
 

『そうだな……物腰が穏やかな方がいいな』

 
 

『物腰が穏やか』……
まさか朝比奈みくるのこと?
だとすれば早急にあの乳の情報連結を……

 
 

『朝比奈さんみたいな?』

 
 

どうやら彼の友人が尋ねているようだ。
私の言いたい事を代弁してくれるなんて、
なんて素晴らしい人間だろう。
やはり彼の周りにはいい人が集まるようだ。
観測対象?あれは雌犬だから含まれない。

 
 

『いや、そういう弱気な感じじゃなくて……
相手を思いやるような感じの人がいい』

 
 

『思いやる』……
それなら私はいつもあなたのことを想っている。
もしや、これは遠まわしに私に愛を語っているのだろうか?
やはり彼はメルヘンちっくなところがあるようだ。
そういう所もいい。この上なくたまらない。

 
 

……だから、気に食わない。
彼の優しさに漬け込んで思い上がる雌犬が。
あの雌犬さえいなければ彼と私は今頃幸せに暮らしているはず。
そう、あの時世界を改変したときでさえ出しゃばって……
彼もあんな犬の言うことなど聞かなければいい。
犬の話を聞く人間がいるだろうか?
彼のクラスメイトの女性くらいではないか?

 

いや……そう、彼は優しすぎる……
だから、あんな薄汚い犬にまで慈悲を持って……

 

……そうだ。
彼にあのメスの本性を見せてやればいい。

 
 

あの真っ暗な中身を……

 
 
 
 

ふーん、『物腰が穏やか』……ねぇ。
やっぱりキョンは母性を感じる女がいいのかしら?
それとも大和撫子?
とりあえず明日から着物でも着てみようかしら?

 

って、そうだ!キョンに直接聞けばいいじゃない!

 

そう思ってあたしは教室に駆け出した。
教室に入るキョンはお弁当を食べ終わり自分の席であたしを待っていた。
キョンたら……ごめんね。16分34秒も側にいなくて。

 

ねぇキョn……

 

「なぁハルヒ……」

 

「な、何よ?」

 

あたしと同時に喋るなんて……これも愛がなせることかしら?
って、それにしては暗い顔ね。

 

「実は今日の団活は休ませて欲しいんだが……」

 

「何ですって!?どうしてよ!?」

 

あたしに隠れて何かするつもり?
そんなことしてもあたしには丸分かりなのよ?
そう反論しようとするとキョンは意外なことを口にした。

 

「実は妹が風邪を引いてな……」

 

え、あたしのかわいい義妹ちゃんが風邪を!?
そんな……もし万が一何かあったらウェディングドレスの裾は
誰に持ってもらえばいいのよ!?

 

「あたしも見舞いに行くわ!!」

 

「いや、お前は来なくていい」

 

どうしてよ!?
かわいい義妹が病魔と闘ってるのに……

 

……そっか、キョンはあたしに伝染らないように気遣ってるんだわ。
きっとそうよ!キョンだって、最愛のあたしの体のことが心配なんだわ!!
だから病原体に近づけまいと……

 

「まぁ、いいわ。その代わり明日は来るのよ!!」

 

もし明日もキョンが来なかったら発狂しちゃうかもしれないから。
そんなあたしの気持ちを諭してくれたのか、
キョンはいつもの顔で返事をした。

 
 

さて、今日はみくるちゃんも古泉君も休みって言ってたわね。
ってことは今日は備品が一人いるだけか……
丁度いいわ。

 

いい加減、あの仔に躾をしとかないといけないから……
キョンの優しさに漬け込む雌猫……
いつもあたしに逆らって……
いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも……
それにSOS団も5人は多いわよね……
あたしとキョンは付き合ってるし、古泉君とみくるちゃんはお似合いだし、
一人余っちゃう有希だってかわいそう……自業自得だけどね。

 

うん、一人減らした方がいいわよね。
そうよね、そうそう、きっとそうだわ。
あは、あははは、あはははははは、はははははははははははは、
あははははははははははははははははははははははははははははは……
そうよ!そうだわ!それが一番だわ!どうして気付かなかったのかしら!
それならキョンだって喜んでくれるわ……
それにち〜さなち〜さなメスネコ1匹くらいどこにでもいるじゃない。
ははは、あはははははは、ははははっははははははははははっはあはは……
あの薄汚い女を未来永劫……
あははははははははははははははははははははははははははははははは……

 
 
 
 
 

「あれ?キョン……今日は部活は休みかい?」

 

国木田か……
たまにはこいつと帰るのもいいか。

 

「あぁ、妹が風邪を引いたから、
ハルヒに頼んで休みにしてもらった」

 

「へぇ……それはお大事に。
見舞いに行こうか?」

 

遠慮しておく。
うちの妹は人が来るとはしゃぎだすからな。

 

「ははは、それもそうだね」

 

「まぁ、妹が元気になったら来てやってくれ。
最近は中学の連中もウチに来ないからな」

 

「うん、そうするよ」

 

それからしばらく俺たちは二人で、
どうでもいいことを語りながら歩いていた。
途中、国木田の提案で桃缶を買い、
もうすぐ分かれ道に差し掛かる、という所で、
俺はふとあることが気になった。

 

「なぁ、国木田……」

 

「なんだい?」

 

「昼休みのアレ……何でいきなりあんなこと聞いたんだ?」

 

俺が『変な女好き』という通説を流布したのはこいつだ。
なのに、わざわざそれを覆すような質問を……
俺が頭を働かせていると、国木田は少し考えたような素振りをして答えた。

 

「あぁ、あの質問かい?
実は涼宮さんに頼まれてね……」

 

ハルヒに?
なんでまた?

 

「さぁ?『団員の趣味・嗜好を知るのも団長の務めよ!』とか何とか……」

 

また余計なことを……
だいたい俺の好みを知ってどうする気だ?
まさか朝比奈さんをそれに合わせてくれるってのか?
大歓迎だぜ。

 

「まぁ、そういうことだから、涼宮さんに教えといたけど……
多分キョンには、被害は出ないと思うよ」

 

あぁ、そう願うぜ……
そう思いながら、俺は国木田と別れた。
たまにはこうして友人と帰るのもいいな……
……あの奇妙な団に入ってる限りこんなことがあと何回出来るかわからんが……
去りゆく友人の背をしばし拝みながら、
俺は病の妹が待つ我が家へと向った……
あ、ケータイが鳴ってる……妹よ……もうすぐだから我慢してくれ。

 
 
 

「……長門さんも聞いてたんだろうけど……言わない方が面白いよね」

 
 
 
 

「あら、今日は有希一人?」

 

あたしはいつものように我らがSOS団の部屋に入った。
いつ見てもここは素晴らしいわ!
棚の本が邪魔だけどね……
生徒会もとっととSOS団を認めればいいのに。
ここにあった文芸部なんか消しちゃっていいからさ……

 

まっ、今からその文芸部の最後の部員も、
『退部』するんだけどね♪

 

「そっか〜みくるちゃんも古泉君も来ないのかな〜?」

 

この子ったら、あたしの話聞いてるのかしら?
聞いてないんならその耳いらないわよね?
決めた!まずは耳からにしましょう!

 

「キョンも来ないのかな〜?」

 

肩がピクリと動いた。
女として『キョン』に反応するのは分かるけど……
身分というものを考えなさい?
神聖なるSOS団の団長様の忠実な伴侶に、
椅子とセットの備品ごときが何を想ってるのかしら?
不敬罪だわ。いえ、もう死刑ね。
死刑よ死刑だわ!絞殺刑なんて生易しいものじゃなくて、
この薄汚いメスネコにふさわしいやり方で……

 

「ねぇ有希……話があるんだけど……」

 

ドアの鍵をかけ、
団長様専用の椅子に座ったあたしは話を切り出した。
あ、団長専用って言ってもキョンは別よ?

 

「……」

 

いつのまにか、あたしと対極のドア側に座っているその女は、
相も変わらず無反応を貫いていた。
今日はいつもと違う席……そっか下座に座ってるのね。
ちゃんと自分の立場が分かってるじゃない……

 

……もう手遅れだけど……

 

「最近、団長の言うことを全然聞かない無礼な奴がいるの」

 

「……」

 

この子ったら……
人の話を聞くときは本を読むのを止めなさいって教わらなかったのかしら?
まぁ、特別に許してあげる……それが最後の本になるんだし。

 

「しかも事もあろうに、団長の物に手を出そうとか考えてるの」

 

「あなたの物?」

 

「そう……そんな悪い子をSOS団に置いたままにすると、
癌みたいにどんどん汚染されるでしょ?」

 
 

だ・か・ら

 
 

「有希……残念だけど『退部』してくんない?」

 
 

あたしがそういうと、
目の前の雌狐は『なんだかよく分からない』といった素振りを見せた。
やっぱり動物には人間様の言葉は分からないのかしら?

 

「なぜ?」

 

なぜ?ですって?
どこまでウザいのかしらこの子は!?
ねぇ!?なにが『なぜ?』なのよ!!?
あたしが!このあたしがっ!あんたごときのために!
わざわざ言葉を使ってまで説明してやったのに!!

 

「あんた……自分がキョンに色目使ってんのばれてないと思ってるの?」

 

「私は何もしていない」

 

まったく表情を変えず、
抜け抜けとそんなことを抜かすメスブタにあたしの何かがキレた。

 

「『何もしてない』?ふざけてんの?」

 

「ふざけてなど……」

 
 

「なに団長様に意見してんのよ?
え?あたしが言ってること聞こえなかったの?
それとも言葉が分からないの?
そうね、あんたブタだから仕方ないわ。
だったらブタらしくおとなしく小屋でブーブー言ってなさいよ!
ほら、はやくブーブー鳴きなさいよ!!鳴けよブタぁ!!!
それとも今すぐハムにしてあげようかしらぁ!?
そうよ!人間様に被害を出すような動物は屠殺しなきゃいけないわね!
いや、あんたは屠殺なんかですまないわ!!
なんたってこのあたしの所有物に手を出したんだものねぇ!?
卑しい卑しい最下層のメス豚のくせして、
あたしのキョンに手を出したんだもんねぇ!?」

 

「あなたのものではない……」

 

はぁっ?
この子ったら何言ってるのかしら?
何があたしのもんじゃないって?
この部屋にあるものは唯一絶対たるこのあたしのものよ?

 
 

「彼はあなたのものではない……」

 
 

この期に及んで何とち狂ったこと言ってるのかしら?
もういいわ……さっさと『退部』させよ。
そう思ったあたしに目の前の女は何かを取り出して、
それに向ってこう言った。

 
 

「今のが涼宮ハルヒ……」

 
 

その泥棒猫が取り出したのは、携帯電話だった……

 
 
 
 
 

「どうしたんだ長門?」

 

国木田と別れてすぐ、
長門から電話がかかってきた。
てっきり妹からだと思っていた俺は、
つい『もうすぐ帰るから待ってろ』とぶっきら棒に言っちまった。

 

『このまま切らないで……』

 

長門はそれだけ言うと、
黙りこくってしまった。
なんだ?もうちょっと何か言ってくれないか?
俺は早く妹の顔を見たいんだが……

 

とはいえ、長門の頼みを無碍にするわけには行かない。
もしかしたら何か重要なことが起きているのかもしれない。
そう思った俺は、電話口から流れる音を聞きもらすまいと、
出来る限り神経を集中した……

 
 

……やがて、一人の少女の声が聞こえてきた……

 
 

『あら、今日は有希一人?』

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:41 (2730d)