作品

概要

作者753k
作品名涼宮閣下の料理人
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-11-06 (月) 23:27:04

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

舞台は部室。今日はSOS団勢ぞろいだ。
そして机に登る団長の姿は、悪い魔法使いの予言より確かな溜息への軌跡ってわけだ。

 

「明日土曜日、SOS団はカレーパーティを執り行います!」
カレーパーティだ?何だそりゃ?
「皆でカレー食べる会に決まってるじゃない。
 市内探索が終わった後、料理長の家で開催します!」
誰なんだ、その料理長ってのは?
「そうね、料理長には有希!あなたを任命するわっ!」
おぉっと。ここでその人選は適任なのかどうなのか、微妙だぞ、ハルヒさんよ。
俺と同じことが頭に浮かんだのか、朝比奈さんも苦笑している。
俺と朝比奈さんは経験済みだし、古泉はどうでもいいからいいが、
その料理長殿の作ったカレーライスセットを見たら、閣下殿はどんな顔をなさるかな。
いや、長門ならそれくらい考えているに違いない。
きっとアレとは違うものを用意してくれることだろう。
当の新米料理長はハルヒを見上げ、目を僅かに見開いている。
まあ、カレーパーティくらいならそうそう忙しい事にはなるまい。

 

長門に「料理長」の腕章を付けると仕事はこれで終わりとばかり、
「楽しみにしてるわっ」の言葉を残し、団長はとっとと部室を出て行ってしまった。
その扉が閉まる音と同時に、ぱたんと本を閉じる音がする。
何だ、長門ももう帰るのか。
「あなたも。来て。」
俺もか?どこに行くんだ?
「予行演習。」
週末のか?カレーなんだし、お前ならぶっつけ本番でも良さそうなもんだけどな。
「やっておきたい。」
そうか。お前がそう言うなら、もちろん付き合うさ。
俺と長門も部室を出て行くこととなり、SOS団はいつもより早い解散の運びとなった。

 

というわけで、まずは買出しである。
スーパーに到着すると、長門が真っ先に向かったのはキャベツ売り場だった。
長門にとっては、カレーにキャベツはデフォルトで必須の素材らしい。
某サラダの盛り合わせが頭をよぎったのは、気のせいだろう。
気付くと長門は、2つのキャベツをそれぞれの掌にしばらく乗せ、
一方のキャベツを売り場に戻し、新しいキャベツを取り出しては残ったものとでまた掌に乗せる、
ということを延々と繰り返していた。
それするとうまいキャベツが分かるのか?
「キャベツは身が詰まっている方がおいしい。
 ならば選択すべきは単位体積当たりの質量が最大の個体。」
なるほど、それぞれのキャベツの密度を比べてたわけか。
だが、まさかそうやって全部のキャベツを調べるつもりじゃないだろうな。
まあ数分後、俺は長時間にわたる周囲からの冷たい視線を浴びながら
その心配が的中したことを思い知るわけだが。
いつもあんなことしてるのか?
「(否定)」
今日だけ?
ん?長門のやつ、もしかしてものすごい張り切ってたりするのか?
キャベツをえらい時間かけて選ぶと、次は…って、もうレジかよっ。
おいおい、キャベツ以外には何も買わないのか。
「必要ない。」
いやいやいや。
カレーの具とかサラダとか必要だろ?肉とか人参とか馬鈴薯とか茄子とかトマトとか。
「カレーは蓄えがある。サラダはコレ。」
と、料理長殿は誇らしげに選び抜いたキャベツを指差した。
まてまて。カレーってまさか、例のレトルトカレー缶なのか?
「(肯定)」
どうやら万能宇宙人の中にあるレシピ用メモリは、メモ用紙一枚分の容量もないらしい。
俺が止める間もなくレジを通り抜けてしまった長門は、
さっさと緑色の戦利品をレジ袋に詰め込んでいる。
俺はお前のこと何でも出来るやつだって思ってたけど、長門にもできないことってあるんだな。
しかもそれが料理スキルとは。
「料理ならできる。」
キャベツしか入ってないレジ袋見せられてもな。
そりゃ料理できるとは言わん。残念ながらな。
そうだな、長門料理長殿なら情報操作は得意ーとか言って、
豪華絢爛雨霰な素敵カレーライスを登場させてくれるかも知れんがな。
こりゃ、以前朝比奈さんとご馳走になったときと味も同じみたいだし、
試食会じゃなくただのお食事会になりそうだ。
ま、カレー缶と長門の食いっぷりだけは堪能させてもらうことにするさ。
「………そう。」
そのまま俺たちは708号室へ行き、長門は調理を始めたのだった。
10分で終わったがな。

 

というわけで試食開始だ。
あんなこと言ってはいたが、実は俺の胃袋はもう準備万端なのである。
いただきますっと。(ぱくんちょ)
…うむう…む!?か、からっっ!?
「おいしい?」
長門のカレー缶はそんな辛くなかったはず!
つか、辛いとか辛くないとかそーゆーレベルじゃ!?
「情報操作は得意。」
長門、お前の仕業だったのか…?てか、お前しかいねぇよ!
「お水。」
メ、メルシー、長門。(ごくんちょ)
!!!
「おいしい?」
…長門よ、水っていうのはこんなにハバネロい飲み物だったのか?
「情報操作は得意。」
そーか、そうだったな。買い物の時のアレか、アレなんだな?
「食べて。全部。」
あのな、長門さん。既に舌とか喉とか感覚ないんだが、
「食べて。全部。」
その幼い顔は録音再生したように同じ言葉を繰り返す。
さあ、この長門への対応を以下から選ばねばならんわけだが。どーするよ俺?
 「享受」(自分のものとして受け入れ楽しむこと)
 「服従」(自分以外の支配者・権力者につき従うこと)
 「諦観」(悟り諦めること)
……。
カードの隙間からは液体ヘリウムのような瞳が覗く。
どうやら世界にサヨウナラを言う以外の選択肢はないようだ。
こうして俺は再びスプーンに手を伸ばすのだった。
「明日も、食べて。」

 

惨劇の週末は続く。

 

(おしまい)

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:40 (2003d)