作品

概要

作者753k
作品名Dr.ナガトー診療所
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-11-06 (月) 23:23:35

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

舞台は昼休みの廊下。俺は今一人きりで廊下をとぼとぼ歩いている。
ハルヒの活動のせいではなしに、朝から気分が優れないし、体が重い。つまり風邪ってわけだ。

 

扉を開けると、そこは保健室であるはずだった。
「いらっしゃい。」
そこには制服の上から白衣を羽織り聴診器をぶら下げた長門有希が、
担当医の如くちょこんと椅子に腰掛けていた。
何やってんだ、長門。
「違う。」
何が?
「私は長門ではない。」
何言ってんだ?
「私は名前は Dr.ナガトー。」
………は。
「そしてここは Dr.ナガトー診療所。」
お前が大丈夫か、長門。
てゆーか、いつもの長門まんまじゃねぇか。
だいだいナガトーって、「トー」しか合ってねーし、さらにここ孤島じゃねーし。
そもそもここのどこに医者がいるってんだよ。
「医者は私。大丈夫。安心して。」
風邪のせいじゃないかもしれない頭痛が俺を襲ってきた。クラクラする。
ああ、是非今すぐにでもそうしたいね。
だがその前に、俺はもう一度「大丈夫」というセリフを疑問形に直してから、
今度は素敵にラッピングした後リボンまで付けて、お前宛に贈ってやらなきゃならん。
今はお前のお医者ごっこに付き合ってはいられんし、そんな気力も無い。
「それは無理。」
長門がそう言うや否や、突然陽が差し込んでいるはずの保健室が暗転する。
周囲を見回すと、窓も扉も飾り気のないただの壁になっていた。
これは…。
「今この空間は私の情報制御下にある。出ることも入ることもできない。」
やはりか。てことは、
「他の時空と完全に断絶された閉鎖状態。即ち、」
おい、長門。次のお前のセリフは、
「現在ここは時空の『コトー』。」
………。
長門の背後に少年漫画的効果音「どーーん」の文字列が見えた。…ような気がした。
長門よ、知ってるか?オチを読まれたギャグほど寒く、悲しいものはないんだぜ?
「じゃあ、脱いで。」
そうか、じゃあって、おぃ!?
いや待ていきなり何を言い出す長門、それはまずいだろ!
いくらお前がここはコトーって言い張ったって、一応ここ学校の保健室だぞ!
「この空間では私に逆らえない。
 なぜなら、私は医者で、あなたは患者だから。
 そして、私は長門ではなく、 Dr.ナガトー。
 診療を始める。」
長門の目が微妙に据わってるように見えるのは俺の気のせいか?
いや、そうであって欲しい。そうに決まってる。そう決めた。
そう決めた…のだが。
…で、結局、俺が折れるしかないのか。

 

さあ、現在の状況を説明しよう。
俺は上半身裸で患者用に椅子に座っている。そして俺の目下に長門の顔がある。
その長門は、本物の医者のように俺の胸をぺたぺたと聴診器で突付いている。
脱ぐのは上半身だけでよかったが、部屋はなぜか薄暗いままだ。
聴診器が冷やりとして気持ちいい。何だか危ない気分になって来たな。
為されるがままの状態で、俺はそっと長門の顔を見る。
その顔は至って真剣そのものだ。…だがそれだけではない気がする。
俺はここに逆転の糸口を見出した訳だ。
…長門お前、実は照れてないか?
一瞬止まった長門の動きを、暗闇に慣れた俺の目は見逃さなかった。
「照れてない。」
いや、照れてるね。
「照れてない。」
宇宙で唯一の長門有希表情判別士(自称)の俺をなめるなよ?
無表情のつもりでも俺には説得力無いぜ。
ユキ、ドッキドキって顔してたぜ?
「!…照れてなどいない。」
ああ、そうかい。
…そういえば、俺は長門有希の表情判別士であって、Dr.ナガトーのそれではなかったっけな。
そーいえば。
「……。」
……。
「診察は終了。」
そりゃどーもと、席を立とうとすると長門が俺の手を引っ張った。
「まだ。今から薬を処方する。」
薬もか?さすがにそれは。
「大丈夫。手を出して。」
っと。ああ、あれか。風邪にまで効くとは便利だな。
それに噛まれるといっても長門にだったら何度でも…。
そう、その時すでに長門の八重歯は、
俺の脳から長門の表情観察という任務を完全に追い出してしまっていたのだった。
俺は素直に手を出し(てしまい)、
「(ブチ。)」
ぶち!?
って、おいっ、ちょ、おまーー!?
歯ァめり込んでる、めり込んでるってーー!!

 

 その時、俺は確かに見たんだ。
 SOS団団長張りのジト目を俺に向けながら俺の手に喰らいつく、長門有希の姿を。

 

うおおお、すまんっ!すまんかったー!
許してくれ!長門…じゃなくて Dr.ナガトー!
ごめんなさいっ!もうしませんからーー!

 

何とか長門に許しを請い、
やっと保健室から出ることのできた俺は、
そのぐったりとした気分とは対照的に、体がとても軽いことに気が付いたのだった。

 

(おしまい)

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:39 (2003d)