作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんとボウリング
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-10-23 (月) 23:54:21

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

さて、いきなりで悪いがここで一つ問題だ。
『男女関係なく、穴に指をつっ込んで玉を転がすものってなーんだ?』
ちなみに正解者には古泉の熱い抱擁をやろう。
……まぁ、こんなの誰でも分かるか。
そう、答えは『ボウリング』だ。はい、全員に古泉プレゼント。

 

と、バカなことを言うのは止めにして、
何故いきなりボウリングの話をするかというと、
今、俺たちSOS団の面々がいるのがボウリング場にいるからであり、
それ以上でもそれ以下でも無い。

 

「ちょっと〜何やってんのよキョン?早く投げなさい!」

 

「わかったから、そうわめくな」

 

やれやれ……なんでこんなことになったのかね……
俺は自分のボールを持ちながらしみじみと2時間ほど前の光景を回想していた。

 
 
 
 

「おそーい!罰金!!」

 

そのセリフももはや聞き飽きたぜ。
もっと他のレパートリーは無いのか?
俺を労わるような……

 

「なら『死刑』の方がいい?」

 

とりあえずお前に俺を労わる気持ちが、
ミジンコほどもないことだけは分かった。

 

「で、でも、ミジンコだって実験に使われたり、
魚の餌になったりしますよ〜」

 

朝比奈さん?つまり俺はそれ以下なんですか?
別に人体実験や魚の餌にされたいとは思わないが……
いや、でもこのままずっとハルヒにこき使われるくらいなら、
朝比奈さんか長門においしく召し上がっていただき、
血となり肉となる方がいいかもしれん。
でも長門なら本当に食いそうだから口にはしない。

 

「で、今日は何用で呼び出したんだ?
パトロールは中止じゃなかったのか?」

 

確か昨日の放課後に高らかと宣言した奴がいたはずだ。
明日は雨だからとか何とか言ってた気がするぜ?

 

「あたしも最初はそう思ってたんだけど……」

 

できればそのままそう思い続けていただきたかった。
そうすれば俺は充分に寝溜めができたというのに。

 

「でも、考えてみれば雨でも出来ることっていろいろあるじゃない!?
だから予定を変更して、集合かけたのよ」

 

つまり頭に浮かんだままに行動したって訳か。
もう少し人様のことを考えてだな……

 

「で、今からすることなんだけど……」

 

あぁ、もう俺の言うことは聞く耳持たないか。
げんなりする俺をよそに、
目の前の年中晴レハレユカイな女は大声で言った。

 
 

「今日は第1回SOS団ボウリング大会を行います!」

 
 

……『第1回』ってことは『第2回』から延々とあるのか。
俺はハルヒの満面の笑みを見ながら、
早くも憂鬱な気分になっていた…

 
 
 

さて、ボウリング(もちろん俺の奢りで)に行くのは分かったが、
確認しておきたいことがある。
というわけで、ハルヒに聞こえないように、
横を歩く珍しく私服のメイド……じゃない先輩に尋ねてみた。

 

「朝比奈さん」

 

「はい、なんでしょう?」

 

あぁその笑顔が愛らしい……
できれば写真を撮って額縁に入れて飾りたいくらいだ。
と、悦に浸っている場合ではない。

 

「未来にもボウリングってあるんですか?」

 

俺は率直に聞いてみた。
これくらいなら『禁則事項』とやらには引っかからないだろう。

 

「え〜と、一応あります。
ちょっと違うところもあるけど。」

 

違うところ?
まさか未来ではボールは文字通り投げる仕様になってるんですか?
それともピンが自立して動くとか……

 

「そんなことないですよ。
ルールはこの時代とほとんど同じです。
ただ、布でボールを拭く必要が無いとか……」

 

要するに、機械化がもっと進んでるってことか。
まぁ、ルールが同じなら心配することもなかろう。
というわけで俺はもう一人の懸念人物にも話を聞いてみた。

 

「長門はボウリング知ってるのか?」

 

俺の質問に対し、
本日も制服が似合っている文学少女は、
俺に分かる程度にコクリと頷いた。

 

「やったことはあるのか?」

 

「ない。ただし、知識として知っている」

 

長門らしいと言えば長門らしいが……
ところで知識として知ってるってのはどの程度だ?
俺の質問に長門は鮮やかに答えた。

 
 

「油田の発掘、また地質調査などのために地面に円筒状の穴を……」

 
 

……まさか長門さんの生ボケが見られるなんて思っても見なかったぜ。

 
 
 
 

ボウリング場についた俺たちは、
受付で申し込みをすることにした。

 

「5人いるし2レーン借りましょ!」

 

そう言ってハルヒはいつの間にか用意していたくじを目の前に突き出した。
お前はそれをどこに隠し持ってたんだ?

 

「ほら、さっさとみんな引いて」

 

何だ、珍しく全員一気に引くのか。
まぁそっちの方が手っ取り早いからいいか。
というわけで俺は1本のくじを掴んだ。

 

「じゃ、せーの……」

 

ほいっと……
俺は自分が引いたくじを見てみる。
どうやら俺は印なしチームらしい。

 

「あたしは印ついてるわ」

 

「わ、わたしもついてます……」

 

確か無印3本だから、
印付きのハルヒと朝比奈さんは2人チームだな。
ハルヒと同じチームでないのは安心するが、
朝比奈さんと違うチームってのは残念だ。

 

「じゃあ、キョンと有希と古泉君チームと、
あたしとみくるちゃんチームね」

 

それだけ言うとハルヒは、
さっそく靴を履きかえるため朝比奈さんを引っ張っていった。
やれやれ……まだ受付に申し込みすらしてないんだがな……
そう思いながら俺は用紙に記入することにした。

 
 
 

さて、無事使用するレーンの場所も聞いたし、
あとは靴を履きかえるだけだな。

 

「……」

 

どうした長門?
もしかして本が恋しくなったのか?

 

「何故靴を履きかえる必要が?」

 

あ〜何でだろうな?
フロアが汚れないようにしたり、
滑りにくくするためじゃないか?

 

「そう……」

 

「まぁいちいち金を払うのが勿体無い気もするが……」

 

「大丈夫……」

 

そういうと長門は例の『呪文』を唱えだした。
それと同時に目の前の少女の靴が変化していき……

 

「これでお金を払わなくてすむ」

 

気付けば長門の靴がボウリングシューズになっていた。
便利なのはいいことだが、周りに見られてないよな?
特にあの迷惑なお嬢さんに……

 

「あら?有希ったらいつの間に履き替えたの?」

 

どうやら見られてなかったようだ……
それにしてももし誰かに靴を変身させてる所を見られたら、
一体どうするんだよ。
ちょっと心配になりながら聞くと、
長門は胸を張るように俺に向ってこう答えた。

 
 

「大丈夫……情報操作は得意」

 
 

そういう問題ではないんだが……
まぁいいか。

 
 
 
 

「じゃあ、始めましょうか!」

 

レーンを確認するなりハルヒは大はしゃぎで走っていった。
こら、朝比奈さんを引っ張るんじゃない。
腕がもげたらどうする。

 

「ほら、あんたも早くボール持ってきなさい!!」

 

ハルヒにこれ以上急かされるのも癪なので、
とりあえず、俺は適当にボールを選ぶことにした。
この黒いのでいいか……ちょっと重いけどな。

 

「……」

 

ふと振り向くと長門が俺の背後に立っていた。
俺ならともかく、他の人間なら絶対に気付かないぞ。
せめて声を掛けるくらいしてほしいな。

 

「どうした?」

 

俺は自分のボールを持ちつつ、
長門に無言の圧力の意味を尋ねた。
まぁ、何となく予想はついているが……

 

「どれにすればいい?」

 

「そういえば、ボウリング初めてなんだったな」

 

俺はそう言って長門のために探索を始めた。
このスーパーサイレントガールなら例え20ポンドでも軽々持つだろうが、
やはり、指のサイズや、周りからの視線も加味して……
この女性用のピンクの球でいいか。

 

「ほらよ。これくらいでどうだ?」

 

俺が手渡すと、長門は両手にボールを抱えて、
しばらく興味深げに見回したり、ペタペタ触ったりしていた。
一通りボールを玩んだ後、静かな声で長門はこう言った。

 
 

「……ありがとう」

 
 

どういたしまして。
俺がそんな幼子のような長門の様子に、
そういえば、妹と来たときもボール選んでやったな〜、
などと感慨に耽っていると、
まるでタイミングを見計らったかのように怒声が聞こえてきた。

 

「ちょっと〜何やってんのよキョン?早く投げなさい!」

 

「わかったから、そうわめくな」

 

お前は俺のささやかな妄想の時間まで奪うつもりか?
というか、何で俺が一番手になってるんだ?
あと、朝比奈さんの球選び手伝ってやれよ。
そんな文句を言う間もなく、ハルヒは高らか〜に宣言をした。

 
 

「じゃあ、今から『第1回SOS団ボウリング大会』を始めるわよっ!!」

 
 

やれやれ……できれば普通にやりたいんだがな……
そんな俺の願いもむなしく、ハルヒは意気揚々とボールを掴んでいた……

 
 
 

さて、とりあえず俺が最初のようだから、
早いところ投げてしまわねばなるまい。
何か後ろから視線を感じてやりづらいんだが……
まぁ迷惑娘が吠える前にとっとと投げよう。
ほいっと……

 

……ちょっと右にそれたかな。

 

「ふ〜ん8本、ね……キョンにしちゃまずまずじゃない?
じゃ、次はあたしね!」

 

何を持って『まずまず』なのか分からないし、
お前と俺は違うレーンなんだから勝手に投げればいいし、
そもそもまだ、俺の投球は終わってない。
そんな俺の心の声を無視してハルヒはボールを転がしていた。
って、これまたえらくパワーボールだな。

 

「やったわ!見た?見たでしょキョン!?」

 

「あぁ見た見た。ストライクおめでとう」

 

俺は半ば投げやりに答える。
さすが神様。何をやらせても完璧だな。
これで性格さえよければな……
そう思いながら俺は2投目を投げることにした。
……結局1本残しちまったけどな。

 
 

その後、●使いの古泉がスペアを、
天然メイデンの朝比奈さんがアルファベットの7文字目をスコアに刻んで、
ついに長門の出番がやってきた。
おぉ、いつもと違い少しやる気が見えるな。

 

「ところで、長門」

 

「なに?」

 

先ほど俺が渡したボールを大事に抱えながら、
長門は俺のほうを振り向いた。
その仕草がたまらない……

 

「お前ボウリングのルールとか……知ってるのか?」

 

やったこと無くても、こいつなら即座に学習しそうだが……
一応聞いて置いて損はないだろう。

 

「知っている」

 

さすが情報何とか体製の宇宙人。
すでに予習は完璧だったか。
ちなみに、どんなルールだか、簡潔に言ってくれないか?

 

「ボールを投げてピンを倒し、その本数を競うゲーム」

 

オーケー。
何の問題も無い。
じゃあ、頑張ってくれ。
俺がそう言うと、長門はコクリと頷いて投球に向った。
その姿はなかなか凛々しく、
俺としては長門のこういう姿もいいなとか思ったりしたわけで……

 
 

おかげで長門の次の行動を予測できずに、
しこたま驚くことになった。

 
 

なぜなら、長門はボールを持ったままテクテクと歩いていき、
ラインギリギリで構えて……

 

文字通りボールを『投げた』んだからな……

 
 

ボウリング場に心地よいくらいの炸裂音が響く。
そういえば、野球をしたときも長門の球は速かったな〜。
今の球もプロ野球で通用するんじゃないか?
たっぷり2秒ほどそんなことを考えた後、
俺は長門に最初からボウリングのルールを説明することにした……

 
 
 

それからしばらく、順調に俺たちは投球を重ねていった。
何をやらしても万能な団長様はストライクを量産し、
機械の様な正確さで投げる無口娘がそれに追随している。
この二人なら持ち前の能力でパーフェクト達成しそうだが、
ハルヒは無意識に力を抑えているし、
長門も俺が釘を刺したから素の能力でプレイしているため、
所々に数字が並んでいる。

 

ちなみに平凡な感じでちまちま点数を稼ぐ俺と、
ストライクやスペアは取るくせに、そのあとガターになる古泉が続き、
最後にGと斜線コレクターと化した朝比奈さんがいるが、
もはやこの二人の一騎打ちの邪魔は出来そうにない。

 
 
 

「う〜ん、みくるちゃん……なんていうか、だめね」

 

「うぅ……」

 

こら、本当のことを言ったらかわいそうだろ。
朝比奈さんだって頑張ってるんだぞ?
ただ、5ポンドのボールが重いだけだ……
そんな詭弁のような弁明を無視して、
ハルヒは何かを思いついたような顔をして言った。

 

「ねぇ有希、こういうのはどうかしら?」

 

何だ?どうせまたろくでもないことだろう。
俺は今までの経験からその結論に至っていた。
何でもいいが長門を巻き込むんじゃない。

 

だが、ハルヒが口にした言葉は、
俺の想像を超えるほどろくでもないことだった……

 
 

「今日一日優勝者の言うことを何でも、負けたみんなが従う、ってのはどう!?」

 
 

おい!自分が勝ってるからってそれは無いだろう!
第一、完全に俺たちまで巻き添えじゃねーか!?

 

「何でも?」

 

「そうよ!キョンにジュース買ってもらったり、キョンにマッサージしてもらったり、
キョンに足を舐めてもらうこともできるのよ!」

 

何で俺ばかりなんだ。
ジュースやマッサージくらい古泉にやってもらえ。
足はまぁ……じゃなくて!!
長門も俺の顔を見てないで何とか言ってやれ。

 

「分かった。受けて立つ」

 

そうそう、はっきり宣戦布告を……

 

「へ?」

 

「あら、そう?じゃあ勝負ね!!」

 

そう言ってハルヒは自陣に帰っていった。
それにしても長門さん?
あなたは俺がハルヒの奴隷になってもよろしいと仰るんですか?

 

「どうして?」

 

いや、だって今ハルヒがトップだし……
俺たちはもうひっくり返せそうにないし……
そう懸念する俺に、長門はいつもより力強い声でこう言った。

 
 

「大丈夫……私がさせない」

 
 

その後の二人のプレーは目を見張るものがあった。
回を重ねるごとに長門の投球は緻密さを増し、
ハルヒは追い上げられる焦りから、ミスが目立ち……
ダメだ。解説は俺じゃなくて副団長の仕事だから勘弁してくれ。
とりあえず、接戦になったってことだ。

 

そしてむかえた最後の投球。
投げるのはもちろん我らが長門。

 

「どうやら、涼宮さんに勝つためにはここでストライクが必要ですね」

 

いつの間にかニヤケ面の解説員がついたらしい。
しかも二人の美少女によるハイレベルな争いのおかげで、
俺たち以外にもギャラリーが出来ている。

 

「あなたはどちらが勝つとお思いですか?」

 

そうだな、とりあえずその顔をもう少し離してもらおうか。
鬱陶しいからな。

 

「そんなもん決まってるだろ」

 

俺はさっきの長門の顔とセリフを思い浮かべた。
あの長門がはっきりと断言したんだ。
俺は長門のことを何より信じている。
そりゃもう、あいつがリスを指差して『ネズミ』と言ったら、
その場で生物辞典の表記を変えるくらい信じている。

 

ふと気付くと、長門がこちらを見ている気がした。

 

そういえばいつだったか……確かコンピ研との勝負の時にも、
こんな顔してたな……
そう思った俺はあの時と同じように長門に俺の意思を伝えた。

 

その俺の仕草を見て、長門は静かに頷き、
そして最後の一投を投げた。

 
 

はじける10本のピンを見て、
その少女が小さくガッツポーズをしたのを俺は見逃さなかった……

 
 
 
 

「まさか最後で逆転されるとはね〜」

 

「いえ、涼宮さんも本当に素晴らしいプレーでしたよ」

 

「そうかしら?まぁ有希になら負けたって納得できるわ」

 

「……」

 

心なしか嬉しそうな長門を筆頭に、
俺たちは今図書館に向かっていた。
長門が優勝したご褒美として、『図書館に行きたい』と言ったからだ。

 

もちろん俺たちが断る理由は無く、
こうしてぞろぞろ歩いているわけだ。

 

「それにしてもさすが長門だな。
まさかあそこから逆転するとはな……」

 

そう感嘆する俺に長門は小さく答えた。

 

「……私一人の力では負けていた」

 

なんだって?
誰かがお前に手助けしたのか?
俺にはお前が一人で勝ち取ったようにしか見えなかったが…

 

「一体誰が助けてくれたんだ?」

 

そう疑問に思う俺に、
長門は野に咲く小さな花のように微笑みながらこう答えた。

 
 
 

「……ひみつ」

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:37 (2625d)