作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと芋掘り
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-10-18 (水) 21:37:05

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

日が沈む時刻がだんだん早くなり、
気温も下がり始め、風邪のウイルスも活性化する秋のある日、
俺はさつまいも畑にいた。

 

「じゃあ、キョンさっさとくじ引いてよね!」

 

ちょっと待ってくれ。
せめて現状の把握だけでもやらせてくれないか。
というかなんで俺はこんな所に……
俺はとりあえず現在に至るまでの一連の流れを思いかえすことにした……

 
 
 

『9時に駅前に集合!遅れたら罰金だからね!!』

 

……人の安眠を奪って言うことがそれか?
俺はベッドという至福の空間で半分まどろみながら、
心の中で悪態をついた。
実際に口に出すとうるさいからな。

 

「なんだってんだ?まだ太陽が働き出したところだろ」

 

『いいからぜぇったい来るのよ!!いい!?』

 

よくない、とか言ったら文句の嵐だな。
仕方ないので一応了承しておく。
やれやれ……休日はいつになったら訪れるんだろうな?

 
 
 

「遅い。罰金!」

 

「集合時間は9時だろ?」

 

「団員が団長より遅く来るなんておかしいじゃない?」

 

お前が最後に来たらちゃんと罰金払うんだろうな?
というか他の連中は一体何時間前から来てるんだ?
誰か教えてくれ。それより早く来てやるから。

 
 
 

「で、今日は一体何をするつもりなんだ?」

 

俺は自分の分のドリップコーヒーを飲みながら、
春夏秋冬年中トロピカルの団長に聞いた。

 

「確か本日の不思議探検は中止のはずでは?」

 

古泉がいつものさわやか笑顔でハルヒに聞いた。
このエスパーが言うとおり、今日は予定はなくなったはずだ。
だからのんびり寝てたわけなんだが……

 

「そうよ、今日は不思議パトロールは中止よ。
その代わりに今日はやりたいことがあるの。
店員さん!カフェオレおかわり!!」

 

つまりお前がやりたいことを思いついたから、
朝っぱらから俺たちを呼び出し……
っておい!人の金だからってまだ飲む気か!?
もっと1杯1杯味わえ!

 

そんな俺の心の叫びもむなしく、
店員が持ってきたカフェオレを3秒で飲み干したハルヒは、
満面の笑顔で宣言した。

 
 

「今日はサツマイモ掘りをします!!」

 
 
 
 

「じゃあ、とりあえず栗拾いのときみたいに2手に分かれて勝負ね」

 

「え、でも今日は5人ですよ?ちゃんと分かれないんじゃ〜」

 

「あぁ、それなら2人のチームの獲得数を5割り増しにすればいいじゃない」

 

「そ、そうですね〜」

 

「じゃあ、キョン!さっさとくじ引いてよね!」

 

……いやいやいやいや。
ちょっと待っていただきたい。

 

「なによぅ?早くしてくんない?」

 

「何でいきなり芋掘りなんだ?」

 

あまりに呆気に取られたせいで、
ここに来るまでつっこむ事も忘れてた。

 

「あたしの話聞いてなかったの?」

 

あぁ、気付いたら喫茶店の清算を済ませ、切符を買って電車に乗り、
このサツマイモ畑にやってきてたからな。

 

「しょうがない、バカキョンにも分かるようにもう一度説明してあげるわ」

 

そう言ってハルヒはここに至る経緯を喋りだした。
奴の話を聞くところによると、
どうやらここは知人の畑……だそうだ。
サツマイモが豊作だから掘りに来ないかと誘われたハルヒは、
光より早く承諾し、ついでに俺たちの参加の許可も得たらしい。

 

「……というわけだから、今日は採り尽くしちゃっていいから」

 

「いや、尽くしたらマズイだろう」

 

俺の反論に、ハルヒの代わりにニヤケ面が答えた。

 

「それはご心配には及びません。
どうやらここはその方の家庭菜園のようなものだそうで、
家族の分は収穫したから、残りは全部持っていっていいそうです」

 

そうか……まぁそれでもある程度は残すべきだろう。
ところでなんでお前がそんなことを知ってるんだ?
まさかその知人も『機関』とやらの……

 

「いえ、本当に涼宮さんの親戚です。
『機関』も未来人もTFEIも関係ありません」

 

とりあえず顔が近い。
あと、お前の言うことを『はい、そーですか』と信じれるほど、
俺は純粋無垢ではない。
というわけで俺はもっとも信頼の置ける人物に尋ねた。

 

「そうなのか長門?」

 

「彼が言っていることは本当」

 

長門が言うならそうなのだろう。
よし、信じてやる。
視界の隅で古泉がしょんぼりしているが気にしない。

 
 
 

「じゃあ、あたしとキョンと有希はこっち。
古泉君とみくるちゃんはそっちね」

 

そう言ってハルヒは嬉しそうに準備を始めた。
朝比奈さんと別々なのはまことに残念だが、
勝負事なら、あの天然メイデンは足手まといにしかならないので、
喜ぶべきことなのかもしれない。
古泉?知ったこっちゃない。

 

「負けたチームには罰ゲームがあるからね〜。
それじゃあ、制限時間2時間!よーいどん!!」

 

こうして、ハルヒの捲くし立てるような合図と共に、
『ドキッ!SOS団だらけのチーム対抗芋掘り大会!』は幕を開けた。

 
 
 

さて、ハルヒの作戦によると、
我がチームは畑の両サイドからハルヒと長門が芋を掘り、
俺は適当に真ん中で収穫してるだけでよかったのだが……

 

「……」

 

約1名、なにやら様子がおかしい。
先ほどから俺の方をじっと見ている。
俺は自分の持ち場に行かねばならんのだが……

 

「なぁ、長門……」

 

「なに?」

 

「もしかして……」

 

俺はスコップを持ったまま直立不動の宇宙人の様子を見て、
ある仮定にたどりついた。

 
 

「芋掘りのやり方が……分からない、のか?」

 
 

俺の質問に長門は、大きく頷いた。
やれやれ……

 
 
 

「まず、このサツマイモのつるを引っ張って採るんだが、
勢いよく引っ張ると……」

 

「ちぎれた……」

 

そうだな、予想通りちぎれたな。
今度から俺の言うことは最後まで聞いて欲しいな。

 

「つるも食べられる?」

 

昔は味噌を塗り込んだりしたらしいが……
今は戦国時代でも戦時中でもないから食べないだろう。
それに本日の獲物は地中に埋まってる方だ。

 

「まぁ、中々うまくスポッ、と抜けないから、
スコップで掘るんだが、このとき勢いよくやると……」

 

「なにか刺さった……」

 

最後まで話を聞いてください!!
あぁ、芋が見事真っ二つに……

 

「3秒ルール」

 

それは違うぞ、長門。
というか誰から教わったんだそんなこと。
もう1回説明するから、今度こそちゃんと聞いてくれ。

 

「わかった」

 

結局長門が芋が掘れるようになるまで、
10分の時間と、3本のつると、5本の芋が犠牲になった。
これは被害としては多いのか少ないのか……
判断しかねるな。

 
 
 
 

「だいぶ採れたな……」

 

俺は自分の戦果に密かに感動していた。
泥んこ遊びをしてるような格好になったが、
コレだけ楽しめれば母親に文句言われることもへっちゃらだ。

 

「あら、あんたにしちゃ中々採れてるじゃない」

 

そういうお前は採りすぎだ。
どう見ても1週間やそこらで食いきれる量じゃないぞ?

 

「あっちはどうかしら?」

 

そういってハルヒは愛しのマイエンジェルがいる方に目をやった。
つられて俺もそちらに向く。

 
 

『ひ、ひゃぁ!?み、みみずがぁ〜』

 
 

『また、虫食いですね……』

 
 

「……勝負にならなかったわね」

 

「同感だ」

 
 
 

試合終了まで残り数分という時に、
長門が何かを見つけた。

 

「どうした?でかい芋でもあったか?」

 

俺がそう聞くと、
長門は静かに、だが自信満々に頷いた。
もう既にコールドゲームどころか不戦勝が決まっているが、
長門が見つけたんだから採らせてやるべきだろう。

 

「お前が見つけたんだ。土を掘ってやるから、
引っこ抜いてみるといいさ」

 

俺がそういうと、長門はつるを持った。
さて、俺も芋の周りを掘って抜けやすくするか……
……ほんとにでかいな、コレ。

 

「ちょっと待ってろ。今抜けやすくするから」

 

頷く長門を視界の隅に捉えながら、
俺は芋を傷つけないように丁寧に土を除けていった。

 

「よし、こんなもんだろ。引いてみてくれ」

 

俺の言葉と同時に、長門はつるを引っ張った。
って、おい!そんな強く引っ張ると……

 
 

「あ……」

 
 

何が起こるか考えるより早く、
俺の身体は長門の方に飛んでいった。

 
 

「ぐあっ!」

 
 

背中と腹に鈍痛が走る。
つるを強く引きすぎた長門は、
バランスを崩して尻餅をついた。
間一髪仰向けにすべりこんだ俺の身体にな……

 

「……迂闊」

 

「怪我はないか?」

 

というか、退いていただきたい。
お前の感触が伝わってきて幸せだが、
痛いもんは痛いからな。

 

「ない……ごめんなさい」

 

「こういう時は『ありがとう』って言うもんだ」

 

俺は服についた泥を払いながら言った。
それにしても長門の感触は最高でした。
そんなバカなことを考えている俺に、
小さな声で長門が言った。

 
 

「そう……ありがとう……」

 
 
 

結局、俺たちは古泉チームの20倍近い量を収穫した。
終始虫におびえていた朝比奈さんと、
虫食いや小柄な芋ばかり収穫した古泉は、
ハルヒにより、『罰ゲーム』として落ち葉拾いを命ぜられた。

 

「全部焼き芋にするからたっくさん集めてくるのよ!!」

 

全部焼き芋かよ。
蒸したり、スイートポテトにはしないのか?
俺が当然のように聞くと、
ハルヒは珍しく考え込んだあと、
それもそうねとあっさり納得した。

 

「じゃあ、適当でいいわ。その代わり早く集めてきてね。
もうお腹ペコペコだから」

 

それには同意だ。
働かされている朝比奈さんには悪いけどな。
古泉?誰それ?

 
 
 

それから、1時間ほどして、
ようやく本日のメインディッシュにありついた俺たちは、
さっそく食べ始めた。

 

「やっぱりほくほくの焼き芋はおいしいわね〜」

 

「まったくだ」

 

「そう言って頂けると僕たちも働いた甲斐があります」

 

「そうですね〜」

 

「おかわり……」

 

やはり自分で掘って自分で焼いた芋はうまい。
なんかこう、未知のスパイスでもかかってるような味だ。

 
 

しばらくそうやって自画自賛しながら、
焼き芋の大量消費を行っていると、長門が俺の側までやってきた。

 

「食べて……」

 

そう言うと、長門は俺にでかい焼き芋を差し出してきた。
って、これさっきお前が掘った本日最大級のでかイモじゃねーか。

 

「何で俺に?」

 

「お礼」

 

あぁ、さっきのか……
気にしなくていいのに。

 

「お礼……」

 

「いや、いいよ」

 

だが、長門は引いてくれない。
というか芋が近い。熱い。
あと、お前ホントは無理してるだろ?
今にもヨダレが垂れそうな顔してるぞ。

 

とはいえ、せっかくの長門の好意を無碍にするわけにも行かないので、
俺は一口だけ頂くことにした。

 

「ありがとな、長門」

 

「いい……どういたしまして」

 

それだけ言うと、長門は嬉しそうに手にした芋を食べ始めた。
この顔が見られたならクッション代わりになった俺の身体も満足だろう。
そう思いながら俺は再び焼き芋を食べることにした。

 
 

結局、ハルヒと長門という、
地球上の食糧問題の最大の敵である二人により、
本日収穫分は全て焼き芋になっちまったけどな……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:36 (2685d)