作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと栗拾い
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-10-11 (水) 22:59:45

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

少し前まであれだけ暑かったというのに、
朝晩の冷え込みが厳しくなり、
ようやく秋が来たんだなと感じるようになった今日この頃、
おれは文芸部室という隠れ蓑を着た団室でのんびりしていた。
朝比奈さんの煎れてくれたお茶を片手に、
長門のページをめくる音を聞きながら、
古泉の戦艦に魚雷を落としていく……
やはりこういう和やかな日常が一番だn……

 

「やっほー!みんないるー?」

 

せめてモノローグくらいは完遂させてくれ。
だいたい欠員がないことは見れば分かるだろう。
まったくどいつもこいつも律儀に来やがって……
俺も人のことは言えないがな。

 

「早速だけど今度の休みの不思議探検は中止ね!」

 

唐突にも程があるぞ。
大体遅刻したんだから侘びの言葉の一つもあっていいんじゃないのか?
まぁあの財布を軽くするためにあるような謎のパトロールを中止してくれるというなら、
俺としては文句は無いが……

 

「何かご予定でも?」

 

ニヤケ面で古泉がハルヒに聞く。
どうでもいいが、お前の艦隊は既に虫の息だぞ?
そんな盤上の一方的な虐殺をよそに、
ハルヒはいつもの不適な笑みをしだした。

 

「実はね〜さっき鶴屋さんにいいもの貰ってね〜」

 

何か嫌な予感がする。
さっさと逃げ……ダメだ、ハルヒがドアの前から離れない。
そしてハルヒは懐から一枚の紙を取り出してこう宣言した。

 
 

「今度の休みはSOS団主催大栗拾い大会をします!!」

 
 

ハルヒの話によると、暇を持て余したハルヒを見かねた鶴屋さんが、
『それならうちの山で何かするといいっさ!大自然が一杯にょろ!』と、
ありがた〜い申し出をしてくれたらしい。
鶴屋家は本当に何者なんだろうな。
ただの金持ちって枠じゃ納まらないぜ。

 

「で、なんで栗拾いなんだ?」

 

「そりゃ鶴屋さんが『マツタケも栗も一杯にょろ〜』って言ってたからね」

 

お前が鶴屋さんみたいな言葉遣いをしてるのも中々いいな。
じゃなくて、それならマツタケにしようぜ。
栗ならそこらじゅうに生えてるだろ。

 

「そんなガメツイことはできないわ。キョンと違ってあたしは控えめだから」

 

前半部は賛成だが、後半部は全勢力を持って反抗したい。
お前が控えめなら、世の全ての人間が控えめ呼ばわりだ。
控えめじゃないのは朝比奈さんの胸くらいになるぞ?
そんな俺の考えもむなしく、ハルヒは高らかに叫んだ。

 
 

「それじゃあ、今度の休みは鶴屋山にある栗という栗を採り尽くすのよ!!」

 
 

……ガメツイのはお前だ。

 
 
 

さて、時は流れ流れてその週の休日の朝、
俺はいつもの様に駅前広場に向かっていた。
後ろの『荷物』が重くてチャリが進まない。

 

「遅い!罰きn……あら?」

 

集合時間にはちゃんと間に合った俺を迎えてくれたのは、
珍しいことに驚きを隠せないSOS団の面々であった。

 

「悪いな……玄関でこいつに捕まって遅くなった」

 

そういって俺は背中にしがみついていた『荷物』を降ろした。
ほら、ちゃんと挨拶しろよ?

 

「やっほー!!」

 

そう言って俺の懸念をよそに妹は元気一杯飛び掛って行った……

 
 

SOS団が誇る3人の美女の胸に順番に顔をうずめるという、
男子垂涎の『挨拶』をした妹は、
電車に乗ってもそのパワーを持続していた。
この力があれば発電所いらないな。

 

「ところで鶴屋さんの持ってる山ってどこにあるんだ?」

 

「え〜と……地図によると、目的の駅を降りて北東に30分くらい歩いたトコね。
なんか『見える範囲は大体うちのもんにょろ』って言ってたから」

 

……冗談だろ?
呆然とする俺の目の前には、
窓から見えるなだらかな山の連なりが見えていた……

 
 

目的地についた俺たちは、
ハルヒの提案によりくじ引きをすることになった。
どうやらチーム対抗にしたいらしい。

 

「じゃあ、まずはキョンからね」

 

相変わらず準備のいい奴だな。
そう思いながら俺は1本のくじを引いた。

 

「……しるし無しだ」

 

「ふーん。じゃ、次みくるちゃんね」

 

「え、えと……じゃあこれで」

 

そう言って引いた朝比奈さんの手には、
しるしがあるくじがあった。
どうやら愛しのマイエンジェルとは離れ離れらしい。
途端にやる気が失せるね。

 

「では僕はこれで」

 

いつの間にかくじを引いていたエスパーの手には……
朝比奈さんと同じものがあった。
くそ、いまいましい…あぁいまいましい、いまいましい。

 

「残り3本……次は……」

 

「はいは〜い!あたしがひく〜!」

 

そう言って妹はハルヒの手から勢いよく一本のくじを引いた。
……無印……ってことは俺と同じ組か。
まぁ手元で監視できると思えば、そちらの方がいいか。
こいつは何をするか予測不能だしな。

 

「残りは1本ずつね…あたしは残り福がいいから有希が引いてちょうだい」

 

どちらが『福』なのか知らないが、
ハルヒはそういって長門に手を差し伸べた。
長門はコクリと頷くと、そこから1本のくじを引いた。

 
 
 

「じゃあ、あたしと古泉君とみくるちゃんはこっち、
あんたと有希と妹ちゃんはそっちを探索ね」

 

そういってハルヒは適当な方向を指差した。
まぁおおまかに山を半分に分けた感じか……
そんな広範囲まで探索できるわけないだろ。

 

「いい、キョン?負けたら罰ゲームだからね」

 

ハルヒはいつもの睨みながら笑うという顔をして言った。
チーム戦のはずだが、どうやら俺一人が罪を被るらしい。
なんとも不条理なことだ。

 

「さぁ、古泉君!みくるちゃん!この山の栗を採りつくすわよ!」

 

ハルヒはそう高らかに宣言すると、
颯爽と行ってしまった。
その後に朝比奈さんと古泉が慌ててついていく。

 

「やれやれ……俺たちも行くか……」

 

俺がそう言うと、長門は静かに頷き、
妹は元気一杯駆け出した。
まぁ、せいぜい楽しむことにしよう……

 
 
 

10分くらい歩いた俺たちは、お目当ての栗を見つけることが出来た。
それまでどんぐりや、まつぼっくりなど関係ないものを拾っていた妹も、
そこら中に転がっているイガイガに大変興味を示したようだ。
どうやら、長門も興味津々のご様子だしな。

 

「ねぇねぇ有希ちゃん〜」

 

「なに?」

 

妹はとげが刺さらないように、
いがぐりを持ち上げて長門に聞いていた。

 

「これってどうやってとるの〜?」

 

そういえば、こいつは毬栗を見るのは初めてかもしれない。
頼む長門、教えてやってくれ。

 

「……」

 

……長門さん?
じーっと毬栗を見つめてどうしたんですか?

 

やがていつもらしくない、少し困惑した表情を浮かべた文学少女は、
俺の方を向いて一言こういった。

 

「……私も知らない」

 
 
 

とりあえず、栗拾い初体験の二人のために、
簡単に授業を始めることにした。

 

「いいか。まずこんな風で手で持って割る……とトゲが刺さって痛いから……」

 

「……刺さった」

 

長門さん!?
話は最後まで聞いてください!!
俺は長門の指に刺さったトゲを抜き、傷口を舐めて、
妹のカバンの中から絆創膏を取り出して貼ってやった。
いつも妹にやってるからお手の物だ。

 

「大丈夫か?」

 

俺がそう聞くと、長門は小さく頷いた。
ちょっと顔が赤い気もするが、気のせいか?
まぁこの万能宇宙人ならこんな怪我は何でもないだろう。

 

「じゃあ、もう一回説明するから、最後まで聞いてくれよ?」

 

「わかった」

 

「とりあえず、今みたいにトゲが刺さらないように、
イガ栗を地面において靴でこうやって踏んで……」

 

下の地面が柔らかいから、
この二人は切り株かなにかの上でやるといいだろう。

 

「虫が食ってたり、小さい栗は自然に帰してやれよ?
食っても仕方ないしな」

 

俺は一生懸命イガ栗を踏んでいる二人の少女に注意した。
こうしてみると何と微笑ましい姿か。
癒されるなんてもんじゃないな、これは……

 
 
 

1時間くらいその場で栗の選定作業を行っていた俺たちだが、
大分地面に落ちている数が減ってきた。
剥ぎ取ったイガはかなりの量になったが……
一応1ヶ所にまとめてある。すごい光景だけどな。

 

「ふぅ……ここら辺はもう大分少なくなってきたな……
そろそろ次のところへ……」

 

俺が移動を提案しようとした丁度その時、
妹がすぐ近くを指差して叫んだ。

 

「あ〜!あっちにもあるよ〜!!」

 

そう叫び妹は駆け出した。
おいおい、そんな急いだら……

 
 

べしゃぁっ……

 
 

俺の危惧もむなしく、
妹は顔面から腐葉土に突っ込んでいた。

 

「大丈夫か?」

 

俺が近寄って抱き起こすと、
妹は泥だらけの顔でニコニコしていた。

 

「えへへ〜コケちゃった〜」

 

「笑い事じゃないだろ。
今度からはもっと足元に気をつけるんだぞ?」

 

「は〜い。でもなかなかったよ〜?」

 

そうだな、偉いな。
俺はそういって妹の顔の泥を払い、
頭を撫でてやった。
兄バカといわれようが気にしない。
と、その時後方で物音がした。

 
 

トサッ……

 
 

驚いてそっちを振り向いた俺は、
その光景を見てさらに驚いた。

 

「おい、長門!?どうしたんだ?」

 

何とあろうことか、長門が倒れていた。
思わず朝倉に襲われたときのことが脳裏に浮かぶ。

 

「……大丈夫か?」

 

俺は前のめりに倒れていた長門を抱き起こして聞いた。
ついでに顔や服についた泥を払う。
だが、俺の心配に長門は意外な答えを返してきた。

 
 

「……コケた」

 
 

……へ?
長門の平凡な答えに俺は呆然とした。

 

「泣いてない」

 

いや、それは見ればわかるが……
一体どうしたんだ?

 

「……偉い?」

 

……え?
え〜と、もしかしてさっきの妹との会話ですか?
妹はまだ子供だから泣かないのは『偉い』けど……
まぁ長門も実年齢は3歳か。

 

「あぁ……偉いぞ」

 

「そう……」

 

俺の答えに満足したような顔を見せる長門。
こいつも案外子供っぽいところがあるんだな。
そう思った俺に長門は頭を差し出してこう言った。

 
 

「……撫でて……」

 
 
 

結局、それから30分くらい二人にいい子いい子していたおかげで、
俺たちはハルヒチームに負けてしまった。
罰ゲームとして、俺は全員分の栗を持ち運ぶことになった。
というかハルヒよ……一人でカゴ二つ分は採りすぎだぞ?
ほんとに山中の栗を採りつくす気だったのか……

 

その後、大量の栗と共に鶴屋家に到着した俺たちは、
この豪胆な先輩の粋な計らいにより、
栗ご飯をご馳走することになった。
おかげで今までの重労働が報われた気分だ。
めちゃくちゃうまかったしな。

 
 

余った栗を貰って帰る途中、長門が俺に尋ねてきた。

 

「この栗は……このまま食べれる?」

 

それは……マズイだろう。
アク抜きやら何やらしないと……
やり方は分かるか?

 

「……わからない」

 

そうか……仕方がない、
俺が教えてやるよ。
妹は……寝てるからこのままおぶっておくか。

 

「じゃあ、栗ご飯の続きでもやるか?」

 

俺が言うと長門はうれしそうに小さくうなずいた。

 
 

そうして俺たちは長門の家で、
栗を飽きるほど食べましたとさ……めでたしめでたし……

 
 
 

オマケ

 
 

「な、長門……」

 

「大丈夫……まだたくさんある……」

 

「そうじゃなくて……もう腹いっぱいだ……」

 

「そう……」

 

そんな顔されてると困るんだが……
仕方ない、もう1杯だけ……

 

結局俺は次の日になっても食いすぎで動けなかったけどな……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:35 (2286d)