作品

概要

作者
作品名とある〜文芸部室 8話 三人娘 前編
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-25 (月) 23:21:45

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

とある お昼休みの文芸部室        小柄な少女が本を読んでいる。 
良くある微笑ましい光景に見えるが、文学少女が宇宙人ってのはそう無いはずだ。
 
「長門有希 捜したよ 」
見知らぬ男が部室に入ってくる。北高生ではないようだ。
 「……… 」
有希は、男の放つプレッシャーを感じながら視線を本から男へと移す。
「 よう、そんな連れない顔をするなよ。雪山でも素っ気なかったもんな 」
「…あなたに、用はない 」
 男は後ろ手に戸を閉めるとゆっくりと有希へと近づく。
「お前にはなくとも俺にはあるんだ。お前と共に自律進化の道をたどる。」
「…そんな事 情報統合思念体が許すわけがない。 」
「どうかな? お前の親玉は、結構乗り気だぜ。 」
「 ……うそ 」
そう言って有希は立ち上がると、男を見据える。男はニヤリと笑う。
「本当さ 出来損ないのインターフェイスに、チャンスをやるつもりなんじゃねえのか 」
「あなたは私に負荷をかける。いっしょに居たくない。 」
「お前の意思など、どうでもいい。お前達の親玉ほど、俺らはのんびりしてないのさ。…それに
 なんだ、お前の中途半端な存在は? 端末としても外れ、人にもなれない。…惨めなものだ 」
 
有希は、広域帯宇宙存在についての情報を思念体にリクエストする。しかし、思念体からの回答に
彼女の身体は凍りついたように固まる。
 ……わたしからの、総てのリクエストの完全排除……
 
 「 なぜ…… 」
有希の困惑を男は楽しくてしょうがないといった顔をして言い放つ。
「わかっただろ? お前は棄てられたのさ 俺が貰ってやるだけありがたいと思いな 」
男はゆっくりと近づいてくる。有希はじりじりと後ろへ下がる。
「…こないで 」
男は小さな肩を掴むと、壁際に少女を追いつめる。
「 わたしが一緒に居たいのは、あなたじゃない 」
 文芸部室が未知の情報操作空間に徐々に変化していく。灰色の、あの時のように。
部室すべてが情報操作空間に変わろうとする直前、ひとりの少女が突っ込んでくる。
「有希っ!! 」
声がすると同時に蒼く長い髪をなびかせた少女が、男の脇腹へ飛び込む。 
男の手から有希が離れる。男にナイフを突き刺した涼子が、空かさず男と有希の間に割って入る。
 
「どう? 攻性情報たっぷりのナイフのお味は? 有希に乱暴は許さないわ 」
涼子は刺したナイフをグリグリと抉っている。本気の殺意を男に向けている。
「はっ たかが、この程度か」
男は何ともいえない顔をして、自分の脇腹に刺さるナイフを見る。
「どうしてこうも統合思念体のインターフェイスは愚かなんだ 」
「…うそでしょ? 手応えは十分あったはず… 」
男は涼子の胸の中心に手を当てる。
「ちょっと!いやらしい!! 何ドサクサにまぎれ……
涼子が言い終わらないうちに男の手は光り輝く剣へと変わり、涼子の身体を貫く。
「そんな… 」
あまりの衝撃に涼子の身体が男から離れる。情報崩壊因子が涼子の身体を蝕む。
男の持つその圧倒的な力と差を有希は感じていた。
 
 串刺しにされた涼子の蒼い瞳が色を失っていく。その美しい髪が砂のように消えていく。
有希が、涼子の体を蝕む崩壊因子の除去を試みる。しかし、情報統合思念体との連結を
絶たれた今、その力のほとんどを失っている有希に、それは不可能だった。
 
「涼子を… 消さないで… 」
男は有希の言葉をまともに相手にしようとはしない。
「さて。 どうしたものかなぁ 」

有希が動く。男へと歩を進める。

「 だめ…… 今のあなたじゃ… 勝てない 」
 
涼子は有希を止めようとするが、既に有希には聞こえていない。しかし次に涼子が聞いたのは
有希の信じられない言葉だった。
「 ついて行きます… いい子にします… だから 涼子ちゃんを、たすけて… 」
「 くっ 有希ふざけないで 」
涼子は最後の力を振り絞りナイフを槍に再構成する。自らの存在すらも攻性情報の一部とし
最後の一撃を試みる。 だが――    男には何も起こらなかった。
 
「有希っ 何くだらない事言ってるの 逃げなさい 早く 」
涼子は既に力を無くし、胸を貫いている剣とバックアップとしての誇りだけで立っている。
 
「ねぇ有希 お願い、逃げて… そんな条件で、わたしを助けたりしたら… 絶交、なんだから… 」
男が剣を抜くと涼子は崩れるように倒れる。その瞳に小柄な少女が映っている。
振り返る少女の濡れた横顔が儚く微笑み、涼子にお別れを告げる。
 
「 いいよ… 涼子ちゃん。 絶交してあげる 」
 
 
男はうんざりした顔でふたりを見ると苛立ちをあらわにする。
「情報統合思念体の造るインターフェイス、この程度のものか 」
男は有希の頭を無造作に掴むと自分の元に引き寄せる。
有希が短い声を出し抵抗するが男は何事も無かったかのように有希を引きずってゆく。
「お前はついてくると言ったろう? さっさと来い 」
 
男の向いた先にはいつの間にか真っ暗な闇が口を開けている。
「涼子ちゃんを… 助けると… 」
男は聞こえていないかの様に有希を掴んだまま闇へと歩きだす。
「俺は一言もそんなこと言った覚えはないぜ 」
 
 その刹那、完璧に構築された攻性情報と情報操作が空間を走り抜ける。その力は男を
震い上がらせるに充分過ぎる物だった。
「なんだとっ 」
新たな情報操作空間が闇を押し潰し、灰色の空間を静かな草原へと変えていく。絡み付く攻性情報に
男は動きを止めざるを得なかった。
「あの女!! まだこんな力を 」 
とどめを刺す為に男は振り向く。
 
「あいかわらず 女の子の扱いが荒いのね 」
その強力な攻性情報の噴きだす中心に立っているのは、穏やかな笑顔の喜緑江美里だった。

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:31 (1921d)