作品

概要

作者おぐちゃん
作品名がんばれゴエモン
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-22 (金) 00:10:14

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 庭から鈴虫の声が聞こえる。
 秋の草花の、むせかえるような不快一歩手前の臭い。
 俺たちSOS団は、なぜか俺の田舎のばあちゃん家に来ていた。何故かは聞くな本当に。
 まあ、今日も一日あれこれ疲れたが……やっぱり田舎はいいなあ。
 夕食も終え、あとは風呂入って寝るだけという緩やかな幸せの時間。
 俺のささやかな幸福は、刺激的すぎる長門の姿に破られた。

 

「入浴の仕方がわからない」
 長門は、いつもの無表情、いつもの落ち着いた声でそう言った。
 いつもと違うのはただ一つだけ。胴体をバスタオルで申し訳程度に隠しただけという、健全な男子高校生にはあまりにも扇情的に過ぎる格好だ。
「あ、え……なに?」
「浴室。構造が理解不能」
 長門はそう言うと、左手で俺の手を取って歩き始めた。右手はバスタオルを押さえているので使えないのだ。
 ……長門の細っこい足が、太腿の上の上まで露わになっている。肩もはだけて、かわいい鎖骨が見えている。この状況で俺に理性を保てと言うのか長門。
 俺の葛藤などまるで気にせず、長門は俺を風呂場に連れてきた。
 ……脱衣所には、長門の服と下着がきちんと畳んで置かれていた。えーとつまり長門、そのタオルの下は何も着てないということでファイナルアンサー?
「湯船に、用途不明の円盤が浮かんでいる」
 長門は湯船を指さして言った。
 確かに、風呂桶の中に、丸い板がぷかぷかと浮かんでいる。
「長門。弥次喜多を読んだことはあるか」
「東海道中膝栗毛なら、全て原文で読んだ」
 なるほど。実は俺、ちゃんと読んだことは無いんだよな。
「喜多さんが五右衛門風呂に入る場面を覚えてるか」
「ごえもん??」
 長門は小首をかしげる。そうか、宇宙人にも五右衛門風呂は西日本の神秘なのか。
「これがその五右衛門風呂だよ。
 この風呂はな、風呂桶の下で直に火をたいて湯を沸かしてるんだ」
「……おなべ?」
 長門は一歩後ずさって言う。そんなお前、俺を人食い原住民みたいに見るなよ。
「ああ、お前を喰ったりしないから安心しろ。
 やけどしないように、この板を踏んで湯船につかるんだ」
 俺は片足を湯船に入れて、ちょっとだけ実演して見せた。板を沈めて、その上に乗っかるようにして湯船につかればいいのだ。
「……理解した」
 長門はうんうんとうなずいている。──風呂の構造に気を取られたのか、バスタオルがずり落ちかけてとても大変なことになっていた。胸とかおへそとか。
 いかん、これ以上ここにいたら俺の理性が湯当たりしちまう。
「じゃ、ゆっくりしてってくれ」
 俺はきびすを返し、風呂場を出て行こうとした。
「……待って」
 ──そのとき、長門が俺の手をとった。
「な、なんだよ」
「あなたに……頼みがある」
 長門は澄んだ目で俺を見上げた。……やめてくれ。そんな風に見つめられたら俺。

 

「うう──あ……」
「なあ、長門……気持ちいいか?」
「……うん」
 長門の小さな声が、浴室に響く。
 こんなもんでいいんだろうかな。何しろ俺も初めてで加減がつかめない。
 そんなことを考えながらとまどっていると、長門は俺の心を読んだように言った。
「もっと……つよくして、いい」
 そ、そうなのか。それじゃ、遠慮無くそうさせてもらおう。
 ……体が熱い。芯から火照るようだ。
 俺は大きく深呼吸すると──

 

              風呂のかまどに、薪をひとつかみ放り込んだ。

 

 かまどの火が大きくなる。ハルヒの奴が長風呂したせいで湯がぬるくなっていたが、これで長門もあったまるだろう。
「しっかし、本当に熱いな」
「がんばって」
 長門が風呂場の中から応援してくれた。そこまで言われちゃ仕方ない、パパがんばっちゃうぞ。
 庭から鈴虫の声が聞こえる。
 秋の草花の、むせかえるような不快一歩手前の臭い。
 俺は長門が満足するまで、かまどの火をたき続けた。

 

 その後、朝比奈さんと古泉、さらに酒酔いをさまそうと二度風呂としゃれこんだハルヒが風呂をあがるまで、俺のかまど番は続いたのだった。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:29 (2710d)