作品

概要

作者おぐちゃん
作品名長門さん七五三ですよ
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-22 (金) 00:08:37

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 とある土曜日。我らがSOS団員は、何故か俺の家に集結していた。
 何でこうなったのか俺も覚えていない。多分ちょっとした話の弾みだろう。
 そして今、ハルヒたちは我が家のアルバムに見入っているのだった。
「へえ、これは七五三? 懐かしいわねー」
 ハルヒが妹の写真を見て言う。これは妹が七歳のときの写真だな。
「…………」
 と、この写真にやけに熱い視線を注いでる奴がいた。
「……これは、どういった行事」
 長門は写真を見つめたまま、真顔で聞いた。
「えっと……子供の成長を祈って神様にお参りする行事、でいいのかな?」
「僕もそう記憶してますが」
 長門は神妙な顔で写真を見つめている。
「有希。ひょっとして、七五三やったことないの?」
「ない」
 ま、統合情報思念体がこいつを七五三に連れてくはずはないよな。よく考えれば長門は今年で三歳だから、七五三未経験でもおかしくはないが。
「みくるちゃんは?」
 ハルヒは反対側にいる朝比奈さんに問いかけた。
「あ、やりましたよ。この辺でやってる七五三とはちょっと違いますけど」
 朝比奈さんは即答した。どうやら未来にも七五三はあるんだろう。ちょっと変わってはいても。
「ふうん……」
 ハルヒはアヒル口になって、何かを考えているようだった。
 結局その後、俺たちはとりとめもない話に何となく盛り上がり、日暮れ前に解散したのだった。

 

 そして翌週の火曜日。掃除を済ませた俺は、いつものようにまっすぐ部室に顔を出した。
「どうも、こんにちは」
 扉の前でにっこりと笑うSOS団副団長。平安貴族チックな格好が実に似合っている。
 ……これくらいでいちいち驚いていちゃ、SOS団員その一は務まらない。
「なんだその格好は」
「神主です」
 古泉は手にしたおはらい棒をちゃっちゃっと振って見せた。……よく見ると、アンテナ差し棒の先に紙を貼り付けただけの代物だ。
 さらに部室の扉には、「SOS大明神」という張り紙がしてあった。
「神主に大明神って。宗教法人でも立ち上げたのか?」
 呆然としていたら、扉が開いてハルヒが顔を出した。
「古泉君、もう入っていいわよ。あ、遅かったじゃないキョン」
 扉の内側には、赤い鳥居が鎮座ましましている。
「ハルヒ。ちょっと目がおかしくなったみたいだ。今日は帰る」
「あんたの頭がおかしいのは前からでしょ。とにかく入んなさい」
 ハルヒは俺の腕をとって、異空間と化した部室に俺を引き込んだ。
「あ、キョン君こんにちはー」
 巫女服を着込んだ朝比奈さんが、にっこりと天使の笑顔を浮かべる。一方、長門はいつもの席でじっと座り込んで、鶴屋さんに化粧をしてもらっていた。
「キョン君こんちはっ! どうさ、有希っち似合ってるにょろ?」
「はい」
 俺は考えもせず即答した。長門はいつもの北高セーラーではなく、赤い花柄の振り袖を着込んでいる。顔には上品な化粧がされ、髪の毛には花のかんざし。
 ……で、いったい何のつもりだこれは。
「決まってるじゃない。七五三よ」
「誰の」
「有希の」
 長門の七五三ねぇ。ハルヒは知らないが長門は三歳だ。七五三を祝ってあげるのはいいかもしれん。
 しかし七五三は十一月の行事だ。俺の気が確かなら、今はまだ九月だぞ。
「そんなのいーのよ。思い立ったが吉日ってやつ」
 いや、吉日ってのは神様が決めるもんだろ。二ヶ月も先取りするのは失礼じゃないか?
「それがね、有希の七五三を祝おうとして近所の神社に電話したけど、軒並み断られたの。
 十六歳になって七五三はない、だって。ケツの穴の小さい連中だわ」
 年頃の女の子がケツの穴とか言うな。それにでかいケツの穴は古泉だけで十分だろ。
「だからね、あたし達で神社を作ることにしたワケよ。有希のためにね」
 それがSOS大明神か。よく見ると、部室の一番奥には神棚が置かれていた。年の暮れになると日曜大工の店に並ぶアレだ。
「安物だけど、心がこもってればいいのよ。ご神体も入れたし」
 神棚には、小さな丸い鏡が置かれていた。あれはハルヒのコンパクトか?
「そ。つまり神様はあたしってことになるのかな」
 あながち間違っちゃいないあたりが恐ろしい。で、古泉が神主で朝比奈さんが巫女さんか。
 でも、この鳥居とか神主の衣装はどうしたんだ?
「あ、それは演劇部から借りてきました。安倍晴明の衣装と、舞台装置ですよ」
 古泉が屈託なく言う。……安倍晴明っておまえ、陰陽師だろ。神主とは正反対だろうが。
「見た目それっぽきゃいいのよ! それに千歳飴も用意したから、これで準備OK!」
 そう言ってハルヒが取り出したのはヴェルダースオリジナル。なぜなら彼女もまた特別な存在だからです。
 まあ長門の七五三を祝うってのなら、俺も異論はない。けど俺は何すりゃいいんだ。
「あんたは有希のパパ役よ。んで、あたしは神様兼ママ役ね」
 なるほど。七五三ってのは親子連れで行くもんだしな。──しかしそれはつまり。
「俺とおまえは夫婦、って配役なのか?」
 俺がそう言うと、ハルヒは三秒沈黙した後、十二秒かけて顔を赤らめた。
「うっさいわね! つべこべ言わないの!!」
 ハルヒは向こうを向いたままで、俺の延髄に見事な蹴りを入れた。

 

 鳥居の前に、長門を挟んで俺とハルヒが並ぶ。鳥居の向こう、神棚の前には神主と巫女が待っていた。
「…………」
 手に暖かいものが触れた。長門が、マニキュアを塗った指で俺の手をそっと握ってくる。
「こらキョン! にやけてんじゃないわよ!!」
 ハルヒはそう言って長門の手を取ると、そのままずんずんと鳥居をくぐっていった。
 神棚の前に立つ俺たちの頭上で、陰陽師もとい神主がおはらい棒を振る。
 そして巫女さんが、長門にヴェルダースオリジナル改め千歳飴を渡した。
「……えと。これで終わりなのかしら?」
 ハルヒ、お前が自信なさげでどうする。
「いや、写真撮らないと駄目さっ! ほらみんなこっち向いて!」
 鶴屋さんがデジカメを振り回す。
 親子三人に神主と巫女というカオスな一団は、にっこり3笑って一枚の写真に収まった。

 

 結局七五三はあっさりと終わった。その後は、ヴェルダースオリジナルをおやつにしたお茶会が始まった。
 長門はいつもの調子で、黙々とキャンディーを頬ばり、お茶をくいくいと飲んでいる。
 ハルヒと鶴屋さんも負けじと飴玉争奪戦に参加したので、キャンディーはあっという間に消え失せた。
 その後、俺たちは手分けして部室を片づけた。演劇部に衣装と舞台装置を返して終了。
「じゃ、今日はこれで終わり!」
 ハルヒの一言で、俺たちは解散した。
「ところでみくるちゃん、男子生徒からすごい注目されてたの気づいた?」
「あはは、そう言えばみんなめがっさ見てたにょろ」
「いけるわね……いい儲けになるかも……」
 ハルヒの思考はあらぬ方向に飛躍しているようだ。そんなハルヒを見ていたら、袖口をくいっと引っ張られた。
「…………」
 どうした長門。
「……わたしは三歳。……七歳になったら、また祝ってくれる?」
 長門は俺を見上げながら、ぽつりと言った。
 四年後か。俺たちは高校を卒業してるだろうし、今みたいな馬鹿をやってる歳じゃ無いかもしれない。
 けどな、長門。
「心配するなよ。そのときはちゃんと祝ってやる」
「…………やくそく」
 長門はそう言うと、俺の手をきゅっと握った。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:29 (3082d)