作品

概要

作者おぐちゃん
作品名長門さん理髪店ですよ
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-22 (金) 00:05:49

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 とある休日。いつものように朝飯を食っていたら、母親の視線に気づいた。
 食後、母親から「髪を刈ってこい」とのお達し。言われてみれば、最近散髪をサボっていたせいで、俺の頭はだんだん鳥の巣のようになってきていたのだ。
 というわけで俺は、自転車をこいで近所の床屋に向かっていた。いつも行きつけの床屋があるから、そこで刈ってもらおう。
 ……と思っていたら、俺の目の前に見慣れない床屋が現れた。
 『理容・ユニーク』?? どっかで聞いたような……
 気が付くと、その床屋の前に自転車を停め、ドアをくぐっていた。

 

「……いらっしゃいませ」
「いらっしゃいじゃないだろ。何やってんだ長門」
 店内には何故か長門がいた。北高のセーラーの上にPIYOPIYOマーク付きの黄色いエプロンという格好が妙にはまっている。
「ここはわたしたちの店。生活費のため」
 長門はしれっと言ってのけた。道理で聞き覚えのあるフレーズだと思ったら。
「しかし、高校生が床屋で働いてちゃおかしいだろ」
「情報操作は得意」
「あのな。免許とか持ってるのか?」
「…………」
 長門は一瞬沈黙した後、店の奥に入っていった。30秒ほどして、何かが入った額縁を持って来ると、そこら辺の壁に掛けた。
 額の中には、右の者に理容師資格を云々と書かれた卒業証書みたいなもんが入っていた。
「はい」
「はい、じゃないだろ。今、それ偽造したろ」
「しらない」
 長門は向こうを向くと、ケースから殺菌したはさみを取り出し始めた。
 と、誰かが俺の後ろから声をかけてきた。
「いらっしゃーいキョン君。ささ、こっちの椅子にどうぞ」
 朝倉だった。その後ろには、喜緑さんもいる。
「今日はカットですか? パーマ?」
 二人は動きやすそうな私服の上に、やっぱりエプロンを付けていた。あの喜緑さん、北高の校則ではパーマは禁止ですよ? 生徒会の人間がパーマ勧めてどうすんですか。
 とにかく俺はうやむやのうちに座らされ、髪をカットされることになった。

 

 カット担当、長門有希。
「髪はどれくらいの長さ?」
「いつも通りで頼む」
「わかった」
 長門はそう言って、櫛で俺の後ろ髪をすき、はさみを当てる。

 

 ぢょき。
      「 あ 」

 

 ……ちょっと待て。いまの「あ」ってのは何だ。
「大丈夫。ちょっと隠せば目立たない」
 やめてくれよな。後ろ頭なんて見えないぜ? これから毎朝そこんところを隠すように髪をセットしなきゃならんのか。
「あらあら大変。キョン君、いっそ丸坊主にしちゃいなさいな」
 朝倉が無責任なことを言う。勘弁してくれ。坊主頭が悪いとは言わんが、たぶん谷口あたりから相当馬鹿にされそうだ。ハルヒなんて俺の頭を見て笑い死にするかもしれん。
「では、今から髪を再構成する」
 俺の後ろ頭がなにやら光を発した。光が消えるとともに、床に落ちていた俺の髪が消え失せる。どうやら切られる前に戻ったらしい。
「こういうことが出来るんなら、はさみなんか必要ないだろ。髪の毛を短く再構成すりゃいいのに」
「それでは、床屋さんにならない」
 あのな。お前の都合はわかるんだが、頼むから客の意向も汲んでくれよ。
 その後、普通の床屋の倍近い時間をかけて、どうにか長門は俺の頭を刈り終わった。

 

 シャンプー担当、喜緑江美里。
 ……と、彼女が洗い始める前に、長門が乱入した。
「これを使って」
 長門が俺の頭にかぶせたのは……シャンプーハットだ。
「いらん。外してくれ」
「でも、これがないと目にしみる」
 いや、大丈夫だから。頼むから止めてくれ。道行く人がガラス越しに好奇の視線を浴びせてくるんだ。
 俺の必死の説得に、長門はようやくシャンプーハットを外してくれた。
 さて、喜緑さんは俺の頭を洗面台に突っ込むと、シャンプーをかけて洗い始めた。
「どこかかゆいところはありませんか?」
 いや、別に。
「本当ですか?」
 あの、大丈夫ですから。
「…………隠すとためになりませんよ?」
 本当ですってば! どこもかゆくありません!!

 

 カミソリ担当、朝倉涼子。
「ちょっと待て朝倉。それで剃るつもりか?」
「ええ。どうかしたの?」
 朝倉の手に光るのは、カミソリではなくお馴染みのナイフだ。
「大丈夫よ。よく研いであるからすごく切れるのよ?」
 朝倉はナイフを舌なめずりしながら言ってのけた。確かにとてつもなく切れそうなんですが。生え際どころか首をすっぱり行きそうなくらいに。
「あの、もう今日はこれで帰る」
「だめ」
 横合いから長門が言った。ひょっとして怒ってるのか長門。
「怒ってはいない」
 す、すみませんっ! 今からでもシャンプーハット使うから! 免許とか細かいこと言わないから! だから勘弁してくれナイフだけはっ!!
「……やっておしまい」
「うん」
「いやああああああああっ!?」

 

『ありがとうございました〜〜』
 三人娘が見事に唱和する。俺は疲労困憊のていで立ち上がると、カット代1800円也を支払った。
「あー……何というか。お前等、いつもこれやってるのか?」
「…………(ふるふる)」
 俺の問いかけに、長門がかぶりを振った。
「? だって、生活費のためにやってるって」
「生活費のために始めようとしていた。あなたが最初のお客様」
「あ、そうなのか……」
「どうだった?」
 長門は小首をかしげて俺の顔をのぞき込んでくる。
「三十点。……他の客が来る前に、もちっと練習しとけ」
「……わかった」
 長門はちょっと肩を落とした。しかしここは厳しく採点しておこう。……ご近所の皆さんにご迷惑をかける事は断固阻止しなければ。
「では、もう少し練習につきあって欲しい」
「ああ、おやすいご用  って、ええ??」
 俺の頭が再び光を発した。それが収まったときは、俺の髪は再び元通りの鳥の巣頭に戻っていた。
「また最初から。大丈夫、同じ失敗は二度としない」
「勘弁してくれ────っ!!」

 

 その後、美人の三人娘が髪を刈ってくれる『理容・ユニーク』は、近所で大変評判となった。
 それまでの間に俺が流した血と汗と涙は、決してご近所さんには知られることは無かったが。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:28 (2729d)