作品

概要

作者書き込めない人
作品名気ままな文芸部室 5 部活編
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-09 (土) 11:28:46

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

さて……『部活』と聞いてどこでやるものだと思い浮かべるだろうか?
グラウンド?音楽室?調理室?あるいは……部室?
そのどれもが『学校』という建物の中にある。
そう、ロードワークでもない限り『部活』は学校内でやるものだろう。

 

だが、本日の文芸部の活動は何故か学外で行うことになった。

 
 

しかもよりにもよって……長門の部屋で……

 
 

何でこんなことになったのかね……
俺は本日の部活動の内容を思い起こしていた。

 
 
 
 

俺は部室で長門から勧められた本を読んでいた。
三毛猫が主役の推理小説だが、中々に面白い。
三毛猫を飼ってる身としては感情移入をしやすい気もする。
そういえばシャミセンのご主人様は海外で元気でやっているだろうか……

 

そんなことをぼんやりと考えていると、
突然声を掛けられた。

 

「どうしたの……?」

 

「いや、どうもしないが……何だ、長門?」

 

長門が本から顔を上げ、不安そうに俺の顔を見ている。
そんな目で見られると理性が耳から溶け出していくんだが……

 

「……あんまりページが進んでないみたい……だから」

 

お前の読むスピードと比べられると困るんだが……
正直流し読みをしていても勝てそうにない。
1秒間に何百字くらい読めるのか知りたい。
とはいえ、考え事をしていたので読む手が止まっていたのは事実だ。

 

「それ……おもしろくなかった?」

 

物凄くしょんぼりした顔で聞いてくる長門。
心なしか泣きそうな顔にも見える。

 

「いや、この本は面白いよ」

 

俺は本心をそのまま伝える。
もっとも長門が選んでくれた本なら、史上最悪の駄作でも面白いと言う自信がある。
もちろんちゃんと最後まで読むぜ。

 

「ただちょっとウチのシャミセンのことを思い出してな……」

 

「三味線……?」

 

きょとんとする長門。
あぁそうか、こいつはシャミセンのことを知らなかったな。

 

「ウチで飼ってるネコの名前だ」

 

「ネコ?飼ってるの?」

 

そんなに意外か?
ていうかそれを知らずに俺に三毛猫の本を薦めてくるとは……
やっぱりお前将来司書になるといいぜ。
お前のカードを作ったあの司書よりも似合ってると思うぞ。

 

「そう……」

 

言葉じゃ分からないけど照れてる顔もたまりません。
いつまでも抜け出ようとしない俺の理性に感謝。

 

「今度見に来るか?一応珍しいオスの三毛猫だ。躾もちゃんとなってるしな」

 

実際に俺が躾けた訳ではないが、暴れたりすることは少ない。
お気に入りのジーンズをボロ雑巾に変えたことはあったがな。

 

「わ、私が行っても……いいの?」

 

何故か顔を赤くして尋ねてくる長門。
熱があるなら俺の家より病院に行く方がいいぞ?

 

「あぁ構わんさ。むしろ大歓迎だ。ついでに妹の世話もしてくれるとありがたい。
いつも騒がしくてたまらんからな」

 

妹のおかげで俺は自分の部屋でゆっくりすることも出来ない。
あいつが寝るまで平穏な時は訪れないのが我が家の辛いところだ……

 

俺の言葉を聞いた長門は何やら嬉しそうに読書に戻った。
こいつがそんなに猫好きだったとはな……
性格的には犬の方が似合いそうだが、長門と猫か……正直悪くないな。

 

俺はまたそんなことを考えながら手元の本に目を落とした。

 
 
 

さて、部活と言うものが学校で行われる限り、
閉校時刻と言うタイムリミットがある。
腱鞘炎になりそうな勢いでページをめくる部長さんはともかく、
一般的な読書スピードの俺が2時間やそこらで小説を読み終えれるわけもなく、
結局長門に勧められた本を最後まで読むことはできなかった。
あと4分の1くらいだったんだが……

 

だが、このままここに残って読むという選択肢がない以上、
この本はまた明日読むしかない。
そう思って本棚に向かった俺に長門が声を掛けた。

 

「その本……もう読み終わった?」

 

俺は先ほどまで考えていたことをそのまま伝えた。
本当は今も読みたいんだけどな。

 

すると長門はありがたいことに『家に持って帰ってもいい』と申し出てくれた。
たしかに俺もそう考えたんだが、残念ながらできそうにない。

 

「どうして?」

 

こうしてはてなマークのついてる顔をみると中学生でも充分通じそうだな。
言っておくが体型のことじゃないぞ?

 

「さっきも言ったようにうちではゆっくり読めそうにない。
おそらく妹と言う名の小悪魔に邪魔をされるだろう。下手すれば本の命が危ない」

 

そう、天使のような悪魔の笑顔で俺の部屋に侵入する妹のおかげで、
俺は読書どころか勉強をすることもできないのだ。
もともとしてないというのは置いておこう。

 

だが、そんな俺に憐憫の情を抱いたのか、
長門が一つの提案を申し出てくれた。

 
 
 

「じゃあ……私の家で読む?」

 
 
 

長門の家か……そうだな。
この文学少女の家なら妹もいないだろうし、静かに読めそうだ。
何より俺は続きが気になって仕方ない。
なんせ今から推理が披露される所だったんだからな。

 

俺はそれ以上深くは考えず、申し出に感謝していた。
それほどまでに続きが気になってたんだ……

 
 

そして今に至る。

 

今俺は長門の家に向かうべく坂道を下っている。
いつもは俺の後方をトコトコついてくる長門だが、
今日は道案内をしてくれるため、俺の前を歩いてくれている。

 

さっきまでは小説の続きが読めると楽しみにしていたわけだが、
ここにきて俺は一つ重大なことに気付いた。

 

「なぁ長門……」

 

「なに?」

 

いつもより明るい顔で振り返る長門。
あたりは冬場独特の暗さになっているが、
長門の周りだけ昼間のように明るく見える気がする。

 

「誘いに乗っておいてアレなんだが……本当に俺なんかがお前の家に行っていいのか?」

 

「どうして?」

 

何をそんな困ることがあるのかと言いたげな顔だ。
そんな顔をされても困るんだがな……

 

「いや、それは……えーとだな……」

 

今頭の中で考えていることをうまく言語化できない。
いや、言うわけにはいきそうにない。
そんな俺を見かねた長門が勝手に先読みしてくれた。

 

「部屋は整頓している。
物が……少ないから」

 

違うんだ長門。そうじゃないんだよ。
お前の部屋がきれいなのは見なくても分かるよ。
何もないって言っても熊のぬいぐるみとかがベッド脇にあるんだろ?
そんなことは俺は気にしてないんだ……

 

「いや、そうじゃなくてだな……」

 

俺は意を決して自分の考えを言う。
もう少しがんばるんだ俺の理性!!

 

「お前……たしか一人暮らしだろ?」

 

「そうだけど……?」

 

ここまで言ったんだから気付いてくれ。
言ってる方は恥ずかしいんだぞ?

 

「だから……一人暮らしの女性の部屋に男が上がるってのは……」

 

俺だって健全な男子高校生だ。
そんな俺が一人暮らしの健全なカワイイ女子高校生の部屋に上がったら……
いろいろと我慢できる自信がない。

 

俺の言いたい事がわかったらしく、長門は少し考えるそぶりを見せていた。
分かってくれたか……一応後で俺はそんな人間ではない事をフォローしておこう。
『そんな人間』がどんな人間かは各人の想像に任せる。
そして長門はやっと俺の言いたい事が分かったらしく、
長門にしては大きな声で言った。

 
 
 

「大丈夫。私のマンションは女子寮じゃないから男子禁制ではない」

 
 

ちっがーう!!

 
 

結局、俺は長門に事の重大さを気付かせることができずに
長門のマンションまでやってきた。
今から逃げるってのは……ないな。
仕方ない。こうなったら、あとは天と俺の抑止力に任せよう。

 
 

長門の部屋に入った俺は、本当に何もないことに驚いた。
一人暮らしの男でももっといろいろあるんじゃないかってくらい何もない部屋だ。
剥き出しのフローリングや、ポツンとあるコタツなど
本当に生きていくためだけの部屋だ。カーテンもないしな……

 

「本当に何もない…ごめんなさい」

 

照れながら謝る長門。
本当に申し訳なさそうにしてる姿もいとかわゆし。

 

「いや、俺としてはこういうさっぱりした部屋は嫌いじゃない」

 

ありのままの感想を述べる俺。
スッキリした空間と言うのは見ていてすがすがしくなる。
けど、この広い部屋に……長門は一人か。

 

「そう……」

 

長門の顔の赤みが2割ほど増す。
どうやらこの小柄な文学少女は褒められることに慣れていないらしい。
貶すところなんか見つからないのにな。

 

「ああ。ここなら静かに気持ちよく本が読めそうだしな。
いっそのこと今度からここで部活してみてもいいんじゃないか?」

 

冗談半分、本気半分だ。
ただ、もう少し小物があるほうがいいかもな。

 

「それだと、部室がなくなる……」

 

俺の言葉に本気で心配そうになる長門。
部室がなくなったら廃部だもんな。お互い文芸部員じゃなくなるのは嫌らしい。

 

「今のは冗談だ」

 

その言葉を聞き安心したような顔になる長門。
妹が大きくなってもこんな素直な子になればいいんだが……
あの元気さを収縮する方法がないか。

 

「冗談……少し本気にした」

 

少し残念そうな顔で言う長門。
そんな長門の顔を見て俺は心の中にあったかすかな疑問を確信に変えた。
いくら引っ込み思案な性格でもこんな広い部屋にずっと一人なんだ……
そう思った俺は今度こそ冗談抜きでこう言った。

 
 

「だけど……土日や学校がないときにこの部屋で本を読みに来るのはいいだろ?」

 
 

家で読書できないのは実証済みだし、
図書館はアレで案外土日は混雑するからな。
この部屋なら周囲の騒音に悩まされる心配もなさそうだしな。

 
 
 

なにより……女の子がこんな広い部屋にずっと一人ぼっちじゃ寂しいだろ?

 
 
 

その日から文芸部の部活動は休みがなくなった。
学校が休みの日は長門の家でやることになったからな。
いろいろゴタゴタがあったが、どうやら大丈夫そうだ。
何が大丈夫かって……まぁ俺の理性とかな。

 

ちなみに一番ゴタゴタしたのは、
さっきの俺の発言から3時間くらいの間だったことを付記しておく。

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:24 (2732d)