作品

概要

作者書き込めない人
作品名気ままな文芸部室 3 体育編
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-06 (水) 18:39:51

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

俺が文芸部に入部して、放課後を毎日読書で過ごし始めて数日たった。
毎日部活が終わってから帰るもんだから、
谷口には付き合いが悪いと怒られっぱなしだ。
だが、チャック全開の間抜け面したお前と帰るより、
可憐でお淑やかな長門さんと帰る方が断然いいに決まってるだろう。
今日も部室で長門さんの顔を見るのが楽しみでしょうがない。

 

ちなみにメールで『さん』をつけずに『長門』と呼ぶようお願いされたが、
イキナリ呼び捨てるはやはり無礼だと思うので、いまだに『さん』付けだ。
若干渋っていた長門さんだったが、
俺が「長門さんが俺のことを『キョン』て呼ぶなら、俺も『長門』と呼びます」と言ったら、
素直に諦めてくれた。でもちょっと残念。

 

それはさておき、今はまだ授業中。
しかもまだ朝方と言える時間だ。
放課後まではまだまだ苦行を重ねないと辿りつけない。
数学と化学と英語のフルコースでの責め苦が待っているのだ。

 

にもかかわらず今の俺はワクワクしている。
何故かって?
それは至って簡単だ。

 

次が体育だからだ。

 

俺のクラス5組と隣のクラス6組の体育は合同で行われる。
ちなみに着替えはもちろん男女別だ。
そして6組には俺の癒しの精である長門さんがいる。
つまり放課後にならなくても長門さんに会えるのだ。
何故今まで気付かなかったのか自分でも分かりかねる。
周囲の視線、特に谷口のオーラはこの際気にしないことにする。

 

さて、その体育の時間になったわけだが……
やっぱり冬の運動場は冷える。
だからといってマラソンで体を温めようとするのもどうかと思うが。

 

さて、ここで一つ心配なことがある。
マラソンと言うものは大変体力を使うもので、
体の弱い人間には鬼門である。
そして長門さんはどうみても体が弱そうだ。

 

俺は辺りを見回して長門さんを探す。
運動場広すぎるだろ……

 

「長門さんならあそこで本を読んでるわよ」

 

さすが読心術マスターの朝倉。俺の心を勝手に読んだのか。
まぁここは素直にありがとうと言っておくべきだろう。
俺は朝倉の指差す方向を探す。いた。

 
 
 

「おーい、長門さん」

 

歩み寄った俺の声に長門さんは物凄い勢いで反応した。
どうみてもびっくりしすぎです。
それにしても体育の授業にまで分厚いハードカバーとは……
恐れ入りますよ。さすが文学少女。

 

「なに?」

 

いつもどおり簡素な物言いだな。
メガネを直す仕草がたまりません。

 

「いや、今日の体育がマラソンだからな……」

 

改めて長門さんをじっくり見ると、
やはりと言うかさすがと言うか肌の色が白い。
どんな化粧品を使ってもここまでキレイな白は手に入らないだろう。
陰で多くの女子が憧れている、と朝倉が言っていたのも頷ける。

 

「それは……知ってる」

 

ご存知でしたか。
いや、そうではなくて……俺は懸念事項を説明する。

 

「長門さん……マラソンなんかして……大丈夫なのか?」

 

どうみても運動には向いてない。
確かに風の抵抗は少なそうだが……その、胸の辺りとか。
そんな俺の疑問に別の人間が答えてくれた。

 

「あら、長門さんなら大丈夫よ」

 

さっき別れたはずなのに、なんでまたいるんだ朝倉よ……
あと、イキナリ後ろから声かけるのは止めてくれ。
俺は今意識を全て長門さんに向けてたんだからな。

 

「なんでお前が断言できるんだ」

 

「あなた知らないの?」

 

小さい頃からの幼馴染のお前と入部一週間の俺では
長門さんに関する知識の量はだいぶ違うと思うぞ?
と、文句のひとつも言おうと思ったが、
朝倉の言葉に驚いてそれどころではなくなってしまった……

 
 

「長門さん、こう見えて運動神経抜群なのよ?」

 
 

……マジで?
俺は思わず座ったままの文学少女の方を見る。
長門さんはそんな俺に驚いて下を向く。ちょっとショックな俺。

 

「あなた運動会のクラス対抗女子リレー覚えてる?」

 

朝倉が呆れたように俺に言う。
運動会で覚えてることなんてあまりないぞ?
お前の反則的に似合ってたポニーテールはしばらく忘れられなかったが……
そういえばお前のおかげでウチのクラスが優勝できたんだよな。
あの国体クラスの走りは今でも覚えてるぜ。

 

「お褒めの言葉ありがとう。でも長門さんが出てたら負けてたかもね」

 

朝倉は笑顔でそう言うと、長門さんを連れて行ってしまった。
長門さんが何か言いたそうな顔をしていたが……まあいい後で聞こう。
しかしあの長門さんがスポーツ万能ね……
信じろってのが無理だぜ、万能委員長さんよ。

 
 

しかし15分後、俺は自分の認識を正すこととなった……

 
 

マラソンとは名ばかりのグラウンドぐるぐる回るだけのランニングは、
始業ベルと共に開始された。
男子は10週、女子は7週走って体を温めるのが目的だそうだが、
あの体育教師の顔を見るだけで充分暑苦しくなる気がするね。

 

今ここで体力を使い切ってしまうと、昼休みまで胃袋が持たない気がするので、
俺は最初からだらだらと行くつもりだった……
周りの連中も似たような感じで、頑張ってるのは陸上系の部活所属者くらいだろう。
先頭グループの顔は真剣そのものだ。

 

……って、あれ?
その先頭グループに見覚えある2つの人影が見える……
まさかと思って目を凝らしてみる……

 

「……おいおい……マジかよ?」

 

なんとそこにはポニーテールの朝倉と……

 
 

長門さんがいた。

 
 
 

「やっぱり長門さん足が速いわね」

 

「そんなことない……朝倉さんのほうが速い……」

 

「またまた〜謙遜しちゃって〜」

 

陸上系の部活に所属し、毎日汗水たらしてトレーニングを重ねる男女の集団の中に
余裕な表情でにこやかな会話を交わす二人の少女がいた。

 

「どうして運動会の競技は参加しなかったの?」

 

活発そうな容姿の少女が尋ねる。

 

「あんな人が一杯見てる所は……恥ずかしい……」

 

おとなしそうな容姿の少女が返す。

 

「まあ、あなたは昔からそうだもんね。でも今日こそは勝負よ」

 

「……あなたが勝つに決まってる」

 

「相変わらず勝負に対する意欲がないわね。じゃあこうしましょうか」

 

「?」

 

既に2人の周りには誰もいない。
後ろの方で諦めた顔の陸上部員がいるくらいだ。

 

「勝った方が負けた方の言うことを聞く、ってのはどう?」

 

「それは……」

 

おずおずとする文学少女。
しかし委員長は止めの一言を言う。

 
 

「もしあなたが勝ったら今日のお昼ご飯は部室でキョン君と二人きりで、
って感じにしてあげられるけどな〜?」

 
 
 

やっと俺は4週目だが、すごいなあの二人。
ぶっちぎりにも程があるぜ……
あんまり早くゴールすると汗が蒸発して体が冷えないか心配だ。

 

それにしても朝倉はさすがだな……
真剣な顔の長門さんの横でニヤニヤしてるんだもんな……
余裕があるのか?

 

だが、女の子に周回遅れにされるのはなんとも情けない……
しかも相手は文芸部員だぜ?
というわけで俺は当初の予定を変更し、頑張ることにする。

 

「あれ?キョン珍しいね。今日はやる気になったのかい?」

 

国木田が話しかけてくる。
お前はいつも余裕面だな。

 

「まぁな。たまには本気で走るのも悪くないだろ。
久しぶりに勝負するか?」

 

「ははは、いいねそれ。中学のとき以来じゃない?」

 

「あぁそうだな。何なら昼飯のおかずでも賭けるか?」

 

「じゃあ僕が勝ったら出汁巻き卵貰うよ」

 

さすが中学から一緒なだけあって、
俺の弁当のおかずで何が一番うまいかちゃんと把握している。

 

「いいだろう。だが、俺が勝ったら唐揚げをいただくからな。」

 

そうして俺たちは勝負を開始した。

 
 
 

結局6週目の真ん中で俺は韋駄天二人組みに周回遅れの憂き目にさらされた。
が、何とか国木田に勝ったのでよしとしよう。
まさか10週目に入ってスピードを上げるとは思わなかったがな……
それにしてもあの二人はすごかった。
長門さん本当に足速かったんだな……

 
 

残念ながら朝倉にハナ差で負けていたが、
健闘をたたえるべきだろう。

 

ところで二人ともゴールした後なんか喋ってたけど、
何だったんだろうな。

 
 
 

「はぁ、はぁ……どうやら……私の勝ち、みたいね……長門さん?」

 

最終ラップで私が彼の姿を見ている隙に、
朝倉さんがラストスパートをかけたので負けてしまった……
せっかく彼と2人でお昼ご飯が食べられたのに……くやしい。

 

「さぁて、敗者の長門さんには言うことを一つ聞いてもらおうかしら?」

 

……やはり賭けなんてするんじゃなかった……
朝倉さんの目が普段より輝いている。

 

「大丈夫。キョン君と二人でお昼ご飯を逃したあなたに、
優しい朝倉さんがひどい罰をやらせるわけないでしょ?」

 

……やっぱり朝倉さんは優しい。
多分罰というのも『肩たたき30回』程度に違いない。

 

「そうねぇ……こんなのはどうかしら?」

 

そう言って彼女は私に耳打ちした。
その罰ゲームの内容を聞いて、私は血の気がひいた。

 

前言撤回。朝倉さん……酷い。

 
 
 

マラソンが終わった俺はしばし休憩していた。
勝ったのは俺なのに国木田の方が余裕をかましているのはどういうことだ。
だらだらと他の連中が走っているのを眺めていると突然声を掛けられた。

 

「キョン君。ちょっといいかしら」

 

なんだ朝倉。俺は今息を整えるので一杯なんだ。
明日は確実に筋肉痛だぜ。
振り返ってそう言おうとした俺は絶句した。

 

「長門さん……どうしたんですか?」

 

ニマニマと笑う朝倉の横には、
真っ赤な顔をしてもじもじしてる長門さんがいた。
長門さんのこんな顔はとってもかわいいな……じゃなくて

 

「熱でも出たんじゃ……」

 

あれだけ頑張ったら体調が悪くなってもおかしくない。
だが、朝倉がそれをやんわりと否定してこう言った。

 

「いや、実はね。長門さんがあなたにど〜しても言いたいことがあるんだって」

 

俺にどうしても言いたいこと?
何だ?『トロトロ走りやがって。邪魔なんだよ!』と文句を付けたいのか?
いや、長門さんに限ってそんなことは……
当の本人は朝倉の方を向いてオロオロしながら『ち、違う』とか言っている。
何が違うのか分からないんですが……

 

しばらく二人でごねていた様だが、
朝倉が『そうか……長門さんは私のことが嫌いなのね』と嘘泣きすると、
長門さんが『ち、違っ…そんなことない。ちゃんとやる!』
と意を決してくれたようだった。
その間ボーっとしていた俺は汗が引いて寒くて死にそうだったが。

 
 

『あ、あの……』

 

チラチラと助けを求めるように朝倉の方を見る長門さん。
しかし朝倉はニヤニヤしてるだけだ。

 

「キョン、くんにお願いが、ある……」

 

お願い?『さん』を付けずに呼べって言うのは先日言ったとおりまだ遠慮したいですよ。
俺だけが一方的に呼び捨てにするのは性に合わないので。

 

だが、長門さんが継いだ言葉は俺の予想のはるか上を行くものだった……

 
 
 

「今日のお昼……一緒に食べて……欲しい……」

 
 
 

あとで朝倉に聞いた話によると、
朝倉と長門さんは勝負をしていたらしく、
負けてしまった長門さんに、
朝倉が『人見知りを直すために誰かをお昼ご飯に誘いなさい』という罰ゲームを課したそうだ。
罰ゲームはいただけないが、長門さんの人見知りを直すためなら協力しないでもない。
俺も声かけられて嬉しかったりするしな。

 

ただ、長門さんはいつも文芸部室で食べているため、
教室にいる国木田から唐揚げをいただくくのは無理そうだ。やれやれ。
だが、長門さんと2人きりで食事も悪くない。
たまには静かに食べるのもいいだろう。

 
 

このときの俺には、昼休みにすさまじい光景を見ることを予想できなかったわけだけどな……

 
 
 

朝倉さん……酷い……
『自分の口でキョン君をお昼ご飯に誘いなさい』だなんて……
朝倉さんがしてくれるというから賭けに乗ったのに……
でも彼と二人でお昼ご飯……うれしい。
あとで彼のために購買で惣菜パン買って行こう。
……楽しみ……

 
 

その日購買のパンはいつもより30分早く売り切れたという……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:23 (2713d)