作品

概要

作者書き込めない人
作品名気ままな文芸部室 2 ケータイ編
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-05 (火) 19:38:37

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

ひょんなことから文芸部員となった俺だが、
入部初日から副部長という大変ありがたいポストについた。
異例どころじゃない昇進だが、当然だ。

 

なんせ部員が二人なんだからな……

 

我らが文芸部部長さんは隣の6組の生徒だったらしく、
ここ数日、廊下とかでは良くすれ違うようになった。
何で今まで気付かなかったんだろうね、俺は。

 

「簡単なことよ」

 

後ろの席に座る朝倉が話しかけてきた。
最近の委員長は心が読めるらしい。

 

「長門さんはこないだまで休み時間はずっと教室で本を読んでたんだもん」

 

……さすが文学少女……
部活じゃない休み時間でも読書してたのか……

 

「それが今じゃあなたに会いたいが為に、
休み時間はちょくちょく外出してるんだから」

 

おかしな事をいうな。
そんなわけないだろう。長門さんだってトイレに行ったりするくらいは……

 

「でも隣の6組ではうわさになってるわよ?
あの長門さんが男に会うために教室の外に出てる……って」

 

……なるほど。それでここ数日俺への視線が増えたわけだな?
谷口なんか血の涙を流さんばかりだったぜ。

 

「そうそう、ずっと言おうかどうか迷ってたんだけど……」

 

何だ?まだこれ以上下らん話を続けるつもりか?
俺はもう聞く耳持ってないぞ?

 

「さっきからドアのところで長門さんが呼んでるよ?」

 

それは早く言えよ!!

 
 
 
 

「会話を邪魔して……ごめんなさい」

 

「いや、こちらこそ気付かなくてスマン。ちょうど死角になって見えなかったんだ」

 

なるほど……朝倉の言うとおり5組だけでなく6組からも多数の視線を感じる……
歯軋りまで聞こえてくるとは恐れ入るぜ。

 

「それで……なんか用か?」

 

おっと、視線に殺気が混じったぞ?
特に朝倉方面からの殺気が強すぎるんだが……

 

「……今日も……」

 

蝶の羽音よりも小さくその文芸少女は聞いてきた。

 

「今日も文芸部に……来る……?」

 
 

実はこの質問は俺が文芸部に入ってから毎日のように聞いている。
ちなみに俺の回答も毎日のように同じで、

 

「ああ、寄らせてもらうよ」

 

となる。
ちなみにこれを言うと殺気が薄れ、
特に朝倉が満面の笑みになる。

 

ついでに言っておくと、
俺はこの文芸部を意外に気に入っている。
長門さんと二人で静かに読書にふける、というのは心の療養になる。
静かすぎて寝ちまうこともあるが、なんと言うか癒されるんだ。

 
 

だが、こう休み時間にドアの前で立ち話するのは恥ずかしい。
というか長門さんて恥ずかしがり屋じゃなかったのか?
だが、彼女に教室に来るなとは言えないしな……
そうだ!

 

「長門さん、一つ聞きたいんだが」

 

「なに?」

 

突然の俺の質問に戸惑い気味の長門さん。
なんだか視界の隅で朝倉がワクワクしているが気にしない。

 

「こうやって毎時間俺の都合を聞きに来てくれるのはうれしいんだけど……」

 

「……迷惑?」

 

勝手に先を読む長門さん。
まだ何も言ってないから、泣きそうな顔を止めてください。
2教室からの怒りの視線も、視界の隅でうごめく鬼委員長も落ち着け。

 

「いや、そういうわけじゃない」

 

第一長門さんの声は聞いてて心地いいからな。
本人も見ていて安らぐしな。

 

「だけど長門さん人見知りするから、教室の中まで来れなくて
俺が気付くまで待たせてしまうだろ?」

 

「それは……ごめんなさい……」

 

思わず謝ってくれる長門さん。
いや、別に長門さんは少しも悪くないよ、とフォローを入れる。

 

「だから……」

 

そう言って俺はポケットからあるものを取り出してこう言った。

 
 
 

「長門さんのケータイのアドレスを教えてくれると嬉しいんだけど……」

 

俺は自分の携帯を見せて長門さんに聞いてみた。
なんか周りから『進展!?』とか『まだしてなかったのかよ?』とか
多種多様な声が聞こえたが気にしない。

 

だが俺がそう言った途端、長門さんが気まずい顔をした。
見ると朝倉もアチャーって顔をしている。
え、何か俺また地雷踏んだのか?

 

「実は……」

 

そういって長門さんは驚愕の事実を教えてくれた。

 
 

「私は……携帯電話……持ってない……」

 
 

マジか……いまどき珍しいな……って
親はこんな年頃の娘にケータイのひとつも授けなかったのか?
俺が密かに憤ってるといつの間にかやってきた朝倉が補足してくれた。

 

「長門さんのご両親は今、いないの……」

 

え……一瞬言葉をなくす俺。
なにやら俺は触れてはいけない部分に触れてしまったのか?
今度は俺がアチャーとする。
そんな俺を見て長門さんが助けてくれた。

 

「二人とも海外で働いてる」

 

何だ、そうなのか……
それならそうと言ってくれよ朝倉……
でも何でお前がそんなこと知ってるんだ?

 

「だって私たち同じマンションに住んでるから」

 

初耳だ……が、これでクラスが別々の二人が友達である理由に納得がいく。
ご近所さんなら仲良しだろう。

 

「長門さんとは幼馴染だしね」

 

朝倉の言葉にコクリと頷く長門さん。
なるほど……そりゃお互いの家族事情に詳しいわけだ。

 

「ちなみに私も現在両親は海外赴任中」

 

何だ?お前たちが住んでるマンションは独り暮らしの女性ばっかりか?
大変危険だと思うぞ?

 

「そうか……それなら携帯電話を持ってなくても不思議じゃないな」

 

長門さんの携帯アドレスを得ることができすガッカリする俺。
そしてそれ以上にしょんぼりする長門さん。

 

だがそんな俺たちに朝倉がとんでもないこと言い出した。

 
 
 

「じゃあ今日は長門さんのケータイを買いに行きましょ」

 
 
 

放課後、いつもなら文芸部室にいるはずの俺と長門さんは
朝倉に連れられてケータイショップにやって来た。

 

そんなほいほい決めれる物じゃない、第一料金とかどうするんだ、
という俺に対して朝倉は

 

「それくらいなら、長門さんのご両親なら余裕でOKよ」

 

と軽く言いのけた。
まぁ朝倉の話によるとマンションを一括ニコニコ現金払いで娘の為に購入したんだから
それくらいは造作もないのだろうが……
ちなみに朝倉のご両親も同じくらい余裕があるらしい。
羨ましいことはなはだしい。

 

「これなんかどう?」

 

さっきから朝倉が長門さんに尋ねている。
それに対し長門さんも

 

「カワイイ……」

 

とだけ繰り返している。
まったく、女性の買い物が長いのは宿命なのか?
話を聞いている限り、朝倉がしきりに『恋人との通話メールは無料』というのを
勧めているようだが、長門さんは「恋人なんていない……」と拒否している。
長門さんが勘違いしているようなので俺はそろそろ誤解を解くことにする。

 

「長門さん……それは別に恋人が相手じゃなくていいんですよ」

 

きょとんとする長門さん。
ある特定の個人のアドレスのみ無料にするだけであって、
『恋人と』ってのは宣伝文句みたいなものですよ、と説明する俺。

 

「じゃあ……友達でも……?」

 

もちろんいいと思いますよ。
ていうか他に連絡をとりまくるような相手がいるのか?と思ったが口にはしない。
あれ?なんか顔赤いですよ?

 

「じゃあ、これ……」

 

そういって長門さんはカウンターに向かっていった。
何で急に即決したんだろうな?

 

なにやらカウンターで話し込んでいる。
そうか、連絡無料設定したくても今までケータイを持ってなかったから
設定する相手の連絡先がないのか。

 

困っている長門さんを助けに行く。
朝倉はこんな時に一体何を……だめだ自分用のケータイを探している。

 

とりあえず、彼女はこれが始めての携帯電話だから、
そういう設定は後にして欲しいと頼んだ。
カウンターのお姉さんがにこやかに了承してくれ、
見事長門さんはケータイを持つことができた。

 

「おめでとう、長門さん!」

 

朝倉が長門に喜びの声を掛ける。
お前がもっとちゃんと手伝ってくれたら早く終わったのに。

 

「うん……」

 

長門さんが小さく答える。
さて……これで本題に戻るか。

 

「では、部長殿」

 

俺はかしこまって長門さんに言う。
ちょっとびっくりしてるな。

 
 

「私めに貴方のアドレスを教えてくれれば幸いですが?」

 
 

そうして俺は今度こそ長門さんのアドレスを知ることができた。
もちろんお返しに俺のアドレスも教える。

 

長門さんは朝倉とアドレス交換をした後、
また店の中へ入っていった。
さっきの無料通話の相手……おそらく朝倉のアドレスを登録しに行ったのだろう。
店員さんが優しく微笑んでいる。
ついでに朝倉もニヤニヤしている。
幼馴染の初ケータイがそんなに嬉しいか。

 
 

その日の夜は遅くまで長門さんとメールをしていた。
俺のケータイはパケット定額制なので、いくらでもメールが出来るが、
俺の眠気には限界がある。
もうそろそろオヤスミメールを送ろうかと思った時に長門さんからこんなメールが来た。

 
 

『私のことも朝倉さんみたいに「さん」を付けないで呼んで欲しい』

 
 

長門さん……じゃない長門たってのお願いだ。
これくらいならお安い御用だしな。
そうして俺は長門さんもとい長門にオヤスミのメールを送った。

 
 

『わかったよ。お休み長門』

 
 

まぁ寝れなかったけどな。

 
 

ちなみに長門さ……長門は次の日も休み時間にドアで待っていた。
俺以上に寝不足気味な顔に心配になったが、
どうやら昨日は一睡もしなかったらしい。
そんなに初ケータイが嬉しかったのか……意外と子供っぽいな。
徹夜でメールにつき合わされたであろう朝倉に同情するぜ……
だが徹夜の割に当の朝倉はピンピンしてるけどな。

 

この嬉しそうな長門の顔を見ていると
せっかくケータイ買ったのにわざわざ教室まで来なくても、と突っ込む気にもならないな……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:23 (2734d)