作品

概要

作者書き込めない人
作品名気ままな文芸部室 1 出会い編
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-05 (火) 19:32:35

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

師、すなわち先生も走る、と言いながら実際に一番忙しいのは、
もうすぐセンター試験など各種イベント目白押しな受験生ではないかと思う12月。
俺はいつものように坂道を駆け……いや、歩き登り学校にやってきた。
この時期の身を切る寒さは辛いが、あの坂道のおかげで体はほこほこしている。

 

教室について自分の席に座ると、
今日も空席が目立つことがよく分かる。
一応言っておくが俺が早くに登校して来たわけではない。
授業開始までは3分を切ってるからな。
俺がそんなことを考えていると後ろの席からシャーペンでつつかれた。

 

「ねぇちょっと……」

 

なんだ?風邪はもういいのか?

 

「おかげさまで。それより……」

 

一体何のおかげなのか知りたいが、
とりあえず相手の話を聞くべきだろう。
それが大人のマナーだ。

 

「放課後、時間ある?」

 

何だ?デートのお誘いか?
クリスマス限定のお付き合いなら他を当たれ。
お前ならわんさか男がついてくるだろうしな、などとは言わない。

 

「ちょっと会ってほしい子がいるんだけど……」

 

誰だそれは?と聞こうと思ったが、
運悪く岡部が教室に入ってきた。
それと同時に無駄に力いっぱいHRの開始を宣言する。
やれやれ。相変わらずこのハンドボールフリークは空気が読めないらしいな……

 
 

今日の欠席者は8人。
谷口ももういい加減ダメだな。明日は欠席だろう。
国木田がケロリとしてるが、こいつは案外丈夫だからな。
などと考えてると放課後になってしまった。
6時間目までの長い時間に考えたことはこれだけか……
そりゃ成績も上がらんな。

 

後ろの席から早く連れて行きたいオーラがひしひしと感じられるが、
俺としては親友たちへ声を掛けてから行きたい。
とはいえ、谷口は早退したので国木田しかいないわけだが。

 

「国木田、今日はちょっと用があるから居残るわ」

 

「用事?部活でも入ることにしたの?」

 

この時期に入る部活などあろうか。
というかそんなことしたら悪い成績が更にひどくなるじゃねーか。

 

「まあ所用、って奴だ。悪いが先に帰っててくれ」

 

「うん、いいよ。ちょうど僕も用事があって一人で帰りたかったし」

 

用事?一人で帰ってやる用事があったのか?

 

「風邪で休んでる坂中さんのお見舞い」

 

……あぁそうかい。さっさと行ってこい。
親友に若干……いや、かなり先を越された感一杯の俺は、
そのままさっき交わした約束を忘れ帰ろうとしていた。

 

「ちょっと!どこ行くのよ!?」

 

すまん……ショックのあまり家が恋しくなっていた。
で、俺に会わせたい奴ってのは誰だ?

 

「ちょっとついてきて」

 

腕を引っ張るな!
逃げるわけないだろう。

 

「そう?」

 

そのあっけない返事と共に俺は解放された。
逃げないと言った手前ついて行かねばなるまいな。

 
 

そのまま俺は旧校舎のある部屋まで連れて行かれた。
文芸部……って書いてるな。ならば間違いなくここは文芸部室だろう。
目の前で俺を先導してきた人間はとても文芸部員に見えないがな。
どうみても活発な運動部員の方が似合ってるぞ。

 

俺がそんなことを考えてると、そいつはいきなりノックをしだした。
しかもまるで自分の部屋のように普通にドアを開けている。
俺も中に連れ込まれる。だから腕をつかむんじゃない。

 

そうして無理やり部屋に連れ込まれた俺の目の前には……

 
 

一人の女の子がいた。

 
 
 
 

そのメガネをかけた大人しそうないかにも『文学少女です』といった感じの
女の子は目を見開いてこっちを見ていた。心なしか顔も赤い。

 

「おい、お前が言ってた『会わせたい子』って……」

 

「そうよ。この子よ」

 

えらく簡単に言いやがるな……
それにどう見ても彼女は驚いてるぞ?

 

「事前に知らせてなかったからね」

 

「なんだよそれ……っと、すまない」

 

俺はそこで呆然としている文学少女に状況を説明することにした。
なんせ固まったままだったからな。

 

「え〜と、いきなりのことで申し訳ない。怪しいものではないんだが……」

 

何で敬語なんだ。
まぁ初対面の人間なんだから敬語のほうがいいだろうが……
あれ?でもこの子見覚えあるような…

 

「長門さん、口くらい閉じたら?」

 

言われてその少女……ナガトさんはあわてて顔を隠した。
体ごと反転させて隠すのもすごいな。
結構恥ずかしがり屋なのかもしれない。

 

「ええと、ナガトさんとやら……」

 

よく見ると上履きに名前が書いてある。
……長い門で『長門』か。戦艦みたいな名前だな。
俺は後ろを向いたままの長門さんに声を掛けた。

 

「その……読書の邪魔をして申し訳ない。俺たちは1年5組の生徒で、
こっちが……」

 

するとその少女はこちらに振り向いた。
改めてその少し赤い顔を見ると、やはり見覚えがあるような気がする。

 

「あなた達のことは……知っている……」

 

突然その少女が口を開けた。
喋れたんだな。だが、俺たちのことを知ってるって……
不思議に思う俺に、目の前の仔犬の様な少女は答えを提供した。

 
 
 

「そこにいる彼女は私の友達……」

 
 
 

今度は俺が驚いて振り返る。
何で先に言わないんだよ。
そう思った俺は睨みつけながら言った。

 

「何で黙ってたんだよ、朝倉?」

 

俺の横にいた我らが委員長……朝倉はとぼけたような顔をする。
くそ、様になってるのがむかつく。

 

「ごめんね、言い忘れてたわ」

 

あからさまに嘘だろ。もっと頭を使ってくれ。
……まぁいい。それは置いとこう。
それより今は目の前の少女がなぜ俺のことを知ってるか、だ。

 

「あなたは……キョン、くん」

 

この言い方は本当に俺のことを知ってるな。
だが、それは俺の本名ではないのだが……

 

「まぁクラスの連中はおろか、家族もその名で呼ぶが、一応本名があって……」

 

訂正しようとした俺を長門さんの声がさえぎった。
意外と積極的だな。

 
 
 

「あなたと私は会ったことがある……」

 
 
 

……何だって?
そんなことあるか。俺はこんな奴しらn……

 

そこまで考えて俺は改めて彼女の顔を見て気付いた。

 

大人しそうな顔。メガネ。ナガトという名前。
そして本を抱えて困った顔を……

 
 

「あっ!!」

 
 

唐突に俺は思い出した。
半年以上も前の記憶。
たしか春先に妹と一緒に図書館に行った時に……

 
 

「もしかして……図書カード作れなくて困って子……か?」

 
 
 

ある春の日に学校帰りに妹を連れて図書館に行ったら、
俺と同じ北高の制服を着た一人の女の子がカウンターの前で右往左往していた。
最初は気にもしなかったんだが、彼女は30分たってもまだオロオロしていた。

 

よく見ると本だけを持って受付カウンターの方を見ている。
もしかして本を借りるためのカードがないのか?
受付の司書の人は……なんだか忙しそうだな。
だが、もうすぐ閉館時間だ。この様子だと彼女は声を掛けることもできなさそうだし……

 

しょうがない……そう思った時には既に俺は妹を連れその少女の方に歩み寄っていた。
彼女に話しかけると、一瞬ビックリしたようだった。
……が、俺の側で無邪気に『おねーちゃん、どーしたの?』などと言う妹を見て安心したらしく、
俺に事情を話してくれた。
どうやら俺の予想通り図書カードを作りたくても引っ込み思案な性格でできず困ってたらしい。

 

俺は妹を彼女に預け、代わりに図書カードを作ってやることにした。
司書の人に言うと、必要事項を書けと記入用紙を渡された。
もう少し愛想良くてもいいんじゃないか?まぁいいか。

 

さて……いくら代わりといっても俺は彼女じゃないから、名前すら分からない。
というわけで彼女に記入するよう説明する。
ちなみに彼女は学生証もちゃんと持っていた。
俺はいまだに家の机の上にほっぽり出したままなのに。

 

ふむ……ナガトユキさんか……漢字で書くと『雪』か、それとも『有希』とかか?
性別はもちろん女性だ。胸の辺りでは少しわかりづらいけどな。
学校は……やはり北高だよな。いつも見てる制服だもんな。
横から覗いていてわかったのだが、どうやら同じ学年らしい。
クラスまでは書く欄がないので分からなかった。

 

彼女が書き終えたので、俺は一緒にさっきの司書の所に戻っていった。
もう仕事も終わりの時間なのか、やはり愛想がない。
それでも図書カードを作るという仕事はちゃんとしてくれた。

 

彼女はそのカードで目的の本を借りると俺に何度もお礼の言葉を言っていた。
そんなたいしたことじゃないんだけどな。

 

本当にたいそれたことをしたつもりではなかった。
俺にとっては電車でお年寄りに席を譲るくらいのことだったから、
2,3日すると忘れてしまっていた。

 
 
 

さて、目の前の少女があの時の図書館の女の子だということは分かった。
だがまだ分からないことが一つある。

 

「で、俺と彼女を合わせてどうするつもりなんだ?」

 

俺は横でニヤついている委員長に聞いた。
まさか半年振りの感動の再会を演出するためではあるまい。
生き別れの兄妹でもない限り感動できそうにないぞ。

 

「それは彼女の口から聞いて。私は長門さんのお願いをかなえただけだから」

 

朝倉は軽く言う。
なるほど、この長門さんが俺に会いたいとご所望して、お前がそれを実行したわけか。
……本当に訳が分かりません。

 

「あの……キョン、くん……?」

 

長門さんがおずおずと見上げる。
こうして間近で見ると結構かわいいな……じゃなくて

 

「なんだ?」

 

一瞬目の前の少女はビクッとした。
横から朝倉が睨んでるのがわかる。

 

「あ〜怖がらせて申し訳ない」

 

元からこんな顔でこんな口調なんだが……
そんなに怖がられると傷つく……

 

「ごめんなさい……」

 

そんなシュンとしなくても……それより早く用件を聞きたい。
そんな俺の目の前でもじもじしていた少女は、意を決したように話しだした。

 

「お願いが、ある……変に思ったら……ごめんなさい」

 

この状況でこれ以上おかしいことは浮かばないな。
なんせ突然文芸部室に引っ張られ、半年前に会った人と会って
セッティングを準備した張本人がその人なんだからな。

 

「これ……」

 

俺がどうでもいい予想を浮かべていると彼女はポケットから一枚の紙を取り出した。
差し出した手が震えている。ビビリすぎだろ。対人恐怖症か?
俺も思わず両手で受け取る。
ずっとポケットに入れていたのか、その紙はほんのりと温かった。

 

そしてその紙にはこう書かれていた。

 
 
 

    『入部届け』

 
 
 

とっさに俺はさっき国木田に言ったことを思い出した。
この時期に部活に入れというのか?
それも成績は低空飛行を続ける俺に。
そんなもん答えはノーに決まってる……

 
 

「入部……してほしい」

 
 

そんなことイキナリ言われても……
確かに本を読むのは嫌いではないが、今は勉学に励まねばならない。
俺はカバンから筆箱を出しながらそう考えていた。

 
 

「だめ……?」

 
 

そんな潤んだ瞳で上目遣いにいわれても……
第一、俺は文芸部の存在を今日初めて知ったくらいだぜ?
俺はボールペンを持ってそう考えていた……

 
 

「……」

 
 

今にも泣きそうな顔してるな……

 

しょうがない、か……

 
 

そして俺はその白紙の紙に名前とクラスを書いた。

 
 

途端に彼女の顔が明るくなる。
やっぱり笑顔が似合うな。

 

「いいの?」

 

自分でお願いしておいてそれも何もないだろう。
それとも俺じゃ嫌なのか?

 

「!そんなことはない」

 

ブルブルと顔を振る長門さん。
後ろで朝倉が『良かったわね、長門さん』って言ってるのが聞こえる。
長門さんはいいだろうが、親を説得しなきゃならん俺は大変だぞ?
まぁ文芸部なら『国語の勉強のため』で通じるだろうけど。

 
 

「とりあえず、今日からよろしく……他の部員もちゃんと紹介してくれよ?」

 
 

俺がそういうと、長門さんが気まずい顔をした。
見ると朝倉もアチャーって顔をしている。
え、何か俺は地雷でも踏んだのか?

 

「今からそれを説明しようと思っていた……」

 

そう言って長門さんは俺に驚愕の事実を教えてくれた。

 
 

「文芸部には私しかいない……」

 
 

……え?

 
 
 
 

……こうして俺と長門、2人のきままな文芸部ライフはイキナリ始まったのであった……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:23 (3090d)