作品

概要

作者おぐちゃん
作品名ぼくらの七日間戦争 第三話
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-09-04 (月) 23:56:48

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 馬鹿キョンのにやけた顔を思い出すたび、腹が立つ。
 有希も有希よね。あのことがあって以来、なんか有希はやたらとキョンにべたべたするようになった。
 ……やっぱり、キョンにやらしいことされたんだわ。それでキョンのことを意識しはじめたんじゃないかしら。まあ、そのことは後でなんとかしよう。
 あたしは、荷物を抱えて夕暮れの街を歩いていた。えーと、洗面セットに着替えに下着と。忘れ物ないわよね?
 よく考えれば、はじめからこうしてあげればよかったわ。団員の福利厚生にまで気を回してこそ団長よね。
 キョンは強がってたけど、今日はちょっとだけ愚痴を言ってた。そりゃそうよ、片手が使えなきゃいろいろ困るわ。
『けど、腕一本使えないと生活するのは大変だぞ。着替えとか風呂とか』
 …………ちょっとやだ、何考えてんのよあたしったら。
 お風呂は、まずい、わよね。親御さんもいることだし。
 第一、あのエロキョンとお風呂入ったりしたら。あたし、お嫁に行けなくされちゃう。
 ──そうなったら、キョンは責任とってくれるかしら。
「ばか。何考えてんの」
 自分の両ほほをぱちん、と叩く。気を取り直して歩き出そうとしたとき。
 真正面に見慣れた顔をみつけた。

 

「有希。なにしてんの」
「べつに」
 いつも通りの無愛想な返事。有希は珍しく私服を着込み、でっかい風呂敷包みを背負っていた。
 涼しげなライムグリーンのワンピースは、なかなかに可愛い。
 しかし唐草模様の風呂敷はどうかと思うわ。今どきどこで売ってんのよ。
「ま、いいわ。あたしはこっちだから」
 有希に手を振り、キョンの家に向かって歩き出す。
 …………てくてく。
「有希。なんでついてくんの」
「べつに。ついて行ってはいない」
 あ、そう。でも住宅地のこっち側に何の用事があるんだか。
 ……………………てくてくてくてく。
 有希はやっぱりついてくる。
 角を曲がった瞬間、あたしはダッシュした。ギアを五速に叩っ込んで一気に最高速度。
 ぃよっし! これで振り切っ
「あまい」
 うお速っ!? なによこの娘、足音しないのに何でこんな速いの!
 おのれ、さては伊賀者かっ!?
「まだまだああああっ!!」
 さらにターボ全開で、一気にキョンの家を目指す。負けるもんですかっ。

 

『ぴん、ぽ〜ん』
 お間抜けな玄関チャイムの音がした。
「はーい、どなた様ですか…………っ???」
 ドアを開けたキョンの妹さんが、えもいわれぬ表情で固まる。
 そりゃそうだろう。あたしは玄関のタイルの上で突っ伏してるし、有希は有希でほほを紅潮させ、鼻だけでふーふーと荒い息をついている。
 表情はいつものまんまなのに呼吸だけ荒いって、あんた意外に器用ね。
 ──よく考えたら、先を争っても何の意味もなかったわ。馬鹿だあたし。

 

「何しに来た」
 ようやっと立ち上がったあたしに、キョンのこの一言。その仕打ちはないと思う。
「お手伝い」
 まだ鼻息を荒くしたまま、有希が言う。あたしたちはキッチンに向かうと、おば様にご挨拶した。
「おじゃまします、おば様」
 ちょうどキッチンでは食事の用意をしていた。いきなり人が増えたのでおば様は困惑顔だ。
「あ、ご心配なく。あたしの分の食事は用意してきましたから」
 荷物からタッパーを取り出す。ご飯と肉じゃがを取り出して、テーブルの上に置く。
 ……あれ? お箸じゃなくて、フォークが並んでる……
 キッチンでは、ずんどう鍋が白い泡を吹いていた。オーブンの中ではお皿がまわっている。
 ──しまった、パスタにグラタンか。肉じゃがなんてお呼びじゃない食卓。
「わたしも用意した。こっちは洋食」
 有希は少し誇らしげな顔をして、風呂敷包みを下ろすと、中からお鍋とおひつを取り出した。
 鍋の中身はこぼれていない。……あんた、ホントに伊賀者か。
 有希が鍋のふたをとる。とたんに、キッチンにスパイスの香りが充満した。
 ……パスタにカレーってのもどうかと思うわよ、有希。

 

 結局その日は、オリーブオイルとしょう油とガラムマサラの香りが混じり合う、カオスな夕食タイムが展開したのだった。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:23 (3093d)