作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと妹ちゃん
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-31 (木) 15:58:42

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

今俺の目の前には満面の笑みを浮かべる妹がいる。
これだけならいつもの光景なんだが……さて、どうしたもんか……
とりあえずすこし時間を巻き戻してみることにしよう。

 
 
 

今日は朝から憂鬱な気分だった。
天気も大雨……見事に俺の心境にマッチしている。
むしろこの大雨がこのメランコリーの原因といえるだろう。

 

「ちょっと……あんた今日元気ないわね。どうしたのよ?」

 

元気のない人間をシャーペンで突くのはどうかと思うぞ。

 

「寝坊して朝飯を食い損ねたんだ」

 

そう、今日は妹が起こしに来なかったんだ。
寝坊したとはいえ妹型の目覚まし時計がない俺が、
ギリギリの時間に起きれたのは奇跡に値する。

 

「なんで妹ちゃん起こしてくれなかったの?」

 

「この天気のせいらしい……」

 

そういって俺は窓の外を指差す。
まったく……夜でももう少し明るいんじゃないか?これ。

 

「なに?あんたの妹ちゃんって太陽の光を浴びないと動けないの?」

 

なんだそれ……たしかにウチの妹は朝顔みたいな奴だが、
あいつは季節天候問わず常にあのテンションだ。

 

「じゃあ、何が原因なのよ?」

 

わかったわかった……喋るからそのシャーペンを収めてくれ。

 

「あぁ……実はこの雨のせいでな……」

 

「雨のせいで……何?怪我でもしたの?」

 

縁起でもない事を……話は最後まで聞け。

 

「遠足が中止になったらしいんだ」

 

「は?」

 

……この距離で聞こえなかったのか?
耳鼻科に行った方がいいぞ。ついでに他人の話も聞ける様にしてもらえ。

 

「だからあいつが楽しみにしていた遠足がこの雨で中止になったんだ」

 

「……」

 

お前は長門か?長門の沈黙は心地よいが、お前の沈黙は不気味だ。
まぁたしかに黙ってる方がいいとは思うがな……

 

「それであんたも一緒に憂鬱なの?」

 

「まぁな……いつも元気な奴の凹み顔は見たくない。」

 

だからハルヒの凹み顔も見たくない、とは言いたくない。

 

「それに急いでたせいで弁当を持ってくることも忘れた」

 

学食に行きたくても金もないしな。

 

「あんたの胃袋はどうでもいいけど、妹ちゃんは早く元気になってもらいたいわね」

 

あぁ……今は反論する気も起こらないな。
俺も早くあいつの笑顔が見たいよ……

 

……その俺の願いは喜ばしいことにすぐに叶った。
ここで冒頭の光景に戻るわけだが、叶ったには叶ったんだ……
目の前で満面の笑みで『キョン君』なんて言ってるし……

 

ただな……俺はそれを家で見たかったんだ……

 
 
 

妹よ……何でお前は学校に来てるんだ?

 
 
 
 

「キョンくん〜お弁当持ってきたよ〜」

 

そうか、家に忘れてたのを持ってきてくれたのか……
いい子だな。お兄ちゃんは嬉しくて涙が出そうだよ。
別の意味でも泣きそうだが……

 

「わざわざ届けに来てくれたのか……ありがとうな」

 

「えへへ〜」

 

傘からカッパから長靴まで全て黄色いからヒマワリみたいだな。
真夏のヒマワリでもここまでパッとしてないだろうがな。

 

「ところで妹よ……お使いご苦労様なんだが……」

 

「なぁに〜キョンくん?」

 

狂喜乱舞したいのを我慢して俺は妹に言う。

 

「今は授業中なんだ」

 

視界の隅で新米英語教師がオロオロするのが見えた。
いつもすいません。

 
 
 

今、妹は俺のひざの上に座って授業を受けている。
といっても英語が分かるわけではないので、鉛筆で落書きしてるだけだ。
まぁ俺も同じく英語なんか分かってないので妹の相手をする。
先生いつもすいません。

 

本当は一人で家に帰ってもらいたかったのだが、
急に雨が強くなり、どうみても危なそうなので止めた。
というより皆から引き止められた。

 

ちなみに雨具の類は教室の後ろで乾かしている。
この天候じゃ乾きそうにないが…

 
 

授業が終了するとあっという間に妹の周りに人だかりができた。

 

「名前は何ていうの?」

 

「今いくつかな?」

 

「どこの幼稚園に行ってるの?」

 

やっぱり小学5年生には見えないのか。
って誰だ幼稚園とか言ったのは!?
コラ妹がちゃんと自分の年を言ったのに、疑うんじゃない!
なんだ『お兄ちゃんと干支が同じだと思ったよ』って!

 
 

だが、そんなことより今俺は速やかに決定しなければならないことがある。
妹をどうするか、だ。
このまま授業を受けさせるわけにはいかない。
阪中に抱っこされて幸せそうな顔をしている妹の顔を見ると、
ここに置いてもいいかって気分になるが、さすがに授業の邪魔になる。

 

だが、こいつを預けれる場所があるのか?
職員室は……あの空間で暴れまわる妹は厄介だな。
保健室で寝かせれば……ダメだ。大人しくしているわけがない。
そもそも小さなハルヒみたいなこいつを大人しくできる所なんて……

 

その時俺は気付いた。
と同時に俺は妹を抱えて走り出した。

 
 
 
 

「長門、いるか?」

 

「何?」

 

ここはおなじみSOS団室。
小ハルヒを大人しくさせるには大ハルヒが(割と)大人しくするここしかない。

 

「こいつを預かってくれないか?」

 

「あっ、有希ちゃんこんにちわ〜」

 

お兄ちゃんが喋ってるんだから少し黙ってなさい。
でもちゃんと挨拶できるなんて偉いぞ!

 

「なぜ?」

 

首をかしげる長門に俺は妹in教室の危険性を必死に説明した。
特にハルヒと妹がフュージョンした場合の俺の被害予想を懸命に説いた。

 

「そう……」

 

何とか納得してくれたようだ。ありがとう長門。
だが、昼休み中はともかくお前が授業に出てる間はどうする。

 

「大丈夫」

 

さすが長門!何か秘策があるんだな?

 

「情報操作は得意。今日の私のクラスの午後の授業は自習」

 

……え?

 
 
 
 

今私はSOS団室にいる。
情報操作により私のクラスの授業は担任の急病で自習だ。
ここにいても誰にも咎められない。

 

「ねぇ〜ねぇ〜有希ちゃん」

 

「何?」

 

彼の妹が話しかけてくる。
彼女の社交性の高さは朝倉涼子のそれをもはるかに凌駕する。
私も見習うべき。

 

「有希ちゃんはいつも本よんでるけどどうして〜?」

 

私が読書をする理由……考えた事がない。
知識の集約?いや、それならば情報統合思念体がいるのだから必要ない。
時間つぶし?それも違う。あの待機時間に比べれば読書の時間など取るに足らない。
私が考えてると彼女はまたも口を開いた。

 

「もしかしてキョンくんがおねがいしたから?」

 

彼の名前を聞いて思考が中断される。何故?原因不明。

 

「彼に読書を強要されたことはない」

 

「きょうよう?」

 

彼女の語彙には無い言葉を使ってしまったようだ。失敗。

 

「強要……無理矢理相手に要求すること」

 

実際には彼が私に無理矢理何かを要求することなど無い。
朝比奈みくるとの逢引に利用された時には複雑な気分になったが、
彼は基本的に無理強いを嫌う。

 

「ふ〜ん」

 

あまり理解していない様子。すこし残念。

 

「でもキョンくんいつも言ってるよ〜『長門が本を読んでる姿を見ると落ち着く』って」

 

そんなことを彼の口から聞いた事はない。

 

「本当?」

 

思わず疑ってしまった。彼女は嘘をつくような性格ではない。
彼女を傷つけてしまったかもしれない。どうしよう。

 

「ホントだよ〜」

 

彼女は満面の笑みで言う。
どうやら、疑われたことに傷ついてないようだ。少しほっとする。

 

「そう……」

 

「それにキョンくんおうちではいつも有希ちゃんの話ばっかりするんだよ〜」

 

思わず体がビクッとする。何故?

 

「ほ、本当?」

 

うまく喋れない。また疑ってしまった。何故?

 

「うんホントだよ〜いつも有希ちゃんの話ばっかりなの」

 

「どんな話?」

 

考えるより先に思考が言語化された。
今までに無い現象。しかし今はこの質問が最優先事項。

 

「んとね〜キョンくんいつも『長門に苦労をかけさせたくない』とか、
『最近長門の表情がまた柔らかくなったんだ』とか有希ちゃんのことばっかり」

 

その言葉を聞いて、また思考にエラーが蓄積した。
でも心地よいエラー。

 

「そう……」

 

「うんそうだよ。いつも有希ちゃんが気になるみたい」

 

彼が私のことを気に掛けてくれる……嬉しい。
でも一つ疑問が浮かぶ。

 

「なぜ……彼は私のことを?」

 

私は彼にとってどういった存在なのだろう?
他人?同じ団員?友達?
思考中の私の耳に彼女の溌剌とした声が響く。

 

「そんなの決まってるよ〜」

 

彼女には分かることなのだろうか?
もしくは規定事項?もう少し思考しなければ……

 

「キョンくんにとって有希ちゃんはいちばん大すきな女の子なんだよ〜」

 

その瞬間私の思考は完全に中断された。

 
 
 
 

雨がふってるから遠足お休みか〜
つまんないの〜
あっ、でんわがなってる。

 

「もしもし〜?」

 

『もしも〜し私よ〜』

 

ミヨキチだ!

 

「あ、ミヨキチ?どうしたの〜?」

 

『もう、ちゃんと「どちらさまですか?」って聞かないとダメでしょ?
悪い人に騙されちゃうよ?』

 

「は〜い。ごめんね〜」

 

『まぁいいけど……それより動物園行けなくなっちゃったね。』

 

「うん……」

 

『パンダさん楽しみにしてたのにね。』

 

「うん……」

 

『あ、泣かないで。』

 

「ないてないよ〜パンダさんはまたみれるよ」

 

『そう……それならいいけど……』

 

「それよりキョンくんがね〜……」

 

パンダさんはまた今度の日曜日にキョンくんがつれてってくれるっていってた。
でもキョンくんバタバタしててお弁当わすれちゃって……ってミヨキチにはなしたら
ミヨキチがいいこと思いついたっていいだした。

 

『じゃあキョンお兄さんにお弁当届けてあげたら?』

 

「え〜?」

 

『お兄さん絶対喜ぶと思うな〜』

 

「そうかな〜」

 

『でも一人で行ける?私もついて行こうか?』

 

「だいじょうぶ。もう5ねんせいだもん」

 

来年には6ねんせいになるんだし、おつかいもしたことあるよ。
おつかい中にキョンくんといろんな所であったけど。

 

『そう……宇宙より果てしなく心配だけど……』

 

「なんかいった〜?」

 

『ううん!何も言ってないよ。それより気をつけてね』

 

「うん!」

 

『あ、そうだ。もしこないだあったキョンお兄さんの……有希さんだっけ?』

 

「有希ちゃんがどうしたの〜?」

 

『そうその有希さん。ちゃんとお義姉ちゃんて付けなさいよ?』

 

「?うんわかった有希おねえちゃん、でいい?」

 

『うん。その有希さんに会ったら、
キョンお兄さんが有希さんのこと大好きだってことを伝えてね』

 

「?キョンくんは皆好きだよ?」

 

『う〜んそういうことじゃ……まぁいいわ。とにかく伝えてね。じゃばいば〜い』

 

「ばいば〜い」

 

そういってミヨキチはでんわをきっちゃった。
よくわからないけど、今はキョンくんにお弁当をとどけなくちゃ。
よ〜しおつかいがんばるぞ〜!!

 
 

北高までとてとてと歩く妹ちゃんの少し後ろにもう一人少女がついてきていた話はまた後日……

 

「だって心配なんだもん」

 
 
 
 

彼女が言った言葉により私の思考力が98%低下。
何故?なに?誰が?だれを?どうして?なんで?ほんとう?

 

「有希ちゃんどうしたの〜?かおが真っ赤だよ〜?」

 

彼女に言われて気付く。
顔面、および胸部の著しい体温上昇を確認。
標準体温に戻す。不可。何故?

 

「なんでもない……」

 

「ホント?」

 

頷く。彼女を不安がらせることは避けたい。
まだ思考能力は半分程度しか回復していないが、
その程度の事は分かる。

 

「それよりも……」

 

早急に確認したいことがある。
まだ万全の状態ではないが聞いて見なければ。

 

「さっき言った事は……本当?」

 

「さっき言ったことって?」

 

「だから私が……彼に……」

 

その先のセリフがうまく言語化できない。
口がうまく動かない。何故?
そんな私を見て彼女が助け舟を出してくれた。

 

「ホントだよ〜キョンくんは有希ちゃんのこと大すきなんだよ〜」

 
 

彼女は嘘をつくような性格ではない。
彼女の言うことは本当。
つまり……彼は私のことがすき。
私も……

 
 

こういうときは何て言えばいいか検索。
不意に脳裏にあるフレーズが浮かぶ。言語化。成功。

 
 

「じゃあ……私がお義姉さんになるとうれしい?」

 
 
 
 

放課後、俺は妹の様子が気になるので、ハルヒの静止を振り切って団室に走った。
普段の体育でもこんな走らないぜ、ってくらいの勢いで団室についた俺は
そのまま扉を開けた。
朝比奈さんが着替え中ならすごい光景が見れたんだが、
今目の前には別の意味ですごい光景が広がっている。

 

「……な、何してるんだお前ら?」

 

長門が珍しく本を読んでいない……
それどころか妹をひざの上に乗せて頭を撫でている。
心なしか表情も嬉しそうだ。

 

「何やってんだ?」

 

俺はもう一度聞いてみる。

 

「えっとねー」

 

俺の問いに答えてくれるのか、ありがとう妹よ。
だが俺はその問いの答えに驚愕した。

 
 

「今日からあたしたち姉妹になったのー」

 

「そう……」

 
 

……何だって?すまんがもう一度頼めないか?パードゥン?

 

「私たちは夫婦。だから彼女は私の義妹」

 

な、長門さん!?一体何をおっしゃってるんですか?
まさかドッキリですか?

 

「ドッキリではない……」

 

少し悲しそうな顔をする長門。

 

「私が妻では……いや?」

 

いや、そりゃもう大歓迎なんだが……
ほら俺はまだ結婚できる年じゃないし、急にそんなことを言われても……

 

俺がそういうと長門はうっすらと微笑んだ。
何だ冗談か長門……そう思った俺だったが、
次の瞬間に自分の状況判断力の乏しさを呪った。

 
 

「大丈夫……情報操作は得意」

 
 

……ちょっ、長門さん……せめて2年くらいは待ってくれませんか……?

 
 
 
 

P.S.
妹を背負って長門と腕を組んで帰る俺の写真が
ハルヒの家に郵送されていた話はまた後日……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:18 (2735d)