作品

概要

作者おぐちゃん
作品名県立北幼稚園 第十話 『サバンナの掟』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-28 (月) 22:25:24

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 客の投げつけたリンゴを、鼻でキャッチする象。
 長い首を揺らしながら、悠々と歩くキリン。
 水中を飛ぶように泳ぐペンギン。
 今日は近所の動物園に遠足に来ていた。今は動物たちのお絵かきの時間。
 広い動物園に散らばった子供たちは、思い思いのモデルを選んで絵を描き続けている。
 涼子ちゃんはライオンを描いていた。
「ひゃくじゅうのおうだもん。それに、はがとんがっててきれい」
 ハルヒちゃんは虎か。
「とらはライオンよりつよいのよ!」
 江美里ちゃんは……ナマケモノ?
「うごかないから、かきやすいですよ、せんせい」
 そして有希ちゃんは……ああ、いたいた。
 動物園の真ん中にあるちびっ子コーナー。ヤギやヒツジといった大人しい動物と触れあえるコーナーで、有希ちゃんはうさぎと見つめ合っていた。
 幼稚園にもうさぎ小屋があるんだが……檻の向こうの珍獣より目の前のうさぎがいいのか。有希ちゃんは、うさ耳をぴこぴこ揺らしながら、仔うさぎに葉っぱを食べさせている。

 

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 ……………………うさ耳???
「やっほーキョンくん。どう、めがっさ似合ってるっしょ!」
 いぶかしむ俺に、背後からの大音声。誰かなんて考える必要もない。
「鶴屋さん。また来てたんですか」
「お? なにかヘンかな? ここは県立の動物園だから、視察にきただけさっ」
 県教育委員のこの人は、我が北幼稚園がよほど気に入ったのか、週に一度は理由を付けてやってくる。しかしまさか、動物園にまでついてくるとは思わなかったぞ。
 見ると鶴屋さんも、ライオンのものと思しき耳を付けていた。
「どうよこれ! そこの売店で売ってたのさっ」
 すると有希ちゃんのうさ耳もそうなのか。……園児に物を買い与えないでくださいよ。
 鶴屋さんに説教しようとしたら、有希ちゃんが俺のところにやってきた。
「ぱす」
 有希ちゃんはそう言って、雪のように真っ白なうさぎを俺に渡してきた。
「うごかないで」
 少し離れた位置で、画用紙を膝に乗っけてクレヨンを構える有希ちゃん。
 要するに、うさぎが動かないように抱えてろって事か。他の子たちも俺たちを見て画用紙を準備している。仕方ない、ここはモデルを引き受けて、他の子たちは古泉に任せよう。

 

 ……絵を描くことしばし。俺の頭に、後ろから何かが乗っけられた。
『がおー。俺は百獣の王、ライオンにょろー。
 おお、このうさぎはおいしそうさっ。お昼ご飯に食べちゃうにょろー』
 俺の背後で、誰かが作り声で妙な台詞を言う。訂正、誰かは丸わかりだろこれ。
「………………」
 ぽとり。有希ちゃんがクレヨンを落とす。その直後、有希ちゃんは猛然とダッシュしてくると、座っている俺の手からうさぎを奪い取った。
「あ、ちょっと有希ちゃん?」
「……きちゃだめ。うさぎさんたべちゃ、だめ」

 

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「ぶ、ぶははははっ! 冗談、冗談にょろ!!」
 鶴屋さんがそう言って、俺の頭からライオン耳を外した。すかさず別の物を頭に乗っける。
 ……地面に落ちる影からして、これまたうさ耳のようだ。
「ほら、先生もほんとはうさちゃんさっ。心配ない心配ない」
 有希ちゃんは少しためらっていたが、俺が笑顔を見せてやると、おずおずとうさぎを返してきた。
「…………ごめんなさい」
 ちょっとしょんぼりしている。鶴屋さんにだまされたのが悔しいんだろうか。

 

 楽しい時間も終わり。昼ご飯を挟んで動物園をまわったうさぎ組は、バスに乗って帰路についた。何故か鶴屋さんが便乗していたが、もう突っ込むまい。考えた方が負けだ。
 バスに乗ると、古泉が俺を妙ににやにやと見つめてくる。いったい何が言いたいんだ。
「おやおや、ずいぶん可愛い耳ですね?」
 ──しまった。丸一日うさ耳を付けっぱなしにしてたのか俺。

 

 それからしばらく、俺はキョンならぬピョン先生と呼ばれた。……やっぱり転職しようか。

 



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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:16 (3088d)