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作者 | 書き込めない人 |
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作品名 | 長門さんとそばかす 1 |
カテゴリー | 長門SS(一般) |
保管日 | 2006-08-27 (日) 00:32:54 |
キョン | 登場 |
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キョンの妹 | 不登場 |
ハルヒ | 登場 |
みくる | 登場 |
古泉一樹 | 登場 |
鶴屋さん | 不登場 |
朝倉涼子 | 不登場 |
喜緑江美里 | 不登場 |
周防九曜 | 不登場 |
思念体 | 不登場 |
天蓋領域 | 不登場 |
阪中 | 不登場 |
谷口 | 不登場 |
ミヨキチ | 不登場 |
佐々木 | 不登場 |
橘京子 | 不登場 |
それはいつものようにハルヒのどうでもいい一言から始まった。
「有希ってさ〜あんまり文芸部員ぽくないわよね?」
いきなり何を言い出すかと思えばお前は……
毎日部室で物静かに本を読む。それも鈍器のような分厚い本を。
このお姿を見て文芸部員だと思わぬ奴がいたら是非言ってくれ。
今なら鈍器本で殴るくらいにしといてやる。
「まぁ有希はもう文芸部員じゃなくてSOS団員なんだから別にいいんだけどね〜」
いつの間に長門は文芸部員を辞めたのか?
っていうかそれだと文芸部員は部員0になったことになるぞ?
そうなると、また生徒会が何か言ってきかねん。
「でもやっぱり文学少女って言えば、眼鏡かけてて〜」
ハルヒの言葉を聞いてハッとする。脳裏に浮かぶ一人の少女。
……もう一人の……長門……『あの世界』の長門……
確かに今目の前にいる長門より、
『あの世界』の長門の方が文芸部員としてふさわしい。
執筆活動もやってたようだしな。こちらの文学少女は完全に読書専門だ。
「性格は大人しくて引っ込み思案で〜」
長門は傍から見れば大人しい……というより何もしてないように見えるだけだが。
だが引っ込み思案……ではないな。『あっち』の長門は引っ込み思案だったが。
「それで人付き合いも苦手で〜」
ハルヒの言葉が続くにつれ、徐々に鮮明に脳裏に浮かぶ長門。
それは今目の前にいる長門ではない、もう一人の長門。
忘れたくても忘れられない……普通の少女の長門。
この世界を選んだことを後悔はしていない。
ただあの長門の存在は今でも俺の心に……
感傷に浸っていた俺をハルヒの一言が現実に引き戻した。
「もちろん顔にはそばかすね!!」
……はい?
今なんて……おっしゃったんですかハルヒさん?
「だから〜文学少女って言えばそばかすでしょ?分かってないわね」
相変わらず繋がりがまったく読めないぞハルヒ。
最後の一言がなければ、俺は脳内で完全にもう一人の長門を思い起こせただろうに……
第一そばかすなんて文学少女に限らず、思春期の若者ならあってもおかしくないだろう。
「私の中では純朴な少女にはそばかすが付き物なの!!」
それならお前は純朴じゃないのか?
なんて言うとハルヒのマッハパンチを喰らうのは避けがたいことであり、
顔に痣なんぞ欲しくない俺は黙っていることにする。
……でもこの時マッハパンチを食らっておけば、後が楽だったかも知れんな……
次の日、いつものようにSOS団室に入った俺は奇妙な違和感を感じた。
ハルヒがいない……のは掃除当番だから仕方ない。
いつものようにメイド姿の朝比奈さん。
いつものようにニヤケ顔の古泉。
いつものようにパイプ椅子に座って本を読む長門……
……何か違う。『いつものように』ではない。
長門が入り口……つまり俺がいるところに背を向けている。
普段なら横を向いているから横顔が見えるはずだ。
ただそれだけなんだが……何か気になる。
ためしに俺は長門に声を掛けてみた。
「お〜い長門?」
「なに?」
返事をしてくれた。
内心長門流の怒りでも買ってるのかと思っていた俺は一安心。
「いや……いつもと違う座り方だから気になってな」
「……そう」
ん?何かいつもと違うぞ?なんと言うか声の質が…
「キョン君。あのね……」
この変化について何か知ってるんですか朝比奈さん?
是非ご教授願いたいものですが。
「実は長門さんの顔に……ひぃっ!!!」
まるでライオンに出くわしたカエルの様な顔をする朝比奈さん。
一体何を見て……と後ろを振り返った俺は思わず叫んでしまった。
「うおっ!?」
……そのオーラは何だ長門よ……お前は格闘マンガに出てくる地上最強の生物か?
まわりの風景が物凄くゆがんで見えるぜ?
「……朝比奈……みくる……」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
物凄くビビってる朝比奈さん……と俺。
「喋りすぎは命に関わる……」
「ご、ごごごめんなしゃいぃ〜」
いや、『命に関わる』って長門さんそれは言いす……ってこえぇ!
長門さんそのオーラ何とかしてください!!
古泉も息苦しそうですよ!!むしろそのオーラが命に関わる!!
「……そう」
何とかオーラを沈め読書に戻る長門。
やれやれ。しかし何で長門は怒ってるんだ?
そういえば朝比奈さんは何て言おうとしたんだ……
……聞いてみたいが、半分放心状態になってる……
仕方ない……本人に直接聞いてみるか。怖いけど。
「なぁ長門……なんで不機嫌なんだ?」
「別に不機嫌ではない」
ならさっきのオーラは一体なんだったんだ?
「あれは……朝比奈みくるへの警告。あなたに害はない。」
思いっきりありましたが……まぁいい。聞きたいことは他にある。
「なぁ……長門よ。」
「何?」
「その……顔見せてくれな」
「断る」
まだ言い終ってませんが。ていうか拒否ですか?
長門の口から拒絶の言葉を聞いたのは初めてだ。
ちょっと……いやかなりヘコむ俺。
「俺……嫌われてるな……」
そうボソッと漏らした俺に無口少女は
「別にあなたのことを嫌ってはいない」
と即答した。
ならなんで顔見せてくれないんですか?
「……見せたくないから」
……そうですか。まぁ無理強いは良くない。
でも長門の顔を見たい。これはただの知的好奇心だ。
こっそり長門の正面に回りこもうとする俺。
すかさず体ごと顔をそらす長門。
反対側から正面に回り込もうとする俺。
やっぱり体ごと顔をそらす長門……
ん?何か今光ったぞ?
そうやって意地と意地のぶつかり合いを行っていると
俺の側頭部に衝撃が走った。何だ?隕石か?俺生きてる?
まだ人生を謳歌しつくしてないんだが。
「くぉらー!何やってんのよこの……バカキョン!!!」
馬鹿は容認してやるが、側頭部にロケットダイブは止めてくれハルヒ。
マジで死ぬかと思っ……
「……な……がと?」
心配そうに俺を見下ろす長門の顔を見て、俺は一瞬痛みを忘れ、また『あの世界』にやってきたのかと錯覚した。
なんせ長門が眼鏡をかけてたんだからな。
"br
だが俺の目の前の長門は『あの世界』の長門にはなかった物があった。
長門の整った鼻のまわりには……申し訳程度にそばかすが存在していた……
俺の声を聞いた長門は、ハッとした顔をして本で顔を隠す。
一瞬のことだったが間違いない。長門の顔には……
「ちょっと有希!?……キョンあんた有希に何したの!?」
まずさっきのロケットダイブの謝罪をしてくれ。
というか俺は何もやってないぞ。
「彼は何もしてない……」
「うそよ!キョンが何もしてないっていうならなんで有希は顔を隠してるのよ!?」
「見せたくないだけ……」
「まさか……キョンに落書きでもされたの?」
お前じゃあるまいし、そんなことするわけないだろ。
第一長門相手に成功できるミッションじゃない。インポッシブルだ。
「あんたは黙ってなさい!」
「彼は悪くない。彼は何もしていない。本当」
「嘘よ!キョンが何もしてないっていうのに何で顔隠してるのよ!?」
「だから……見せたくないと言っている」
「団長命令よ!見せなさい!」
「止めろハルヒ。長門が嫌がってるだろ」
強引なハルヒを思わず止める。クソ、頭が痛てぇ……
団室の隅では古泉の携帯が鳴っている。
「あんたは黙ってろって言ってるでしょ!!」
「そうはいくか。俺が悪いって言うなら罰でも何でも受けてやる。
だが長門に無理強いするのは俺が許さん」
俺の言葉に顔が真っ赤になるハルヒ。
また俺が物凄い被害を受けるパターンだな。
だが長門のためなら一肌どころか何肌でも骨になるまで脱いでやるぜ。
そう覚悟を決めてハルヒの鷹のような眼光を受ける俺の耳に長門の声が聞こえた。
「……わかった。」
「長門!?」
「顔を見せる……だから彼を許してあげて欲しい」
「有希……いいえ!ダメよ!こいつは神聖なる団長様に対して……」
「お願い……」
そう言って顔のところまで持ち上げた本を徐々におろしていく長門。
「長門!やめろ!!」
しかし俺の要望が聞き入れられることはなかった……
長門は先ほど俺が見た顔をハルヒの前にさらしていた。
「有希……あんたその顔……」
声を失うハルヒ。団室を静寂が包む。古泉の携帯もいつの間にか鳴り止んでいた……