作品

概要

作者Thinks
作品名ながとさん・パニック! (挿絵あり)
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-25 (金) 21:56:13

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 ある日。
 季節なんかどうでもいい。天気は晴れ。俺たちが夏服でいるから、やたら長かったはずの夏休みが終わってすぐくらいなんじゃないのか。
 なんてやけくそな状況説明がしたくなる事態が訪れたのは、その日の昼休みのことだった。
 
 外見的には、可愛らしいというか、もこもこでふわふわな・・・・・・謎の生物が学校中に大量に跋扈している。ちなみに色は真っ黄色だ。目が痛い。
 校内のいたるところに姿を現したそいつらは、昼休みと言うこともあって腹が減ってたんだろうなあ。
 学食やあちこちの教室から聞こえる、「俺の弁当がーっ!」「きゃー、わたしのパンー」「だーっ!返せこの野郎!」と、まぁそう言った間抜けな怒号の中、器用にも前足で、生徒たちから強奪した食料品を抱えて走り回っている。
 
 なんなんだ、こいつらは。昨日にも、ものすごーく見たことがあるような気がするんだが。
 
 袖を引っ張られてふと我に返る。どうした、長門?
「………手を」
 そういう長門は、一匹の謎の生物を両手で抱えて、重そうにしていた。
 ああ、さっきから離れてくれなかったヤツな。重いだろ、俺が抱えてやるぞ。
 「いい。この子達を元の場所に戻すため、協力を」
 
 ああ、確かに。この状況はなんとかせんとなあ。宇宙人だっけ、こいつも。
「違う。異空間生物」
 俺は長門が抱える、黄色くてもさもさのふかふかな生物を撫でながら、昨日の事を思い出していた。
 
 昨日、部室で行われた「第何回だったか忘れたけど、とにかくSOS団緊急会議」と言う名の雑談の内容を話しておこうか。
 
 暢気にしてるわけじゃない。詳しい事は解らんが、何とかなるのは解ってんだ。
 


 
「未来人、異世界人、超能力者って言っても、見た目は普通の人間です。では宇宙人とは、どのような外見の生き物なのでしょうか。わたしは非常に興味があります。・・・・・・ってことで。今日はみんなで宇宙人のイラストを描くわよっ!」
 
 パソコンのディスプレイの存在も全く気にせず、机の上に立ち上がって、ハルヒが述べた台詞である。
 
 はっきり言って、相場は決まってる。火星人と言えばタコのようなクラゲのような生き物だと聞くし、金星人はカニって言うのもあれば、地球人にそっくりだがテレパシーが使えるなど、古今東西に各種設定があることくらいは俺でも知ってる。
 が、その大半が電波にしか思えないのは俺だけだろうか。そうじゃないと思うぞ。たぶんな。
 
 外見がタコみたいな軟体生物にどれだけ知識があろうが、恒星間だか惑星間だか飛行なんぞが出来る宇宙船を建造できるわけがないだろ。
 大体、おまえの目の前で白紙のスケッチブックと無表情にらめっこをしているのが、自称、宇宙人だと言う事実があるわけでだな。
 と言うか、未来人、超能力者はともかく、異世界人が普通の外見だとは限らないんじゃないか?勝手に決めるなよ。突飛な格好をした異世界人がいたら、そいつらに悪いだろうが。
 
 しかしまぁ、この娘が宇宙人だとテレビに出したら、即座にクレームとファンレターが殺到してきそうな、見た目は人間の宇宙人。そんなSOS団の陰の役者である長門有希なんだが、こいつから宇宙船に乗って地球に来たとかいう話は聞いていない。訊いても概念や言葉では云々の意味不明な答えが返ってくるわけで、そんなことを訊くぐらいなら一緒にカレーでも喰いに行く話でも振る。
 
 だから俺には、宇宙人なんかどんな生き物なのか想像もつかん、と言うわけだ。どうだ、理に当たっているだろう?
「四の五の言わずにさっさと描けーっ!描くまで帰さないわよ!」
 愚痴を言っていても帰れなきゃしょうがない。
 そんなわけで俺も含む各人で、思い思いの宇宙人を描き上げた。

 想像もつかんので適当に灰色の宇宙人を描いた俺。あんたには想像力ってもんがないの?とはハルヒの弁である。
 普通の人間の絵を描いて、実はそこらにすでに紛れ込んでいるのですよ、と言ってのけ、長門に睨まれていた古泉。
 
 ハルヒは、絵自体は雑だが、獣人が宇宙服を着ているような、本人曰く鼠が進化したとか言う設定の宇宙人を描いていた。
 宇宙人というかエイリアンと言う表現が適切だな。謎の怪光線や、謎の爆弾や、謎の宇宙船を持っているらしいが、何に使うのか訊くと、宇宙人足るもの、地球を征服しに来ないといけないらしい。ハルヒにとっては宇宙人ってのはそういうものって事らしいが、そんなのあるわけねぇよと念を押しといた。本当に来かねんからな。

 朝比奈さんはというと、これが宇宙人さんですっと、スライムっぽい生物の絵を出してきた。
 それは、朝比奈さん曰く、アメーバ状の生命体で、ケンタウルス座のアルファB星の第四惑星に生息すると言う、要約するとそんな解説つきの生物だった。
 未来では当たり前のことなんだろうけれども、、、この時間平面とやらでは禁則事項じゃないんですか、それは。
 
 長門の絵の描き方は特徴的で、長いにらめっこの後、突如ペンを握ったかと思うと、右手を横に走らせながらペン先を紙に落としては上げ、それを幾度も繰り返し、想像物とは思えないリアルさに全員が圧倒されたほどの、精密な点集合体(ドットマトリックス)を描き上げた。実際見てきたんじゃないかってのは禁句だ。そこでまた、マイナス269℃の瞳に固まっている古泉のようになっちまう。
 
 で、長門が披露した宇宙人の絵には、尻尾と耳がでかくて猫と狐がブリーディングされたっぽい、リアルだがしかし可愛らしい生物が描かれていた。もし触れたら、気持ちよさそうな毛並みが印象的だ。
 思い起こせば、今、人間様の食料を略奪している生物にそっくりな気がするがな。

「あら、可愛いじゃない?これでも宇宙人なの?」
 食いついてきたハルヒに、長門がぼそぼそと何かを告げると、その設定がえらくお気に入ったようで、
「有希、それは想像とかじゃなくて本当に居るかもしれないわよ。きっと明日にでも、地球を侵略しに来るわ」
 と、またろくでもないことを言ったのである。
 心ここに在らずとなったハルヒは、長門の絵をひったくり、その生物を黄色く塗った後、鼻歌を歌いながら小学生が喜ぶような解説を付け加え始めた。
 
 まずい。誰かハルヒを止めろ。
 
「……これはわたしの想像。本当に存在してはいない」
 長門がフォローを入れるという珍しいシーンもあったわけだが、ハルヒの想像は止まらない。
 
 やがてその黄色い生物には、名前は「キッピー」で、大食漢で、二速歩行も可能。加えて「きぴきぴきぴ」と鳴いているように聞こえるが、実はこれはキッピー語である。そしていつか、地球に食料を求めて侵略してくるのだ!などの設定がなされてしまった。
 小学生がやってるんなら笑い事なんだがな。ハルヒがやると洒落にならんのだ。
 
 俺らの必死のフォローもむなしく、ハルヒによって採用され完成された「キッピー」の絵は、南極の氷も瞬時に熱湯に変えてしまう勢いの笑顔を伴ったハルヒによって持ち帰られてしまった。
 
 その後、俺たち四人は、わりと深刻に電波な会話を続けていた。
「想定外」
 まず長門が口を開くなんて珍しい事もあったもんだ。
「長門。ハルヒに何を言ったのか教えてくれ」
 俺にはハルヒがあの絵をそこまで気に入ってしまう理由が解らん。
「昔、読んだ本に載っていた生物。宇宙生命体で、それなりの知識と文化を持っている」
 告げた事をそのまま言ったんだよな、で、それだけか?
 こくり、と長門は頷いた。
 
 それだけでハルヒがあんな勢いになったのは何故だ?
 絵がリアルだったからか。やっぱりそれだけだよな、他に思いつかん。
 妙な所が素直で単純なヤツなんだよな。………
 
「そこが、問題」
 どうした、長門。さっきから落ち着きが無いように見えなくは無いぞ?
「明日、九十五パーセントの確立で、あの生物はこの世界に出現する」
 ハルヒのヤツ、あれを本当に出しちまうってのか。ハルヒが作っちまうのか、あの生物を?
「あの生物はこの空間には存在しない。しかし、別の空間に、類似生物が存在する事を確認した」
「別の空間から召喚してしまうということですか。それは、、、まずいですね。僕が想像していたよりも確率も高い」
「だめですっ!きっぴーが出てきちゃったら、この時間平面上の常識がめちゃくちゃになっちゃいますうっ!!」
 古泉。落ち着け。朝比奈さんもです。出てくるもんはしょうがないでしょうが。
 桜が狂い咲くくらいなら、まぁありえることだ。しかし真っ黄色で猫の体に狐の耳と尻尾、か。可愛らしいUMAの出現で、大騒ぎになるだろな。
 
 古泉、おまえはこういう事態になったほうが良かったんじゃないのか?
「僕はこの世界が好きですからね。涼宮さんはあの生物が地球を侵略すると設定したでしょう?生態系が乱れるほどの数が出現すれば、この世界はこの世界でなくなってしまう。そういうわけには行かないんですよ」
 何事も程々に、ってことか、それは。
 朝比奈さんが慌てる理由は解る。ツチノコやらビッグフットにネッシーなんぞが溢れる未来なんぞ、いますぐ変えてやるからな、俺は。
「きっぴーは可愛いかったんですけど……」
 気に入ってる場合ですか。確かに可愛かったですけどね。
 
「出現は止められない。しかし、影響を与えない方法は、ある」
 そう発言した長門が、自ら発案した計画を話し始め、
 
その話の奇抜さ加減に三人で顔を見合わせた。
 それ、本当にやっちまうのか。出来るのか、長門。
「二重空間の形成。短時間で終わらせる必要があるが、可能」
 


 
 午後の教室はパニック状態だった。
 授業中でも遠慮なく足元に絡み付いてくるキッピーに、教師も授業なんかできたもんじゃない。
 受ける方も受ける方で、良い遊び相手が出来たってな感じで、教室中キャーキャーと大騒ぎである。
 
「どわぁっ、俺の上靴返せこのやろっ!」
「ははは、元気が良いね」
 捕まえてやれよ、国木田。
「この子かわいいのね。家で飼ってみようかしら。お母さんもきっと喜ぶのね」
 谷口が上靴を咥えた一匹を追い掛け回し、阪中が机の上に一匹乗せて撫で回している。
 
 そんな状態だから、俺の後ろの席が空いていて、代わりに一匹座っているのだが全く気にされていない。気になるようにも出来ていない。すでにキッピーは生徒全員にもれなく一匹とまでは言わないが、それに近いくらい増えていた。
 
 長門の予想通り、ハルヒは校内のどこぞをうろつき回っている様だ。
 開いた窓の縁にちょこんと座って俺の顔を見るキッピーをからかいながら、俺は長門からの連絡を待っていた。
 おまえ、そこで良いのか。危ねぇぞ、そこ。
 
…………
………
 
「……この子が鳴いたら、中庭に来て欲しい」
 
 そんなことを俺に告げた長門は、抱えていたキッピーを俺に渡し、
「……手を」
 と、もう一度俺に言った。
 重いから手を貸してくれと言うのかと思ったが、どうやらナノマシンの方らしい。
 長門は俺の差し出した手を両手で取ると、人差し指を横に咥えて甘咬みした。正直、本当気持ちが良くて、、、ああ、妙な想像を、、、いかん。止める。長門、このナノマシン注入の方法は他に、、、いや、無くても良い。
 
「この生物は、有機生命体に対し、魅了作用を引き起こす成分を分泌する」
 魅了作用?なんだそりゃ。あなたにメロメロな魔法のあれか?
「そう。チャーム。罹ると、この子たちを可愛がってしまう。このナノマシンで、その効果を打ち消す」
 俺はもう罹らないって事は、準備オーケー、だな。長門。じゃぁ、こいつが鳴くまで待ってるぜ。
 
………
…………
 
「きぴきぴ?」
 
 軽く思い出していたら鳴きやがった。これが合図、、なのかねぇ。
 俺は混乱の教室を抜け出して中庭に向かって駆け出した。
 
 
 長門の発案した計画は、まず、北高全体の空間を再現した仮想空間を作成し、その仮想空間でSOS団以外の生徒、教師には普段のように生活していただく。そして、現実空間に発生するであろうポイントを北高ごと隔離して叩くという、回りくどくてスケールのでかいものだった。
 
 長門曰く、異空間から何かが流れ込んでくる場合、空間が繋がるポイントが発生するのだそうだ。ポイントはハルヒの周辺で発生するため、北高以外で発生することは、推測の結果ほとんど無く、また、仮想空間にはポイントを発生させることが出来ない。
 
 だから、この世界に影響を与えないためには、北高をまるごともう一つ作り出す以外方法がない、、、と、まぁ、そういうわけだ。
 さっきの谷口や国木田、阪中、他全員の生徒達は、ハルヒ対策の仮想人格で、仮想空間に構築された北高には、今、本物の生徒達と仮想人格のSOS団メンバーが存在している。
 
 それなら、仮想空間に全員入って、おまえの想像どおりには行かんのだ、と諭せば良い、という俺の意見は却下された。古泉が、キッピーが出なかったら出なかったで、ハルヒが何を次に考え出すか全く検討も付かないと言ったからなんだがな。
 
 ハルヒは、北高をキッピーで溢れかえる場所にしたかった。
 今、目の前で繰り広げられている、キッピーで溢れかえった北高の光景こそが、ハルヒの望んだものそのものなのである。
 
 本当に迷惑なヤツだぜまったく。
 
 
 程なく到着した中庭には、教室以上に大量のキッピーがいた。牧場の羊を思い起こさせる風景だ。そんな中で長門は、足元を見つめながら佇んでいる。
 俺の後ろから、「きぴっ」と鳴きながら一匹が長門に飛びつく。教室からくっついてきたのか、あいつ。
 
「長門、仕掛けはここか」
「そう」
 中庭で俺を待っていた長門は、左手でキッピーを抱えながら、俺の背後を指差して仕掛けの位置を教えてくれた。
 しかし、長門が指差した先には斜め上あたりを眺めているハルヒがいるじゃないか。
 
「ハルヒ、そこで何してる?」
「あ、キョン!これこれ、見てよこれっ!」
 ハルヒは何も無いところを指差して俺を呼んでいる。
 はぁ?そこに何がある、、、って!
 ハルヒの指差す先は、空だった。
 だが、斜めに一本黒い線が入っていて、その線からキッピーがぽんぽん出て来ている。
 なんじゃこりゃ。
 
「あんたこれが見えないって言うの?こっちに来なさいよ!」
 ハルヒの隣に行って見てみると、空中に大きな穴が開いている。
 もう一回言わせてもらう。なんじゃ、こりゃ。
 
「ね、ね、すごいでしょ。何かしらっ?これ?」
 ハルヒ、その前にこいつが危険だと思わないのか。見てるだけでも吸い込まれそうだし、底も見えないぞ、この穴は。しかも横から見れば極薄の板なんだぞ。
「……相互空間断裂融合面。空間と空間が繋がる場所」
「そうなの?有希、何でそんなこと知ってるの?すごい。これが不思議ってやつね!」
 質問をしてるんだか、感動してるんだか、納得してるんだか良く解らないぞ。どれか一つにしてくれ。
 
「空間と空間の差分を摘出し、初期の段階に調整する」
 そうか、時間が無いと言ってたな。まぁ、良く見ると愛嬌のあるやつらだけどな、、。
「……誤差修正。差分摘出完了。お別れを」
 え?
「………いい?」
 ……ああ、かまわねえよ。ハルヒ、こいつらとはお別れだぜ。
「ちょっと!何すんのよ。あたしのキッピーよ?」
 こら、苦しがってんぞそいつ。こんだけ飼うってのかおまえは。ちと欲張りすぎだぜ。
「実行……さよなら」
………なんだこの違和感は?
 
 気が付いたら古泉みたいに顎を撫でていたことに気が付いた時だった。
 ぽんぽん出てきていたキッピーどもが、ぽっかり浮かんだ穴に入り始めた。自力で入って行ってるわけじゃない。まるで黄色い竜巻の様に、あちらこちらからキッピーが飛んで来て吸い込まれて行く。
 
file031.jpg
 
「あーっ!待ちなさい!逃がさないんだから!!」
 おいハルヒ!危ね……!!
 
 俺が言い終わる前に、ハルヒは異空間に消えて行った。
 ハルヒが巻き込まれたキッピーの旋風は、その直後に穴に吸い込まれて消えてしまった。
 おーい、だから言ったじゃねぇか。って、冷静に言ってる場合じゃない。
 汗が出てきた。この向こうはキッピーだらけの異空間なんだろう?下手すりゃ帰って来ねぇぞ、あいつ。
 
 しかし長門は平然と穴を塞ぎ始めた。いや、長門は大抵、平然としてるんだがな。
 長門は、その手から、光る糸のようなものを出現させ、その糸の一端を咥え、延ばした。
 口を離れた糸の端は、例の穴に向かって飛んで行く。新体操をするかのように糸を操った長門が、ついに穴を縫い合わせてしまった。
 仕上げに糸をくいくいと引き、もう点になってしまった相互空間断裂融合面から糸を外した。
 正面から見ようが、横から回ろうがもう、そこには何も無い。
 見事な糸捌きだった。
 
「長門、ハルヒが向こうにいっちまったが、これって大丈夫なもんなのか?」
「想定内。むしろ好都合。ハルヒの存在する、異空間の座標点を仮想空間の仮想涼宮ハルヒの座標点と一致させた」
 
 俺は大きく溜息をついた。
 
 ムカつくほどの笑顔の古泉と、寂しげな朝比奈さんもやってきた。
 古泉はどうでも良いが、朝比奈さん。キッピーはそんなに可愛かったですか?
「……ええ。とっても。あんな可愛い生き物は未来にもいませんから」
 いたらやばいでしょう。それこそ常識が覆るっていってたその世界になるじゃないですか。
「せめて写真が取りたかったんですけど……それも禁則事項でした。くすん、、」
 
「後は、涼宮さんに、これが居眠りしていた時の夢だと思わせてしまえば良いわけですね。長門さん」
「………」
「長門さん?」
「………」
「おい、長門」
「……?」
 聞いてなかったのか。
 古泉、とりあえずそういうことだ。俺らも元に戻る、いや、向こうをこっちに呼び寄せるのか。
「そう。仮想空間をそのまま、この空間にマージさせる」
 古泉、頭抱えてないで立ち直れ。朝比奈さん、もう、毛一本落ちてませんから。
 
 よし、最後の一仕事だ、頼むぞ長門!
「了解した」
 


 
 そんなこんながあった、放課後の事である。
 
「すると何だ。ハルヒ。おまえは、昼休みに学食で、これに飯を食われた、と」
「そうよ」
「この、長門が描いて、おまえが色を塗って設定しただけの生物が、校内にうじゃうじゃ現れた、と?」
「ええ、そうよ。何回言わせんのよ、あんた。」
「ふむ、で、午後の授業をサボってキッピーと遊んでたら、俺と長門がやって来て全部逃がしたと。そう言うんだな。で、おまえはその後、どうなったって?」
「もう一回言うの?不思議な穴に吸い込まれたのよ。その中にも、いーっぱいキッピーがいたの。吸い込まれた子たちが山になってて、その上に落ちるーー!って思ったら、、、机に突っ伏してた」
「突っ伏してたってことは、昼休みからずっと寝てたとしか思えんよな」
「あの時、あんたも有希もいたじゃない!」
「あの時って、いつだよ?」
「だから、中庭よ!!」
 
 これくらいまでは憶えてる。すっとぼけるのに疲れて、忘れた。

 最後は確か、
「や、やっぱりそうだったのかしら。みんなに訊いて見たけど、あたししか見てないみたいだし、、、、、あれは夢だったの?」

 だったかな。首をかしげまくりながら、もう帰っちまったけどな。
 ハルヒには軽くストレスだったようで、古泉はバイトが入ったと言って、消えた。
 朝比奈さんは、どうしても諦められないらしく、キッピーの痕跡を探しに中庭に行ってしまった。何か残ってると良いですね。
 
 そんなわけで、長門と二人の部室である。
 俺は一つ訊きたい事があるんだなぁ。
 
「長門、キッピー、可愛かったよな?」
「………何故?」
 何故、って。お別れとか、さよならとか。
「………何の事?」
 憶えてないの、、か?
 こくり。
 
 そうか、そんじゃ説明してやろう。
 おまえ、自分で描いたキッピーの絵が、本当に生き物になって出てきて、少し嬉しかっただろ?
 自分の仕事とは言え、消すのは寂しかったんじゃないのか。
 一匹でも残しておけなかったのか、考えてたから古泉を無視した。違うか?
 
 軽く三分は考えている様子だった。
 その間に何回、首を傾げてたか数えてりゃ良かったと俺は思った。
「………意識はしていなかった」
 長門が少しだけ目を大きくしている事を、俺は見逃さなかったね。
 自分の行動に驚いてる。自分の変化に戸惑いがあるのかね?
 
「で、キッピーが出て来て嬉しかったか?」
 質問を少し変えてみた俺に、長門は、見当違いだが、それも気にならない返答をよこした。
 
 
「……あなたはわたしの変化に気づいてくれた。それが、……嬉しい」
 
 
 
 Special Thanks to 長門有希に萌えるスレ39-641
今回のお題
「…手を」「…いい?」「…あなたはわたしの変化に気づいてくれた。それが、嬉しい」

 



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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:13 (3088d)